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バイオエコノミーを目指したバイオものづくりの推進:
政策課題の可視化と制度設計

プロジェクト概要

「バイオものづくりの拡大によるバイオエコノミー社会の実現」の推進に向け、文科省にとどまらず内閣府・経産省等の関連省庁とアカデミアとが連携・協力することで、研究開発から社会実装までを横断的につなぐ上での政策課題(技術的課題・政策的課題)を明らかにし、その解決に資する制度設計のあり方を検討し政策提言に結び付ける。これにより社会課題解決に貢献することを目的とする。

実施体制

研究実施者

氏名 所属・役職
松尾 真紀子(研究代表者) 東京大学 特任准教授
城山 英明 東京大学 教授
岸本 充生 大阪大学 教授
蓮沼 誠久 神戸大学 教授
立川 雅司 名古屋大学 教授
木見田 康治 東京大学 特任准教授

行政担当部署

部署
文部科学省研究振興局ライフサイエンス課/内閣府科学技術・イノベーション推進事務局/経済産業省商務・サービスグループ生物化学産業課

政策課題

日本では「2050年カーボンニュートラル」の社会課題解決の達成と持続的な経済発展を両輪で進める「バイオエコノミー戦略」が推進されており、「バイオものづくり」は中核的施策の一つとされる。「バイオものづくり」を活用した「バイオエコノミー社会」を実現するには、合成生物学等の新しい技術を駆使するとともに、現在の社会・産業構造を根本的に転換していくことが求められる。しかし、現状は異なる省庁が各々の政策目的(科学技術イノベーション政策、産業セクター政策、環境政策等)を展開しており、必ずしも包括的政策デザインになっておらず、また、技術開発は基礎から応用・社会実装が局所最適化された形で展開されている、という課題が存在する。

具体的な研究計画

バイオエコノミー社会の実現にかかわるバイオものづくりを対象として、右図の研究実施体制で以下の項目について研究を行う。

  • 俯瞰マップ作成:バイオものづくりのシステムにおける研究開発と政策俯瞰マップを作成することで同領域のランドスケープの可視化を図る
  • 課題分析:横断的課題分析(安全性やセキュリティ、規制・標準化などのルール形成、人材育成など)とバイオものづくりの具体的事例調査によるボトムアップな課題の抽出をする
  • 政策提言の策定:①と②をもとに、政策的課題を多様なステークホルダーとの議論も踏まえて政策提言にまとめる。

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研究の実施体制

研究進捗の概要

研究課題バイオものづくりでバイオエコノミーを実現する際に必要となる検討事項(技術的課題・政策的課題)、研究開発から社会実装までを横断的につなぐ上での政策課題、その解決に資する制度設計・政策提言の検討)を達成するために、分析の大前提となる、「バイオものづくりのシステムにおける研究開発と政策俯瞰マップシステム思考に基づき試行的に作成し(松尾ほか(2024)下図参照)、バイオものづくりの全工程における技術的課題と政策的課題を整理した。また、ポートフォリオ・アプローチの観点から、各省の事業をプロットすることで、日本の政策の全体像を明らかにした。

これにより、全体における各々の活動の位置づけが明確になり、異なる政策領域・目的・レベル間でのつなぎ(基礎から応用・社会実装)におけるギャップや横断的に取り組むべき課題(規制・標準化等のルールメイキング、教育や人材育成、社会受容など)の存在も明らかになった。これらの成果をOECD等の国際的な議論の場でも連携することで、同分野に国内外で共通の課題も多く存在することも明らかとなった。

最終年度は、研究プロジェクトメンバーが中心となって作成したこの俯瞰マップを関連するステークホルダーへの調査にバウンダリーオブジェクトとして活用し精緻化するとともに、国際的な議論や個別具体的事例と横断的な課題の双方も注視しつつ、取り組むべき調査項目の優先順位を柔軟に検討したうえで、政策提言を取りまとめる。

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主な成果発表実績

共進化に向けた取組とその効果

  • ・研究におけるアカデミアと行政の役割分担については、研究代表者(松尾)は全体進捗の管理・とりまとめと文献調査や国際会議等の議論をベースとした知見の提示、参画している行政官や行政協力者は各自の立場から実務的インプットを提供する(文科省は基礎研究から社会実装の接続の視点、内閣府はバイオ分野全体の視点、経産省は産業化に向けた視点NEDOは研究開発実装の視点等とともに議論を行い、アカデミアメンバーは各々の専門(科学技術ガバナンス、ELSI/RRRI、生物工学、ルールメイキング、システムデザインなど)に基づき議論へのインプットと参画している。

  • ・本プロジェクトの特色として、文部科学省だけでなく、バイオものづくりに関連する内閣府・経済産業省の実務担当者が、研究プロジェクトの中核的なコアメンバーとして参画していることが挙げられる。これらのコアメンバーが中心となって、発表・報告、上述ワーキングペーパーの作成を協働で展開することで、日常的な情報・意見交換と共通認識が形成された。従来より科学技術は省庁の所管を超えたものであり、文科省だけに閉じた形での共進化プロジェクトの推進の限界が指摘されてきたが、本プロジェクトは省庁横断的な前例、経験の蓄積という意味でも有用と考える

  • ・共進化の効果や意義としては、上述の省庁を超えた相互理解や共通認識の形成に加え、アカデミアからは、文献調査等では得られない政策現場のニーズや情報の把握が可能であること、また、行政からは新たな分析アプローチ(ポートフォリオ・アプローチ)の活用や、国内外の多様な関係者とのフラットな意見交換の機会が得られること、と言ったことかが挙げられている。

  • ・他方で課題としては、これも従来より指摘されていることではあるが、異動による研究体制・人間関係構築の課題が挙げられる。文科省の担当者に関しては、リエゾン等の仕組み等が組織的にも整備されているが、他省庁についてはさらに困難な状況となることが想定されることから、それについても何らかの仕組みを検討する必要がある。

研究成果・資料

※現在準備中です。