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我が国の人文学・社会科学の国際的な研究成果に関する
モニタリング指標の調査分析

プロジェクト概要

「人文学・社会科学研究の国際性の可視化が重要である」という大学・研究現場等と行政の共通認識に基づき、特に国際ジャーナル論文に関する定量的指標設定の実現可能性について検討を行い、我が国全体の人文学・社会科学分野の総合的・計画的な振興に資する基礎データ・資料を構築・作成することを目的とする。

実施体制

研究実施者

氏名 所属・役職
軽部 大(研究代表者) 一橋大学 教授
原 泰史 神戸大学 大学院経営学研究科 准教授
(2024年10月より)
後藤 真 人間文化研究機構 准教授
小泉 周 北陸先端科学技術大学院大学 教授 (副学長(総合戦略担当))

行政担当部署

部署
文部科学省研究振興局振興企画課 学術企画室

政策課題

「人文学・社会科学の研究成果のモニタリング指標について(とりまとめ)」(令和5年2月7日科学技術・学術審議会学術分科会人文学・社会科学特別委員会)を踏まえ、人文学・社会科学の研究成果を定量的に把握するための指標設定の実現可能性を検討し、実行していく上での具体的な課題及びその解決方策について調査分析を行う。

具体的な研究計画

本研究プロジェクトは、以下の研究活動を推進することを計画している。

  1. ① 研究分野別の研究動向・研究文化・研究慣行の調査分析
    <定性的研究アプローチ>
    ・計129名の研究者を対象に聞き取り調査を実施
    人文学・社会科学系研究領域のうち、科研費中区分レベルで10/10分野、小区分レベルで64/69分野を網羅
    <定量的研究アプローチ>
    ・researchmap上の人文学・社会科学分野の研究者95000名のデータを対象に調査分析を実施

  1. ② researchmapScopusデータを援用した研究活動の国際化動向の調査分析

  2. ③ 上記活動を通じたモニタリング指標設定の実現可能性の検討、行していく上での具体的な課題及びその解決方策に係る調査分析

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研究進捗の概要

1.本研究の研究課題

研究力評価における、人文学・社会科学の研究成果の定量的把握の困難さは、統合的データベースが存在しないこと、②研究者・研究機関の名寄せに不備が見られること、③業績カウントに関する統一的な手法や前提が確立していないことに起因している。これらの問題を克服するためには、研究者が自身と所属する学術コミュニティの双方において、どのように研究業績を把握することが適切と考えているかを確認し、それが研究分野でどのように当然視され、また変化しつつあるのかを確認する必要がある。

2.これまでの研究進捗

具体的には、聞き取り調査に基づく定性的分析と既存のデータベースを活用した定量的分析の双方から研究課題にアプローチした。聞き取り調査は、科研費の審査区分表を基に人文学・社会科学を構成する全分野の研究者にアプローチし、129名の研究者から協力を得た(表01参照)。また、定量的分析には、エルゼビア社のScopusと科学技術振興機構(JST)のresearchmapを活用して、分野別の研究者(約95000名)の研究業績の動向や、分野別の業績ポートフォリオの動向などを可視化することに成功した(図01参照)。

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表01:中区分レベル聞き取り調査協力者数​
※人文学・社会科学系研究領域のうち、科研費中区分レベルで10/10分野、小区分レベルで64/69分野を網羅​

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01:中区分レベル分野別業績ポートフォリオ

3.主たる発見事実

人文学・社会科学分野は、科研費中区分・小区分のいずれにおいても、分野間で研究業績の考え方について顕著な相違が見られることが確認できた。

例)国際誌での査読論文公刊が当然視される研究分野と、その評価基準が多様な要素から構成されている研究分野が存在する。

主な成果発表実績

Masaru Karube, Yasushi Hara, Yuki Miyazawa, Yu Lei and Riho Tanaka2025"Unpacking social impact: Quantifying scholarly and social activities in humanities and social sciences in Japan. "The Atlanta Conference on Science and Innovation Policy 2025, 14-16, May, 2025, Atlanta, Georgia, USA.

Masaru Karube, Yasushi Hara, Yuki Miyazawa, Yu Lei and Riho Tanaka2025"Quantifying scholarly activities, research output and social impact in humanities and social sciences of Japan: A mixed methods study."RESSH2025 conference of the international association ENRESSH (European Network for Research Evaluation in the Social Science and Humanities), 19-21, May, 2025.

共進化に向けた取組とその効果

行政官と研究者との間で定期的な対話を行い、それぞれが持つ課題意識を共有した。

研究者側 これまでの研究力評価の調査において、人文学・社会科学の研究成果の定量的把握が簡単ではないことは多く指摘されており、特に統合的なデータベースの不在や、研究者・研究機関の名寄せの不備、論文カウント手法が統一されていない現況は、人文学・社会科学の研究力評価分析に取り組む以前に解決しなければならない根本的な課題。
行政官側 総合的・計画的な振興に向けて、我が国全体の人文学・社会科学の研究動向や研究成果を把握するためのモニタリング手法の確立が喫緊の課題。
  • ・行政官・研究者の双方が、有識者会議における関連議論を前提としたうえで研究プロジェクトを推進することにより、「人文学・社会科学研究の国際性の可視化が重要である」という共通認識のもと、政策動向・ニーズを踏まえた検討を実施することができた。
    「人文学・社会科学の研究成果のモニタリング指標について」(令和5年2月7日 科学技術・学術審議会 学術分科会 人文学・社会科学特別委員会)

  • ・研究者・行政官が以下の役割分担のもと、積極的な連携を図りながら研究プロジェクトを推進した。

研究者側 調査・分析活動の実施データ収集・分析、研究者へのヒアリング
行政官側 政策課題との接続別途実施している委託事業「人文学・社会科学のDX化に向けた研究開発推進事業」での知見と本プロジェクトの知見との接続、人文学・社会科学特別委員会での議論との連携

例)行政側が政策ニーズを踏まえJSTへ「researchmapデータ利用要望書」を提出し、提供されたデータを研究者側が専門性をもって分析する"共進化ならではの強み"を発揮

  • ・その他、第21回科学技術・学術審議会 学術分科会 人文学・社会科学特別委員会(令和6年1月26日)において、研究代表者より研究プロジェクトの進捗状況を報告。

研究成果・資料

※現在準備中です。