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成果・資料

[SciREX-WP-2021-#04] なぜ科学技術は貧困を解決できないのか?――問題は「普及」にある (フルバージョン)

タイトル

なぜ科学技術は貧困を解決できないのか?――問題は「普及」にある
(フルバージョン)

英語タイトル

Takeaways and Policy Recommendations, Global Solutions Summit 2018

著者名

アルフレッド・ワトキンス, 飯塚倫子

キーワード

SDGs, ラストマイル, 技術普及

発行日

2021年12月16日

出版者

政策研究大学院大学 SciREXセンター

シリーズ番号

SciREX-WP-2021-#04

URL

https://scirex.grips.ac.jp/resources/2021/32dbc89d6434437f346c80c7725920e61dd271a1.pdf

シリーズ名

SciREXワーキングペーパー

概要

実用可能で安価な科学技術の普及は途上国の「ベース・オブ・ピラミッド(BOP)」と呼ばれる人々の問題解決に非常に重要です。また、このような技術の普及は持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)達成にもつながります。ここでは、技術の普及に重要なコンセプトとしてラストマイル、規模の拡大、技術普及のためのエコシステム、資金の経路、所得の創出をあげて、その役割や重要性を示しました。
まず、ラストマイルとは本来、消費者の近くの水、下水、電力、通信などの供給網に対するアクセスを意味していましたが、途上国の低所得コミュニティではこのような供給網にアクセスすることは非常に難しいのです。しかし近年、屋上ソーラー発電や浄水施設小屋などの「小規模分散型技術」の普及によってより低いコストで「ラストマイル」の問題を解決に効果をあげています。また、絆の形成、橋渡し、連携による社会資本構築が脆弱なコミュニティで開発策の普及を成功させるための不可欠な要素です。
プロジェクトの規模を拡大させるのに必要な条件は、最初から技術普及プログラムに組み込み、具体的かつグローバルな視点からプロジェクトを策定し、その目的に何が必要かを見極め、必要な技術、資金、人材、パートナーシップ、政治的支援、その他の資源を確保するための戦略を立て、実施することです。さらに、「普及のエコシステム」を構成する多くの多様な組織と連携する能力が必要です。
技術普及のためのエコシステムには技術の普及に関わるアクター同士が、目的に向かって協力できることが必要です。アクターにはコミュニティ、科学者、技術者、技術提供者、起業家、出資者、NGOと社会的企業(ソーシャルエントレプレナー)、人道支援組織、行政、二国間および多国間開発機関が当てはまります。これらのアクターが互いの存在を理解し、協力し合えるようなプラットフォームを開発すること、現地組織、機関、個人の能力向上し、普及プロセスに参加できるようにすることが重要です。
資金の経路とは、投資させた資金が具体的なプロジェクトが活用しやすい額、必要とする人に行きわたらせることです。そのためには、信用保証の供与とフランチャイズ・システムが重要な要素となります。
所得の創出は「貧困レベルの所得」と「生存所得」との差を埋めるために不可欠です。そのために、利益を上げやすいフォーマルな市場への参加を促すことで、各世帯やコミュニティの所得を向上させることが重要です。
つまり、技術の普及を成功させるには「共有する価値観に基づいた包括的なコミュニティ開発」に基づいた政策が必要であり、そのために意欲のあるリーダー、柔軟な管理体制、コントロールのための戦略的なビジョン、進捗を追跡するシステムが求められます。そして、技術普及がうまくいけば収入向上と好循環させることができます。

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