成果・資料
【CRDS】第2回「科学技術イノベーション政策の科学」構造化研究会議事録
第2回「科学技術イノベーション政策の科学」構造化研究会平成24年8月2日(木)
○己斐 それでは、時間になりましたので、そろそろ始めさせていただきます。
皆さん、きょうはお暑い中をお越しいただきありがとうございます。第2回「科学技術イノベーション政策の科学」構造化研究会を始めさせていただきます。
私は、司会を務めますJST-CRDSフェローの己斐と申します。本日はどうぞよろしくお願いします。
それでは、初めにJST-CRDS上席フェロー、黒田昌裕より開会のごあいさつを申し上げます。
○黒田 皆さん、こんにちは。ご紹介いただきました黒田でございます。きょうは本当にお忙しい中、かつ猛烈なこの暑さの中、お集まりいただいて本当にありがとうございました。
この会は、CRDSのプロジェクトで動いておりますけれども、今回が2回目でございます。SciSIPを進めてきて約2年弱になるんですが、少しずつ体制が整いつつありまして、さらに極めなければいけないところ、これもだんだんはっきりしてきたということだろうと思います。ただ、最近の例えばエネルギーのオプション政策の選択の議論や何かを報道で見聞きしていますと、本当に政策オプションというのはあんなものだろうかと、あれで国民の合意形成が本当にできるのだろうかと、だれが本当につくった合意形成に責任を持つのだろうかという気がいいたしまして、そういう意味では、SciSIPの重要性というのはますます高まってきているんじゃないかという気がしています。
1回目に相当、このSciSIPはどういう意味を持つのかとか、政策科学としての科学のクエスチョンは何なのかというようなことを中心に、1回目の議論は相当していただきました。きょうは、大きく二つテーマが分かれておりますが、1回目の議論を踏まえて、今、盛んに行われています政策オプションというのは、一体、どういう役割をSciSIPの中で果たすのか、どういう形でつくっていけば、本当に真の意味での国民の合意形成に役立つような政策オプションができるのかというようなことを一つ目で議論をいただくと。そのためには基本になるようなデータベースみたいなもの、これもかなりの大きなデータベース、ビッグデータだと思いますけれども、それをどうやってつくっていくかというようなことも、当然、話題になってくるのかなと思っています。
二つ目の大きなテーマは、その政策オプションを使って、まさに政策形成の合意をどうやってつくっていくかという、このプロセス自身も一つのサイエンスの大きなテーマだと思います。そのサイエンスがどういう必要十分条件を満たさなければいけないのかというサイエンスクエスチョンをまさに議論していただいて、将来につなげていくというのが二つ目のテーマだろうと私自身は考えています。
3時間という限られた時間でございますけれども、ぜひ、活発にご議論いただいて、本推進委員会でのSciSIP指針の議論にも、ぜひ、つなげさせていただきたいと思います。本日はどうかよろしくお願いいたします。
○己斐 ありがとうございました。
それでは、続きまして、文部科学省科学技術・学術政策局長の土屋定之様より、ごあいさつをいただきます。
○土屋(文部科学省) ご紹介いただきました文部科学省科学技術・学術政策局長の土屋でございます。きょう、お集まりの先生方、いつも大変お世話になりましてありがとうございます。
ご案内のとおり、今は8月ということで、霞が関では来年度の予算の議論が中心になっております。いつもと違うのは、国会もやりながら予算の検討ということですが、予算は新政策のベースとなりまして、新政策の議論をあわせて行っているところなんですが、なかなか、この議論が難しくて、予算がなかなか伸びないということはもちろんあるんですけれども、日本が厳しい国際競争の中でどんどん埋没化、国際競争力を低下させて、非常に難しい状況になっていると、こういう中で新しい政策をどう打つかといったことを議論しているわけですが、昔だったら経済効果がどうかとか、雇用効果はどうかとか、あるいは国民生活にどう影響するか、このあたりの議論で大体尽きていたんじゃないかと思います。
ただ、こういう状況になってくると、日本がどんどん低下傾向にあるのをここで歯どめを起こして、もう一回、Ⅴターンでもないですが、もとへ戻すためにはどうやったらいいのかといったようなことも議論の対象になってくるわけですね。こうなってくると、どの政策をどうとっていいか、プライオリティをどうしたらいいのか、どういう課題設定をしたらいいのか、非常に難しくなってきまして、形として把握することができるものはまだいいわけですが、さっき、私が申し上げたような国際社会の中の日本のプレゼンス、あるいは日本のブランドみたいなことまで考えねばならないということになってくると、非常に難しくなってきます。
そういうことを踏まえると、ますます、SciSIPの重要性が非常に高くなってくるというか、一日も早くでき上がることが大事じゃないかと。さっき、黒田先生がおっしゃいましたエネルギー問題で、国会の周辺で毎週、物すごい数の方が集まってデモしたり、何かされているわけですが、なかなか、この議論がかみ合わないのも昔ながらの議論なので、ぜひ、そのためにはSciSIPは必要かなと思っています。
もう一つ、SciSIPのことを考えれば考えるだけ難しくなるのは、例えば経済効果一つをとっても、これだけ経済社会構造がどんどん変化しているわけで、今の状態がそのまま動かないで、10年、20年、変わらなければ効果も把握することは容易かもしれません。どんどん変わってくるわけですね。同じものの投資一つにとっても、その効果は変わってくるということを考えてくると、なかなか解がないようには思うんですが、私はユーザーの立場で早く先生方に頑張っていただいて、SciSIPをとにかくつくり上げていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いします。また、各大学におかれましては、また、科学技術イノベーション政策の専門家の育成といったことにも取り組みをお願いしておりますが、こちらもあわせてしっかりとした取り組みをまたよろしくお願いしたいと思います。
お願いばかりして恐縮ですが、以上で私のごあいさつを終わらせていただきたいと、どうも失礼しました。
○己斐 ありがとうございました。
○有本 司会者になりかわり、私がコメントを私が全体のあれですから。
もともとSciSIPの予算はなかなか立ち上がらないだろうと思ったんですけれども、土屋局長が物すごく頑張って、もう一人、政治家としては当時、副大臣でスズキカンさん、この二人が相当頑張られて、今、物すごいスピードで走り出したということは、ファンディングファーザーとして尊敬もすべきだし、責任もあるということでよろしくお願いしたいと思う、来年度も相当いろいろ、今、考えていただいたり、きょうの話題の特に政策オプションのところについては、相当、局長も力を入れて一緒になって、局長もどこかの大学に入ってドクターを取られたらいいんじゃないかという気がしますね。ちょっと横に入ってすみませんでした。
以上です。
○己斐 では、続きまして、政策研究大学院大学の後藤晃様よりも話題提供していただきます。
○後藤(政策研究大学院大学) ご紹介いただきました政策研究大学院大学に勤めております後藤と申します。私はこの春まで5年間、役所に勤めておりまして公正取引委員会の委員をしておりまして、独禁法の施行に当たっていたわけなんですけれども、長野裕子さんのほうから、そういう学者が行政の中に入ってやったということを経験しているはずだから、研究と政策について何か話しなさいと言われまして、長野さんから言われると、なかなか、断れる人はいないと思うんですが、ない知恵を絞って少し考えて、15分で話題提供というようなフォーマットで余り話したことがないので、どういう話をしたらいいのかなということがよく検討がつかないので、とんちんかんなことを言うかもしれませんけれども、お許しいただきたいと思います。
大体三つぐらい関連したような話をしたいと思いますが、まず、第1番目はSciSIPの話をするときは、マバガのことから始めるのがいいかもしれませんけれども、マバガさんは残念なことに亡くなれたそうですが、五、六年前でしたか、ヘルシンキのGFSのときに、終わりに1対1で話すことができまして、そのときにいろいろと彼が何でこういうことを一生懸命やっているのかという話を聞いて、私は必ずしも同意できない点も少なくなかったんですけれども、なかなか、興味深いことをいろいろと言われていたと思います。
彼が一番強調していたのは、科学技術政策研究の現状というのは極めて不十分だということ、特に社会科学寄りの科学技術イノベーション政策研究の現状というのは非常にお粗末で、言ってみれば使い物にならないんじゃないかというようなことを非常に強く彼は言っていて、さらにそういう社会科学で科学技術イノベーション政策をやっている人をばかにするんじゃなくて、励ましてもっとちゃんと研究しろと言わなければいけないんだというようなことを盛んに、そういうふうに彼が非常に思ったことの一番の大きなきっかけというのは、大統領の科学アドバイザーとして閣議なんかで大統領から、こういう問題についてどう思うかというふうなことを聞かれるというんですね。
例えば税制の問題について大統領が経済のアドバイザー、シリアの委員長だと思いますけれども、にこういう税制改革をしたらどういう効果が出るのかというようなことを経済のシリアの委員長に聞くと、シリアの委員長は非常に洗練されたモデルとデータをもって、こうこう、こういうふうになりますというようなことをとうとうと言う。次に、大統領が私のほうに向かって例えば物理学に研究費を投下した場合、社会にどういうふうな影響が出るのかというふうなことを私に大統領が聞かれるんですけれども、それに対して私は答えるすべがない。データもないし、理論もないし、非常に恥ずかしい。単に暗やみに鉄砲を撃っているような状態で、極めて恥ずかしい思いをしているんだということ、それが彼の何か原体験といいますか、もうちょっと、こういう分野の研究を促進しなければいけないと思った非常に大きな理由のようであります。
もう一つ言っていたのは、現在の科学政策というのは、何十年前かの研究でノーベル賞をもらった人とか、元有名な大学の学長とか、そういう人たちが非常に大きな役割を果たしているけれども、こういう人たちは政策については何ら知見はないので、こういう人たちが中心になって科学政策なんかを進めることは間違っているんだということを盛んに、政策を学問分野としてきちんと確立して、それを学んだ人が政策形成の議論の中心的な役割を果たすべきだということを彼は非常に主張していたんですね。
それから、現在のデータについても非常に不満があって、例えば研究費対GDP比率とか、論文の数とか研究者の数とか、そういうものが中国と比べて、ああだ、こうだ、言っても何の意味もない、アドボカシーの道具としては、そういうのは使えるかもしれないけれども、理論的な根拠も何もなくて、データ構造が古くて、現実のダイナミックな変化に対応していない。データについても非常に問題が多いというようなことを彼は言っていたわけであります。
それで、現在の状況であれば大量のデータセットと強力なコンピュータを用いて、もっと進んだ政策研究ができるんじゃないか。彼自身は何か気候変動の専門家、昔はそういう研究をやっていたそうで、それが頭に随分あるということのようでした。そういうところがマバガさんの意識の中に非常に強くあって、これは、ぜひとも、こういう分野の研究を促進しなければいけないんだというふうに思ったということのようです。
このとき、割におもしろかったのは、そういうような議論に対して、私は彼の話をその後、ジョージアテックでも講演したのを聴衆の一人として聞いたことがあるんですけれども、ジョージアテックでも同じような話をしていたんですが、それの話を聞いていた、スプルールの前に所長をやっていたベンマーチンなんかが、ヨーロッパでは科学技術イノベーション政策なんていうのは非常に学問分野として確立していて、そういう研究所がたくさんあって、論文もたくさん書かれていて、アメリカではそうかもしれないけれども、ヨーロッパではもっと進んでいるんだということを盛んにベンマーチンは言っていた。
でも、考えてみますと、スプルールもプレストも今やビジネススクールの一部分になっていて、なかなか、科学技術イノベーション政策研究というのは、盛んだと言っていたヨーロッパでも下り坂にあるような雰囲気、象徴的だと思いますのは、スプルールがフリーマンセンターから追い出されるという話で、クリス・フリーマンの名前がついたビルからスプルールが追い出されるというのは、非常に象徴的な出来事じゃないかと思う。
そういう意味で、ヨーロッパでもそれほど下り坂にあるのかな、その一つの背景は私はマバガが言っていたように、ヨーロッパなんかで言われている科学技術イノベーション政策研究はたくさんやられていると言われても、その研究の質ということをよく見てみますと、それほど大した研究はなくて、論文の数は多いんですけれども、リサーチポリシーなんかに大量に書かれている論文の中で、本当に意味のある研究というのがどれだけあるんだろうかという気がします。マバガはまさにそういうヨーロッパの研究なんかレベルが低くて、使い物にならないというようなことも、暗に言っていたんじゃないかというふうに思います。
これが私の話題提供の第1番目でありまして、それから、2番目はこれも関連した話でありますけれども、公取での経験を話すようにということでしたので、私はもともとは産業組織論という分野の経済学を研究していたわけでありますが、独禁法の執行に5年間、携わって、その研究と実際の法律の執行の関係ということについて、どういうふうな感想を持っているかということでありましたけれども、改めて考えてみますと、公正取引委員会の仕事というのは、談合とかカルテルとか、私的独占とか合併とか、そういった個別の事件に独禁法を当てはめていくというのが主な仕事なわけですけれども、その過程で意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、経済学というのはいろんな局面で使われているわけであります。
例えば事件の審査をやっていく上で、一番最初に市場の確定というようなことをやるわけですが、例えば合併を審査するとき、新日鉄と住金の合併を認めるべきか、認めるべきでないかというようなことを審査するわけですけれども、それをやるためには、両社がもし合併したら、将来、市場での競争がなくなってしまうんじゃないかという、そういうことが起こるか、起こらないかを審査するわけなんですけれども、そのためには市場というのがそもそも何なのかというのを確定しなければいけない。
鉄鋼会社ですから比較的少ないですけれども、それでも例えば鋼矢板とか棒鋼とか電磁鋼板とか、たくさんの製品をつくっているわけです。ですから、製品を確定するかということが非常に重要になってくる。よりはっきりわかりやすいのは、インスタントラーメンの会社の日清と東洋水産でしたかの合併のケースがありましたけれども、あれも両社が合併した場合に、競争にどう影響が出るかというか、どの市場での競争を見るのかということが大事になってくる。そうすると、市場としてはインスタントラーメンの市場というふうに市場を確定するのか、カップヌードルの市場というふうに確定するのか、あるいはうどんとかそうめんとか、そういうのを全部入れて、めん類の市場というふうに確定するのかというので、結果は全然違ってくるわけですね。市場を広く確定すればするほど、競争に対する影響は小さいということに必然的になってくるわけ。
しかし、土俵をどうやって適切に設定するかというのは、極めて重要な第一歩になるわけですけれども、その場合にスニップテストという経済学を使ったやり方で市場を確定するということをやっています。これは世界のどこの独禁当局も、基本的にはこの考え方で市場確定をやっているわけです。そういうように割に経済学が活躍する場が多い。それから、世界的な独禁当局の現場でも、経済学を中心的に物事を考えていこうということが、非常に主張されているところであります。
このことは、必ずしも経済分析を中心に考えるということは、経済的な効率性のみを判断の基準に使うということではありませんで、独禁法の施行には効率性以外にも例えば公平性とか、それから、余り大っぴらには言いませんけれども、中小企業の保護とか、あるいは公正性とか、そういった価値観も当然重要な考慮要因になってくるわけですが、往々にして、そういう中小企業保護なんていうのは、政治家のほうから非常に強く、そういうことをやるようにというふうな主張が来ますので、そういう場合にでも経済分析を一応まず徹底しておいて、そこで、公正性とか中小企業の問題とかいうのを考えるというふうにしていけば、議論がごちゃごちゃにならないで非常にいいわけです。そういう意味で、経済学が非常に独禁法の現場では広く使われていると。
それと、もう一つ、経済学を独禁法の現場で使う意味というのは、世界じゅうの人が経済学を使うと、世界の当局とか、世界の企業の人とかが基本的に同じ言語で話をすることができる、それから、研究者も行政の人も、みんな、弁護士も経済の言葉と経済のロジックで、同じ土俵の上で議論をすることができますので、これが非常に重要なことで、現在、何からの競争法を持っている国は100カ国近くになっておりますので、グローバルにビジネスを行う企業なんかにとっては、非常に大きな問題になっているわけなんですけれども、こういう共通の言語で共通の問題を議論できるということは、競争法のハーモナイゼーションなんていうことをやっていく上では、一番重要なファーストステップになっているわけです。
多くの国で独禁当局にはチーフエコノミストという人がいて、それから、チーフエコノミストの下に経済分析がかなり大きなセクションがあってやっています。そこのチーフエコノミストは、アメリカでもヨーロッパでも極めて有名な大学の研究者がやっているというのが現状です。一流の研究者が行政の現場にいるということ、それから、経済学のPh. Dを持った人が、特にアメリカの場合は何百人もいかないかもしれませんが、何十人単位でいますので、非常に議論がしやすいということがあります。そういう意味で、研究の場から行政への知識の移転ということを考えますと、研究者が実際に行政の場へ行くということを通じて、極めて有効な効果的な技術移転ができるということになります。
最後に、今のような話を少しまとめた感想みたいなことをほんの一、二分で述べたいと思いますけれども、研究と政策ということを考えるときに、まず、研究の重要性というのは先ほどの市場確定のときにスニップテストを使うと言いましたけれども、そういう分析のツールを提供するということがあって、これは非常に見やすい、わかりやすい話だと思います。
2番目に、より重要なのは研究によっていろいろな問題に対する政策課題とか、そういった問題に対する理論的理解ができると。理論的に理解した上で、政策を打つことが可能になってくるということであります。ですから、政策を構想するときに、外国ではどういうふうな形で対応されているか、そういうことを調べることが多いわけですけれども、その際に、外国でとられている政策について理論的な理解というのがきちんと行われた上で、それを日本に取り入れるということをすれば、効果がない政策とか、あるいはマイナスの効果しかない政策をやるというようなことを回避することができる。そういう意味で、理論的な解明をするということが極めて重要な研究の貢献になるのではないか。
ただし、科学技術イノベーション政策の研究の分野では、その理論的な研究というのは極めて不十分な状態にまだあると思いますので、余り性急にすぐに役に立つ研究を早くしろ、しろということは、かえってマイナスの効果を持たないとも限りませんので、少し長期的な視点から、その理論的研究を推進していくということも大変重要ではないかと思います。
もう1点は最後ですけれども、研究と政策の関係というのは、そのまま研究者とポリシーメーカーの関係というものとオーバーラップするところがあるわけであります。研究者とか行政官とか政治家とかは、それぞれ固有の目的とかインセンティブ体系とか文化とかを持っていますので、その三者が政策的な問題について対話を行うということは、それほど容易なことではない、極めてむしろ難しいことであろうと思います。
ですから、研究者と行政官と政治家という三者が互いに学び合って、共振化していくというようなことが非常に重要だと思いますが、日本では先ほど言いましたように研究者が行政の現場に行くということもありませんし、また、行政官で社会科学の大学院教育を受けている人も余りいないというような状況ですので、相当、力を入れて研究者とポリシーメーカーの間の交流というのを図っていくことが、極めて重要になってくるのではないかというふうに思います。その意味でも、今回の文科省のSciSIPというのが、こういう研究者とポリシーメーカーの間のダイアログを深化させていくということに貢献してくれれば、大変すばらしいのではないかというふうに考えております。
以上で私のお話を終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
○己斐 後藤先生、ありがとうございました。
それでは、研究会の本編のほうに入っていきたいと思うんですけれども、まず、セッションⅠ、「「科学技術イノベーション政策の科学」の成果の政策実装:政策オプションの具体的検討に向けて」と題したセッションに入らせていただきたいと思います。
セッションⅠは、2部構成で行わせていただきます。前半にテーマ1といたしまして、「政策課題の設定とオプションの作成に向けて」というタイトルで、そもそも政策オプションとは何であるか、また、政策オプション作成の出発点となる政策課題をいかに設定するかというところから、社会経済影響予測の方法といったところまで、作成に関する工程の内容についてまず議論したいと思います。後半のテーマ2では、政策オプションの実際に効果的なオプションを作成して、活用していくためのプロセスに焦点を当てまして、そこでいかに中立性であるとか、透明性を担保するか、あるいは政策オプションの作成と成果の活用をほかの政策の科学の推進事業といかに連携させるかといったことを議題としたいと思います。
この二つのテーマは、議論の中で内容的にまざってしまうこともあると思うんですけれども、可能な限り、分けて議論することを心がけていただけると幸いです。各テーマのディスカッションの前には、CRDSのほうで論点整理を行いまして、その後、有識者の先生方にコメントをいただきまして、その後にフリーディスカッションの時間をとりたいと思います。では、よろしくお願いします。
では、最初のテーマ1に入る前に、文部科学省科学技術・学術政策局政策科学推進室室長の山下恭範様より、文部科学省におけるこれまでの検討事項についてご紹介していただきます。
○山下(文部科学省) 今、紹介いただきました山下でございます。ご説明したいと思います。お手元にもプレゼンテーションの全く同じものがございますが、7月中旬に政策のための科学の推進委員会のほうにもご説明させていただきました内容ではございますが、まず、今、文部科学省が考えている、検討していることをご説明したいと思います。題名は、「事業全体を牽引・主導するための仕組みの必要性について」ということでございます。
次のスライドをお願いします。そこで、三つ問題意識と論点をピックアップしてございます。
まず、一つ目が実は23年度、昨年度からプログラムが四つ走ってございまして、すべて順調に進んでいると思ってございますけれども、なかなか、プログラム間で具体的な連携や協力を図る仕組みが現時点では必ずしもないというふうにとらえてございまして、事業全体に共通する目標を設定するということが必要でないかというのが一つ目の論点でございます。
二つ目が徐々にプログラムでいろんな成果が出つつあるところもありますし、これからというところもございますが、これを実際、政策の場に生かしていくという仕組みが必ずしもないのではないかと。個々のプログラムでもちろん、ご努力いただいているところはあるんですけれども、全体として政策形成に生かす仕組みがないのではないかということで、このために新しい仕組みを検討する必要があるんじゃないかというのが論点②でございます。
③は論点②と連動していますが、そういったものをどのような形で、どのようなタイミングできちんと示していくのかということについての工程表をつくる必要があるというのが三つ目の論点です。
まず、一つ目の論点の事業全体の目標設定でございますが、三つ大きく整理させていただいております。
これまでも種々議論がございましたけれども、一つ目の目標が下線で引いている部分でございますが、まず、科学技術イノベーションによって解決すべき課題を科学的な視野から発見・発掘すると。先ほど後藤先生のお話の中でもいただいた部分でございますが、ここは実は意外とと申しますか、非常に難しい部分でございまして、社会の今の現状からきちんと課題を見つけ出すということをきちっとしなければいけないということでございます。
目標2ですが、そういう社会の中から見出す課題について、きちんと課題解決をしなければいけない政策課題を同定し、その政策課題に対してとり得る政策と経済的・社会的波及効果及びその影響の分析結果を束ねた形で、複数の政策オプションとして立案できるようにするということを目標2として書いてございます。詳しくはまた次のページでご説明したいと思います。
目標3は、そういう政策オプションを実際の政策の決定あるいは実施に生かしていくことによって、実際に課題を解決するための取り組みの充実を図るということでございます。
それでは、政策オプションという言葉を出しましたけれども、これは何なのかというのを少し図式化してみたものがこれでございます。まず、政策課題、これはいろんな階層、レベルでとっていくことができると思ってございますけれども、その課題に対して実際には行政の手段が多いとは思います、それ以外にもあると思いますが、さまざまな政策手段というのをとり得るのかなと。その政策手段を実際にどの程度、政策課題の解決あるいは達成に向けて実現できたかという指標になるのが目標だと思っていますが、そういったものを束ねて、複数につなぎ合わせてみたものをとり得る政策というふうに定義をしておりまして、そのとり得る政策を実際に決定あるいは実施していくと、それによって経済及び社会にどのような波及効果あるいは影響があるのかというのを分析していくと。その分析結果と合わせて複数の選択肢によって政策を示すというものを政策オプションと、このように定義づけをしてございます。
具体的に、そうしたら、そういうものをつくっていくというためには、どういう仕組みが必要なのかというのを論点②、論点③ということで書かせていただいてございます。そのために新しいプログラムを立ち上げたいというふうに文部科学省では考えてございます。また、それに向けて工程表をつくるということでございますが、まず、重要な点としましては、今、真ん中に書いてある周りに四つの既存のプログラムがございますが、まず、この既存のプログラムはきちんとこれまでどおり進めていくというところを踏まえて、その成果をきちんと政策オプションづくりに生かしていくというために、一つ、このセンターというものを立ち上げると。そのセンターの中に、具体的に政策オプションをつくるための政策課題ごとに検討チームを設けて、実際に政策オプションづくりを行政官と研究者と産業界が連携してつくっていくと、そういう仕組みを新しく講じていけないかなということでございます。
まだ、ここは十分検討・議論ができてございませんが、そのためには恐らく機能としては大きく四つぐらい、機能が必要ではないかなと思っております。左上から、まず、科学とか技術の現状をきちんと把握して、将来、どのようにそれを生かしていけるのかということをデータとしてきちんと示していく舞台、あるいは恐らくR&Dという視点だけではなくて、社会制度もきっと絡んでくる面も多いと思いますので、社会制度面からどういう政策があり得るのかというのをきちんとリストアップしていく舞台。
右上になりますけれども、そういう政策手段を複数、いろいろ組み合わせて考えるわけですけれども、実際、それを実施した際にどのような経済的なインパクトがあるのか、GDP押し上げ効果とか雇用創出とか、そういう点はもちろんあるんですけれども、それ以外に産業構造の変化、もろもろ含めて経済分析を行う部分、右下でございますが、経済分析に合わせて実際に社会への影響という意味でいいますと、社会的な側面の分析も重要だなと思ってございまして、ここは必ずしも定量的な分析のみではないと思っていますが、そういう社会的な効果を分析する機能、これらをあわせ持って複数の選択肢を束ねてつくっていくという機能になるのではないかなというふうに考えてございます。
では、実際に実はこういうプログラムを今、25年度から開始できないかなということで検討を進めているんですが、検討していくためには24年度から実質的に作業できるところは作業していきたいと思っておりまして、FSという形で少し検討を始めていきたいなというふうに思ってございます。ここでは、主目的としてはまず政策オプションをそもそも立案するために、どのような機能や体制が必要なのか、あるいは政策課題にどういうものを設定したらいいのかということについての目途を得るということが主目的かなと思ってございまして、あくまでFSでは具体的な政策課題というのは、なかなか網羅的にすべてを取り扱うわけにはいきませんので、今はグリーンイノベーション、ライフイノベーションあるいは横断的なイノベーションの人材といった分野から一課題ずつ当たり設定をして、実際にこういうことができるチームを構成できるのか、あるいは体制をつくることはできるのかということの実現可能性のめどを得たいなと思っております。
これはまだまだ今後、詰めていく必要もありますし、政策課題そのものもそうですし、目標設定もそうなんですが、今、我々が考えている政策オプションはどういう例えば構造のものをとらえ、あるいはオプションとしてつくっていくのかということを少しイメージを持っていただくために、あえて少しチャレンジングにつくったものでございます。
例えばグリーンイノベーションの太陽光を利用した革新的術による安定したエネルギー需給構造の実現という政策課題を設定したとすると、恐らくR&Dが寄与することで、実際にそれが市場に適用され、GDPとか雇用に影響し、エネルギー安定の観点から再生可能エネルギーとして一定程度、今以上の役割を果たせるという効果もあると思いますが、それに加えまして例えば気象予測と接続して省エネを促進するといった部分ですとか、あるいは今、既に進んでいますけれども、エネルギーの可視化によって、実際に消費者が省エネをみずからやっていこうというライフスタイルの変革に伴っていくような部分に、技術が貢献できるような要素もあると思ってございまして、そういったものをいろんな政策手段があると思いますが、束ねてオプションとしてつくってはどうかなと。
例えばその次のページ、ライフイノベーションですと、診断治療技術といったものが社会に貢献できると、あるいは高齢者の健康増進に役立つということも期待されますが、それはややもすれば医療費増につながる話ではございますけれども、それに加えて例えばITを導入して、対症療法医療から予知療法医療を導入することで、医療費を削減できるということに技術が貢献できると、そういったこともあわせ持ってオプションをつくっていって、社会制度の面も含めて政策オプションをつくると、こういったことに実際に取り組めないかなということを考えていけないかなということを考えてございます。
以上でございます。
○己斐 ありがとうございました。
先ほど申し忘れましたけれども、今後、一人一人の発表者、コメンテーターの方の持ち時間の終了1分前に1鈴、持ち時間が過ぎると2回、ベルを鳴らせていただきます。
それでは、続きましてJST-CRDS特任フェロー、長野裕子よりディスカッションに向けた論点整理をさせていただきます。
○長野 それでは、論点整理と書いた紙がございます。こちらのほうに基づきながらお話しさせていただきたいと思います。
まず、これからテーマ1とテーマ2に分けて議論を進めていただくわけですけれども、その前に全体の構成としましては、初めに山下室長がいろいろ基本になることはお話しされましたけれども、一応、きょうの研究会の議論をしていく上での頭の整理ということで、構造化ということを考えたときに政策オプションをどう位置づけるのか、また、政策形成プロセスにおける政策オプションの続きをどう考えるのかといったようなことを確認したいと思います。
それから、テーマ1で政策課題の設定そのものをどうするのか、また、その上でオプションの作成に向けて何をすればいいのかといったようなこと、それから、テーマ2のほうでは今度はプロセスですね、政策オプションをつくり、それから、活用するというプロセスを構築するときに、どういったことに気をつけなければならないか、どういった仕組みが必要かと、そういったようなことで、きょうはセッション1のほうは議論を進めていただければというふうに思っております。
まず、振り返りまして「科学技術イノベーション政策の科学」構造化研究会ですけれども、これは文部科学省科学技術政策研究所、それから、政策研究大学院大学、そして、私ども科学技術振興機構のCRDSということで、三者で共同で設置しておるわけでございますけれども、この中で議論する対象としては三つございました。
最初にまず、政策の科学の領域を俯瞰・構造化しようという基盤的な取り組み、それから、2番目、得られる知見・成果を集約・構造化しよう、そのためにどうすればいいのか、3番目に政策形成において活用される、それを考えたときにどういった仕組みが必要か、その構築に向けての課題を検討しようということで、対象を定めておりました。きょうの議論は特に3番目、政策形成における活用というのを政策の科学を知見を目指したときに、どういった取り組みが必要なのかといったことを中心に議論していくというふうに、私どもとしては位置づけております。
前回、第1回目の研究会、これはキックオフ会合ということで開催させていただきましたけれども、そこでは大きく分けて二つあります。政策の科学のまず進化、科学としての進化を目指したときにということで、この中での議論はいろんな議論がございました。政策の科学をそもそもどういうふうに位置づけるかという、かなり幅の多い議論がありました。その中では政策をデザインする構成型への志向ということが語られる一方で、過大な要求があるんじゃないかといったことに対する懸念というのもございました。それから、今度は政策そのものですけれども、科学技術イノベーション政策というのは何なのかということで、その政策を明確に対象範囲というのを特定すべき、また、政策全体をほかの政策とも比べながら、メタ的俯瞰が必要ではないかといったようなお話がございました。それから、実際に研究で取り組むべき課題というのをどういうふうに設定するのかといったことについても種々議論がありました。
二つ目の柱としては、政策形成の活用に向けた仕組みと課題ということで、具体的な政策ニーズ、課題の構造化をどうすればいいのか、また、きょうの議論にもつながりますが、当時は政策メニューという言葉を使っておりましたけれども、そういったものをどう考えればいいのか、また、構造化研究会の一つの試みですけれども、コミュニティの役割と責任、それから、各コミュニティ間の橋渡しというのをどうすればいいのかということで、かなり問題意識のあるようなご議論がなされました。
これが前回の議論でございますけれども、こういったものをまた基盤としながら、次の議論につなげていきたいというふうに考えてございます。きょうは、そういった中で政策形成の活用を目指した科学技術イノベーション政策の科学ということでございまして、政策オプションのイメージ、これは先ほど山下室長のほうからもお話がありましたので、こんなようなものということを前提に議論しようということで書いてございます。
この対象として、まず、社会がどうなっているのかというのを確認しなければならない。この絵の中で一番上のほうにありますけれども、社会を見たときに、まず、社会から科学技術がどう期待されているのか、対応すべき社会的課題は何なのかというのを発見・特定する、その課題に基づいて科学的な発見もあり、技術の発展もあり、また、それだけではなかなか社会が変わらないと、社会システムの変革というのがあって、これらに政策が介入して寄与すると。こういったものが寄与する中で、社会的課題の解決が図られ、イノベーションが起きていくと。その社会の状況が変わって、また、社会から科学技術が期待されていることを把握していくと、こういったことが社会で行われていくと、こういうことを目指すために、下にあります科学技術イノベーション政策の科学がどういう寄与をするかという、真ん中にありますように、そういった寄与に基づいて政策形成が行われて政策実施が行われると、そういったようなことをここで整理しているわけでございます。
次ですけれども、次に政策形成のプロセスにおけるオプションというのを見たときに、これは私どもCRDSでよく使っている絵ですけれども、観察、社会・自然があって、その中から課題を発見・特定し、エビデンスを観察するという観察者がいる。そのエビデンスを集約、蓄積、構造化する構成者と呼んでいますけれども、ここで集約・構造化しながら政策オプションを提言していくというか、この政策オプションを提言していく活動というところが、今回のクローズアップするべき部分である。この作成されたオプションを実際に政策実施のところで、まず活用されるということを意図するわけですけれども、そのときには当然、いろんなステークホルダーの合意形成があって、その政策オプションを活用しながら一種の意思決定がなされて政策実施がなされると、こういったようなプロセスの中で、政策オプションをどう位置づけるかということになります。
次の政策ですけれども、政策にはいろんなレベルが当然ですけれども、包括的な政策もあれば、分野別のポートフォリオ、課題別の政策、それから、個別政策や資金配分の政策があり、個別プログラムのマネジメント政策もあると。こういった政策に関与する者としては、まず、政策形成の実施者としては、政治、行政、それから、資金配分期間、大学、企業と、いろんなレベルで、いろんなアクターが動くはずである、また、そういった政策形成を支える者としては、シンクタンクだったり、アカデミーであったり、いろんな者がまた支えることになるだろうということで、これは議論の土台としてお示しするものでございます。
次に、テーマ1のイントロに入るわけでございますけれども、まず、政策オプションをつくるときにはまずビジョンが示されるということで、そのビジョンを達成するために政策課題を特定するというところが入ります。この政策課題についてどう見るかですけれども、赤いところにビジョンがあります、目指すべき国の姿というのをイメージ化していく。それと同時に左にあります社会変化を、現状を見ながら、今度、どう変化するのかということをまず何もしなかった場合、ベースラインとしてシナリオを見てみる。それを外部環境と見比べながら、また、ビジョンとベースラインシナリオの中でギャップがあると。このギャップを埋めるためにどういった政策が必要なのかということを考えて、政策課題というのを浮かび上がらせると、そういったような活動になるのではないか。その政策課題を見ながら目標設定をし、その目標を達成するための政策手段を複数選んでいくと、そういったようなことになるのだろうという整理をしてみています。
これは一つの取り組みですけれども、CRDSの中で社会的期待を見てみようというグループがありまして、この中で同じことを違う目で書いてあり、ちょっとコンフュージングかもしれませんけれども、現状の社会状況というもの、それから、今後について社会変化をベースラインシナリオを見ていくこと、トレンドと言っていますけれども、ということと、一方で、外側にありますビジョンというのを見比べたときに、この間ということで、どういう対処が必要なのかということをデザインしていくといったようなことになるのではないかというのがイメージでございます。
次ですけれども、次の具体的な社会的課題、これも本当に全く例示ですけれども、例えば環境であったり、資源であったり、災害、食料・飲料水、健康といった形で、いろんな課題というのがあるだろう、これをどうやって構造化してとらえて、どういうふうに重要な政策課題というのを抽出していくかということが課題になるだろうということです。
次ですけれども、科学技術イノベーション政策というのを見ようとしたときに、どういう構造でとらえればいいかと。今まで使ったワードを構造で見せていますけれども、上にまず国の目指すべき姿、ビジョンが、この中で科学技術イノベーションが関係する部分があると。こういったビジョンを見て、達成すべきものとして政策課題があって、政策課題にいろんな課題、震災からの復興ですとか、安全かつ豊かな国民生活とか、いろんなのがありますけれども、また、横軸的にはそれの対象となるような知識、情報、人材、資金、インフラ、組織・体制といったものもある、こういった政策課題がある。こういった科台を達成するための政策目標があって、それを達成するための政策手段があるといった、こんな構造が考えられるのではないか。
次ですけれども、これは例ですけれども、例えばそれに当てはめて科学技術基本計画で構造を見てみると、こういうふうになるのかなということで、これは見ておいていただければと思います。
また、次で今度は環境基本計画、今年度にハンダされましたけれども、で当てはめてみるとどういうふうになるのかというのを私どもで試しにやってみているということです。
次に、今までは課題と目標、政策手段ということで見てみましたけれども、それを社会的経済的影響予測まで入れた全体として、プロセスをどう見ればいいかということを次に整理してみたいと思います。
オプション作成のステップとしては4ステップ、まず、ビジョン、解決すべき社会的課題の明示化、ビジョン達成のための政策課題の設定が一つ目、次に課題対応のための目標の設定、政策手段を列挙、3番目に実際にその政策手段をとったときの社会経済的影響予測の予測の枠組み、予測、そして、最後に全部をインテグレートして提示すると。それらにいろんな過去の政策評価、科学技術水準の俯瞰等の情報を与えて見ていくということになる。大事なのは右側に端っこになっていますけれども、ステークホルダーとの議論というのが非常に重要で、このステップの中で入り込んでいくということだと思いますけれども、そういったステークホルダーの議論というのが重要になってくるだろうと。
その政策オプションのプロセスの中で基盤となるような情報、例えば人材情報、知識生産、産業、経済社会と、こういった情報というのは最初のベースラインシナリオを描くとき、それから、実際、政策手段にはどんなものを取り入れるのかといったことを考えるとき、また、最後、その影響予測をするとき、こういったときに、それぞれ過去のこと、現状のこと、将来のことということをイメージ化しながら、分析していくということが重要になってくるということで出しております。
次ですけれども、これは例示ですけれども、以前に新成長戦略が検討される中で文部科学省の議論の中で使われたもの、ロジックチャートとして科学技術の分野でどういったロジックチャートが描けるか、インプット、アウトプット、アウトカムを考えたときに、どういう世界が描けるかというものを書いてみてございますけれども、こういったものというのは、一つのやり方として例示になるのではないかということです。
次ですけれども、実際にどういったインプット、アウトプット、アウトカムの情報を与えていくか、見ていくかということ、それから、そういったものを与えながら、実際の政策の枠組みとして政策の効果を見ていくかと、こういった予測の枠組み、オプションづくりの枠組みというのをつくった上で、具体的な指標というのを示していく、情報を示していくことが必要だろうということで示しております。
最後にオプションの具体的事例、これは本当の例示ですけれども、例えばということのほうがわかりやすいのではないかということで示していますけれども、分野に限らないような話、例えば人材の問題ですとか、課題解決を目的とした研究開発の仕組み、ファンディングですとか地域の問題、デュアルユースの問題、リスクコミュニケーションといったような政策課題があるかもしれません。それから、分野で見ればエネルギーですとか医療の問題、こういったものがあるかもしれないということで出してございます。
ここできょうのテーマ1、論点ですけれども、対象とすべき政策課題をまずどういうふうに設定するのか、政策課題そのものの設定の仕方、それから、それに対応するためのとり得る政策手段というのをどうやって抽出するのか、また、その時間軸、どういった時間軸で政策課題、政策手段というのを考えながらやっていくのかということ、それから、二つ目の論点としては、次に政策手段とのセットで、社会経済的影響の評価、予測ということがありますけれども、その方法というのはどういうふうにすればいいのかという方法論の問題というのが二つ目の論点にあるかと思います。
以上です。時間を過ぎまして申しわけございませんでした。
○有本 ありがとうございました。
では、今から私にファシリテーションをやれということで、ファシリテーションはできませんけれども、タイムキーパーぐらいはやって、きょうの目的は多分、いろんな先生方の切り口をどんどん出してもらうということが、こういうときには大事なんじゃないかというふうに思いますので、そこら辺、よろしくお願いしたいと思います。
今から、ここのプログラムにありますように3人の先生方、永田先生、秋山先生、富澤先生、この方々にそういうテーマで政策課題の設定とオプションの作成に向けてということで4分ですか、それぞれ、お話をいただくということでお願いをしたいと思います。
それでは、スタート。早く、演説じゃなくて淡々と4分で、時間がないので、議論をたくさんやりたいので。
○永田(九州大学) 私は先ほどいろいろな論点の整理をいただいたんですけれども、どうもいろいろ依然として論点が多いと思っています。特にその論点をさらに整理するための視点をここで提示させていただきたいと思っているわけですが、その際に幾つか考えておきたいことがあると思っています。
まず、今回、政策オプションというのがここでのアジェンダになっているわけですけれども、政策オプションということ自体はもちろん政策科学の領域では、あるいは実際の政策プロセスの過程では一種、自明の課題であって、なぜ、今、政策オプションというものを改めて、ここで取り上げなければならないのかということは、しかし、自明ではないだろうというふうに私は思っているわけです。
そもそも1960年代のときには、既にPPBSというさまざまな代替案の中で、合理的に政策オプションを選択するための膨大なシステムというものが構築されているわけです。そうしたことを踏まえて考えると、この政策オプションについての答えはある程度、あらかじめ用意されているようにも思われますが、しかし、科学技術イノベーション政策について考えると、いささかまだ検討し残されている問題があるかなというふうに思っているわけです。その点を論点整理のさらなる整理という形で提示してみたいと思っているわけです。
例えば私がここで議論してみたいと思っているポイントの一つは、そもそも、どういう政策局面におけるオプションを検討するのかということです。先ほど山下さんの資料と長野さんの資料の中では同一の図であっても、政策オプションとしてくくられたカテゴリーの範囲が微妙に違っていました。山下さんの資料では政策課題までオプションとして含まれており、長野さんの資料では政策目標以下がオプションとして整理されていたわけです。
そもそも、どういう次元のオプションを議論するのかということ自体のプラットフォームが恐らくまだ構築されていないということであろうかと思います。簡単に言えば、そもそも、ここでいう政策オプションというのは政策目標のオプションを議論しようとしていくのか、あるいは政策手段のオプションを議論しようとしているのか、あるいはまた、具体的な政策効果を達成するまでのプロセスであるとか、あるいは経路を議論しようとしているのかということがいま一つ明確ではないということです。
今日の政策オプションをめぐる政治的な議論というのは、往々にして政策課題とか、あるいは政策目標というのが自明であって、その先の政策手段のみをオプションとして議論するかのような論調が非常に際立っていると思います。あえて、私がこういう論点を最初に取り上げるのは、そもそも、何が政策課題であるという認識と、その中から政策目標を設定する一種、価値前提そのものを問い直すということ自体が重要な課題であるということを申し上げたいからです。
そこで、次の課題というのはいかにして政策オプションを抽出・選択するかということになります。目標が所与であれば、そもそも、どういう選択手段をとるのかということ自体は大変わかりやすく整理することができます。そのためには経営管理の領域で戦略オプションという言葉がよく使われますけれども、その戦略オプションを選択の際に使われる方法論にも事欠かないわけです。しかし、政策目標に関しては、その前提になる価値、何が重要な政策目標であるのかということを設定する価値前提自体が自明ではないという問題があり、そのことが選択問題というのを殊さら複雑にしているということがあろうかと思います。
宮田先生の本というのは、非常にこういう問題を本質的に考えるときに、常に本質論に立ち返らせてくれるので、私はたびたび参照いたしますけれども、単純な選択モデルと複雑な選択モデルという図式を示したものですけれども、今現在の議論の多くというのは、そもそも、政策目標というのは自明であって、そこから複数の政策手段というものが与えられたときに、そこから期待されるアウトプットの多寡を比較して、明示的に一つの政策手段を選択するといったような議論で論じられていると思います。しかし、こういう議論というのは、そもそも、結果が画一であるとか、結果から得られるまでの成果というのが即時的に得られるであるとか、あるいは代替案間での価値前提が同一であるといったような、いろいろな前提というものが含まれているわけです。
しかし、現実の政策決定の世界では、そもそも、価値観自体が多様であって、かつ、ある種の政策手段がとられたときに、そこから得られるアウトプット自体が極めて異なっており、同時にその差異というのは時間の差異によってもたらされるということがあります。つまり、結果がもたらされるまでの期間はさまざまに異なる、価値前提も異なるといったような政策手段の中で、我々はある種の政策を選択しなければならないという問題に直面する。その意味では大変複雑な意思決定問題に直面しているということです。
特に科学技術イノベーション政策というのは、その結果がもたらされるまでの期間というのが極めて長期に及ぶ可能性があるということが、この問題というのをとりわけ複雑にしているということがあるかと思いますし、それから、さらに今の宮川先生の図でも明示されていない複雑な問題というのがあります。それは一つの政策目標に対応する政策手段が単一であるとか限らないということです。多様な政策手段というのがある政策目標に対応する可能性があり、場合によっては、その政策の効果というものが相反するものであるという場合もあり得るということです。
そういう問題を考慮したときには、そもそも、政策オプションの選択というのは、あれか、これかといった単純な選択ではなくて、多様な政策手段なり、政策目標の組み合わせパターン、コンフィギュレーションというものを選択するという問題に直面しているのだろう。そういうふうに考えたほうがよろしいのではないだろうかということです。
5分という限られた時間でもう過ぎておりますので、とりあえず、これだけ申し上げます。
○有本 次にもう一つあるんじゃないですか、3枚目が。これで終わり。
○永田(九州大学) これで終わりです。
○有本 そうですか。よろしいですか、次は。
どうもありがとうございました。非常に大事な根本的なご指摘だと思います。
それでは、次は秋山先生ですね。お願いします。秋山先生はRISTEXの今のSciSIPでしたかね、のプロジェクトの一つで、今、やっていただいています。どうぞ。
○秋山(横浜国立大学) 横浜国立大学の秋山です。私の話は政策オプションというよりは、どちらかというと、科学技術イノベーション政策に関しての科学に関して、どういったことを考えたらいいのかということで、まだ、少し合点がいかないところがあるので、その辺のところも含めて少しお話ししたいというふうに。
科学技術とイノベーションですけれども、当然、科学とイノベーションとの間というのは距離があるということは、皆さん、よく認識されていると思うわけです。ただ、技術とイノベーションの間の距離というのは、これに関しても実はそれほど近くない分野が多いというのが事実だと思うわけです。例えば医薬品等々の分野、これは多分、科学とイノベーションの間の、あるいは技術とイノベーションの間の距離というのは近いんでしょうけれども、そうじゃない分野も多い。例えば技術の導入というのは市場や制度にも依存するということがあるわけですし、それから、実は優れた技術というのが必ずしも成功するとは限らない。これは企業ないし国の戦略というものあると思うんですけれども、そういったものが実は非常に重要になってくるわけです。
たまたま私の関係しているところで例を挙げると、例えばスマートグリッドですけれども、これは実はアメリカで最初に提唱されたものではなくて、北海道大学の長谷川さんという方を中心として30年以上の研究の歴史というのを持っていた。これはFRIENDSと呼ばれているものなんですけれども、これは電力自由化を念頭に置いて分散電源対応とか、品質別の電力供給あるいは需要管理、それから、配電の自動化、さらに、それにICTを活用するというような非常に先進的な構想であって、技術的な裏づけもあったわけですけれども、日本では採用がされなかった。これは電力会社が地域独占のもとでは、こういったものを採用するというインセンティブがなかったわけです。
それから、例2番目ですけれども、企業向けのSOFCの商業化。実は、これに関しては2カ月ぐらい前に日経新聞にも載った話なんですけれども、Bloom Energyという会社がSOFCの商業化に成功したということ、Google、e-Bay、それから、ATT、Apple等で導入が始まっている。右のほうにあるのは、大規模にこの燃料電池を導入しようとしているAppleのデータセンターのモデル、これで注目すべきなのは、電気を売るビジネスも開始しているという形、ビジネスの方法という面で非常に新しいものがあったわけです。ところが多くの日本の研究者等々に聞きますと、Bloom Energyの技術というのは非常にマスコミ等では騒がれているけれども、これは余り大したものではないという形で、評価は非常に低いわけです。
具体の例えばSOFCのロードマップとの関係でどうなっているのかというと、大体、SOFCのBloom Energyがやっているのは中型の提供システムですけれども、大体、2015年ぐらいに初期導入が始まるというような形だったわけですけれども、これよりもかなり早く導入されるという形になっているわけです。NEDOのロードマップでは、小規模から大規模に研究開発が進むと想定しているわけですけれども、Bloom Energyの場合には企業向けのシステムという少し大きなところからスタートして、特にデータセンターに注目して、それで、量産化でコスト低下をねらうという、こういった戦略をとっているわけです。
科学技術イノベーション政策といった場合に日本現状、例えば日本の存在感がなくなってくるとか、イノベーションが低迷してくるというのは、果たしてどこに原因があるのだろうか。科学の分、基礎科学のところに原因があるのか、あるいは技術に原因があるのか、あるいは、そうではなくて、もう少し市場とか制度あるいは企業戦略の問題があるのか、一体、どこに問題があるのか。これが重要なことだというふうに考えています。特に市場や制度、企業戦略というのをこういった科学技術政策の中にどう位置づけるか、あるいは政策オプションの中にどういうふうに位置づけるのか。これは非常に重要な問題であるというふうに個人的には考えています。多少、時間をオーバーしましたけれども。
○有本 ありがとうございました。
それでは、次のスピーカーで富澤さん、お願いします。
○富澤(NISTEP) 科学技術政策研究所の富澤です。私は科学技術政策研究所で政策のための科学のデータ基盤の構築を担当しておりますが、きょうは余りそれにこだわらずに、少し広い問題提起をしたいと思います。
まず、最初に時間もありませんので、まず、いきなりですけれども、具体的な政策オプションを恐らく複数立てて、その中から選ぶといったようなアプローチをするために、どういったデータが必要になってくるかというのを考えてみたんですが、例としてまずグリーンイノベーションというものを考えてみました。
それで、まず、科学論文とか特許のデータがあるだろうということで、これは何のために必要かというと、グリーンイノベーションに関係する科学技術の状況、現状把握とか、それから、水準判定というのもあると思います、要するに例えば日本の中でどの辺に強みがある、弱みがあるとかいった話とか、そういった意味での論文、特許のデータが必要である。それから、今後のイノベーションの見通しというものを得るためにも、こういったデータが必要になるだろうと。それから、次に研究開発やイノベーション活動のデータということで、これは科学技術イノベーション政策の伝統的な科学技術イノベーション政策の直接的な対象である側のイノベーションを起こす側のほうの状況を把握するという意味です。それから、当然ですけれども、社会経済データというのが必要になってきたり、それから、社会的価値に関するデータも必要になってくると。
こういうふうに考えてみたんですけれども、こうやって並べてみると、政策オプションという発想法をとらないまでも、政策のための科学一般で考えてきたデータと、今のところ、そんなに変わらないということになってしまいましたが、それで、これ以上、どういうデータが必要かを明確にするため、政策オプションというのがもう少し具体的に決まってこないと、これ以上ははっきりはできないだろうなというのがまず一つあります。
それから、次のページをお願いします。それで、政策形成プロセスにおけるデータの機能というのを考えてみたんですけれども、幾つかのデータには機能があると思うんです。一つは状況把握とか、政策分析といったことがあるとも思います。ただし、データがあれば状況を正確に把握できて、それで、データを用いれば合理的に政策ができるかというのは、余りにも楽観的過ぎます。なぜかというと、政策の立案というのはデータ以外の要素が非常に多いということもあります。それから、そもそもデータで状況を正確に把握できるとは限らないです。部分的にはできることもありますけれども、ただ、私が指摘したいことの一つは、政策をめぐる議論とか検討の質を向上させるためにデータとかを使わないでやると、極めてどうしようもない議論になってしまうんですが、データを使うと、そういう質を向上させるという意味では重要かと思います。
そのほか、政策評価とか、それから、次に政策選好と書いています。これは実は私の言葉ではなくて、昔、政策科学というのが1960年代とか70年代に起きたときのそのときの本、40年前の本をきのう見ていたんですけれども、こういうことが既に議論されていて政策の最適化、つまり、最適な政策を一つ選ぶというのは分析を幾らやっても無理ではないかと。ただ、複数の代替案について優劣を示すことは可能であろうと。それをやっていきましょうというようなことが昔の本にはよく書いてあります。
それから、もう一つは最悪回避という言葉も出ていて、これはある意味のネガティブチェックで、データがあれば、何か、こんなことはやらないほうがいいとか、そういう細かいところでもネガティブチェックはあると。ところで、私はそこにアンダーラインを引いた、代替案の中での優劣を示すことは可能といって考えられてきたんですけれども、その後、40年がたって、それがそんなにできたかというと、できたものもあるかもしれないですけれども、必ずしもそうでもないような気もします。
それから、予測・予見というのはデータの一つの機能なんですけれども、もともと、予測というのは困難がありますが、ただ、未来への見通しを持っておくというのは非常に重要なので、重要性はあると思います。
それで、データというのは有用かという話なんですけれども、私はもちろん有用という立場で言わなければいけないんですけれども、決定的に重要というか、結局のところ、データというのは補助的といったら弱いかもしれないですけれども、しかし、そう考えておく必要があると思います。余りにデータに何か期待し過ぎた仕組みをつくったり、プロセスとか、政策のための科学はそういうものにしてしまうのはちょっと危険であると。つまり、データがあれば何か簡単に判定できるとか考えずに、しっかり議論するといったようなプロセスをしっかりつくるとか、そういったものが重要で、そのためにデータを役に立たせるとか、そういったことが重要だと思います。
それから、もう一つ、データ作成のタイムラグというのだけは指摘しておきたいと思います。政策課題が明示化されないとデータもつくれないんですけれども、しかし、明示化されてからデータをつくっていたのでは普通は間に合わないんですね。では、データが先かというと、政策ニーズを先取りするのは容易ではないんです。それから、ここが多分、相当、いろいろなデータを使うということの障害になるのではないかというふうに思います。
時間もありませんので、以上です。
○有本 ありがとうございました。非常に貴重なご指摘で。
今から、時間が押していますけれども、30分ほどディスカッションをしたいと思いますけれども、その前にアドミニストレーションの観点から、きょうの議論は何でやるのかと。こういうことです。
去年、スタートしたわけですね、このプログラムは。四つの大きな柱があって、政策研でやっていただいているデータ、今の富澤さんも中心でやっているデータ情報基盤整備、それから、政策研の政策課題対応型調査研究、これがNISTEPです。それから、RISTEXで公募型の研究開発、これは森田先生が領域総括でやっていただいている、それから、基盤的研究・人材育成で五つの大学が今、走り出したということで、それ以外に、しかし、科研費では多少、今、やっておられんだと思いますけれども、それから、研究計画学会などのいろんな動き、それから、構造化研究会、きょうの話題の中心はこっち側の社会とか、あるいは政策のデシジョン、最終的には社会ですけれども、そのための政策オプションの作成というメカニズムなりを早くつくっておかないと、後ろのほうに資料がありますけれども、ブランスコム流にいうと、ポリシーアナリシスばかりやって、ポリシーデザインをやっていなくて、そのバランスが大事だと、ハーバードのケネディスクールでも最近はアナリシスばかりやり出したと、論文生産ばかりでポリシーデシジョン、ポリシーレレバントなものが少なくなっている。
それから、もう一つ、申し上げますと、最初にNSFのプログラムダイレクターをやったケイハズバンドにことしの初めですかね、ワシントンで聞いたときに、NFSもアナリシスが中心になっていてポリシーレレバントなものは、余りなくなったんじゃないかというようなことをちょっと言っていました。そういうことで、これが中心で、これだけを今やるということではなくて、これ全体で動かそうと、しかし、バランスをとって、これも少しずつ動かしていかないといけないんじゃないかということで、きょうの議論を、ただし、いろんな問題が先ほど来、3人の先生方もありましたけれども、そういうところで早く議論をしておこうということで、こういうセッションを設けた次第であります。
では、オープンにして、いろいろコメントなり、ご意見なりをいただきたいと思います。どんどん、いかがですか。それでは、どうぞ、シラベさん。1分か2分ぐらいね。
○シラベ 東工大のシラベです。政策課題の政策オプション、政策目標あたりの位置関係が全然、お二人に発表していただいたんですけれども、整理されていないので、ここをしっかり整理していただきたいということと、あと、その後の社会経済的な効果というのも波及効果のことなのか、直接効果のことなのかもわからないということで、トータルで何かかみ合っていない感じがしたので、そこも見ていただきたいと。特に直接効果ということが一番ある意味、重要なのに、そこが何となく表に出てきていないのは気持ち悪い感覚を覚えましたので、そこを中心にもう一度、考えていただければと思います。
○有本 ありがとうございます。
どうぞ、では、東條さん。
○東條 お題にかかわるんですけれども、科学技術イノベーション政策というのは科学なので、要するに例えばエネルギー政策のための科学ではないわけですね。ここをどう考えるかなんです。最終的にエネルギー政策を材料にしてあげてもよいし、そこに必要な科学技術インプットというのをつくってもいいんだけれども、エネルギー政策全体の政策アウトプットなり、政策オプションを示していくというのは多分、ツーマッチで、これを全部やるのは多分、無理と。
したがって、科学技術政策という範囲内の政策オプションを中心に置きながら、それにかかわる範囲でほかの制度であるとか、他のバリューの選択みたいなものをぶら下げていくというほうが、多分、そういう操作もしたほうがよくて、何が言いたいかというと、普通はバリューがあって、目標設定があって、政策の選択肢があって、その評価があると、こうなるんですけれども、最後に解くべき問題は科学技術政策のドメインにあるなら、科学技術政策に関して、一体、どういうバリュー選択がレレバントなのかと。
解くべき問題は、本当は逆からいったほうがいいんだけれども、科学技術政策の例えばグリーンとイノベのどっちをやるかとか、太陽と風力のどっちをやるかとか、何でもいいんですけれども、何らか想定される科学技術政策の選択肢、それこそ選択肢をふやすことによって、それに対して、どういう政策領域のどんなバリュー、どんな目標設定、どんな政策選択が関係あるかという裏側からの検証をやって、ことすればぼやけがちな、全体に広がりがちなものをある種、フォーカスしていくというのが必要じゃないかと思っています。
○有本 ありがとうございました。
何か言いっぱなしでは惜しいので、先生、どうぞ。
○黒田 今の東條さんのおっしゃったことは、まさにそうだと思っているんです。それで、政策オプションといったときに、ある一つの話題に対してすべての政策オプションを考えるというのは、手段を考えるにしろ、目標を考えるにしろ、不可能に近いわけで、少なくともここはサイエンスとしての科学技術イノベーションという方法を生かして、何の課題が解けるかということの同定から始まって、そのプロモーションをどういうやり方で、どういうシステムでやることによって、その部分がどれくらい解決するだろうかということをオプショナリーにメニューを示していくというのが、オプションの役割だというふうに思っているんですね。
幾つか3人の先生方からいただいたご質問で、僕は永田先生のおっしゃったオプション、目標、それから、課題というところというのはいろんなレベルが多分あるわけで、課題そのものを抽出するとき、それ自身においてもいろんなオプショナリーな可能性があるし、その中の課題を目標設定するときにもいろんな目標のレベルがあるし、それから、さらにその目標を何で達成するかという手段のときにもいろいろなレベルがあるので、そのレベルはどこに焦点を当てるかということを科学的に詰めるというのが、一つの方法論の作法だろうという気がしています。
それから、そういう意味で、そうなったときにどんどん筋道が分かれて複数選択になってしまって非常に難しいと。これもおっしゃるとおりだと思うんですけれども、それをどう整理していくかということをエビデンスに基づいて、今まで少なくとも最初に後藤先生がマバガから引用されたように、人文・社会科学がやってこなかったということが大きな問題で、それをどこか取っかかりでやっていかないと、どんどん、そういうことが不明確なままで政策を選ばなければいけない、もしくは政策を施行しなければいけないという、非常に不確定な要素が積み上がってしまうというのが、一番問題になっている現状なのではないかという気がしているわけです。
それから、秋山先生が定義された問題も非常に重要で、科学と技術の距離、それから、技術とイノベーションの間の距離、これはもちろんいろんな形で違うわけですが、これはできるかどうかわかりません。ただ、ある科学を進めようとした選択がもたらすリスクまで評価できるようにならないと、これからの科学というのはなかなかビジョンに達成するような姿は描けないんだろうと思っていまして、そういうリスクをどうやって評価するかということも、非常に重要なんだろうという気がしています。
それから、最後に富澤先生のおっしゃったこと、これもほとんど私も賛成するところが多いんですけれども、ただ、社会科学、特に経済とか社会学、社会の現象というのは、実験室で実験ができるような実験科学と大いに違っていまして、社会全体がある種の巨大な実験室みたいな形になっているわけですね。何か、政策をとったら、それがまさに直接効果だけじゃなくて波及効果まで含めて、すべて動いていくということを相手にしなければいけないわけです。そうすると、ある政策をとったら、どんな現象が起こるかということを構造的に詰めるためには、どんなデータをデザインすればいいのかいうこととオプションをつくることと、ある意味で同一性を持っていまして、その試行錯誤を繰り返すことによってビョウブも精緻化するし、オプションのつくり方も精緻化するし、データも精緻化していくということの繰り返しなんだろうという気が私自身はしています。物すごく時間はかかるだろうし、大変な労力をかけなければいけないし、すぐに完璧なものができるとはなかなか思えない。そんな感じを思っています。
○有本 ありがとうございました。
さはさりながら、大きなタイムフレームで心配なのは、政治行政のほうからすると、第5期基本計画というのがすぐそこまでなんです。というのは、1年たっているんですね、第4期基本計画の閣議決定から。というよりも、のみなりにいえば1年半ですよ、4月からスタートしているから。だから、通常ベースで第5期というのが本当にできるのかどうかわからないけれども、通常ベースでいうと、3年目に入るとレビューが始まるわけです、第4期の。そこのところで、こういういろんな手法というのをどんどん入れていく、あるいは今度は社会ビジョンのところについては新しい手法でやらないと今は後づけで、失礼な言い方だけれども、絵をきれいにかいたけれども、ということで、そういう大きな流れの中では、こういうコミュニティの多寡は、かなりそういうものに貢献しているということは、やっていかないといかんというタイムフレームでありますので、そこら辺もご勘案いただきたいと思う。
それでは、どうぞ、また。
○東條 一回、追加していいですか。黒田先生の最初のまとめで結構なんですけれども、科学的政策で何が解ける、科学技術政策で何が解けるかというのと、科学技術方法論で何が解けるかというのは違うので、そういう意味では、最後、出口は科学技術基本計画に何を盛り込むんですというのはいい、そういう意味では領域設定だと思うんですけれども、科学技術的方法論あるいは技術論で何が解けるかといってしまうと、それは政策科学そのものになるので、私は政策科学の中でも科学技術政策というものを操作変数にして何が解けるかというところまである種、そこを過剰なまでに意識しないと、やや議論が拡散するんじゃないかと思っています。すみません、補足です。
○黒田 全くそのとおりです。
○有本 ありがとうございました。
それでは、いかがですか。さっきも言いましたけれども、いろんなきょうは多様な意見、コメントをいただいたほうがいいと思いますので、どうぞ、後ろの方も。では、秋山先生。
○秋山(横浜国立大学) 一つ、データに関して少しお伺いしたいところがあるので、データあるいは影響の評価の方法で、例えばそこでスマートグリッドですと、実際にある家庭、ある地域でそこをやって、どれだけ電力の需給に影響があるかという、そういったことをアメリカですとやるわけですけれども、そのときにちゃんと実験するのと同じように、入るか、入らないかはくじ引きで決めるというような、そういったような形でやる場合があるわけですね。
かなり最近の社会科学ですと、実験はできないと言いましたけれども、実験に近いような形で影響をはかるというようなことが行われていて、日本の場合、そういったようなことが余り盛んではない。最近、盛んになってきましたけれども、ということがいろんな影響の評価等々に関して問題になっていると。これは科学技術の分野だけじゃなくて、ほかの分野もそうなんですけれども、とりわけ技術の導入とか、そういったようなことに関しては、そういったようなこともこれからやるのは重要だと思うんです。そういったようなことというのは、全く今のあれで議論にはなっていないんでしょうかという。
○黒田 経済学でも実験経済学という領域が今、かなり大きくなってきていまして、一つの方法論的な試みであるということは間違いないと思います。それを科学技術イノベーション政策の科学として採用できるかどうか。これは方法論としての一つの課題だと思います。何ができるか、条件設定がどこまでできるかによって、実験の意味がはっきりしてくるわけで、その条件設定ができる範囲内であれば、いろんな実験をやってデータをとるということも十分可能だと思いますので、最初からアプリオリに実験はできないと言い切ってしまうわけではなくて、そういう可能性は十分あると思います。やりにくいと僕は申し上げただけで。
○秋山(横浜国立大学) というのは、この分野でスマートグリッドで結構、アメリカで割と業績を上げている若い研究者ですが、それが最近、サイエンスに論文を書いて、そこでやったのはアメリカのスマートグリッド等々の政策に関して、狭い意味の技術に対してお金を出すだけじゃなく、その部分の一部のお金というのを彼は行動経済学とか、そういったことをやっているので、そういった分野に関してお金を出すということが実は、かなり政策の評価あるいは効果を明らかにするということに関して、非常に重要な意味があるんだということで、これが社会科学系の雑誌ではなくて、科学系の雑誌にも載っているということがあるので、これから、そういったような形で、ある政策をやるために評価のためにある程度、お金というのはとっておくということ、そのためにどういったようなことをやればいいのか、それを最初からシステマチックに考えておくほうがいいのかもしれません。ちょっと感想めいたことですけれども。
○富澤(文部科学省) 今の秋山先生のご指摘に関して、黒田先生がおっしゃったように余り制限を設けないで、もちろん、必要とあればやったほうがいいと思いますが、ただ、先ほどの東條さんのご指摘にもあったように、科学技術イノベーション政策として何をやるかというか、そこに目的を絞った場合、科学技術イノベーション政策って割とあいまい性が非常に大きかったり、不確実だったり、そういうことが多くて、そういう社会科学的な実験というものがエネルギー政策だったら確かに一見、そういうことはあるかもしれないんですが、科学技術イノベーション政策ですと、すぐにそういうものが必要というイメージは今のところないんですが、もちろん、必要になったら、そういうことはやったほうがいいと思いますけれども、そういうエネルギー政策全般みたいな話と科学技術イノベーション政策は、少し区別したいという気がいたします。
○東條 1点、申し上げると、その手の実験経済学的なものってプロジェクトで結構、ちょこちょこやられるように秋山先生がご指摘のようになっていて、ただ、最初の設計がそのプロジェクトの中で閉じた設計になっているので、例えば情報大公開で位置情報についての重要性みたいなものの感度調査をやっているんですけれども、これが外部にどれぐらい提供できるかという問題がある、あるいはNEDOがやっている例えばエネルギーの見える化に関する需要、まさにデマンドレスポンスみたいな話がどれぐらい提供できるかという問題はあるので、そういったものの各庁でやっている、そういう実験経済学的なものをどう共有していくかというのは、まさにNISTEPでやられているデータ共有のプラットフォームの議論と連携をするので、それは十分に活用し得ると思いますけれども。
○有本 東條さんが盛んに言われるものですから、東條さんは、私はこういうときに雑談をするのはまずいんだけれども、ちょうどいいポストにおられると思って、NEDOの総務企画部長なものだから、こういう方法論をNEDOのプロジェクトの今度はプロジェクト経費の中に、例えば大きなプロジェクトは10%ぐらい入れるとか、こういうのを、広がりを持っていくと、ファンディングの立場からは、こういうセパレートのファンディングだけじゃなくて、そういうのが将来は多分、出てくるんじゃないか。逆に、しかし、ここでしっかりやっておかないと、JSTの中でも私もそういう主張をしているんだけれども、という気がいたしております。
すみません、脱線しましたけれども、どうぞ、ご発言ください。遠慮されずに、このメーンテーブルの方でも、笠木先生、いかがですか。特に将来ビジョンのところなんか、今、やられておるような。
○笠木 ありがとうございます。CRDSの笠木でございます。私はこの中で珍しく自然科学者だと思います。ずっと大学におりまして、今、お話があったまさしくSOFCなんかは過去15年ぐらいやってきましたのでお話はよくわかりました。
私は工学分野ですので、バックグラウンドが、世の中の近いほうにいますのでややリアリスティックに申し上げると、先ほど有本さんは第5期とおっしゃったけれども、こういう議論を積み重ねて政策オプションをつくっていく、そういう仕組みとか、そのための科学を整備していくときに最終的な出口で政策決定者側のタイムスケールが気になるんですよね。政治家は少なくとも4年あるいは6年ごとに選挙があって、最近の政情ですと選挙をやるたびに政権交代が起こり得る、多分、毎度毎度、起こりそうな感じで、この先、長期的な安定政権が10年、20年、続くというは考えられない状況になってきていますね。外国でも似たような状況にあると。
行政官の方々はくるくる望んでそうなっているかどうかはわかりませんけれども、二、三年でかわっていかれるので、こういう行政官もファンディングエージェンシーの方も、あるいは科学者も、ここに産業界の方がおられないのは残念なんですけれども、そういう方々がこうやってジドウに関与して議論されると大変すばらしいことだと思うんですが、実際に政策をつくって引っ張る側の方が、そこにずっと長くおられないことが実はすごく残念なんですね、いつもね。だから、土屋さんがどこに動こうとも、このテーマを背中にしょって、ずっと見ておいてほしいなという気がします。
そういう意味では、タイムスケールをぜひ、ここでの議論に意識される必要があるのではないかと。つまり、科学を時間制限なしに整備していって、それに積み上げて最後に出ていくということだと、いつまでたっても出ていかないので、逆に言うと、政権が変わっても持続できる科学は何なのかと、ある種の政策オプションづくりの仕組みはどういうふうに、現在の政治の政府の中にどういう仕組みをつくれば、それができていくのかということまで議論していただけるとありがたいなという、そういう印象を持ちました。
それから、富澤さんの話でデータと、私は自然科学をやってきましたので、痛いほどデータのことはよくわかりますし、データづくりをされる方はできるだけ客観的に、間違いのないデータを整備されようとするというのも全く同感なんですけれども、私が少しナショナルプロジェクトのPOとかPDをやってみてわかったことは、あるプロジェクトを動かそうとしたときに、どういう分野に、どういう専門家がいるかということに始まって、人のデータがどうしても欲しいんですよね、人とかコミュニティですね、そのコミュニティは一体、どういうマインドを持っているコミュニティなのか、本当にチャレンジングでどんどん変えようというような意識を持った人たちなのか、従来型というか、現在、非常に主たるプレーヤーでどっちかというとコンサバティブな集団なのか、どういうマインドを持っている人たちなのかというのは、そういうのがわかったときに、非常にいろんな組み合わせを考えやすくなるんですね。
これは一々生身の人に聞いて見ないとわからない状況があって、結局、イノベーションというのはいいことばかりじゃなくて、必ず痛みを伴うんですね。痛みを伴うということは、痛み側に入る人は絶対にそれに対してブレーキをかけるので入っていかないわけですよね。ですから、科学者のコミュニティ個々もそうですし、分野によっても私は随分マインドも、考え方も違うということはあると思います。
そういうことがやや主観的であっても、そういう人のデータ、コミュニティのデータ、その相互関係のデータというのが蓄積されると、それから、ある種の政策決定がなされていったレコードというか、プロセスに対してもきちっとデータが残っているというのような、そういうことが行われないと、結果的にはいろんなレビューをやっても、何がよかったか、悪かったかはわからないんじゃないかという気がいたします。そういう生きたデータというか、生のデータが欲しいなという気がしました。
○有本 ありがとうございました。
今の指摘で、次のセッションでそういうことも議論したいんですけれども、日本が政権が交代をするという前提で、今までは政権は交代しないという前提でいろんな体系が立てられていた、あるいはいろんな議論のプロセスも交代をするという前提で、こういう科学、あるいは、今、議論になっているのは総合科学技術会議を改組する、あるいは総理科学補佐官をつくるというときには、明らかにそういうかわるという前提で、いろいろコンティニューイティということで議論しないといけないということではないかと思っていますが、それは次のセッションが大事なところだと思います。
あと、5分ぐらいでこのセッション、自由討論を終わりたいと思いますので、二つ、三つぐらい、ぜひ、では、田原さん。
○田原(未来工学研究所) 未来工学研究所の田原と申します。別の視点での話なんですけれども、今、お話をお伺いしていて対象が社会経済的な価値を実現していく、その問題を解決していくといったところにフォーカスが少し当たっているような気がするんですが、一方で、科学技術自身を振興していくとか、そういった政策目標だとか政策課題の設定だってあり得るのかなと思うんですね。それについて、政策のための科学事業はどれぐらい言及していくのかというところについて、事業を推進している側の方からお伺いできればというふうに思いますが。
○黒田 多分、SciSIPの課題としてはおっしゃる両方を含んでいるんだろうと思います。ただ、自然科学者だけじゃなくて人文科学者もそうだと思いますが、何か自分の探究心とかキュリオシティを満たすための研究だけで、事足れりという時代ではだんだんなくなってきている。特に政府がR&D支出をサポートするような場合には、バジェットの機作もさることながら、ある種の社会の問題を解決するという目的性が非常に重要になってきていると。そういう意味では、第4次基本計画そのものがご承知のように、そういう方向にいっているんだろうと思います。
だからといって、キュリオシティドリブンである科学が不必要かというと必ずしもそうではなくて、片方で科学者というのはそれがなかったら多分、進まないわけですから、そういう意味では、科学者自身が自分の興味を満たすような課題を発見するということも、また、非常に重要なサイドの視点であろうという気はしているんですけれども。
○有本 ありがとうございました。
今の視点は物すごく大事で、常に我々がこの議論をするときによく言われますね、サイエンス・フォー・ポリシーあるいはポリシー・フォー・サイエンスという軸を置いた上で、ということは、それでは、SciSIP・フォー・ポリシーズ、SciSIP・フォー・サイエンスプロモーションというところで、今、何を議論しているかということで、東條さんが言うように、余り、しかし、サイエンス・フォー・ポリシーズで今の段階で踏み出すなよと、エネルギー政策まで、ということだと思いますけれども、それでは、どうぞ、山下さん。
○山下 私も今の点で補足させていただきますと、今回、考えようとしている政策オプションは、二つ、側面があると思っています。一つはどういう課題を選ぶか、東條さんがおっしゃったように、これは非常にインパクトもあるし、ある意味でそのためのものかという見方もあると思うんですが、それを政策に生かしていくということも重要だと思っていますが、もう一方の重要な視点は、実は私はこのポストでちょうと1年ぐらいたつんですけれども、いろんな方がいろんな研究手法を開発されたり、分析の考えをお持ちなんですけれども、実は何かの例えば課題を、そうしたら全体を見たいとしたときに、実は意外とつながっていないなという印象があるんです。
したがって、今回の事業ではきちんとそこを政策までつくり込んで、意思決定につなげていけるところまでつくり込んでつなげて、実際にそういう仕組みができることを確かめたいと、いい意味でも悪い意味でもグッドプラクティスをつくって、違う政策課題でもそれは適用できるし、ひいては実は科学技術イノベーション全体、政策をマクロにとらえてきちんとそれが影響分析までできると、そういう形に持っていくことが非常に重要じゃないかなというふうに考えております。
○有本 ありがとうございました。
既に10分以上おくれていますので、これで、ここのセッションは終わりにしたいと思います。それで休憩は。桑原さん、失礼しました。手を挙げた。どうぞ。
○桑原 一応、二つだけコメントしたいんですけれども、東條さんが提起された論点は非常に重要で、根本的問題なんですけれども、私はちゃんと解釈できないんですけれども、第4期基本計画というのは、国家戦略である成長戦略を達成するための科学技術あるいはイノベーションで何ができるかを担う部分、だから、第3期までのものと違って、ポリシミクスは大前提になっているという枠組みなんですよね。ですから、そうすると、第4期基本計画に対して貢献すべき政策のための科学は、もちろん、最終はエネルギー政策の根本のところまで踏み込むこともできないし、それは期待されていないと思うんだけれども、古典的な研究、科学政策では何ができるかだけを考えるのでは、多分、役に立たないと。非常にややこしいバウンダリーで仕事をしなければいけないというのがあるんですよね。
それから、もう一つはご議論があった政策オプションで、山下室長から一つのスタートポイントとしてのたたき台みたいなご提案があったんですけれども、この政策オプションを構造論的に議論していくと終わらない。どんなにすばらしい提案をしたって、もっといい切り口があるよという話になって、ただ、私は個人的には政策言及もどきの世界に半分以上いながら、ただ、文科省あるいはCSTPのようなポリシーメーカーにがあがあ文句を言われるという立場をずっとやってきたので思うんですけれども、何かのペーパーにもあったけれども、ポリシーメーカーとリサーチャーのインタラクションが重要なんですよ。
今まではそれはなくて、この話は多分、科学技術行政では行政部局がサイエンスをやるなんていうことは過去にないんです。やろうと考えたこともないと。彼らは未知の領域に入ってこようとしているわけです。そこには何かチャンスは多分あり得る。ただし、非常に険しいです。行政の方々が思うほどサイエンスは簡単じゃないし、できることは限られているし、ただ、そのリサーチャーと行政とのインタラクションをどうつくっていくか、それが勝負で、そこではある種の真剣勝負が起こるんですよね。そうすると、研究サイドのほうも非常に大きな刺激を受けるし、それから、行政のほうもまた違うディメンションにだんだん上がってくると。ただ、その形をつくると。
大きな枠組みというのは、もちろん、枠組み論をやらないで場当たりでやっているとろくなことになりませんからもちろんやるんだけれども、枠組み論をやりつつも、実学としてのそういうインタラクションをつくって、一つ、二つは実験的にやると。ただ、その過程でポリシーメーカーもいろいろ学ぶし、リサーチャーも学ぶし、そこで多分、ある種のコンセンサスがまたできてきて、物の考え方はこうだということで、初めて日本のステークホルダーたちが次のステップに上がれるところです。だから、私は理論的な議論をしつつも、幾つかの実践をとにかくやるということに対して大賛成で、ただ、それをどんなところから始めて、どういう感じでまずやっていくかと、それをその途中プロセスなんかをどうやってフィードバックしていくかと、そこがこれから非常に重要じゃないかなと思っています。
○有本 ありがとうございました。
以上に大セッションをまとめるのにいいご発言をいただきまして、それでは、これで終わりにしたいと思います。10分でいいですか。10分ということは、今、45分ですから55分から再開しますので、よろしくお願いします。
(休 憩)
○己斐 では、テーマ2のディスカッションに移らせていただきたいと思いますので。
○有本 それでは、席に戻っていただけますか、時間がないので、できるだけ早くやりたいと思います。すみません。
では、「政策オプション作成・活用に係るプロセスの構築に向けて」ということで、岡村さんから論点整理ですね。
○岡本 CRDSの岡村です。論点整理なので短く言っていきたいと思います。テーマ1のほうは政策オプション自体の話だったんですけれども、テーマ2のほうでは政策オプションを作成するとき、あとは活用していく際に、どういうプロセスというのが必要なのかということに焦点を当てて議論したいと思います。
これは皆さん、見なれた図かもしれませんが、政策の科学、ここで目指しているのは政策形成自体のメカニズムの進化と科学の進化の両方であるだろうと。政策オプションをつくっていくということでも、もちろん、政策に活用されていくということを考えていくので、政策自体の進化も必要であるし、政策オプションをつくっていくというところに踏み込んでいくという意味でも科学の進化も必要である、両方が必要なのではないかというふうに考えています。オプションは、もともと物すごく狭い意味でクローズドな政策形成に資するためというよりは、もう少しオープンな開かれた政策形成していくためのものであるというふうに考えています。
ここで議論したいのは、この図は先ほども出てきましたが、観察者、構成者、行動者、社会・自然というのが持続的に進化していくためには、どういう連携をしていかなければいけないのかということを問題提起をしている図になるんですが、政策オプションにおいても観察者が得たエビデンスというものを構成者がどうまとめていき、構成者がまとめたものをどのように意思決定で使われるようなオプションにつなげていくのか、行動者はそれに応じてどのように政策形成につなげていくのかというのがありますが、それぞれのところで、それぞれのプレーヤー、アクターがどのように関与していくのか、どう共同していくのか、責任、役割、インセンティブはどういうふうに考えていくのかということを議論していきたいと思います。
一つ、ここでご紹介、これも何度も出している図ですが、政府への科学的助言に関する原則ポイントということで、政府というのはもちろん科学的助言に対して独立性を認めなければいけないし、尊重していかなければいけないのであるんだけれども、科学的助言者のほうというのは、政府が政策決定に対して科学を使っていくというのはワン・オブ・ゼム、一つのソースであるということをちゃんと理解した上でやっていかなくてはいけないんだろうということ、あるいは透明性、公開性が必要であるといったようなことです。そういったことがあるということで、もっと広い意味での科学的助言というようなところで議論されておりますが、政策オプションを考える際に当たっても参考になると思います。
もう一つ、日本学術会議が出していますが、日本のアカデミーのほうでもこちら、多くの専門知に基礎づけられる俯瞰的、中立的な検討を通して統合的な知を形成していく、これが科学コミュニティの一つのミッションであるということも言っておりますし、複数の選択肢も含めて適切な助言・提言をしていくことが課題であるというふうにも言っていますし、社会のための科学のコンセプトというのも打ち出しているということで、非常に重く認識されているということです。
これは先ほど出ましたが、全体にこういったプログラムがありまして、科学技術イノベーション政策の科学の振興、科学の進化というのも重視するところから、政策形成により近いところまでいろいろありますし、トップダウン、ボトムアップ、いろいろな取り組みがあります。全体として、ここからどういう連携をつくっていくということが必要なのかということも、政策オプションの作成に当たっては十分考えていかなくてはいけないということで紹介しました。
ということで、ここのセッションのテーマの論点は非常に大きなことなんですが、政策オプションの作成と政策形成の活用において、それぞれの関与者はそれぞれのプロセスにおいて、どのような責任と役割を果たすべきかということで、何人かのコメンテーターにお願いしております。
まず、意思決定者というか、行政ですが、意思決定に一番近いところにいらっしゃる文科省の斉藤さんのほうにもお願いしておりますが、だれが政策オプションの受け手なのか、受け手の責任はどういうものか、あるいは政策形成を活用していくためには中だけではないんですけれども、仕組みとしてどういう仕組みが必要なのだろうかという視点を重視して、コメントしていただきたいと思います。あと、オプションをつくるほうの責任はどういうものなのでしょうとか、あとは全体として中立性、客観性を確保するための仕組みのために、仕組みをどうやってつくっていけばいいのか、どういうものがあるのかなども言及していくべきかなと思います。あと、もう一つ、科学と政策というのは距離がある状態なので、実際、アカデミアが持続的に連携、参加していくというのが何もしないでいると難しいのではないか、インセンティブをなせるためにはどういう仕組みが必要なのかということも議論する必要があります。あと、最後、一つ、同じですが、先ほどの図に出てきましたが、ほかのプログラムとの効果的な連携のあり方があるんだろうかということも議論したいと思います。
以上です。
○有本 ありがとうございました。
それでは、4人の方々にコメントをいただきますけれども、その前に、文部科学省の高官の研究開発局審議官、この方もライフワークコミットメントでこの分野をやっていただくと、土屋局長と大竹さんと山下さんはそういうふうになっておりますので、大竹さんからまた後からコメントをいただきたいと思いますけれども、それでは、最初のコメントで斉藤さんから、ちなみに斉藤さんはSciSIPの予算要求も握っております。
○斉藤(文部科学省) ご紹介いただきました文部科学省の斉藤でございます。私からのお話は、政策のための科学と車の両輪であります政策形成メカニズムの進化のほうの役所側の現状というか、試行錯誤をご紹介させていただくという立場でございます。
今、ご紹介いただきましたとおり、私は会計課におりまして予算企画調整官ということで、文部科学省の研究開発予算の総合調整を担っている立場におります。科学技術政策については予算が伴って動くものが多いということで、先ほど土屋局長からもございましたけれども、政策の決定というのは予算を検討するプロセスの中で決まっていくというような流れが強くございまして、という意味で、会計課で予算担当という立場から見ますと、エビデンスベースの政策立案、きょう、議題になっています政策オプションというのは、ニーズ側としてまさに必要性を感じている立場でおります。
その観点から見せていただくと、エビデンスといってもオプション的に二つあるかなと思いまして、一つは個々の研究プロジェクト、事業をいかに最適化していくかという意味のエビデンスやオプションという意味と、もう一つは研究開発投資全体像の中でポートフォリオをどういうふうに組んでいくかという観点で見たときの既存の分野とか事業を超えたエビデンスというか、オプションというものがあるのかなと思っておりまして、そういう観点で、きょうはどちらかというと全体像のほうの情報提供というか、お話をさせていただきたいと思います。
平野大臣ご説明資料という内部資料が入っているんですけれども、これは何かと申しますと、うちの大臣が文部科学省の政策というのは、なかなか木を見て森を見ていない事業が多いのではないかと、近視眼的な政策が多いのではないかという問題意識のもと、私ぐらいの年代の人間を集めて長期的視野に立った将来図を描いてみて、それから導かれる政策を検討してみよという大臣の宿題がございまして、それを中堅で集まって議論する取りまとめに私が指名されまして、それでやった結果の軽くご紹介でございます。
今、出ている図が全体像なんですけれども、科学技術イノベーション政策全体としては、まず、一番左の列にありますとおり、30年後に向けてどんな制約条件があるのかというのをまず整理していまして、よく言われています人口減少ですとかエネルギー制約ですとかグローバル化ですとか、まず、そういう制約があるので、それをどのように乗り越えて、今の日本の競争力なりを維持していくか、国民の期待にこたえていくかという観点の重点領域化というのが一つあるでしょうというのが左側の二つです。
一方で、そういう観点で、今、ある程度、投資がなされているにもかかわらず、余り国民が期待されているほど十分な成果なり、期待にこたえられていないという面があるんじゃないかという観点が右側でして、青く書いてあるのがいろいろ次のページのところから引っ張ってきているんですが、青い分析がたくさんありまして、それをもとにどういうボトルネック解消のためにシステム的な改革をどういうふうにやっていってやればいいのかというのを書いてございます。
それは細かいので後で見ていただければと思いますが、その次ですが、ということで、科学技術政策全体としては、今、フォアキャスト、バックキャストと書いてありますけれども、どちらかというとフォアキャストのほうでつくられている政策が多いものを、科学技術政策全体としてあるべきビジョンとか方向性というのをしっかり組み立てた上で、それをもとに今後、どういうことに投資していくのかというようなプロセスをもうちょっとしっかりつくる必要があるんじゃないかということを考えておりまして、その次のページですが、そのために、今、科学技術関係ですと局が三つありまして、あと、大学政策を見ている高等教育局というのがございますけれども、それらに横ぐしを通して研究開発政策全体のビジョンや戦略をつくるような組織をつくれないかということで、中で検討をいろいろしています。
そこの室では、例えば最も重要なテーマとしては局所最適化から全体最適を目指すということで、さまざまな複雑な問題に対して個々の事業が最適化されるのはもちろんのことなんですが、全体として最適化されるという視点をもとに、どういう議論ができるのかという話と、あと、社会の変化が早いので、意思決定の速度を向上させるためにどういう検討ができるのかというような方向性が必要だと思っておりまして、その戦略室が検討すべき事項の大きな柱の中に政策のための科学というものとどういうふうに連携をとりながら、ここにあるようなビジョンをつくっていけるか、将来的な検討をしていけるかというのが議題になっております。それがご紹介です。
最後ですが、これもまた、内部の検討状況でご紹介ですけれども、ここに書いてあるような項目が例えば今、来年度の予算要求という形で省内でいろんなところで議論をされている中身なんですけれども、こういうところに書いてある論点みたいなものに、どういうふうにエビデンスが絡んでいけるのかというものが文科省会計課的には、予算の議論という意味では必要なエビデンスということになりますし、具体的には例えば研究力の強化という一番上の四角の一番下に、エビデンスに基づくリサーチユニバーシティの定義、評価指標の明確化というのがありますが、これはまさに今、新規事業として検討されているもので、いかに研究大学をエビデンスに基づいて定義するかというような議論が起こっておりまして、こういうところでまさにここでの議論のようなエビデンスが活用されていくというものが、期待されているんじゃないかというふうに思っております。
以上です。
○有本 ありがとうございました。
ちなみにきのうでしたっけ、桑原所長のところで発表、さっきの大学の。
○桑原 大学はけさで、あした、公開です。
○有本 ここにあります。いよいよリサーチユニバーシティの定義というか、評価指標の明確化というトライアルを政策研究所があした、プレス発表がありますかね。
○桑原 プレス発表はきょうしました。あした、オープンになります、あしたの夕刻。
○有本 請うご期待でありますけれども、いよいよ、そういうトライアルが始まったということであります。失礼しました。
それでは、次に城山先生、お願いします。
○城山(東京大学) すみません、パワーポイントは用意していないんですが、三つほど問題提起をさせていただきたいと思います。
一つは前半の議論とのつなぎになるかと思うんですけれども、私に与えられた題は、プロセスにおいて活用されるためにはどのような仕組みが必要かということですが、逆に言うと、最大のポイントはプロセスを意識したようなオプションをつくるということが当然、必要だろうと、つまり、そういう意味では、ユーザーというか、ユーザーの問題定義なり、問題関心なんかをちゃんと踏まえたオプションづくりをすることがすごく必要で、そこは先ほど桑原さんのほうから言われたインタラクションというのをどうやって担保するかというのが極めて重要になると思います。
そのときに一つの側面は、先ほどツリーの政策課題、目標、手段というツリーに対して、どこを対象にしているのかとか、複合の手段のパッケージでというお話がありましたけれども、もうちょっとさめて言うと、実は目標が複数あるということもあるんですね。つまり、政策手段を選択するときに、私は同床異夢というのを結構、強調するんですが、単一の手段が複数目的に貢献するというのがあって、比較的、そういうものというのは、今みたいな特にセンジョウカで選ばれやすいんですね。これがいいかどうかは別問題で、コンパクトシティなんか典型ですけれども、高齢化対策であり、環境対策であり等々というのはいろいろ相乗りできると。
そういう意味でいうと、目的も実は複数あるというところもあって、そういうことも含めて、実は実際に動かそうと思うと考えなければいけなくて、ただ、一橋のアオシマさんがある発表で言われていたんですけれども、同床異夢のわなというのもあって、みんなが相乗りできると思うと、みんな、無責任になるという無責任体制を探すという部分もあるので、いいか、悪いかというのは別問題ですが、そういう意味では、複数の目的があるという状況というのも念頭に置く必要があるというのは一つあろうかと思います。
それから、もう一つは先ほどからずっと出ている、観察者、構成者、実施者のサイクルの絵ですけれども、これも若干、1960年代の教科書を見ているようだというところは正直に言ってあります。つまり、ここも本当にこういうサイクルで回るのかというと、あるキングダムというアメリカの議会とかの政策決定の意思決定の有名な人ですが、彼が言ったのはスリーストリームという話を言っていて、課題の流れと、それから、オプション、会の流れと、それから、政治的なポリティカル・オポチューニティの流れと、みんな、独立していて、たまたま一緒になれば意思決定するんだという、そういう一つの観察ですが、余り、でも、本当にこれを完全に真に受けると何もやることはなくなってしまうので、そういう問題はありますが、ある意味では、そういうリアルなセンスを持った上で、そういう幾つかのストリームをどうやってつなげていくのかというところが重要で、さっきの同床異夢というのもまさにポリティカル・オポチューニティを使おうと思えば、幾つかの実は自分と違う価値観を持っている人たちとどうやって連合形成するかという、省内・省庁間ポリティクスかもしれませんし、そういうことを考える必要がある話でありまして、そこは全くマネージできない話でもないんだと思うんですね。つまり、こういったある種のリアリティを持ってオプションを考えたり、オプションをどうやって選択していくのか、プロセスを設計するということが多分、すごく重要なんだろうと思います。
今度はもう少し二つ目ですけれども、若干重なってずれるところもあるのかと思いますが、こういう政治的メカニズムをどうやってつくるかで、先ほど政権交代が常態化したときにどうするかというようなお話もありましたけれども、ある種のもう少しマクロの意思決定メカニズムの工夫というのも必要になるんだと思います。
そのときの最大のポイントは、科学的アドバイスの話にもありましたし、それから、私がやらせていただいたプロジェクトは全くノージャスアセスメントという話をやらせていただきましたけれども、意思決定とアセスメントを分けるというのがすごく大事なんだろうな、意思決定における前提としてアセスメントの評価の幅を広げる、オプションという議論をすることのそこの意味はすごく大事で、単一ではなくて複数のオプションを多様な観点から評価するということをすると。
従来もオプションがないわけではないんです。大体極限ケースが二つあって真ん中ぐらいのが出てきて、このぐらいだろうという、そういう落としどころをつくるためのオプションだったんだけれども、そうではなくて、ある種のオプションを考えるところは幅広に考えて、多様な価値観で評価できるようにすると。最後の意思決定は価値観の選択のところもあるので、多分、政治にもう一回、投げ返さなければいけないという、そういう仕組みをきちっとつくるということが必要で、そこが過度な政治家からある程度、プロテクトすることにもなりますし、そういうインフラ自体は、むしろ超党派的に支援してもらえるようなことにするということになるのかなというのが大きな2点目です。
3点目、時間がないので簡単にだけ申し上げますけれども、前半も含めて要するに科学技術イノベーション政策の科学と政策科学一般がどう違うのかというお話が東條さんを初めとしてあって、私のイメージはそのときに政策オプションという、きょうの議論の立て方は意外と悪くないのかなと思っています。最初は事務局からいただいたときも、一般論とどう違うのかというメールを返しちゃったんですけれども、結局、オプションを議論するというのは、実際に山下さんの最初のプレゼンの課題例でありましたけれども、多分、技術の話とある程度、規制とか制度のはなしをセットに扱うということなんだと思うんですね。単独ではない。
だから、例えば特区制度だけだとか、何とか税制だけを扱うのではなくて、ある技術を対象に何をやるかというと、パッケージでやるというところは多分、科学技術イノベーション政策というときの重要な点で、それがどの目的に、社会目的に寄与するかというのは最初に申し上げたように実はいろんな話があり得て、そっちで限定はできないんだけれども、パッケージという意味ではある種の特性を持っていてかかわるイシューは幅広いという、そのあたりがくくり方として適切なのではないかなというふうに思いました。
以上です。
○有本 ありがとうございました。貴重なご視点をいただきました。
それでは、次は平川先生、どうぞ。
○平川(大阪大学) 大阪大学の平川と申します。よろしくお願いいたします。
私のほうは主に専門家の取り組み、それの部分をどういうふうにするのか、これは単に研究だけではなくて、社会とのインタラクションの部分を含めての専門家の役割をどう設計していくのかということなんですけれども、視点としてはここに挙げました1、2、3のところで論点をまとめてみました。
まず、一番最初は専門家システムのあり方を考える視点ということで、ここでは二つ大きく分けまして、今回、提案されているような政策オプションというものをつくっていくときに、結構、重要な視点としては、今、ちょうど城山先生のほうも指摘されましたけれども、こうしたことを提示するときに唯一のユニークな解を出すことよりは、むしろ、さまざまな幅のある複数のオプションを提示して、それの前提とか条件とか、また、当然、不確実性というのもあったりするので、そういうものを提示した上で、さらに複数ある違いの意味やロジックというものを示すということが非常に重要であろうというふうに、一般的にはこういうアセスメントの問題なんかではよく指摘されるんですが、そのためにも専門家というのが専門分野だけではなくて、いろいろと同じ専門分野でも、それぞれの研究者としての立場、考え方の点で多元性であるとか、観点の包括性というのが肝要になるだろう。
さらに、あくまでも科学技術政策とはいえ、社会的な課題に対応していくということを考えると、人文・社会科学の重要性というのはすごく大きいと思うんですね。これは次のところでも申し上げますけれど、人文・社会科学者をどういうふうにうまく関与させていくのかということが大事になりますし、また、社会の関係者、実際に産業界であったり、市民社会であったり、そういうところでの関係者をどういうふうに関与させていくのかというところでも、研究者、専門家システムの役割として結構大きいだろうなと思います。
次は、そういう専門家、そういうことをすることに取り組んでいく人々あるいはコミュニティをどう育てるかというところでは、まず、前提となる考えとしては扱う問題自体がまだまだ潜在的なもの、必ずしも見えているものだけではなくて、これから発見されていくものも、あるいは新たに生じてくるものもあるため、研究というのもまさに研究であるがゆえに、発見・創発の場をどうつくり、維持するかということが一つ大きなプリンシプルだろうと。
そのときに方策としては、すごく当たり前のことではあるんですけれども、公式・非公式の形での知識交流、ナレッジエクスチェンジの場というのをどうつくるのか。これは単に研究者だけではなくて、実際、行政、先ほど桑原所長のほうも指摘されていましたけれども、実際にポリシーメーカーと研究者との間でいろんな問題意識というのを共有していくような場、さらには社会の実務者、いろんな関係者が絡んでいくような場、そういうところで実際に何が課題なのか、どういう論点があるか、どういう専門性があるのか、また、アカデミックな研究の世界だけではなくて、民間の企業、社会の中にもどういう解決のためのシーズがあるのかということをうまく可視化していく、ネットワーキングしていくということが結構重要だろう。
さらに、フィージブルスタディーズぐらいから始めてアカデミックな研究を組織化していくこと、そこでは若手のかかわりとか、さらに実際にファンディングということを考えると、JST側だけではなくてJSPSのほう、人文・社会系のほうでの取り組みは過去にもプロジェクト型のものがありましたけれども、そうしたものとか、科研費なんかの活用というのも重要なのではないか。あと、パート1のほうでも話題になりましたけれども、専門家のデータベースというのを地道に整えていく必要があるのだろうということも大事かと思います。
それからあと、次のスライドなんですが、こうしたコミュニティを育てるに当たって研究者のインセンティブをどうするのかがすごく重要なんですけれども、同時に草の根的というか、従来のアカデミズムの外部のボトムアップ的な展開というのも結構重要ではないかなというふうに思います。その点では、最近では一つ一例ですけれども、フューチャーセンターと呼ばれるような取り組みというのも、今、特にサンインチ地方の社会の中で結構広がっていますので、そういうもとのつながりというのも結構大事かなというふうに思ったりします。
最後は、こうしたポリシーに対して学問がどういうふうにかかわるか、広い意味でのサイエンティフィックアドバイスの問題ですけれども、そうなると、これはどうしても信頼性とか中立性をどう確保するかという問題がありますが、これは幾つか論点がありますけれども、いずれにしても、まだ、こうした問題というのは一般に欧米なんかでは幾つか研究があったりして、結構、国ごとのポリティカルカルチャーによっても、どういう専門家のシステム、どういう形での信頼性確保、中立性確保というのが重要かというのは、結構、違ってくる。
次のスライドをお願いします。これが一つ研究例だったりするんですけれども、アメリカとイギリスとドイツで、結構、そういうのが違ったりするという研究例なんかもありまして、そういう意味で、日本でどういう形のものが日本の中で信頼性、それはもちろん単に社会からの信頼という外身の部分だけではなくて、中身の実際に信頼されるリライアブルなナレッジをつくるという面でのシステムも含めて、どういうシステムが日本ではふさわしいのかということ、それ自体をメタに研究していくということも今後、必要なのかなというふうに思います。
ちょっと延びましたけれども、以上で終わりにします。
○有本 ありがとうございました。
それでは、最後で田原先生、お願いします。
○田原(未来工学研究所) 田原と申します。私自身は政策科学とシステム論を専門としておりまして、その中で、それをベースにした評価研究だとか、あと、市民参加の方法論開発といったようなことに携わっております。
私に与えられたお題は、知識の生産と利用のプロセスということなんですけれども、まず、基本的な認識としては政策科学の分野で非常に有名な格言があります。正しく問題が定義されれば問題はほとんど解けたに等しいといったような格言があるんですけれども、これは何を解くかということとどう解くかというのは基本的に不可分であるという考えを示したもので、問題解決のプロセスにおける問題定義の重要性を示したものなんですけれども、その問題自身が自明ではないということ、また、それを定義するのは非常に困難な作業であるというのが、そうたやすいものじゃないというのがこの願意としてあるかと思います。
次の次、4ページ目をお願いします。その問題定義の困難性の所在がどこにあるのかということなんですが、先ほどの永田さんの問題提起とほとんど同じなんですけれども、現代の社会問題を考えると、政策問題を考えると、ほとんどが構造問題と呼ばれるものになるかと思います。構造問題というのは、だれの価値を重視し、切り捨てるのかといった価値の競合にかかわるような根本的な問題があるということと、問題の相互依存性といったらいいのでしょうか、政策が別の新しい問題を引き起こすということがあります。
例えば別の新たに引き起こされた問題の解決手段を持っている例えば行政の担当課といったところと、もともとの政策をやっていたところの担当課の所掌が変わってくるというところがありますし、そういう意味では、他省庁のところが別の会計手段を持っていたり、民間が持っていたりするわけで、そういったところでもそごがでているということです。一方、研究開発自身に非常に不確実性が高いということがあるかと思います。例えば挑戦的な研究にファンディングをすると、そういったときに目指す成果自身が出るのかというところに不確実性がありますし、それが実際の価値に転換していくまでに、長期性と非線形性があるということなんですね。そういう前提で考えると、政策オプションの形成・選択というところに過度に注力をするよりも、要するに初期最適型を目指すというよりも、走りながら修正・学習していくというようなシステムのほうに転換していくべきなんじゃないか、そこに重点を置くべきなんじゃないかというように思います。
その次の次、6ページ目で政策研究にどういう機能が求められるかということなんですが、学習型の政策プロセスをつくるというところ、それから、そこの中で支援するということに注力していくべき何じゃないかというふうに思います。そういう意味で簡単に言うと、例えば問題定義にしろ、オプションにしろ、仮説として最初に設計をしていく、そこを支援していくということから、実際、走りながらモニタリングをして、その中から新たな問題を発見していく、それをフィードバックしていくというようなシステムというイメージなんですけれども、それで、7ページ目をお願いします、そういったシステムの中で政策研究者、政策研究というのはどういう形でかかわればいいのかということなんですけれども、政策科学の中でこれも有名な話がありまして、知識の持つ三つの顔というお話があります。
これは政策研究というのが知識に取ってかわろうとするようなもの、要するに合理的に政策を進めていこうというものでもなくて、一方で、無自覚に政治だとか、既存の体制に奉仕するものでもない第三の道を探すべきなんじゃないかという話です。要するに政策研究の生産をするコミュニティと利用するコミュニティというような二分論でとらえるのではなくて、政策研究の生産のプロセス、利用のプロセスというのを、それも二分論でとらえるのではなくて第三の道があるでしょうということ、それについてTorgerson自身は明確な答えは言っていません。
それに対して私なりに答えを考えると、次の3点かなと思うんですけれども、一つはプログラム化していき、その単位で見ていくということ、2番目がチェック&バランスのシステムをつくっていくということ、3番目が実践コミュニティをつくっていくということなんですが、時間がないので2番目のチェック&バランスのシステムのところだけ話をしたいと思います。
次の次です。要はかかわる研究者だとか関与者の規範で対応するというのは非常に限界があるわけで、システムの健全性というのは、そういう意味では多様度で保証する必要があるというのが基本的な考え方です。具体的にどういうことをするかというと、検証の可能性を高めるというのが非常に大事かなと思います。そのためには公開性を拡大していくということ、意思決定に用いたエビデンスだとか判断基準、それから、評価結果と、それを受けたアクションプランといったところを含めて公開していくと。
そういう意味では、オプションづくりというのはだれでも、研究者でもいいですし、実務家でもいいですし、そういうのはだれがかかわっても原則としてはいいと思いますし、いいんですが、それについてだれでも検証できるということが非常に重要なポイントになるかと思います。そういう意味で、そういった政策なりのモニタリングみたいなことは原則、だれがやってもいいんですけれども、それは自然発生的に生まれるわけではないので、そういったシステムをどうやって構築するかというのが一番のポイントになってくるのかなというのが私の考えになります。
以上になります。
○有本 ありがとうございました。
ここで大分時間が押していますので、20分か25分ぐらい議論をしていただいて、最後のところで森田先生からコメントをいただきたいと思ってございまして、特別ゲストで大竹さんにも何か一言、演説はしないようにあれですけれども、最後のところで、それで、申しわけありません、遠くから来ておられる方に申しわけないんですけれども、6時15分ぐらいに終わるようになると思います。ちょっとずれて申しわけないんですけれども、それぐらいのタイムフレームでやらせていただきたいと思いますけれども、それでは、二、三、オープンで議論を、それでは、どうぞ。
○フクシマ 東京大学のフクシマです。基本的に政策の研究というよりは、科学者集団を研究していて、それがどういうふうに実際の政策と過去の絡んできたかということを今、研究しているんですけれども、さっきのラウンドで感じたことで、先ほど城山先生が60年代ぽいというコメントがあったんですけれども、僕も全体的に科学のイメージが60年代ぽいと。つまり、何かエビデンスを集めてモデルをつくると、立派な科学ができるというような何となくそういう発想がちょっとあって、実は最初、永田先生が口火を切られて、このセクションに至るまで、ほとんど全員がそれに対して批判していると。
だけれども、どちらかというと、事務局側のイメージはエビデンスだよねという感じになってしまっていて、多分、その最大の問題は科学の現場の研究、STSという分野、それで、STSという分野の専門家が何人かが来ていますけれども、結局、科学のイメージだ大分変わってきたと、科学というのはそんな定量的なものじゃなくて、しょっちゅう、論争をやっているし、議論もどんどん変わっていくし、もし、科学のそういう新しいイメージを導入しようとすると、科学化をすることが実は正しい単純な政策にぴたっといくという部分に逆にならない、むしろ、現場での論争が逆に拡大するというか、まず、そういうダイナミックな科学観がもうちょっと必要なんじゃないか。今、7人の方が言われたのは、ほぼ全員、そういう内容のことを言われているんじゃないかと思います。
もう一つは、社会科学についてのコメントがあって、どちらかというと、これもやや古典的な経済学のイメージがあると思うんですけれども、先ほど平川さんが人文・社会の重要性と言ったんですが、もし、何が違うかというと、人文科学というのはもっとコンテクストの重要性というのを考える。例えばテキストモデルというか、人間はどうやって意味をつくり上げるかということについて、すごく研究が進んでいて、そうすると、それはコンテクストによって意味がどんどん変わっちゃうと。それが実は永田先生が最初におっしゃったことを人文科学的に表現するとそうなるんですね。
そうだとすると、どうも結論が逆にいきかねないというか、人文科学的な知見をやれればやるほど問題がより複雑化して、決定が難しくなるという方向にどうも流れていく可能性があって、多分、それを前提としてどういう制度設計ができるかというふうに議論を進めないと、何となく60年代のサイバネティクスモデルみたいなので、話が終わっちゃうんじゃないかという印象を受けました。
以上です。
○有本 ありがとうございました。
それでは、黒田先生。
○黒田 一言だけ。今のご批判、それから、先ほど来のご批判はよくわかるんですけれども、今、複雑なこの社会の政策決定、特に科学技術政策、イノベーション政策というふうに限ったといったときに、一体、どうやればいいんだと、それに対して科学者はどう答えますかということが今、問われているんですよね。それは科学が複雑だから、そんな科学では解決できませんよとか、科学が複雑になったから違った意思決定プロセスをやればいいですよでは、済まなくなっているというのが現状なんだと思うんです。
○フクシマ しかし、僕はそんなことは一言も言っていなくて、つまり、科学のイメージが余りに単純過ぎて、それをエビデンスベースドということだけでやって、うまくいくとは思えないんですね。今の……。
○黒田 では、どうやったらいいの。
○フクシマ だから、今の例えば……。
○有本 これはこれで、そういうご指摘があったことで結構ですから、ほかの観点から。コバヤシ先生。
○コバヤシ 早稲田大学のコバヤシです。研究戦略とか構成とか研究評価というのを専門にしておりますが、2点ほど申し上げたいと思います。きょうのお話はかなり一般論から話をして、言ってみれば、演繹をしていると思うんですが、一方で帰納の要素といいますか、個別の科学技術の分野、先ほどエネルギーの話が出ましたが、ライフサイエンスにしろ、ITにしろ、そこでの個別の政策の決定のあり方は、それぞれの特殊性を持っていると思うんですね。つまり、演繹と帰納をうまくつなげる必要があると思うんです。それが1点目です。
二つ目は今の田原さんのペーパーにありましたプログラムという考え方なんですね。政策と実際の研究のプロジェクトを結ぶ間にプログラムという考え方が欧米ではかなり入ってきているんだけれども、我々はこれを実は評価のところで今、内閣府あるいは総合科学技術会議の評価の中で議論をしていますが、政策とあれがポートフォリオですぐ出てくるというより、プログラムのまとまりとして設計なり、評価をしていくとことが必要だなと思って、その2点だけ。
○有本 どうぞ、ヨシダさん。
○ヨシダ 大阪大学のヨシダです。今、プログラム評価の話が出たんですけれども、さっきの議論のポジティブな言い方をすると、何か、この中でできること考えるということで、その評価をどう考えるかということで、政策のオプションとか先ほどの城山さんもありましたけれども、いろいろ多様性を確保するということは、その中で成功するものもあれば、当然、失敗するものもあるということで、いかにいい失敗を拾うかというところになるんですね。
だから、政策オプションとか、こういったことを科学化すればするほど、いいもの、すぐに政策の役に立つものというものを評価しがちなんだけれども、実は長期的に役に立つものもあるかもしれないし、失敗から学ぶこともあるということで、評価というのを単純にAか、Bか、Cかという話ではなくて、先ほど田原さんがおっしゃられたように、学習につなげるということと、それを分析して、それをまとめてプログラムとして全体で見たときに何が残るかというところを見るということは、この領域全体として考えていかなくてはいけないことの一つかなというふうに思います。
あと、もう1点なんですけれども、斉藤さんのお話にもあったんですけれども、結構、ビジョンという話が出てきているんですけれども、ビジョンという話をするときに科学技術イノベーション政策だけではとどまらない話になってきてしまって、明らかにこの領域を超えるという話になってくる。これを考えるのは、ここの領域だけでは無理あるということを前提にして、それを考えるところはどこかというところの議論は置いておいて、そこと我々が科学技術イノベーション政策の科学、それのオプションを考えるとか、政策の課題を考えるといったところとのリンクをどう図っていくかということをしないと、何となく突然、ビジョンが降ってきて、それに右往左往されて、結局、科学化もままならないということになりかねないので、全体の中で位置づけるということを考えていただければと思います。
○有本 非常に大事なご指摘でありました。
それでは、どうぞ、伊藤さん。
○伊藤(宗) 政策研究所の伊藤です。政策の立案における調整のメカニズムというのでしょうか、そこら辺をもう少し全体の図の中で重視されたほうがいいんじゃないかなと思います。といいますのは、オプションをいろいろといわゆるオプションの提言という形で、研究の場面からいろいろと出てこようかと思いますけれども、実際上は、そういったようなオプションがいろいろな利害関係者の中で調整を経て、最終的な課題に向けたオプションに仕上がっていくといったような過程、これは審議会政治とか制度とか、いろいろご批判はあるかとは思いますけれども、今の実際の行政ではそういうような形で進んでいますので、少し全体の中で、そういった調整というのでしょうか、そういったような観点もきちっと位置づけるということが必要かと思います。
○有本 どちら、こちら、前田さん。
○前田 JSTの前田と申します。先ほどビジョンということをそちらの方から話題があったので、ビジョンということに関して発言された方々にお伺いしたいと思うんですけれども、まず、斉藤さんのほうから文科省の中でビジョンの議論をされているというお話を聞いて、非常に心強く思いました。
ただ、その一方で、ビジョンの議論というのはすごく簡単そうに見えて非常に難しくて、やればやるほど難しくなると思うんですけれども、逆に、こういった政策の検討の中でビジョンを考えるというのが飾りのようになってしまっていないかということで、もし、斉藤さんのほうにコメントをいただければということと、あと、ビジョンを考えることそのものは本当の目的なのかということ、あるいは第4期の中にビジョンが書かれているので、それとの関係をどう考えられているのかということと、あと、田原先生のほうにお伺いしたいのは、悪構造問題の中でのご指摘いただいていることというのは、何か政策オプションを考えるということと逆に対立すると思うんですけれども、政策オプションの作成の中では非常にビジョンを重視されていると思うので、田原先生のほうのお考えの中で、ビジョンというのをどういうふうに考えられているのかということを教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○有本 何かご発言はありますか。どうぞ。
○斉藤(文部科学省) 私の絵の中でビジョンとかバックキャストとか書かせていただいたんですけれども、この絵の中でいうと、私の印象ですと、今、少なくとも文部科学省の中で動いている研究関係の事業とかいうのは、基本的にほとんどすべてフォアキャストというような形で動いていて、何か、共有のビジョンがあって、みんなでそっちに向かっているというよりは、その都度、その都度、目の前で問題が起きると、それに沿って、最低限、やれることを解決しているという感じでぞろぞろ動いちゃっている印象を持っています。
ただ、それを個々というか、もうちょっと高い目で見てみると、実は事業ごとには局所最適化されているのに、全体から見ると全く逆の方向に進んでいて、足を引っ張り合っているみたいな例もあって、そういうものを解決するためには、ご指摘のとおり、非常に難しい問題だと思いますし、試しに少し議論を始めてみていますけれども、なかなか、うまく進まない面もありますけれども、ただ、共有できる何かを持っておく必要があるんじゃないかなということで、今、まさに試行錯誤しているところだと思っています。
○有本 この話をするとエンドレスで抽象的なことで終わっちゃうんですけれども、せっかくですから、田原さん。これで終わり、この話は。
○田原(未来工学研究所) 先ほどの話と関係するんですが、例えば戦略とか基本計画レベルの話と、個別の事業のレベルというところで変わってくるのかなというふうには思うんですけれども、ビジョンの基本的な役割というのは、ここにありますようにあるべき姿を示していくということで、それがただ、誤解をされちゃいけないと思うのは、上からおりてくるものというふうに考えると、少し問題があるかな、システムが硬直化していくのかなというふうに思います。そういう意味では、ある程度、ボトムのアプローチでビジョンというのを描いていって、それが全体として共有されるものになるべきというふうに考えるので、ビジョンは押しつけられるものとか、与えられるものというよりも、全体で形成して見直していくものというふうにとらえていくのがいいんじゃないかなというふうに思います。
○有本 ありがとうございました。
この話は終わりますけれども、最後に大竹さんから一言、最後のところで。第4期につくったときに私が申し上げましたが、あれは明らかにビジョンのレイヤーのところは明らかに後づけでつくったんじゃないかと思うんだけれども、そこら辺の裏話も含めて、率直なコメントをいただきたいと思いますが、それでは、次の何かご指摘、コメントはありませんか。どんどん、新しい、それでは、どうぞ。
○A 大変貴重な意見をありがとうございます。一つ考えていて、予算企画調整官の斉藤さんが来たので、どうしても科学技術はたしか第2期科学技術基本計画、第1期からかな、科学技術は投資だということで、予算というのは投資だということで、科学技術政策をいろいろビジョンとか言っていますけれども、実行するにはその規模、資金とか人とか、どれだけの組織がかかわるかという規模的なものが物すごく大事だと思うんですね。その効果も投資に対してどう成果があるのか、今、ビジョンだけの話が出ていますけれども、PDCAサイクルとも関係するんですけれども、そういったところでの政策のための科学について、資金との関係というのは何か過去、アメリカとか、間の議論ではそういうお金の関係は一切出ないんでしょうか。そこを教えていただければ、資金の関係。質問は。
○有本 もうちょっと具体的に話して。
○A 要するにお金の議論、資金の議論はほとんどされていないんですけれども。
○有本 何の資金、これのプログラム。
○A 必要な投資、こういった政策をやるに当たって、お金というか、そこに投じる人とか、そういったようなものがないと。
○有本 このプログラムに対して。
○A そうそう。
○有本 それは、今、進行中なので、それを言ってもしようがないんじゃないの。
○A 要するにそういったもの、アメリカ、この間のAAASとか、ああいうような議論では……。
○有本 アメリカは今、日本円で15億ぐらいをこの5年間でずっとつないできたわけですね。それは5年間だから累積すると80億か、100億ぐらいになっているかわかりませんけれども、それぐらいです。
○A いや、政策のための科学の検討に要する資金じゃなくて、科学技術の予算、投資する場合の資金とか、人とか、そういったことは一切検討に入っていない。エビデンスベースの話の中の議論には。
○黒田 政策手段としては当然、資金とどれぐらい、どういう形でアロケートするか、そういう人材をどう育成するかというのは、政策手段としては当然あり得るわけですよね。
○大竹 資金規模はどれぐらいであるべきかという議論をしているかということをおっしゃっているんですか、投資の価値が……。
○A 要するにエビデンスベースでこういった政策のための科学をやっていく場合に、物事の政策ビジョンとかを決めても、要するに実際はそこに投入する資金とか人とか、そういったもので全然効果は違ってくるんですね。だから、そこのところの議論の次のステップかもしれませんけれども、そこはエビデンスベースのこの議論はそこまでは入らない……。
○有本 それは物すごく大事なんじゃない、それこそ研究対象じゃないか。
○黒田 過去にどういう形の資金が投入されて、どう成果を上げたかということも含めて、それは非常に。
○A 例えば過去に一つは国家機関技術というような概念を持ち出して、そういったことでやってきたんですけれども、かなりの資金を投入したんですけれども、そういったようなやり方なんかを一つの事例にして、過去の事例研究で、これがどういう政策の考え方にしたか、これも一つのおもしろい課題じゃないかなと私は思っていますけれども、コメントです。ありがとうございます。
○有本 ありがとうございました。
さて、それでは、何かありませんか。城山先生とか平川先生、何かありますか。
○平川(大阪大学) さっき、ビジョンのほうでちょっとつけ加えようかと思って伺ったので、別にいいです。では、いいですか。ビジョンのところの話、さっき、田原さんが天下りじゃないもの、上からやってくるものではないものというところでいうと、ビジョン自体も複数あっていいんだろうなと、競合するものがあっていいんだろうなと思うんですね。それを要するに例えば10年後、20年後、30年後の日本がどうなっていくかというのは、本当にわからないところがあるので、そう考えると、ビジョンというのも複数、まさにポートフォリオとして持っておく必要があって、そういう形で、そういう意味ではさっき城山さんもおっしゃっていましたけれども、ツリー構造的な話よりは、違う発想で物事を考える必要もあるのかなというのを最後につけ加えたかっただけです。
○有本 どうぞ、アカイケさん。
○アカイケ 特に斉藤さんの話を非常に興味深く感じたんですけれども、政策オプションをつくる上ではプロトコルというか、それを明確化するというのが次のステップとして非常に大事だと思うんです。だから、そういう意味では、斉藤さんの発表というのは一つの提案であるなと思いました。そのときに、そもそも自然科学にしても社会科学にしても、実際、科学というのは知識体系をつくることが研究者のオリジナリティで、そこに、みんな、命をかけているので、だから、政策に使うオプションを組み立てるために、一たん、ばらばらにして、また、強烈な政策意思を持って組み立てなければいけないというところがあるので、だから、そこのところで例えば拠点なんかで教育を受けたのが役に立つんじゃないかなという印象を持ちました。
それで、私も、さっき長野さんが示してくれたロジックチャートがありますけれども、あれは斉藤さんの前任者と一緒につくったんですけれども、要請で全体を知って責任のある人が関与して、たたき台はむしろ政策当局がつくるというぐらいの力でつくっていったほうが、行政当局がつくる政策オプションとしては非常にうまくいくんじゃないか。ただ、これだけではだめで、別の論理の政策オプションというのが必要で、それは研究オリエンティドで研究者が自分の論理で組み立てた政策オプションというのもまたあって、それとのインタラクションでさらに上位構造を決めていくというような、そういうプロセスのプロトコルをつくっていくというのが大切なんじゃないかなという、そこはまさに田原さんとか平川先生のご発言とも結びつくところです。そこのあたりをきちっとしたプロトコルとして整理していくというのが次のプロセスというふうに感じました。
○有本 ありがとうございます。
非常に大事なご指摘で、斉藤さんのあれが本省の戦略立案、本省のと書いてあるから何で本省なんだと、また、縦割りだなという気がしましたけれども、せっかくの機会ですので、あと5分間ぐらい、三つ、四つぐらいいかがでしょうか、どんどん、ご発言ください。では、伊地知先生から、初めてですので。
○伊地知(成城大学) 私も斉藤さんのプレゼンテーション、その後に続く田原さん等のプログラム化、それから、政策評価、それから、予算をつくっていくプロセス、そういう中で行政の中で組織学習をしてつくり上げていくというのが、非常に多様な政策課題を多用しなければいけないときに、より有効ではないかというふうに思っています。
そのときにほかの主要国、アメリカ、イギリス、フランス等も見ますと、そういった予算、政策評価の仕組みというのは政府全体でインプリメントされていて、縦割りだけではなくて、いわゆるマトリクス組織的な形で実行できるんですが、日本の場合は現状ではそこが難しいと。ほかのミッション省庁の場合は非常に縦割りになじむので、どうしても科学技術のようなミッションにまたがるようなところで、それを政府全体として共有することができないということだと思いますので、もし、この方向だとするんだとすれば、ほかの政策領域、ミッション領域に対しても納得していただけるような、そういったシステムにするためにはどうしたらいいのかというふうに、議論をするのがいいのではないかなと思っています。
○有本 ありがとうございました、非常に大事なご指摘で。
では、東條さん。
○東條 基本的に私の言いたいこともほとんど同じで、城山先生の技術と制度ということでいうと、制度は大体ミッション領域にあるんですね。だから、要するにそれにはいろんな複数の政策目的にサーブするために制度があるので、技術が一番生きる方向の制度と、それから、別の政策目的の制度というのの調整を図らなければいけないということはありますし、それから、伊地知先生が言われたように、基本的にはミッション省庁のドメインにある政策に対して、科学技術政策がどう刺さりにいくかということを考えるときに、この二つのインタラクションをどうとっていくかということが重要で、それは多分、課題の設定についても、ビジョンの作成についても、あるいは政策オプションの提示についても、このインタラクションなしに科学技術のドメインだけでやってもうまくいかないし、逆に科学技術のときはそちらの限定領域の中で問題を解こうとしても、きっとうまくいかないと、これをどう設計するかということで、最後、設計の仕方は政治から落っことすということかもしれませんけれども、少なくとも枠組みという、プロセスなり、プロトコルなり、そういうものはあってもしかるべきだなと思いますけれども。
○有本 ありがとうございました。
あと、城山先生、伊藤さん、これで終わりにします。その間に大竹さんが最後にコメント、それから、森田先生に最後、君のほうが先だよ、森田先生に最後にやってもらうということで。
○城山(東京大学) まさにマトリクス的なことをやることが大事で、だから、ある意味では先ほどの前半の桑原さんの最後の話を受ける形なんですが、何かやってみることが具体的に大事で、そうすると、一体、何を実験対象として始めるのかというので、それが極めて重要なチョイスだと思います。科学技術イノベーション政策はよくも悪くも完全にすべての話にかかわって、制度も技術もかかわるという意味でいうと横割りなんだけれども、横割りの中で比較的もわっとしているところでもあるんですよね。だから、このプログラム自身、ある意味では文科省の中のプログラムなんだけれども、やっている対象は多分、各省に全部かかわるような話で、まじめに考えたらいろんな人に文句を言われそうなんだけれども、なぜか成り立つみたいな微妙な均衡によって成り立っているわけですね。
こういう比較的ソフトなところの横割りの話をどう実験でやってみるのか、何をイシューにやってみるのか。恐らく、この辺は議論があるかもしれませんが、多分、今の原子力を何%かやると、これは極めて政治化するし、何か医療費削減とかやると、これもいろいろもめそうで、多分、そういう過度なやつはまずいんだろうと。一方で、他方、この種のものが動くんだということを見せようと思うと、それなりにビジブルなものでやらなければいけなくて、その中間レベルでいい素材はないかという、そのあたりの議論がどこかでできるといいかなという気がしました。
○有本 伊藤さん、ありました。
○伊藤(宗) ちょうど、その図が出ているんですけれども、観察者と構成者と書いてあって、構成者の左が政策研究者になっているんですよね。つまり、我々が拠点なり、いわゆるSciSIPの事業の中で育っている研究者は、構成者になり得る者を育てているのか、あるいはそもそも現在、構成者になり得るような者が存在するのか、私の個人的なイメージとしては、いわゆる構成者と書いてあるあたりは、今までは行政官が担ってきた部分であり、かつ研究者にも加わっていただきながら、先ほどもちょっと述べましたが、いろいろな形で例えば審議会のような形、あるいはそのほかの個別に聞くことによって、そこで政策をつくり上げてきているわけですね。ですから、我々が拠点に今、求めているものが仮にこういったようなものまでスコープとして求めているならば、そのあたりもきちっと明確にしておく必要があるというふうに思います。
○有本 貴重なご指摘で、その有力なモデルになるかもしれない大竹さんから、それでは、まとめていただきたい。
○大竹 突然来て、特急に飛び乗ったような感じなんですが、でも、演説するなと言われて、何か言えと言われて困っているんですが、一つ、まず、どれから始めようかと思ったんですが、けさの朝日新聞でEUの科学顧問の長い記事が一面に出ていて愕然としたのは、EU、欧州は科学に対する教養、理解、そういうものがある。日本にはあれはない。なぜかというと、一つ書いてあったのは、私は普通の人です、日本で科学顧問の議論を内閣府でしたとき、みんなが言うのは、そういうスーパーな人はいない。彼らはスーパーの人はいないというところから始めているんですね。
これが日本とヨーロッパの違いで、ここは何とか埋めていかなければどうしようもないだろうなということがあって、その観点でいうと、SciSIPを私は関心を持って見て、これだけいろんな方が集まって非常にありがたいことなんだけれども、一つすごく心配しているのは、特に政治家とか意思決定者がボタンを押せば、最適な政策が出てくるマシンだと安易に考えている可能性がある。それは絶対に廃止すべきだ。
さっき、ずっと出ておられるように私も思うんです。今、担当していて宇宙なんか担当していますが、1足す1は2みたいな、こうやればできるだろうというのは、大体、できちゃっているんですね。いろいろご指摘があった社会が複雑だから答えは一つじゃない、もしくは1をとったら2がだめになるという話が多い中でやっているんだから、そういうものをどう、それなら最適化するかという難しい問題を解いているということを政策の科学をやった人は言っていくべきなんだ。
非常にいい答えが、だれも満足するハピネスな答えが出るというような、僕は絶対に当たるべきじゃないけれども、私は繰り返しますけれども、これは言い過ぎかもしれない、文科省の例えば政策決定者はそう思っている可能性がある。そう政治家に説明している可能性がある。すごくまずい。そこは注意しなければ。
あと、何が重要かと思って、もう一つ、さっき、城山先生はこれができているのなら要らないと言ったけれども、回っていないんだと思っているんです。なぜ、回らないかというと、例えば観察者が本当は観察して構成者に伝えるべきところなんだけれども、例えば自然科学者は自然の一部しか見ていない、社会は見ていない。それが大問題。人文科学者は自然を見ていない。要するに難しくなって、ここのところが見えないから、この構造が回らないんだね。
そうすると、英知を集めて何らか問題というものを整理して、社会と自然科学の距離をうまくつなぐということをだれかがやらないとだめだし、もうちょっと俗的なことをいうと、我が最も敬愛する後輩の斉藤さんがこういう絵をかいて、一生懸命、やっているのを私は知っているんだけれども、この中で時々矛盾を感じるのは、一番右側に、30年後に向けて何々すべき制約とかなんとかあって、ここのところを政策決定者はひしひしとよく理解しているか。違う。多分、巷間、言われていることで、そうだろうねと思っていて、突き詰めて考えていない場合がある。
もっと言うと、むしろ、思考のパターンはこの中でどこかであるように制度改革が、今、やっているこれを正当化するために、どこかに社会の理由はないかと、そういう発想をしている現下の職員がいないということはないというのは、斉藤さんはわかっていて、あえて批判的に書いているんだと思うけれども、逆なんですね。自分たちが存立するための、そういうことがあるから、それではだめなので、物事をひっくり返さなければいけないだろう。
もっと言うと、政治家も今は短期業績主義になっていて困るんですけれども、たまたま、これを見ていたら、このシンポジウムに出る政治家は、皆さん、割と落ち着いている人だけれども、これ以外の500人ぐらいの政治家は答えを持ってこいという人たちが多いから、そこに対して、こういう人たちを中心にどう言っているか。そのためにはもっと汗をかかないと、理念論だけじゃいかないなというのが思いです。
すみません、長くなりました。
○有本 非常に貴重なご意見で、それでは、森田先生。
○森田 何か最後に回ってきて緊張しておりますけれども、最初に申し上げたいのは、科学技術イノベーションのための政策のための科学は、科学イノベーションの政策だけかという最初の話ですけれども、推進委員会は毎回、その議論をしているような気がいたしまして、私自身は非常に狭く考えると、要するに科学研究投資は何が合理的かという話かと思うんですけれども、イノベーションがくっつく以上、そうではなくて、多少、そこに重点を置きながらも、いろんな政策を全部カバーしてもいいのではないかと思っております。
それは、そういう前提で考えているということで、最初に感じましたのは、きょう、来て印象といいますのは、永田先生の報告がまさにそうなんですけれども、PPBSってなつかしいなと、30年ぶりぐらいに聞いたなという気がしまして、あのころ、私が研究者になり始めたころは政策のための科学がかなり盛り上がっていて、それが冷え始めたところだったと思います。PPBSがなぜ問題になったかといいますと、あれはご存じのようにマクナマラが国防省でやったわけですけれども、目的手段のツリーがきれいにかけるというのが前提だったわけですね。ところが、実際には先ほどもございましたように、因果関係というのは必ずしも一方向ではないし、一つの原因で複数の結果、それもプラスマイナスの結果が出てくるし、場合によったら因果関係がループすることもあると。そうなってきたときにぐじゃぐじゃになってくる。
それをまとめようとして抽象的な目的を掲げると何が起こるかといったら、最終的には人類の幸せのためみたいな、いわゆる自然言語で価値を表現するというところから、要するに無意味なあれになるわけです。そして、さっき、城山さんがおっしゃったように、そこで自分たちが目標として考えるのは、みんな、同床異夢の状態になってくる。したがって、ブレークダウンして具体化すると同時に、すぐ矛盾が露呈してきて対立が起こってくる。このことはある意味でいいますと、ある程度、わかっていたので、永田先生のペーパーというか、スライドにもあったと思いますけれども、そのことを指摘して価値を排除すべきだというのはハーバード・サイモンだったと思います。論理実証主義だと思いますけれども、外しちゃうと事実関係はできますけれども、政策というのが決められなくなっちゃうわけですよね。
そこで、その後、政策の科学というのは急速にその問題からいくと、ある意味でいいますと、テクニカルなほうへ傾斜して、だんだん、矮小化というと失礼かもしれませんけれども、そうなってきたと思います。非常に政策の効果測定であるとか、いろんな予測についての制度の高い技術というのが開発されたんですけれども、ターゲットが狭くなってしまうと、結果として何が起こったかといいますと、先ほどもございましたように、政治にむしろ使われるようになってくる。今の大竹さんの話じゃありませんけれども、ボタンを押せば正解が出るみたいな政治家は、科学的根拠に基づく主張だといって、自分の主張を正当化するような科学的理論を採用したがると。そうしますと、科学そのものがいわば従属してしまうことになるわけですね。
それがどういう状態になっているかというのは、ここで言うと語弊があるかもしれませんけれども、現在の政策評価で何が行われているかということをつぶさにごらんになるとおわかりになると思います。文部科学省もそうだと思いますけれども、膨大な労力をかけて何が出てきているかという、私も総務省の評価会員をやっているんですけれども、そういう気がします。
そうすると、政策のための科学というのは一体、何を目指せばいいのか。先ほどございましたように、基本的に今は政治学のほうも変わってきておりますし、基本的に自然言語で目標とか価値を表現する以上、解釈の問題、コンテクストの問題、意味の問題というのはつきまとうわけですね。その中で同床異夢が避けられないとしたら、何を政策のための科学として目指すべきなのか。
私自身は、今は余り研究よりもむしろ本当に政策をつくるほうにかかわることも多いんですけれども、そこで言えるのは何かといいますと、今までの政策のつくり方というのは、こう言ったら失礼かもしれませんけれども、特に政治家の方のいわば思いつきであるとか、必ずしも根拠のない着想でまず目的が掲げられて、それを具体化するためにどうするかということで、霞が関の方は随分、知恵を絞ると。そうした活動がすごく多いんじゃないか。その中には政権交代後の何とか手当ではありませんけれども、一体、それがどういう効果を生むのか、あれだけのコストを掛けてと、それが必ずしもわからないんですけれども、とにかく、それを実現すること自体が自己目的化してしまうと。
そういう現実に対して、定義された政策案というものが本当に意味があるのかどうかを、そこを検証すると、裏返していいますと、要するに無意味な政策を排除するというために、それなりの根拠というものをきちっと示していくと。その中で幾つかの選択肢の中から意味のない選択肢、要するに優劣という話がございましたけれども、劣位の選択肢を識別して、優劣を識別して落としていくと、それで絞り込んでいくと、最終的には政治的な判断になるかと思いますけれども、そうしたツールとしてどれぐらい使えるのか、それが考えられるところだと思います。
そうすると、先ほどのように同じように政治家の主張を正当化するためのツールになるんじゃないかということですけれども、そこがまさに客観的なエビデンスをなるべく共有されるような形をして、それをベースにしてきちっとやっていくと。今はまさにビッグデータが使えるかという時代になってきたわけですから、そこから絞り込んでいく。その中で質の高い議論が少しでもできるようにしていくというのがまず当面、目指すところではないかなと思っております。
実際の政策をつくる場合には、結局、議論になります。これは先ほどステークホルダーの議論というふうにおっしゃいましたけれども、これはどういう形で議論を主張して、正当化していくかという話になるわけですけれども、ここはある意味でいいますと、科学も限界があるかなと思っています。しかし、その範囲をできるだけ絞っていくことが、非常に我々の社会にとって有効ではないかなと思います。
それから、政策のほうで、長くなって恐縮ですが、もう一つ言いますと、先ほどから科学技術ということについては随分議論されていますけれども、イノベーションということは余り言われなかったかなという気がしています。イノベーションというのはどういうことかということですけれども、私自身、医療政策にかかわって思いますのは、新薬というのはライフイノベーションでも中心になっていますけれども、基本的に新しい、いいお薬が出る、新しい技術が発見されるということも重要ですけれども、それで社会をよくしていく、医療でいいますと、病気で苦しんでいる人が助かるためには、それが社会的に使われなければいけない。そのために日本で一番イノベーションでネックになっているのは企業化だと思います。
どうやって企業がビジネスとしてそこに入ってくるか。企業がビジネスとして入ってくるのに何が問題かといいますと、もちろん、マーケットの大きさとか、いろいろありますけれども、もう一つはそこで制度の問題が出てくる。制度が障害になっている。薬の場合はドラッグラグとか、いろいろありますけれども、そこを全部セットで考えいかないと、なかなか政策はできないだろうと。そういう意味でいいますと、最後になりますけれども、私自身はそうした意味でいいますと、今のようなプロセスを一気通貫で見て、何がボトルネックになっているのか、何を重視すべきなのか。そこのところの判断ができる人材というのが真ん中の行動者の四つの、それの真ん中のところいてしかるべきではないかなと思っていまして、人材育成というのはそういう人材をどうやって育てていくかということではないかなというふうに思っております。
ちょっと長くなりました。
○有本 ありがとうございました、貴重なご意見をいただきまして。
それでは、ここでプログラムではまとめ、CRDSからとあるんですけれども、まとめというまとめはできないので、ディスカッションしたものをざっと羅列をして、今、映して、どんどん、今、やっていますけれども、なぜ、ここをやるかというと、8月中旬でしたかね、お盆明けに文科省の推進委員会がありますので、そこに報告して議論するということで、こういうものがちゃんと積み上がって議論が積み上がっていくというやり方で、もちろん、だれが発言したということじゃなくて、チャタノハデトルと言いましたけれども、そういう形でやりたいと思います。だから、それこそ、これ自身がインタラクティブに今後もプラットフォームとして機能するという形でやりたいと思いますので、逐一、説明はしませんけれども、そういう形でお願いをします。
これは表のレセプションのところにありますけれども、昨年、ワークショップを構造化研究会の第1回ですかね、こういうレポートもつくって積み上げながらやっていますので、それの第2回目ということになりますけれども、さて、それでは、次のセッションで、あと、お二人からお話を5分ずついただいて、それで桑原さんのお話で終わりにしますので目標は6時17分。
○小山田 それでは、セッションⅡを開始させていただきます。セッションⅡでは、科学技術イノベーション政策の科学に関する最新動向をお二人の方から紹介していただき、情報共有させていただきたいと思います。
まず、最初に成城大学社会イノベーション学部教授の伊地知寛博様より「科学技術イノベーション統計・指標に関する最近の海外動向」と題した報告をしていただきます。よろしくお願いします。
○伊地知(成城大学) ありがとうございます。時間が短いですので、まず、2ページをお示しください。ここで統計にアンダーラインを引かせていただきました。というのは、各国で今、既存のデータだけでは足りなくて、変化しつつある科学技術イノベーションの状況に即して新たにデータをとらなければいけない、そういった測定も非常に重要だというふうに認識されていることです。そして、きょうの会議の冒頭、私や局長のほうから国際競争力はいずれ劣後するのではないかというお話がありましたけれども、それに対応して刺激的なことを言うとすれば、科学技術イノベーション統計についていうと、日本は劣後しているのではないか。
例えば研究開発統計でいうと、アメリカは約60ページの調査票です。それに対して日本は8ページです。ということは、単純に量的なことでいえば、日本は8分の1の情報しか持ち得ていないというようなことがあるわけで、そのあたりの情報を共有させていただきたいというふうに思っております。また、諸外国でも政策関連性というところが非常に重要だということであります。
3ページをお願いいたします。まず、1点ですが、OECDで今、議論している中で、一つは既に確定している2008SNAです、ここで研究開発の資本化に対応するということになっています。これは、SNAの議論の細かいところの議論は省略しますけれども、測定の中で今までと異なった概念のデータをとっていかなければいけないということになりまして、これに対応しませんと、GDPの値が試算で出てきていますけれども、国際比較ができないものになっている、経済活動の基本的な指標であるGDPについて、ほかの国との対応で理解することができないという状況になります。
続いてお願いします。アメリカ等の場合は先ほど申し上げた調査の中で、新しい調査票を開発していますと同時に、SNAの中では特に国際関係、これは企業の研究開発活動が非常にグローバル化をしているといったことがあって、それにも対応しているということであります。また、従来の調査からまたチャレンジングなところもあるということであります。
続いてお願いします。研究開発の統計に関しては、Frascati ManualというOECDのマニュアルがありまして、これは2002年に策定されてから既に10年がたっております。ということで、現在、OECDとEurostatが各国共通してデータを収集しているわけですし、また、先ほど申し上げましたように、現在、科学技術の情報は変わっているというところで、そろそろ変えていく時期ではないかというふうな機運になっておりまして、次のページをお願いいたします。例えば例としては高等教育機関は、一体、どこまでが高等教育機関なのかとか、あるいは高等教育機関の土地、施設、設備の管理方法、これは国によって違ってきているところがあります。そういったこと等、研究開発活動の状況自体変わってきているので、ここに対応していかなければいけないという状況になっております。
次のページをお願いいたします。ほかにもここに挙げておりますような、そういった項目についても関心を持ってやっているということです。恐らく日本で余りなじみがないのは、公共部門イノベーションの測定ということだろうと思います。
続いてお願いいたします。次はEUの話をさせていただきます。EUはEurope 2020ということで中期成長戦略を立てておりまして、その中のheadline indicatorsを幾つか定めておりますけれども、研究開発についてはここにありますように国内総研究開発の対GDP比です。ところがイノベーションについてはそこでは決め切れませんで、宿題という形になっています。これについては後ほど述べます。このEurope 2020の中では、成長戦略を具体化するために幾つかのイニシアチブがありますけれども、そのうちの一つとしてInnovation Unionというイニシアチブがありまして、その中のコミットメントの一つとして、イノベーション政策の進捗の状況をはかるためのコミットメント、ここでは34-B、34-Aというのがありますが、それぞれがあるということになります。
34-Bというのは16ページ、17ページあたりに飛んでいただきますが、こういったスコアボードを毎年つくって公表して、各国の状況を把握する、あるいはEUの状況を把握するということがありますし、それから、18ページにいっていただきます、字が小さくて恐縮なんですが、イノベーションについては今のところ、早く成長するイノベーション企業、実現企業、そういうのを把握しようということで、具体的にどういうふうに測定をしていったらいいかという検討が今、進められているところであります。
続きましてアメリカの状況に移らせていただきます。19ページです。American COMPETES Reauthorization Act of 2010で、NSFの中の従来の組織を改組して、NCSESという組織が設置をされております。ここは4.1.2にありますように、この研究開発、科学技術関係に関しての連邦全体としてのクリアリングハウスという機能を果たすということでありまして、20ページに具体的にどういうふうにミッション等が定められているのかがあります。
こういった状況を受けまして21ページになりますけれども、National Research Coucilのところで、アドホックパネルが将来に向けては科学技術イノベーション指標の開発ということで2年間の議論をしておりまして、今、中間報告が出ているところであります。23ページがその目次になりますが、これが優先事項順に並べてあるということですので、今、アメリカは人的資本をどう測定をするか、それから、イノベーションをどうするか、研究開発サービスをどう測定するかといったことが掲げられておりまして、NCSESが早期にこれに対応するべきということで、勧告を出しているところであります。
駆け足ですが、以上、報告させていただきました。
○小山田 ありがとうございました。
続きまして、JST-CRDSフェロー、金子直哉より「科学技術イノベーションの投資戦略と影響評価【米国における注目動向】」としてご報告を申し上げます。
○金子 それでは、二つ、報告します。次のページへいってください。
一つ目は、研究投資の評価の最近の動きです。ことし3月にワシントンDCでNNIとOECDが共同で、ナノテクの経済効果に関する国際シンポジウムを開いています。目的は何かというと、科学技術の国家的投資に対して、投資効果を評価する方策が確立されていないということで、ナノテクを具体例に各国地域の知恵を集めようということです。実際25カ国、中国は来られませんでしたけれども、BRICsも入っていて200名が参加したと。ここに書いてある6分野をもとに、それぞれの分野に共通する知恵は何かと、異なることは何か、手法やシステム、それから、ポイントだったのは社会経済面の影響をどう評価するというのがあるので、基本的には人文・社会学者に入ってほしいということがあります。
次にいってください。本当に時間の関係で、この会合に参加になるところだけ申し上げますけれども、結論はナノテクインサイドという英語があるんですけれども、ナノテクの経済効果を評価すると、ナノテクは商品の中とか、システムの中に入っているので、そう簡単ではないと。例えば原材料、中間製品、最終製品もありますし、計測制御に使われるナノテクもあるんだというようなところです。それから、システムに入るとサプライチェーンなので、イギリスの方が言っていたんですけれども、サプライチェーンをどう評価するかというのは、過大評価、過小評価につながるというようなことです。
もっと難しいのは市場がグローバル化していますし、これも人文・社会になるんですけれども、エルシーとか、そういう話抜きには語れないということなんです。結論的には非常に難しいということになりましたし、これから難しくなるんですけれども、これは報告できるんですけれども、OECDはやめないと、これからはナノテクの経済効果の評価を継続してやっていくということが宣言としてまとまりました。これが1点です。
2点目は、研究投資をどうするのかという話で、これは我々がしばらく調べてきたもののエッセンスなんですけれども、この絵はアメリカの展開するグリーンイノベーションのシナリオを簡単にまとめたもの。右のほうが目的で、未来の安定したエネルギー保障で幾つかの課題を掲げていると。そのためにビジョンとしては10の重点領域を選んで、五つの科学原理の取り組むんだということを言っています。それをつなぐために三つのイニシアチブが立っていて、左に下のほうのエネルギーフロンティア研究センターというのは、基礎研究に特化した仕組みです。分析すると、社会課題を基礎研究でどう解くかというふうに言われます。そのポイントを今から、あと、一、二分で申します。次にいってください。
これは実際に現場に入って、どうしてそんな仕組みをつくったんだということを言って、多くの人がお答えたのは、今回のこの仕組みは今までと違って、最初に課題を解決するためにシステムから入ったと、つまり、未来のエネルギーシステムを描いた上、実現するために、ここは基礎研究に特化していますし、実は応用研究も、非常に重要なのはそのとおりなんですけれども、基礎研究に特化をして選んで、そこに集中した研究投資を行っているということであります。
その取っかかりが2001年から2003年の検討で、次にいってください、システムをどう描いたかというのはそんなに難しいことはやっていなくて、目指すべき37の研究方向を先に示したと、それをいろいろ検討して10の重点領域に転換をして、1個の重点領域で何をするかということを基礎研究に限定して議論したと。最終的に10の報告書が出ているんですけれども、78の基礎研究群が選ばれています。
その後、それに加えて、この78の基礎研究群というのは、結局、五つの科学原理に取り組むことで共有化できるんだということまでまとめた後、ファンディングに入って、できたのがエネルギー研究フロンティアセンターということで、次にいってください、だから、この研究センターは一番上の行は飛ばしますけれども、10の重点領域のうちのどれか一つは必ずやらなければいけない。それから、五つの科学原理のうち、どれか一つは必ずカバーしなければいけないということが、公募段階から条件として示されてできているということであります。
最後にいってください。これは我々がまとめた簡単化したフローなので抜けているところがありますけれども、まず、社会課題を設定した後、ポイントはシステムとして見たということだと思います。それをここに書いたように研究方向に転換し、研究対象に変換し、研究課題に転換し、最終的に基礎研究群と五つの科学原理に持っていったということであります。ちょっと見にくいんですけれども、これをやるために諮問会議、それから、ワークショップが非常に重要な役割を果たしていて、私たちの解釈は、こういうことをやるためにはエキスパートのジャッジメントが必要なんだと、ただ、そのエキスパートのジャッジメントは、諮問会議のようなトップダウンと、ワークショップのようなボトムアップの両方が要るんだと、それをうまく組み合わせたときに、その結果としていいファンディングなり、仕組みができるんじゃないかと考えています。
以上です。
○小山田 ありがとうございました。
すみません、時間が押しておりますので、質疑の時間は省かせていただきます。会議後、お二人に直接、お話しいただければと思います。それで、ほかに海外のこれに関連しましたまた資料としましては、AAASのシンポジウムであるとか、合同の研究会議、SciSIPのインベスティゲーターカンファレンス、また、来週月曜日に政策研究大学院大学で開催されます科学と政策をつなぐというシンポジウム等に関して資料を用意しておりますので、後でごらんください。あと、次回、第3回構造化研究会は8月20日、15時~17時にOECD科学技術産業局次長の原山優子先生をお招きして、セミナー形式で開催したいと考えております。こちらもぜひご参加いただければと思います。
それでは、最後に科学技術政策研究所、桑原輝隆所長より閉会のごあいさつをいただきます。
○桑原 桑原でございます。きょうは、皆様、本当に活発なご議論をありがとうございました。時間がかなり制約されていたので、本当は言いたいことが言えなくてフラストレーションをお感じになっていらっしゃる方もたくさんいらっしゃると思いますけれども、この後、時間がある方は、ぜひ、懇親会でいろいろ議論させていただきたいと思います。
それで、きょう、私が非常にフレッシュだったのは、ご議論の中である種の社会実験も必要だと、こういう提起で、私が個別でも申しましたけれども、文科省はこういう研究に行政が足を突っ込むようなことをしたと。これは巨大なある種、社会実験になっていまして、これをちゃんと前に進めるために非常に重要なことは、きょうは土屋さんとか大竹さんとか、それから、山下さん、斉藤さん、こうして出てきていると。これが最も重要です。これが何か1年後ぐらいにいやいや出てくる係長しか来なくなったと。この時点でこのとおりになったらおしまいですので、そういう人たちを絶対逃がさないということで、これからやっていきたいと思います。
それから、行政との連携は特にいろいろ仕事を進めていく上で重要で、伊地知さんからデータのお話がありましたけれども、アメリカは80ページで日本は8ページと、同じことで今でも再生産されていまして、第3回イノベーション調査というのを今、総務省と折衝している最中なんですね。前回の調査は少し小規模でやったので企業数をふやしたいとか、サービス産業をきちんと再利用したいとか、それから、質問についても無形資産の問題を少し扱えるように質問をふやしたいと、全部、バツがついて、アウト、アウト、アウトと。
我々も研究開発でやれることは最善を尽くしているんです。OECDのしかるべき人から統計委員長あてにレターを出してもらって、日本がちゃんとデータを収集してくれることをOECDでは強く希望しますと。考えられるありとあらゆる手練手管を使っているんですが、それでも、そういう状態だと。これはもう行政と連携して、いろいろ制度官庁と戦っていかないとどうしようもないということで、これからもさらに実践を深めるように手を携えてやっていきたいと思っています。きょうはどうもありがとうございました。(拍手)
○小山田 きょうはありがとうございました。
以上をもちまして、第2回「科学技術イノベーション政策の科学」構造化研究会を閉会させていただきます。長時間、おつき合いいただきましてありがとうございました。