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ミッション誘発型のSTI政策及び研究開発戦略の検討プロセスの
客観的な手法開発

プロジェクト概要

ミッション誘発型の新興・融合研究領域の決定プロセスにおいて広く利用可能で、決定における属人的バイアスが生じる可能性を最小化できるような、説明可能性・検証可能性・包摂性を備えた客観的エビデンスを生成するための大規模データ分析および超学際的エンゲージメントの手法を開発する。手法の開発とその効果の評価・検証を、文部科学省内の分野所掌課、研究助成機関等との連携・共進化の関係のもとで行う。

実施体制

研究実施者

氏名 所属・役職
平川 秀幸(研究代表者) 大阪大学 教授
木見田 康治(共同代表者) 東京大学 特任准教授

行政担当部署

部署
文部科学省科学技術・学術政策局研究開発戦略課、文部科学省科学技術・学術政策局研究開発戦略課戦略研究推進室

政策課題

ミッション誘発的な新興・融合領域の戦略策定を促進するために、「注目すべき新興・融合研究領域の決定プロセスのメソッド化」を行い、決定の属人的バイアスを最小化し、決定内容の堅固さと包摂性、行政実務での実行可能性を保証するようなエビデンスの生成手法を確立すること。また、そのために、文部科学省内の分野所掌課、研究助成機関等との連携・共進化関係を構築すること。

具体的な研究計画

文部科学省内の分野所掌課等と連携し、下記のアプローチの手法を開発し、その効果の評価・検証を行う。

  1. 1.大規模データ分析アプローチ
    • 1)政策ニーズと研究動向に関する大規模データの分析:政策ニーズと研究動向に関するデータベースを活用し、自然言語処理等の定量的分析により、政策ニーズおよび研究動向を分析する。
    • 2)注力すべき研究領域の設定の支援:自然言語処理の定量的分析により、上記で明らかにした政策ニーズと研究テーマとの類似度を測り、各政策ニーズに対応する研究テーマや、関連する研究が十分に行われていない政策ニーズを特定する。
  2. 2. 超学際的エンゲージメント・アプローチ
    • 1)超学際的エンゲージメントの対話プロセス手法のカタログ化:多分野の研究者及び社会のステークホルダーが参加する超学際的エンゲージメントの対話プロセス(参加者の選定、提供資料作成、ワークショップ、対話結果のデータ化)の諸手法の情報を収集・分類・カタログ化する。
    • 2)エンゲージメントプロセスの省力化:オンライン化と文書処理の半自動化による省力化の工夫を行う。
    • 3)大規模データ分析と超学際的エンゲージメントを組み合わせたエビデンス生成プロセスの開発と試行:大規模データ分析の結果をインプットとして、超学際的エンゲージメントを通じて、とくに多分野融合的な研究領域を特定するための包摂性を高めたエビデンスを生成するプロセスを設計し、試行(政策実験)する。

研究進捗の概要

本研究により、Circular EconomyCE)分野において、次のことが明らかになった。

大規模データ分析の成果

  • ・ビジネス系分野が学術界・政策界の双方から高い関心を集めている一方で、工学系分野は経済的支援(グラント)を多く獲得しているが引用は少ないという分業的構造が存在する。

  • ・異分野間の共著論文は、相対的に高い学術的インパクトを持つ傾向があり、異分野連携の促進がCE研究の質的向上に寄与する可能性が示唆された。

  • ・分野間の連携にはばらつきが見られ、特に類似領域間であっても共著が少ない場合があるなど、構造的な壁も存在している。

  • ・レビュー論文の被引用数が高い傾向にある一方で、現実社会に即した実装研究や技術検証が不足しており、今後は、ビジネスモデルの実装性評価や工学技術の社会実装を重視した研究が求められる。

政策立案に対する示唆としては、次のことが指摘できる。

  • ・政策文書での引用が最多のビジネスモデルやサプライチェーン分野の概念的・制度的枠組みの整備や、企業に対する支援やインセンティブ設計が重要である。

  • ・工学的分野では、研究開発の促進だけでなく、社会実装や標準化、普及に向けた制度設計が求められる。

  • ・学術的・政策的な注目度と支援のギャップに対応した政策的資源配分の見直しと、分野横断的な研究・実装の橋渡しを支援する枠組みの構築が必要である。

  • ・異分野連携による高インパクト研究を促す研究助成プログラムの拡充が効果的である。

超学際的エンゲージメントの成果

対話プロセスとして、文献・データ分析に基づく情報共有資料の作成、一般市民・俯瞰的専門家・領域専門家の3層からなる多層的小規模対話による定性的参照情報の作成、専門家対象のアンケートによる定量的参照情報の作成を行い、次の成果が得られた。

ACE分野を対象とした対話プロレスの事例研究としてのアウトプット

  • ・②を通じて、理工系分野の研究開発課題とともに人文社会科学や学際研究が必要となる課題が幅広く可視化された。

  • ・対話の結果をもとに作成されたにより、課題間の優先度、各課題に関連するリサーチクエスチョン例、想定される研究実施体制、研究費の規模、研究期間、研究費使途、研究支援内容、研究評価者候補に関する参照情報が得られた。

B)事例研究を通じた超学際的エンゲージメントの対話プロセスの手法開発としてのアウトプット

  • ・②併用により、課題の定性的・定量的把握が可能となり、研究開発プログラム設計に資する情報が得られた。

  • ・市民を含む多層的対話によって論点の拡がりと深掘りが実現され、オンライン実施や生成AI活用による省力化の有効性も確認された。特にAIは情報整理や即時フィードバック、最終的な論点の構造化にも有効であることが示された。

主な成果発表実績

  • ・西本恵太, 木見田康治, 浅谷公威, 坂田⼀郎(2024), "Circular Economyはどのような研究分野によって構成されているのか? - 量書誌学に基づくデータ分析", エコデザイン・プロダクツ&サービス2024シンポジウム予稿集 (EcoDePS2024).

  • ・寒河江茜里, 天沢逸里, 木見田康治 (2024), "サーキュラーエコノミーにおけるトランスディシプリナリー研究促進に向けたインタビュー調査", 研究・イノベーション学会第39回年次学術大会予稿集, pp.809-812.

共進化に向けた取組とその効果

  • ・行政官との打ち合わせは、令和5年度(令和510令和63月)は6回、令和6年度(令和64令和73月)は6回行った。R6年度の内1回は、研究開発局環境エネルギー課と超学際的エンゲージメントに関する打合せを行った。

  • ・行政官との打合せを通じて、本プロジェクトが提案する大規模データ分析と超学際的エンゲージメントによる、研究開発プログラム立案に資する参照情報作成の事例研究対象(今回はCircular Economy: CE)の選定や、アウトプット内容のデザインについて、重要な情報を売ることができた。とくにアウトプット内容のデザインについては、環境エネルギー課との打ち合わせが大いに役立った。

  • ・今後は、令和6年度に実施した事例研究の結果を報告書にまとめ、これを、政策立案のための参照情報として、CE分野を所掌する研究開発局環境エネルギー課に提供するとともに、参照情報としての有用性についてフィードバックを得る。また、参照情報作成の手法としての有効性を評価することを目的として、他の文部科学省内の分野所掌課や研究助成機関(JSTなど)から意見聴取も進める。

研究成果・資料

※現在準備中です。