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研究支援の基盤構築(研究機関・研究設備・人材等)のための調査・分析

プロジェクト概要

大学における研究推進、質の高い研究成果や新たな学術領域創出、スタートアップ創出、イノベーション促進のためには、日本のアカデミア全体として、研究支援の基盤構築、特に研究設備の効率的な利用・アクセス性の向上を図ることが重要な課題となっている。また、研究支援人材の採用・配置と能力向上も不可欠である。本PJは、日本における研究支援の基盤構築のため、政策立案に資するエビデンス構築を目指すものである。

実施体制

研究実施者

氏名 所属・役職
隅藏 康一(研究代表者) 政策研究大学院大学 教授
渡邉 万記子 政策研究大学院大学 専門職
枝村 一磨 神奈川大学 准教授
古澤 陽子 東京大学 特任研究員
黒河 昭雄 神奈川県立保健福祉大学 講師
樋原 伸彦 早稲田大学 准教授
吉岡(小林) 徹 一橋大学 准教授
高橋 真木子 金沢工業大学大学院 教授
佐々木 隆太 北海道大学技術連携統括本部総合研究基盤連携センター特任准教授
(2024年4月より)
荒砂 茜 東海大学マイクロナノ・研究開発センター 准教授
(2024年4月より)
江端 新吾 東京工業大学 教授 / 総括理事・副学長特別補佐
(2024年8月-2024年9月)
東京科学大学 教授 / 理事 特別補佐(総合戦略担当)
(2024年10月-)

行政担当部署

部署
文部科学省研究振興局大学研究基盤整備課/科学技術・学術政策局産業連携・地域振興課/科学技術・学術政策局人材政策課/文部科学省科学技術・学術政策局参事官(研究環境担当)付

政策課題

大学共同利用機関の設置、文部科学大臣による共同利用・共同研究拠点の認定制度の創設、「研究設備・機器の共用推進に向けたガイドライン」の策定、URAに関する施策、各種の産学連携施策などが行われてきたが、これらの研究支援の基盤構築のための施策をひとまとめにして調査研究の俎上に載せ、担当各課の管轄を超えて、長期的な視点で新たな政策立案のための議論はこれまでほとんど行われてこなかった。

具体的な研究計画

本研究は、研究支援の基盤構築のための施策をひとまとめにして調査研究の俎上に載せ、担当各課の管轄を超えて長期的な視点で新たな政策立案のための議論を行うものであり、本研究に参画する4課のうち複数の所掌事務に相互に関連したり、本来であれば又は潜在的にはいずれかの所掌事務の範囲内に収まるべきところであるものの欠落等をしている部分を見いだしたりするなど、研究支援の基盤構築のための施策を全般的に捉え、PJを進める。具体的には、主として次の4つの課題について定量・定性の両面から調査・分析を行う。

  • (1)研究機器の共同利用を活用した研究・イノベーションの状況についての調査
  • (2)研究支援人材の現状と、育成されるべき能力についての調査
  • (3)大学と民間企業との連携、特に大規模な産学連携プロジェクトに関する調査
  • (4)産学連携・知財・大学からのスタートアップ創出に関する調査

以上により得られた情報や分析結果に基づいて、各課題や担当各課の枠を超えてプロジェクト参加者全体で、定期的に、各リサーチクエスチョンにおける仮説の検証について議論するとともに、新たなリサーチクエスチョンやそれに伴う仮説が生じた場合は、可能な範囲で、追加の調査研究を計画し実施する。これを繰り返すことにより、研究支援の基盤構築のあるべき姿、ならびにそれに向けた施策のあり方について検討する。

研究進捗の概要

  • ・ランダムに抽出された科研費の代表者に対して質問紙調査を実施、研究成果の論文刊行を加速化・遅延化させる要因について質問論文刊行を加速化する要因として、優秀な研究者の確保(40.6%)に次ぐ2番目に、施設・機器の利用(35.7%が挙げられた。

  • ・研究設備・機器の共用は、他の政策領域や個別大学を超えた取組みへの広がりを持つため、これに関する調査・分析・政策提案を目指し、文部科学省4課合同参画プロジェクトを構築

  • ・共用設備のユーザーである研究者自身の視点から共用の状況や技術人材に対するニーズを明らかにし、現場の実態に基づいた研究基盤の現状把握を行うために質問紙調査を実施したところ、80%の研究者が共用機器を利用したことがあり、共用で利用頻度が高い機器の価格帯は1000-5000万円であった。

  • ・研究設備・機器の共用の波及効果に関する調査として、ディープテックスタートアップの研究開発従事者を対象に研究開発現場の実態についての質問紙調査を実施、59%が研究設備の不足を、41%が研究場所の不足を、スタートアップならではの課題として挙げており、74%が自社以外のラボ拠点を活したことがあった。

  • ・大規模な産学連携プロジェクト拠点のうちOPERAを中心に、OPERAの採択終了後あるいは採択中に共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)や地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)等の事業に新たに採択された拠点を対象にインタビュー調査を実施、拠点形成事業の採択、運営実績が大学組織のトランスフォーションとその後の事業組成・運営にポジティブな影響を与えている一方で、残念ながら民間資金導出スキームは後退していることが確認された。

  • ・研究支援人材の現状と育成されるべき能力についての調査として、執行部/マネジメント層を対象とした質問紙調査およびインタビュー調査を実施したところ、多くの大学で採用・評価・キャリアパス構築に関する課題が確認されたため、評価制度に好事例があるURA組織を対象としたインタビュー調査を実施評価については期⾸に⽴てた⽬標の達成状況で評価する⽅法が主流である一方で、URA 実務者の評価結果の処遇への反映には課題が残されていことが示唆された。

  • ・米国大学では、企業との共同出願特許は少ないもののその特許価値が高く企業との共同出願は大学発のスタートアップ数と負の相関関係にあることが示唆された。

  • ・これまでに、我が国の中規模研究設備整備・開発・運用支援に関する提言にも協力し、今後も関連する調査を進める予定。

主な成果発表実績

  • ・隅藏康一(2024)「研究設備・機器の共用による研究・イノベーションの促進に向けて」、研究 技術 計画 Vol.39 No.1, 巻頭言、202465.

  • ・小林令奈・渡邉万記子・隅藏康一(2024)「米国大学における企業との共同出願特許の分析」、日本知財学会第22回年次学術研究発表会予稿集, 370-373. 小林が学生優秀発表賞を受賞(2件選定されたうちの1件)

  • ・隅藏康一「研究設備・機器の共用による研究・イノベーションの促進に向けて」、第17SciREXブラウンバッグセミナー、2024523.

  • ・隅藏康一「研究基盤・技術人材に関する研究者のニーズ」、文部科学省マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)第14回加工WG会議、2025327.

  • ・科学技術・学術審議会 学術分科会 研究環境基盤部会(第118回、2024620日開催)の「(1)中規模研究設備の整備について」において、本プロジェクトが協力して作成した「中規模機器検討WG:大学や研究所を新たな価値を創造する研究の場として機能させるために必要なこととは?」が報告された。
  • 本プロジェクトで実施した会議をきっかけとして第50SciREXセミナー「先端研究基盤・研究インフラのエコシステム形成へ向けた課題─開発・実装・利用成果創出の循環実現へ─」(20241121日)が開催され、本プロジェクトから隅藏代表および環境課(当時)熊本氏が登壇、その様子が広報誌SciREX Quarterlyにて紹介された。
    ​ ○第50SciREXセミナー https://scirex.grips.ac.jp/events/archive/241018_3089.html
     ○SciREX Quarterly 27号「第50SciREXセミナー 開催報告 ⾰新と成⻑の源、⽇本における
      研究インフラのエコシステム形成」https://scirex.grips.ac.jp/newsletter/vol27/01.html

共進化に向けた取組とその効果

  • ・本プロジェクトでは、12か月に1回程度のPJ全体ミーティングの他、個別のテーマでのミーティングを随時開催。研究者、行政官、学生など多様な立場のメンバーが参加、意見交換を重ねることで信頼関係を構築している。

  • ・ミーティングでは、担当4課で相互に関連している内容について、それぞれの立場に基づく多様な観点で意見交換し、新たな視点での課題の抽出や改善を検討している。

  • ・各テーマでも少人数で研究者と行政官が率直な意見を交換している。

  • ・各ミーティングでは研究者による研究成果発表のみならず、行政官からの発表や情報提供も適宜行われている。

  • ・本プロジェクトとの共催としてGRIPSで開催した意見交換会では、政策リエゾンも参加し、情報共有を行った。

  • ・全体ミーティングに参加できなかったメンバーとも情報共有ができるように共有シートを作成し、適宜メールにて共有している。

  • ・元インターンでもある海外在住の日本人の学生・若手研究者に、第1フェーズ・第2フェーズに引き続き研究に関与してもらうことにより、マルチディシプリナリーな科学技術イノベーション政策研究の人材を育成している。

  • ・これらにより、研究者・行政官ともに、新たな視点での課題の抽出や改善についての気づきを得ている。

  • ・文部科学省の4つの課が参画していることを活かし、各課の管轄案件の壁を越えて自由な立場で研究プロジェクトのメンバーとしての意見を述べてもらうことにより、文科省内の他部署との関係形成に寄与するのはもちろんのこと、4課すべてに関係するが現在はどこも扱っていない新たな政策課題の発見や、長期的・間接的な政策形成につながるテーマの発見に貢献することを目指す。

研究成果・資料

※現在準備中です。