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科学技術政策における博士号を保有する人材活用に関する調査研究

プロジェクト概要

博士号の取得に起因する仮説検証能力や分野専門性に焦点を当て、我が国の政策形成における博士人材の有用性を規定する要因を実証的に明らかにする。Ⅰ. 採用時の評価における参照情報の提示、Ⅱ. 博士人材の有用性に関するエビデンスの提示、Ⅲ. 博士人材の人材育成における特徴の提示を目標に掲げ、入省前及び入省後の行政官の技能とOJTのあり方を含めた環境要因について分析する。

実施体制

研究実施者

氏名 所属・役職
祐野 恵(研究代表者) 京都大学 特定准教授
佐野 亘 京都大学 教授
八木 絵香 大阪大学 教授
林 嶺那 法政大学 教授
安藤 加菜子 京都大学 研究員
吉澤 剛 関西学院大学 客員研究員
森川 岳大 京都大学 研究協力員

行政担当部署

部署
文部科学省大臣官房人事課

政策課題

国家公務員における博士人材の活用は、高度化・複雑化する科学技術政策において専門性を確保し、政策の質を高めるうえでも有用である。博士人材の一層の活用を進めるには、昇任·昇格基準の見直しを含めた戦略的な人事配置の実現が必要となっており、これまでの慣行に依らない国家公務員の人事管理と制度の構築が政策課題となっている。

具体的な研究計画

問いに基づき、文献調査・サーベイ調査・インタビュー調査・海外調査を実施する

RQ 科学技術政策に携わる、自然科学系区分の試験により​採用された博士人材の強みは何か?(目標Ⅰ、目標Ⅱ)​

仮説1 科学技術政策を担当する行政官における博士人材は新規政策の立案数が多い
仮説2 取得した博士号の近接領域に選好を持ち、の実現に向けて科学的リテラシーを発揮する

RQ 行政における「専門家」処遇枠組みにおける、博士の専門性はどのように位置づけられるか?(目標Ⅲ)

RQ 行政における「専門家」処遇枠組みにおける、博士を処遇する際の課題は何か?(目標Ⅲ)

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・行政組織に関する先行研究のレビュー
・専門知の活用に関する先行研究のレビュー

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・科技系を中心とする文部科学省の行政官を対象に実施し、仮説1を検証​

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・博士人材の選好を抽出し、専門的リテラシーの活用のされ方を確認する。仮説2を検証

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・トランスフェラブルな技能の社会での位置づけと行政における位置づけについて英・濠・台の比較​

研究進捗の概要

仮説の提起

  • ●博士人材を規定する制度・環境​
    ・自然科学系と人社系の試験区分の違いが採用後のキャリアパスに影響しない​
    ・科学技術政策は専門性が高いとされる政策領域である
  • ●博士人材の技能​
    ・課題決定・解決能力及び調査分析能力が高い​
    ・行政の専門性のうち、行政管理の技能・専門的リテラシーが高い人材である​
  • 科学技術政策に携わる博士人材は新規政策の立案数が多い

記述統計

  • ●政策立案に関して
    ・博士人材の方が新規政策の立案にやりがいを感じる傾向が顕著。ただし、立案した政策の実現度については個々に異なる
  • ●業務量と質に関して
    ・業務量の増大について、学士・修士の行政官の方が組織として対応できていると考える傾向があった
    ・業務の質に関する高度化・複雑化への対応については、組織としての対応に関わる認知に差は確認されないが、個人としては博士人材の方が対応できていると捉えている傾向があった
    ・外国語で処理すべき業務に個人として対応できていると捉えている傾向は博士人材において顕著であった

因果推論

  • ●新規政策の立案数について
    ・博士課程の在籍の有無が影響している
    ・職位(課長補佐級、課長・室長級)について影響が確認される
    ・公共政策や政治学等の政策過程をテーマとしている海外機関への留学経験の有無について影響が確認される業務量の増大について、学士・修士の行政官の方が組織として対応できていると考える傾向があった

PJからわかる博士人材

新規政策の立案に強みを持つ人材

外国語も得意な調査分析の即戦力

coevolution3-6_6.pngFigure.1 行政の専門性(藤田2006等に基づき作成

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Table.1 新規の政策立案数を従属変数とするOLSによる結果の要約

主な成果発表実績

  • ・Yuno M. What Are the Characteristics of PhD-holding Government Officials Responsible for Science and Technology Policy in Japan? [version 1; peer review: awaiting peer review]. F1000Research 2025, 14:312 (https://doi.org/10.12688/f1000research.161673.1)

  • ・安藤加菜子, 祐野恵. 2025. 博士号を持つ公務員について:任用を通じた専門知の獲得に関する日豪比較, 『オーストリア・アジア研究紀要9, pp.1-14

共進化に向けた取組とその効果

  • ●担当者の異動があったものの、人事異動に伴うプロジェクトの中断等は生じていない

  • ●令和511月~令和6年、前任者の期間に2回、後任者の期間2回、合計4回の打合せを実施し、メール等で不足を補った

行政官のプロジェクトへの寄与と効果

  • ・過年度の政策課題の取り組み状況に関する共有と現行の事業についての整理・共有

  • ・仮説の導出における、実務担当者としての経験の共有

  • ・行政官を対象とする調査設計への協力及びその調査の実施

→ 経験的に理解されていた博士人材の特徴の整理につながった

研究者のプロジェクトへの寄与と効果

  • ・仮説の導出における、先行研究の整理と体系的なレビューによる知見の提供

  • ・研究デザインの実施、調査結果の解析、分析、検討

→ 国家公務員の人材活用における課題の把握と新たな研究テーマの提起につながった

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研究成果・資料

※現在準備中です。