タイトル | TLOとの関係は⼤学の技術移転収⼊にどのような影響を与えるか︓日本のサーベイデータを用いた実証分析 |
英語タイトル | How Does the Relationship with Technology Licensing Organizations Affect the University's Income from Technology Transfer? An Empirical Analysis in Japan |
著者名 | 池内 健太, 林 侑輝, ⼭⽥ 仁⼀郎, 清水 勇吉, 坂井 貴⾏ |
キーワード | TLO、産学連携、特許ライセンス、独立性、近接性 |
発行日 | 2023年9月 |
出版者 | 政策研究大学院大学 科学技術イノベーション政策研究センター |
シリーズ番号 | 2023年 第1号 |
URL | https://doi.org/10.24545/0002000006 |
シリーズ名 | 政策研究大学院大学 科学技術イノベーション政策研究センター ワーキングペーパー |
概要 | 本稿は、2023年6月に『組織科学』誌に掲載された英語論文を、日本の読者の便宜のために、一部加筆修正のうえ日本語に翻訳したものである。
本研究では、技術移転機関(TLO)を組織構造に基づいて3タイプ(内部型・外部一体型・外部広域型)に分類し、その違いが大学の技術移転パフォーマンスに及ぼす影響を分析した。これらのタイプが異なれば、(1)大学からのTLOの独立性と、(2)大学の研究者とTLOとの近接性に違いが生じ、技術移転パフォーマンスにも差をもたらすと考えられる。本研究では、TLOの独立性は外部広域型>外部一体型>内部型の順に高く、研究者との近接性はその逆であることを仮定している。
文部科学省が公表している「大学等における産学連携等実施状況について」(産連調査)に基づくパネルデータ(2018〜2021年度の4年分)を用いた実証分析の結果、次のようなことが明らかになった。
第1に、大学と別の法人として設立される「外部型」と、大学組織の一部である「内部型」との比較では、前者を利用する大学の方が高い特許ライセンス収入を示す。これより、大学の官僚的な制度や意思決定プロセスからの独立性を確保することでTLOが自律的な経営を行いやすくなり、結果として大学の技術移転パフォーマンスの向上に繋がる可能性が示唆される。
第2に、特定の大学と一対一で提携する「外部一体型」と、複数大学のハブとして活動する「外部広域型」との比較では、小規模な大学ほど前者を用いる利点が大きかった。その要因として、外部広域型は3タイプの中で大学からの独立性が最も高く、規模の経済性も発揮しやすいが、主要な大学以外の研究者との近接性が犠牲になりやすいことが考えられる。
上記の分析結果に基づくと、政策担当者の大学の経営陣および産学連携担当部門には、TLOのタイプについて普遍的な最適解を探し求めるのではなく、独立性と近接性のバランスを勘案して適切な方法で技術移転を推進する姿勢が求められる。とりわけ、経営資源に限りのある大学では、既存の外部広域型TLOを利用する(産学連携業務をアウトソースする)インセンティブが強く働きがちであると考えられるが、それが必ずしも最適な手段であるとは限らないことに留意すべきである。 |