SciREX事業の歩み
2011年度からスタートしたSciREX事業は、科学技術イノベーション政策の現場と並走し、様々な分析をしながら有効な政策立案を目指すプログラムです。全国の拠点大学での研究や人材育成、社会技術研究開発センターでの公募プログラム運営をはじめ、科学技術イノベーション政策に関連した様々な取り組みを行っています。
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SciREX事業スタート
JST-研究開発戦略センターの戦略プロポーザルに基づき、SciREX事業がスタート。国内外で関連した取り組みを行っている機関への調査や、事業の具体的な構想を練る「構造化研究会」、JST-社会技術研究開発センターによる研究提案の公募を開始。
RISTEXプロジェクト
・電力分野のイノベーションと研究開発ネットワークに係わる評価手法の開発
・ファンディングプログラムの運営に資する科学計量学
・科学技術への社会的期待の可視化・定量化手法の開発
・イノベーションの科学的源泉とその経済効果の研究
・共同事実確認手法を活用した政策形成過程の検討と実装
・未来産業創造にむかうイノベーション戦略の研究
・イノベーション創出に向けた「科学技術への潜在的関心層」のニーズ発掘(企画調査)
・科学技術イノベーション政策のマクロ経済評価体系に関する調査(企画調査) -
基盤的研究・人材育成拠点を採択
2013年からの人材育成プログラム開始に向け、政策研究大学院大学、東京大学、一橋大学、大阪大学/京都大学、九州大学の5拠点を基盤的研究・人材育成拠点として採択しました。
RISTEXプロジェクト
・STIに向けた政策プロセスへの関心層別関与フレーム設計(PESTI)
・地域科学技術政策を支援する事例ベース推論システムの開発
・科学技術イノベーション政策の経済成長分析・評価
・リソースロジスティクスの可視化に立脚したイノベーション戦略策定支援
・イノベーション政策に資する公共財としての水資源保全とエネルギー利用に関する研究
・医療介護システム等協創の科学技術イノベーション政策のための企画調査(企画調査)
・情報工学を用いた研究開発課題の設計支援手法の開発(企画調査)NISTEP
「科学技術イノベーション政策のための科学」 における
・データ・情報基盤構築
・政策課題対応型調査研究
を開始 -
人材育成プログラム開始
各拠点大学で人材育成プログラムの参加者募集を開始。夏には全拠点の教職員と学生が集まりサマーキャンプを開催しました。
RISTEXプロジェクト
・環境政策に対する衛星観測の効果の定量的・客観的評価手法の検討
・イノベーション実現のための情報工学を用いたアクションリサーチ
・先端医療を対象とした規制・技術標準整備のための政策シミュレーション
・市民生活・社会活動の安全確保政策のためのレジリエンス分析
・学際連携・異分野融合の設計・推進・評価手法の事例検証(企画調査)
・医療健康情報の一元化と社会実装に向けた基盤研究(企画調査)また、研究イノベーション学会の学会誌『研究・技術・計画』では「科学技術イノベーション政策の科学」を扱った特集号が発行されました。<https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jsrpim/28/1/_contents/-char/ja>
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SciREXセンター発足
SciREX事業による様々な成果を実際の政策形成の現場に活かしていく中核的な役割を担う機関としてSciREXセンターを設立しました。人材育成プログラムでは各拠点で2期生を受け入れ、淡路島でサマーキャンプを開催しました。
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行政官実務者研修を開始
国内の中央省庁職員を対象に、行政の実務者向けの研修プログラムを開始しました。科学技術イノベーション政策研究と実務をつなぐ試みの一つです。また、この年には文部科学省によるSciREX事業の中間評価が行われました。
SciREX事業第2期へ
SciREX事業第2期(2016-2020年度)がスタートしました。中間評価の結果を踏まえ、SciREX事業の基本方針が文部科学省により策定され、SciREX事業推進運営委員会とアドバイザリー委員会による新しい事業推進体制がスタートしました。重点課題に基づく研究プロジェクト(第5期科学技術基本計画で提示された課題に対して、拠点が連携して取り組む研究プロジェクト)を開始しました。
・経済社会的効果測定指標の開発
・イノベーションシステムを推進する 公的研究機関の制度的課題の特定と改善
・国家的課題に対応した戦略的政策シナリオ及びその作成手法の開発
・政策形成プロセスの改善手法の開発
・政策のモニタリングと改善のための指標開発
・イノベーション創出に向けた産学官連携:知識マネジメントと制度設計
・地域イノベーションに資する事例研究と政策支援システムの開発
・自治体の持つ学校健診情報の可視化とその利用に向けての基盤構築
・新しい科学技術の社会的課題検討のための政策立案支援システムの構築この他、「科学技術イノベーション政策の科学」が今後、何を研究対象としていくべきか、コミュニティで共有するため、SciREX事業棚卸・俯瞰構造化WSを8月に開催いたしました。ここでの議論が、のちのSciREXコアコンテンツに繋がりました。(報告書リンク: https://www.jst.go.jp/crds/report/report04/CRDS-FY2017-RR-03.html)
SciREXオープンフォーラムを開催
SciREX 事業の取組、成果を発信するとともに、政策担当者、自然科学者、人文・社会科学者、大学・研究機関関係者、民間企業、メディア等と科学技術イノベーション政策の課題をオープンに議論し、課題に対する認識の向上、ニーズの把握等を目的として、「科学技術イノベーション政策のための科学オープンフォーラム」(SciREXオープンフォーラム。第1回)を開催しました。
RISTEXプロジェクト
・レジリエンス強化のための省エネルギー機器導入制度設計
・先端医療のレギュレーションのためのメタシステムアプローチ
・スター・サイエンティストと日本のイノベーション
・多様なイノベーションを支える女子生徒数物系進学要因分析国際的なネットワーク構築へ
政府に対する科学的助言に関する国際ネットワーク(INGSA)の年次大会をGRIPS拠点が共催した他、九州大学CSTIPSでは世界社会科学フォーラム(WSSF)に参加するなど、国際的なネットワーク構築に取り組みました。行政官研修もより実践的な内容へ改訂。40人以上の行政官が受講しました。
RISTEXプロジェクト
・子どもの貧困対策のための自治体調査オープンデータ化手法の研究
・病床の減床と都市空間の再編による健康イノベーション
・医学・医療のためのICTを用いたエビデンス創出コモンズの形成と政策への応用
・家族を支援し少子化に対応する社会システム構築のための行動科学的根拠に基づく政策提言共進化実現プロジェクト開始
研究者と行政官の密な連携の下、重点課題に基づき政策形成の実践に資する具体的な成果の創出を目指した実践的な研究として共進化実現プロジェクト(共進化実現プログラム(第1フェーズ))が始まりました。国の具体的な政策課題に基づいて、政策担当者と研究者とが対話をしながら研究課題を設定し、共に研究を進めるプログラムであり、研究者の学術的関心のみに基づく研究ではなく、また行政官が行う委託調査でもない、両者が課題設定の段階から一緒に取り組むEBPMの新しい実践です。(2016年に開始した9つのプロジェクトは終了しました。)
共進化実現プログラム(第Ⅰフェーズ)
SciREX事業では、具体的な政策ニーズをもとに、課題設定段階から研究者と行政官が協働して研究を進める「共進化実現プロジェクト」を実施。
・研究生産性に与える要因とメカニズムの探求のための定量分析:論文生産性を指標とした競争的資金と組織特性の影響分析
・研究力向上に向けた新たな測定指標の開発:各研究文化に適合した分野別指標と組織・ネットワークの機能指標
・イノベーション創出の基盤強化のためのメカニズム分析:SPIASを活用して
・新興・融合科学領域における「予見・分析手法」の検討と人的ネットワークの形成
・イノベーション・エコシステムの構成要件に関する調査・分析
・医療分野の特性に合った基礎研究・応用研究・実用のイノベーションエコシステム構築に資する調査研究
・大学等における人材育成活動による、新興国における宇宙技術の開発・利用への貢献に関する国内枠組みの検討・分析
・国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の歴史・現状・未来像に関する研究:政府と民間の関係に焦点を当てて
・地震分野の研究成果の実効的な活用・社会実装方策に関する分析RISTEXプロジェクト
・科学的エビデンスに基づく社会インフラのマネジメント政策形成プロセスの研究
・市民科学とパーソナルデータを基盤とした発達障害支援の臨床の知の共財化
・研究力の「厚み」分析による社会インパクトの予測と政策評価手法の開発
・脱炭素社会の構築に向けた科学技術イノベーションの社会的受容性と価値創造の評価
・イノベーションを支えるデータ倫理規範の形成オープンフォーラム開催・フォローアップ調査実施
SciREX事業が10周年を迎えることから、これまでのさまざまな取り組みや活動を振り返る取組の一環として拠点間連携でフォローアップ調査を、さらには「科学技術イノベーション政策の新展開」をテーマとした10回のセミナーからなるオープンフォーラム(新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点からオンライン形式)を実施しました。また、SciREX事業第2期の中間評価が進められました。研究面では、2019年度から開始した共進化実現プログラム第Ⅰフェーズが終了しました。
RISTEXプロジェクト
・研究公正推進政策のための電子ラボノート実装ガイドライン作成を通したガバナンス研究
・医療情報化推進に向けた課題解明と2020年代における政策基軸の形成
・農林業生産と環境保全を両立する政策の推進に向けた合意形成手法の開発と実践
・生態系サービスの見える化による住民参加型制度の実現可能性評価と政策形成過程への貢献
・シビックテックを目指した気候変動の「自分事化」に基づくオンライン合意形成手法の開発と政策形成プロセスへの実装SciREX事業第3期へ
SciREX事業が第3期(2021-2025年度)に入りました。SciREX事業の中間評価結果が報告され、これを踏まえて基盤的研究・人材育成拠点、SciREXセンターほか関係機関がそれぞれSciREX事業第3期(2021-2025年度)の中期計画を策定しました。研究面では共進化実現プログラム(第2フェーズ)の研究プロジェクトがスタートしました。
共進化実現プログラム(第IIフェーズ)
SciREX事業では、国の具体的な政策課題に基づいて、政策担当者と研究者とが対話をしながら研究課題を設定し、共に研究を進める「共進化実現プログラム」を実施。課題が明確になっているものについては共進化実現ステージ(研究期間:原則2年)として、また課題設定を共に行っていくもの等については共進化準備ステージ(研究期間:原則1年)として取り組みを進めました。
共進化実現ステージ ・研究開発プログラムの開発・評価に資するエビデンス構築の研究
・レジリエントな産学連携とイノベーション・システムのためのエビデンスの収集と分析
・科学技術・イノベーション政策の経済社会効果分析の政策形成プロセスへの実装
・我が国の大学等による宇宙分野の人材育成支援活動のための国内枠組みと展開可能性
・我が国の宇宙デブリ関連の国際ルール形成・標準化のための官民連携に関する研究
・自然科学と文化芸術、人文学・社会科学の多様な連携の社会的価値の可視化と実践的手法
※2022年度に共進化準備ステージから移行
・「将来社会」を見据えた研究開発戦略の策定における官・学の共創
・児童生徒の心と体の健康の保持増進に向けた教育データの活用
・イノベーション・エコシステムのハブ拠点が有する自立性・持続可能性の要件に関する調査研究
・新型コロナウイルス感染症による暮らしへの影響分析-オントロジー工学による接近
※2022年度に共進化準備ステージから移行
・博士等に関する情報基盤の充実・強化及び人材政策と大学院教育の改革に向けた事例研究
共進化準備ステージ ・研究業績の評価に基づく資源配分効果の動態的特性分析のための基礎研究
・自然科学と芸術、人文学・社会科学の多様な連携形態の掘り起こしとインセンティブ・アウトカムの可視化
・自然科学と文化芸術、人文学・社会科学の多様な連携の社会的価値の可視化と実践的手法
※2022年度は共進化実現ステージへ移行
・人文学・社会科学と自然科学の連携活動・インセンティブ・アウトカムの可視化-九州大学と東京大学の研究者実態調査
・自然科学と文化芸術、人文学・社会科学の多様な連携の社会的価値の可視化と実践的手法
※2022年度は共進化実現ステージプロジェクト「自然科学と文化芸術、人文学・社会科学の多様な連携の社会的価値の可視化と実践的手法」の一部として継続
・産学連携・地域連携活動に積極的に取り組む研究者のインセンティブ構造に関する研究
・新型コロナウイルス感染症による暮らしへの影響についての実証分析―オントロジー工学及び経済分析からの接近―RISTEXプロジェクト
・デジタルツイン都市を活用した危機管理下での政策決定支援
・木質バイオマス熱エネルギーと地域通貨の活用による環境循環と社会共生に向けた政策提案
・感染症対策と経済活動に関する統合的分析
・幼児教育の「質」が子供の学力や非認知能力に与える効果の検証
・大学発シーズの上市に関わる価値連鎖診断プロトコルの開発と実装
・ライフサイエンスにおける誠実さの概念を共有するための指針の構築
・研究分野の多様性を踏まえた研究公正規範の明確化と共有サマーキャンプ・実地開催再開
SciREXサマーキャンプ2022を政策研究大学院大学にて開催。コロナ禍でのオンライン開催を経て、感染症対策を施しつつ2019年以来の実地開催となり、参加者の間で活発な議論が行われました。2012年度の初開催から数えて11回目となった今回、拠点における教育プログラムの受講生・修了生による実行委員会が初めて発足しました。研究面では、2021年度から開始した共進化実現プログラム第Ⅱフェーズの計11プロジェクトが終了しました。
RISTEXプロジェクト
・政策形成過程における科学的知見の活用最大化のための中間人材の可能性について ―成育医療・母子保健領域を事例とした分析と実証―
・新興感染症に対する非特異的対策のための行動変容と科学コミュニケーションに関する合理化および最適化研究
・原子燃料サイクル政策の受容に対する熟議的アプローチ:感情と技術の作用機序に着目して
・スポーツ参加の促進要因の探索と支援政策の評価研究 - 国・自治体・個人レベルの重層的アプローチ共進化実現プログラム、第IIフェーズから第IIIフェーズへ
共進化実現プログラム(第IIフェーズ:2021-22年度)の報告会を6月に開催。計16件のプロジェクトのうち、「共進化実現ステージ」として実施された全11プロジェクトが2年間の成果を報告しました。9月にはSciREXサマーキャンプ2023を開催。学生や教職員ら計142名が政策研究大学院大学にて討論や交流を行いました。10月からは計7件のプロジェクトを抱える共進化実現プログラム(第IIIフェーズ)が始動。2026年3月までを予定する研究プログラムです。
共進化実現プログラム(第IIIフェーズ)
・研究支援の基盤構築(研究設備・人材等)のための調査・分析
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・バイオエコノミーを目指したバイオものづくりの推進:政策課題の可視化と制度設計
・我が国の宇宙活動の長期持続可能性を確保するための宇宙状況把握(SSA)に係る政策研究
・我が国の人文学・社会科学の国際的な研究成果に関するモニタリング指標の調査分析
・ミッション誘発型のSTI政策及び研究開発戦略の検討プロセスの客観的な手法開発
・科学技術政策における博士号を保有する人材活用に関する調査研究
・安定性と流動性を両立したキャリアパスの仕組みについての定量・定性的研究