成果・資料
【CRDS】第1回「科学技術イノベーション政策の科学」構造化研究会議事録
第1回「科学技術イノベーション政策の科学」構造化研究会2012年2月13日(月)
長野 皆さんよろしいでしょうか。予定の時間を過ぎてございますので、これより「科学技術イノベーション政策の科学」構造化研究会第1回会合を始めさせていただきたいと思います。
私、JSTの研究開発戦略センターのフェローであります長野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
まず最初に開会の前に事務的な御連絡だけ申し上げたいと思いますけれども、マイクが大体お二方に1つぐらいの割合で置いてございますが、御発言の際には紫のボタンを押して赤いランプがついたのを確認してお話しいただければと思います。
それでは、まず初めにJST研究開発戦略センターの上席フェロー黒田昌裕より開会のごあいさつを申し上げます。
黒田 皆様こんにちは。黒田でございます。
本日構造化研究会ということでございまして、御案内のように、「科学技術イノベーション政策のための科学」という文科省の事業がつい数カ月前に始まったばかりでございます。なぜ今その「科学技術政策のイノベーションの科学」というものをやらなければいけないかということが一番大きな課題であると思っておりまして、私が考えますには何点かその要素があると思いますが、経済・社会が御案内のように急速なグローバライゼーションが進んでおりまして、その1つの原因が、長足に進歩した20世紀以来の科学技術というものがそのベースになっていると思うんですけれども、片方で人口の構造も急激に変化しています。また、環境の問題やエネルギーの問題も大きく問題を抱えている。そういった話がグローバライズされた社会の中で一緒になって急激に動く中に今各国があると。その結果が非常に不安定性を導いていることになっているのだろうという気がいたします。
片方で、実はITを含めて非常に人間社会にとって貢献をしたわけでございますけれども、そのこと自身がまた不安定性をもたらすような原因になっている。1人1人が情報を共有化できるようになった。情報が世界じゅうに瞬時に同期化できるようになった。そのことがまた人々の価値観の多様性を今まで以上にはっきりさせて、それがぶつかってコンフリクトをもたらすような社会になっている。そういったことが現在起こってきている1つの大きな社会が抱えている問題だろうと思います。そのことがいろいろな紛争にも関係ありますし、経済的なコンフリクトにもつながっているだろうと思います。
そういうものを考えたときに、これからの科学技術そしてイノベーションの政策というのをどういうふうにやっていくかというのが非常に重要な課題になっているわけでございまして、昔NSFのニューライターさんがこちらに見えたときに、日本の科学技術政策は極めてインテューイティブにやっているんですよという話をしたら、彼は、いや、それはアメリカでも同じだと。アメリカではインテューイション・アンド・インビテーションであるという言い方をしていまして、やはりすべての国がそのことについて今悩んでいるということがそのときわかりました。
ここにありますように、科学技術イノベーションの政策をどうやって科学的にやるかというのは、直感的に何か現代が抱えている問題をただ単に見つけるのではなくて、現代の社会そして自然がもたらす行動、その中から科学者が見て観察をして解決すべき問題は何かということを発見する。これは科学者自身が何らかの好奇心を満たすような科学研究をやるだけではなくて、やはり現代社会が抱えている問題を解決するために科学が何をなし得るかということを考えなければいけない時期に来ているということと同時に、現代の科学を一番知っている科学者だからこそ解決すべき問題と解決するときの問題がわかるという意味では、科学者自身がそれを発見することによって科学者が科学を研究するその好奇心というものも多分満たされるだろうというふうな気がします。
そういったものから現代が抱えている問題、そして、科学が解決すべき問題が何であるかということをある意味で集約し、そして、構造化していく。ここにも科学的な作法がなきゃいけない。その科学に対して、しこうしては科学技術政策に対していかなる政策手段でいかなる政策のやり方で社会を変えていくかということを構成するやはり科学者がいて、そこからいろいろなポリシーやインスツルメントを使って政策のメニューが提示される。今度はその政策メニューの中から人々が合意できるような政策を選択するということが必要になってきて、その選択の結果が行政・政治によって実際に現場に移されていくということだろうと思います。それがまた世の中を変えていく。そういうサイクルを常に循環しているわけで、このサイクルの中で科学技術がサスティナブルな発展をもたらすような形で寄与できるような形でスパイラルな構造がだんだん上部に上がっていくというような、そういう構造を科学技術そしてイノベーションの政策としてどうしてもつくらなければいけないということだろうと。それが今回の「科学技術イノベーション政策の科学」をやろうということのきっかけになったのだろうと私は考えているところでございます。
そのためには、科学自身が非常に複雑、そして、いろいろな分野が分野横断的になっているということ。そして、例えば観察者が社会を見て課題を発見するときには、従来の自然科学者だけの感覚ではなくて、人文社会科学の人たちも一緒になって解決すべき問題をきちんと発見していなきゃいけない。また、国民の合意形成のときには、合意形成のツールと、国民自身がどういう意識を持ってどういうことを考えて何を合意形成できるかということを含めて、いろいろな社会学等々の科学が対応していかなきゃいけない。そういう意味では「科学技術イノベーション政策の科学」そのものがまさに分野横断的で、シングルディシプリンで何かできるようなものではなくて、いろいろなディシプリンが集まっていきながら、結果的に科学としての1つの確立をやっていかなきゃいけない。そういう意味では大きな課題がそこに与えられているだろうというふうに考えていまして、きょう一歩踏み出すこの構造化研究会ですけれども、私自身の意識では、科学というのはある意味で観察事実、エビデンスに基づいてある構造化をやっていると。ディシプリンをその構造化に基づいてつくっていくということが科学の1つの作法だと思っておりますので、いろいろな観点でいろいろなエビデンスが出てくるのだろうと思います。どんなエビデンスが必要で、そのエビデンスをどういうやり方でピックアップして、そのエビデンスから何を解釈して、何を問題だと見つけて、それをインスツルメントに結びつけていくかという構造化をしていくというのが、エビデンスをこのサイクルの中で各所で生かしていく1つの方法だろう。それを続けることによってこのサイエンスが確立するのだろうというふうに思っているところでございます。
きょうは大きく分けまして2つのセッショに分けておりまして、セッション1では、今申し上げましたまずSTI(サイエンス・アンド・テクノロジー・アンド・イノベーション)ですが、その政策の科学、その領域というのは一体何をやるべきか、どういう構造を持っているという形で我々は構造化をしなければいけないのか。いろいろなScience Questionがあります。そのScience Questionをピックアップしていって、これからその構造化を進める進め方をいろいろ議論していくというのがセッション1の課題でございます。
セッション2のほうは、その得られた知見をどうやって実際の政策に生かしていくか。そして、提示された社会の問題を解決し、かつ、社会のシステムを含めてイノベートしていくためにその成果をどう生かしていくかというのがセッション2の課題でございます。2つの課題についてきょうは広くいろいろな立場から御意見を賜ればというふうに考えている次第でございます。少し長時間になりますけれども、どうかよろしくお願いいたします。
長野 ありがとうございました。続きまして、政策研究大学院大学の大山達雄副学長よりごあいさつを申し上げます。よろしくお願いいたします。
大山 政策研究大学院大学の大山と申します。今回「科学技術イノベーション政策の科学」ということの事業の一環として私どもの政策研究大学院大学が一応総合拠点という形で採択をいただいたわけですけれども、そういう意味では私どもの大学は御存じのように公共政策の政策研究をメジャーとする大学院大学であります。そういうことで、かなり広く公共政策、パブリックセクターにおける政策の策定、計画、実施、評価、そういったものをどうすべきか、客観的・合理的・科学的にやるにはどうすればいいのか、そういったような研究をしている学生がほとんどなわけです。
その中で私たちの大学では科学技術・学術政策プログラムというのがございまして、それが確か2004年あたりからだったかと思いますけれども、スタートして、ドクターの学生が主ですけれども、そういう教育・研究指導を行っております。大学自体そんなに古い大学ではないものですから、古い大学ではないといいまして、前に埼玉大学の政策科学、まさに政策科学なんですけれども、政策科学研究科ということで17年ぐらい教育・研究の経験がありますから、それと合わせますと全部で35年ぐらいになるかもしれませんけれども、学生、特に外国人の学生が多いんですけれども、研究指導に当たっております。
ということで、科学技術・学術政策プログラムというのはこれまで私どもの大学が大体65人ぐらいですけれども、ドクターを出しておりますけれども、その中の確か5人ぐらいがいわゆる技術政策メジャーの学生・ドクターではないかと思います。今回科学技術イノベーション政策プログラムということで修士課程・博士課程の学生を教育***を行うということになるわけですけれども、私どもの大学***かれている数からいっても科学技術は非常にいっぱいいるとは決して言えないような状況であります。そういうことで人数的には5、6名という、現在のところはそのぐらいなわけですけれども、今回総合拠点ということの役割をどういうふうにやるかということに関しては私どもまだはっきりは決めておりませんけれども、幸いにして4つのグループ、東京工大さん、あるいは、大阪、京都、九州、そういう非常に強力なメンバーといいますか、研究としても実績を持っておられるような大学が一緒にやれることになったようですので、そのことに関しては我々もできるだけコンタクトを密にしながら協力をしながら、あるいは、お互いにある意味では担い合いながらということになると思いますけれども、成果を出せたらというふうに思います。
御存じのように、科学技術という分野というのは決して学問的体系として確立されている分野ではないと思っています。私はそんなに詳しいわけではありませんけれども、そういうふうに思います。ほかの経済学あるいは社会科学の分野と比べても、あるいは工学の分野と比べても、まさにエスタブリッシュされているとは言えないような分野ではないかと思います。そういうことで、今回の事業に関するプロポーザルを我々が出したときも問題になりましたけれども、アカデミックディシプリンとしての何らかのそれを確立することが目的の大きな1つとしてやるべきではないか。そういうことを今でも考えております。実際そう簡単にもちろんこれが1年や2年、あるいは2年や3年、あるいは4、5年でできる研究だとは思いませんけれども、私どもが公共政策ということでかなり広く経験とか実績をそういう意味では持っているつもりでおりますので、そういうことを含めて今度は科学技術イノベーション政策ということで、日本国内よりもこれはかなり国際的に頑張らなければいけない分野ではないかと思っております。どこまでできるかは別として、何らかのアカデミックディシプリンとしてのエスタブリッシュができれば国の1つのモデルになるのではないか。
それから、もう1つは、もちろんこれはあくまでも政策イシューですから、そういうことで確立してイノベーション政策のまさにプライマリー、インティベンテーション、エバルリュエーション、あるいはレビュー、そういったようなものが確立できればそれなりにかなりいい成果が得られたと、審査員の先生方にもそういう点では評価いただけるのではないかという期待をいたしております。
そういうことで、これから我々の政策研究大学院大学の中ではイノベーション政策というのは非常に大きなグループではありませんけれども、これから国内、今回文科省の先生方、研究機関共同でやりますけれども、そこで済む問題ではないと私はやはり思っていますし、オールジャパン、オールカントリー、ナショナルを人材を探しながら利用しながら協力を求めながらやっていく必要があるとあると思います。そういうことである意味では期待もいたしております。この構造化研究会というのはそのための1つの基礎になるのではないかということで私どももこれがまさにスタートランだなという意識を持っております。ぜひ拠点の先生方皆さんもちろんですけれども、日本全国で、私どもたまたま総合拠点という形では活動はさせていただきますけれども、協力をしていただければということをお願いしてごあいさつにかえたいと思います。
長野 ありがとうございました。
それでは、続きまして、文部科学省のほうから科学技術・学術政策局の局長でいらっしゃいます土屋定之様よりごあいさつをいただきます。よろしくお願いいたします。
土屋 文部科学省の科学技術・学術政策局長、土屋でございます。きょうはお忙しい中、先生方に「科学技術イノベーション政策の科学」構造化研究会にお集まりいただきましてありがとうございました。
この「科学技術イノベーション政策の科学」のアカデミカルな整理は冒頭黒田先生のほうから非常に整理してお話しいただいたところなので、私からあえてまた申し上げるのもそんなにうまくできませんし、なので、役所の立場からこの重要性を申し上げて、ぜひ今後の御協力をお願いしたいというふうに思います。
この動きについては、2年ほど前にちょうど当時民主党政権に政権交代して、民主党として成長戦略をつくるということが2年ほど前にあったのは覚えておられると思うんですが、その中で私ども文部科学省が投資すべき分野として、人材養成はもちろんですが、この科学技術分野への投資というのは大事だということで、その成長戦略の中に入れようと思ったわけですが、よくよく考えてみますと、科学技術への投資は非常に重要だということを前提にいろいろなことを考えていまして、なぜ重要かというところが実はよく整理されていなかった。というのは、成長戦略というすべての活動を一堂に会した中で何が重要かと、こういう議論をしたときに、本当にこれが重要であるという証明がなかなかうまく説明できなかったという状況がありまして、その中で黒田先生に御相談をし整理していただいたわけですが、そのときにこういう学問・ディシプリンをつくっていくことの重要性を非常に痛感したと。
言ってみれば、ここだけの話ですが、政策決定プロセスも今は思いつきと度胸で大体政策が決まっているようなところもなくもないわけなんですが、いつまでもそういうことをやっていたら日本もなかなか進展していかない。特に経済力も相当陰りが見えてきてじりじりと下降ぎみの日本がまた再び光り輝くためには、やはり効果的・効率的な政策を展開することが必要だし、そういう意味でエビデンスに基づく科学政策あるいは政策全般について行っていくことが重要だということを非常に認識し、予算要求も周りから見るとなかなかこの厳しい時代になかなかつかないよと言われながら頑張ってきて、きょうに至ったわけです。
こういうことで、非常に重要だと思っている中で、特に昨年の福島第1原子力発電所の事故以来、政治決定と公正中立な科学的知見をどう提供し、それを受けてどう政治決定するかというのは非常に重要な問題になってきていまして、まさに時宜を得た非常に重要な活動にこの「科学技術イノベーション政策の科学」がなっているのではないかというふうに思っております。きょうはそのための構造化研究会ということで、各先生方お集まりいただいて、これをさらに詰めていただくということで、積極的な御意見を賜って、さらにこの分野が深化していくことを期待しておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。どうも失礼いたしました。
長野 どうもありがとうございました。
それでは、次にセッション1のほうに移らせていただきたいと思います。セッションチェアのほうはJST研究開発戦略センター副センター長の有本建男が務めさせていただきます。
有本 有本です。きょうはありがとうございます。このセッションのテーマが、「科学技術イノベーション政策の科学」の科学としての深化を目指してということで、Science Questionの追求という、ちょっと抽象的でありますけれども、今から4時半までということで、私はもとより研究者ではありませんで、ずっと役人をやってきた実務家でありまして、きょうのポイントは、この運営の仕方ですが、こういう形でやるのが一番いいかなと思っているんですけれども、積み上げをするためにドキュメントはカチッと残しておきたいと思います。ただし、きょうはやはりこの後のセッションもそうだと思いますけれども、最初ですのでしっかりいろいろな意見をかなりシャープにプロボカティブな意見も出してほしいということがありますので、今世界標準になっていると思いますけれども、チャタムハウスルールというんですか、名前は出さない、しかし、全体のこういう参加者がいたということはドキュメントに残した上でディスカッションのアイテムは残しておくというルールが一番いいかなというふうに思っておりますので、それに御賛同いただきたいと思いますけれども、それから、きょうはもう1つは、第1回目ですので、さっきもちょっと言いかけましたけれども、議論をまとめるというのではなくて、いろいろな多様な意見を述べていただいて、今後の次の第2回目なりにつなげていくということが大事かなというふうに思います。最後にはある程度まとめたいとは思ってございますけれども。
それから、Science Questionというのがよくわからないんですけれども、どうもアメリカがScience Questionというのを使っているものですから。これは要するにトゥー・ビー・パンディッドとかいうところじゃないかと思うんですね。いろいろな研究テーマ、こういうテーマがある。しかし、その前に、今の土屋さんでもはっきりわかりましたよね。土屋局長が悩んでいることについてどう科学の側からちゃんと知識なり方法論をいけるかと。しかし、土屋局長はノーマティブですから、規範的でこうであるべきだと。しかし、サイエンスのほうはオブジェクティブなんです。さっき夢が出ていましたけれども。そのつなぎというところで、そのつなぎも研究の対象にはなると私は思っておりますけれども、それでは岡村さんから簡単にイントロのところをお願いします。
岡村 CRDSの岡村と申します。イントロのほうをさせていただきます。
その前に、きょうの構成は、私のほうからイントロを差し上げた後に、話題提供ということでNISTEPの伊神さんにお願いしていて、その後1時間ちょっと全体議論というふうになっております。
イントロの内容はこうした流れです。まず位置づけということで、先ほどもお話があった気がしますが、ステップ1のところは、サイエンスを通して深化とかそういうところに注目をするということになります。なので、政策形成のつなぎをどういう時期にするかというのがこのセッションの範疇ではないということになります。
今しがたもお話がありましたけれども、Science Questionは何を意味するか。これ実は造語というか、余り一般的な言葉ではないということはわかっていながら使っているんですけれども、新たな学問領域である「科学技術イノベーション政策の科学」が究明すべき問いというふうに、かなり抽象的には定義しています。これはよく言われるResearch Questionとは多少違うんじゃないかなということでこちらは考えていて、Research Questionというのはやはり論文を書くためにはいろいろな研究者コミュニティーごとにResearch Questionがあって、それに答えを出すという研究活動をしていると思うんですけれども、今回この「科学技術イノベーション政策の科学」をつくっていくというときに、いろいろな既存のコミュニティーが一緒になってやっていかなければいけないということで、個別のResearch Questionというレベルよりはもう少し上の、のレベルで何を追求すべきかということをコミュニティーとして共有すべきではないかというそういう考えに立ってResearch Questionと少し区別した、もう少し本格的なものとしてみました。
これは同じですね。これから一緒にやっていくに当たって共通言語がない中でやっていかなくてはいけないので、まずはそのゴール・ミッションとして何を追求していくのかということを***そういうことでこのセッションをScience Questionを追求するというふうにさせていただいております。
その前に我々として数年「科学技術イノベーション政策の科学」について検討はしてきたんですけれども、どういった内容のものであるかということを最初簡単に御説明したいと思います。
ここの出発点の確認、ここはちょっとスライドをざっと見ていただければいいんですけれども、いろいろ社会的経済的ニーズがあってこういう「科学技術イノベーション政策の科学」をつくっていくというようなことになっているというところです。
この図なんですけれども、この科学が何を対象としていて、何をすべきなのかということを1枚にまとめたものであって、上の部分にあるのが、社会的課題の発見から科学的な発見があって技術の発展があっていろいろ課題を解決していくという道筋もあるんですが、それだけではなくて、社会システムの変革など、そういったことが一緒になってそのイノベーションであったり社会的課題を解決していく。こういうループを考えていまして、それに対して科学技術イノベーション政策というのがどういう寄与ができるのかというのが主要な課題であるというふうにとらえています。
そういう世界があるとして、ここの「科学技術イノベーション政策の科学」が取り組むべき内容としては、社会が直面する課題の抽出であったり、科学技術が解決すべき課題の抽出、あるいは、社会システムの改革が必要な課題を抽出して、こういったものをエビデンスとしてまとめ上げてその政策メニューとして提示していくこと、政策内容に対するエビデンスをつくっていくことということと、もう1つは、エビデンスだけではなくて、実際その政策形成をどうやっていくかというプロセス自体ですね、政策決定過程をより戦略的なものにしていくということと、あとは社会との関係、社会からその課題をどう抽出していくか、あるいは、どういうふうに声を聞いていくか、そういった両方をやっていく必要があるというふうに考えています。
ここはこの科学の社会の中の、先ほど説明があったので説明はしませんが、ポイントとしては、エビデンスをつくる観察型の科学だけではなくて、構成型の科学というのも入り得るものであるというところを示しています。
これは両方、政策と科学というのが両輪になって一緒に進化していくというのがあって、そういったコンセプト的なことを考えています。
こういう前提に立った上で、この科学によって何を究明していくのか、Science Questionは何かということを御紹介したいと思います。
これを考えるに当たって、まずどういうふうな考え方をすべきかと考えたときに、やはり政策の課題というのを俯瞰的に見なくてはいけないし、それを少し構造化した上で、その***抽出していくべきだろう。もう一方で、関連する研究というのはいろいろな分野で積み上がってきていると思いますので、それを俯瞰的に見て、それを構造化していく。その両方を見据えた上でScience Questionというのを見ていく必要があるのではないか。また、これは1回こうなりましたときに決まるものではなくて、常に見直していくというダイナミックなプロセスが必要ではないかというふうに思います。
対象とする政策の領域ですけれども、これは今「科学技術イノベーション政策の科学」としておりますので、やはり中心的な対象というのは科学技術政策であり科学技術イノベーション政策だろうと。当然、だから横断的な政策領域ですので、環境政策、エネルギー政策、いろいろな領域と重なる部分は当然ありますが、やはり中心的な課題というのはこういったところから抽出すべきではないかというふうに考えます。
ここから出る課題というのをもう少し細かく具体的に書いたものがこの図になっていて、政策というのは、政策目的があって、それに対応する政策手段を考えて、政策の中身・要素というのがあって、あとは政策形成過程があるというふうに整理したとすると、それぞれごとにさまざまな政策課題というのが提起できるのではないかと。細かいので1つ1つは読みませんが、さまざまな政策課題があるんですが、それを少し構造化してみたのがこの図です。
政策課題を先ほどの図のようにも整理ができるんですけれども、このように科学技術イノベーション政策のレベルによっても、包括的・横断的レベルとか、分野のレベルであったり、あとは研究開発の実施のレベルであったり、いろいろなレベルによっても提起できるのではないかというふうに考えています。
今までが政策課題の話だったんですけれども、これからは、先ほどの右側のほうで研究領域というのがあって、いろいろな学問分野で科学技術とかあるいは政策と関連するというか接点となるところでもいろいろな概念であったり方法などがたくさんいろいろなのが出てきていて、学際的な学問分野をつくっていかなくてはいけないだろうというふうに考えています。
ただ、ここをもう少し構造化して考えていく必要があると思います。次の3枚が参考情報ですけれども、御紹介します。
まずこれはBen Martinさんが2009年ごろにサーベイしたもので、Science PolicyとInnovation Studiesに関して歴史的に1950年代ぐらいからどういった系譜になっていて、どういったクラスターというか、どういった研究分野かというのを少し歴史的にまとめたものです。
もう1つ、これは、一番左はThe Science of Science Policy A Handbookというふうになっていて、まさに新たな科学技術政策の科学ということで2011年に出たハンドブックの構成になりますが、幾つか関連する領域でのハンドブックの目次、もちろんこれ以上にもっと細かいところまでを見ていますが、いろいろなハンドブックがあって、やはりハンドブックというのは1つその学問がどう構成されているのかというのを見るのに物すごく参照するにはいいのだろうということで、今集めて見ています。この一番大きな区切りで見るだけでも、それぞれの学問でどういったことが議論されているのかというのが少し想像がつくというか、アイデアがいろいろ浮かぶのではないかなと思います。
最後、先ほどはハンドブックということで研究・学問分野を見たのですが、こちらは教育としてどういうのを提供しているのかというのを少し構造的に見られないかということで、この今出しているのはサセックス大学のSPRUの修士課程のものですけれども、幾つか構造化してみたものがあります。これは左側の大分類・概要というのはCRDSのほうでつくったものですが、科学技術イノベーション政策あるいは政策形成の理解というところ、あとは科学技術イノベーションの理解という自然科学的な、SPRUの場合はちょっと入っていないですけれども、知見の理解であるのと、あとは、それが経済・社会にかかわったときにどういう問題があるのかというものです。最後にそれぞれの分野の基礎理論であったり実証的分析方法があったり、あとはイシュー、ドメインに着目したような科目がある。こういった教育というのがされていて、これも1つ構造化というのを考える上で1つの情報になるのではないかなと考えています。
今までが政策を見ていくのと研究を見ていくのがあって、そこの真ん中をつなぐようなScience Questionというのを追求したいというのがこのセッションの目的なんですけれども、それを考えるに当たって参考にしたものがあって、これは3年ほど前にアメリカの科学技術政策の省庁連携のタスクグループがありまして、そこが出しているロードマップ。ここでもやはり科学技術にかかわる政策関係の人がこういったことはこたえられなくてはいけないだろうということで出したものです。そのために科学というのが答えというか情報を提供するということで、ここに10個ありますが、そういうようなものを出しています。
試案というのを今つくっています。今までの話を参考にしながらいろいろ中で議論しながらつくっていまして、我々の考えとしては、1つは、社会というものの中に科学技術イノベーションシステム、政策形成プロセスというものがあって、その中に幾つかオープンフリーのプレッションというのをつくれるのではないかと。1つは、科学技術イノベーションシステムをダイナミクスを理解するということ。もう1つが、その政策形成のプロセス自体、あるいは社会との関係というのを理解するということ。もう1つが、今一番恐らくフォーカスが当たるだろうというのが、科学技術イノベーション政策の社会経済的影響を理解するというところになっています。もちろんこれはきれいに3つに分かれましたものではなくて、お互いが相互に関連し合うというものをどういうふうに認識するか。その中に幾つか細かいクエスチョンというのを立てていくことができるのではないかというふうに考えています。
ちょっとこれはただの今の参考で、1つの雲の中でももう少しブレークダウンをしていくことができるのではないかということで、今ちょっと中途半端な状態ですけれども、そういった試みもやっていく必要があるのかなというふうに考えています。
もう1つは、ちょっと具体的な、今まで少し概念的な話だったんですけれども、今実際文科省の推進事業も動いておりますので、それぞれのプログラム事業がどういったところに位置するのかというのを、我々の勝手な理屈で申しわけないんですけれども、そのままリンクしたものになります。もちろん文科省の推進事業だけをこの研究会で解決しているわけではありませんが、もちろんそれにいい貢献をしていきたいという思いがありまして、少し試しに幾つかリンクさせていただいております。
ということで、きょう私のほうのイントロダクションはここまでなんですけれども、研究のほうの概念的ないろいろな整理があるということは情報提供させていただいたんですけれども、NISTEPの伊神さんのほうから実際本当にビブリオメトリクスという手法を使って定量的に見るとどういう研究がされているのかというのをこのすぐ後に御紹介いただいて、その後、最後に全体議論になるんですが、全体議論では主にこのScience Questionの検討の方向性について御議論いただきたくて、その中で足りない視点はどういうものなのか、あるいは、政策課題というのはどういうふうに抽出していくべきか、あるいは、いろいろクエスチョンがある中でどういうふうに優先順位をつけていくことができるのか、そういったことについて議論いただきたいと思います。
私のイントロのほうは終わります。
有本 岡村さん、どうもありがとうございます。
それでは、政策研の伊神さん、お願いします。
伊神 政策研の伊神です。よろしくzお願いします。
今ほどの岡村さんの話で、Science Questionを考える上で関連研究領域を参考にする必要があろうということでありました。私のほうからはビブリオメトリクスを使って科学技術イノベーション政策研究を俯瞰したと、そういう結果を御紹介いたします。
きょう御紹介するのは、まず1つ目が、Research Policyという雑誌に注目して、このResearch Policyの知識がどういう分野の知識でできているか、また、そのResearch Policyの知識がどの分野に波及しているかということを追跡した結果を御紹介いたします。
もう1つは、もう少し幅を広げて科学技術イノベーション政策研究のマップ、過去15年にわたってどういうような研究が進展してきたのかというものをマッピング・オブ・サイエンスという手法を使って見てみたという結果を御紹介いたします。
分析に用いたデータですが、科学技術イノベーション政策にかかわると思われる主な雑誌、20雑誌ぐらいを抽出しております。この雑誌の中に1996年から2010年まで約1万5,000件の論文がございます。この論文を対象にしたということです。データベースに関してはSCOPPUSというものを用いております。これ本日結果を御紹介しますけれども、あくまで議論のベースで、これが決して現在の科学技術イノベーション政策研究すべてを網羅しているわけではないという点は御承知おきください。
これが具体的に使った20雑誌でして、このような雑誌を使っていると。基本的には1996年から雑誌は継続しておりますが、一部の雑誌については途中から始まっているということになっております。
これらの20の雑誌が論文数がどう変化してきたかというのがこのものですが、96年ぐらいは大体700件ぐらいだったのが、どんどん論文がふえて1,800件ぐらいになっていると。2009年、これ非常に多いんですが、一部会議の答申類も含んでいるというのもあります。とはいいながら、順調に論文数がふえている様子が見えてくるということがわかります。
これが分野のバランスで、一番多いのがAmerican Economic Reviewで、それにアメリカの科学技術省の学会誌、Research Policy、Scientometricsが続いているということです。詳しくはお手元の資料をごらんください。
具体的にResearch Policyを対象にした分析というものを御紹介したいと思います。これはまずResearch Policyに掲載されている論文が何を引用しているかというところをまず見ます。それの分野分布を見ることによってResearch Policyの知識が基本的に何からできているかというのをあくまで近似で***めていきたい。次に、そのResearch Policyに掲載されている論文がどこから引用されているかというものを見ることによって、じゃあこの知識がどこで使われているかということを大ざっぱに見ることができます。もちろんこの引用というのは議論がありまして、必ずしも知識の流れとは関係のない引用もございますが、ここでは1つのプロキシとしてこういう事象を使うということでございます。
具体的には、先ほど申した期間内、約1,300の論文が出ておりますが、これの引用関係を見ると。この1,300件が引用している論文が約1万6,000、1,300件を引用している論文が2万5,000ということです。
今から分野分類を申しますが、これは実は分野分類というのも結構難しくて、論文のデータベースによって結構変わってきます。ここではSCOPUSの36分野分類というものを基本的に用いておりますが、これはちょっと粗い場合もありますので、一部はもう少し細かい分野で見ているということです。
これが結果でして、まずこれはResearch Policyが引用している論文を見ています。一番大きいのがビジネス・経営・会計で、次に経済学ということで、大体この2つの分野で70%ぐらいはいっているということです。
次に、このResearch Policyはどこから引用されているかというのを見ますと、今は70%がこの2つの分野に集中していますが、もう少し広がってResearch Policyを引用している分野を見ると、この分野は大体2つで50%ぐらいで、引用している分野が広がっているということがわかります。
これをグラフ化すると、この青いバーはResearch Policyが引用している分野です。なので、ビジネスとか経営、経済学に集中しておりますが、被引用、Research Policyを引用している分野を見るとこう広がってくる。例えば地理学、コンピューター科学、工学、デシジョンサイエンス等々に広がっているということで、このように知識の広がりが見られるということがわかってきます。この1つの雑誌を見ても、どこからナレッジをもらって、どこへそれがスピルオーバーしているかというのが見えてくるということになります。
次に御紹介したいのは、今は1つの雑誌だったわけですけれども、もう少しいろいろな雑誌を含めて科学技術イノベーション政策研究というものを俯瞰したら何が見えてくるかということを分析した結果を御紹介いたします。
基本的にこのMapping of knowledgeというのは1つのSciSIPとも関連するような最近盛り上がっている分野でございます。これで基本的にどういうことをやるかといいますと、まず我々が何をマッピングしたいかということを決めると。科学技術研究全体だったり特定の科学技術だったり、今回はこういうイノベーション政策をマッピングしたいということを考えるわけです。もちろんその知識がどうつくられるかというところで、論文・特許・www上の文書といろいろあるわけですが、ここの分析では論文に注目すると。データベースはSCOPUSを用いて、ちょっと聞きなれない言葉かもしれませんが、論文間の引用というか結びつきの強さをはかるいろいろな方法があるんですが、今回は書誌結合というものを用いております。これは次のページで御説明します。それを使ってある種の地図を使って何が動いているかということをやるということです。ここら辺の手法は***もやっていますし、例えば東大の立花さんなんかもやられている。似たような手法を使ってこういうような分析をされているということになります。
書誌結合というのは何かというと、基本的には論文の引用文献の共通度を見てみようということです。例えばAとB、こういう2つの論文があって、それぞれが10件の論文に載っているとすると、今大ざっぱに2件の論文が共通だったらこのAとBは何かしらの関係があるだろうということで結びつけていくというようなこと、カップリングしていくということをします。このAとBという論文間にある種引力が働くと考えて、重力モデルによる論文のマッピングをしていくと。先ほど言いました書誌結合の力が0.2以上で結びつけられて論文間は引力が働きます。すべての論文間には、その引力だけだとつぶれてしまいますので、そのつぶれるのを防ぐために斥力を働かせるということです。そういうような、こういうある種分子ドウリ規格みたいなものを用いてマップをつくってあげると。そのマップを粗視化して、今からお見せしますが、研究領域を決めて、研究領域群の名称はまだ単純に論文のタイトルの、当然これはアブストラクトとかそういうところも見られるわけですけれども、今は論文のタイトルのキーワード分析の結果となっております。
基本的な情報ですが、20雑誌を使いまして96年から2010年、この間の論文数は約1万5,000。0.2以上のリンクが約8,000件ということで、リンクで結びつけられた論文数が約5,000ということになります。この5,000がどう結びついているかというのを見ていくわけです。
これはマップです。2002年時点のマップというのは何を言っているかというと、96年から2002年の累積で見ています。96年から2002年の論文を書誌結合でくっつけるとどうなるかということで、大きく2つのドメインができます。これは見にくいんですけれども、1つ1つの点が論文です。例えばこれがこう書誌結合でつながっている。これを粗視化してあげると、こういうようなある種細胞的なこういうところが成長しているというのがわかりますので、この塊が***だと4つあるということです。
じゃあこの4つが何かというのをお示ししますと、この分析によりますと上2つが垂直統合とかそういうようなvertical differentiationとかそういうことが入っている。この真ん中に関してはエピブリューの分析が入ってきているというものが見えます。1つおもしろいのは、これはジャパニーズという言葉が入っているんですね。なので、この時点、これはある種の頻度分析で出していますので、日本が研究対象になった論文がある程度あるというのが見えてくるということです。ただ、最近になると当然チャイナとかそういうのがふえてきて、ある種研究対象としての日本というものをどう考えるかというのも1つの論点かもしれません。
これが2004年。1個戻りますと先ほどからいろいろふえてくるわけですが、ここら辺にクラスターが成長していますし、こういうところも成長してくる。個々には見ていただければいいと思うんですが、1つおもしろいのは、このpublic science; science cited; industrial relevant scienceということで、科学と技術の関係性みたいな研究が出てきているということがわかります。まさに今サイエンスリンケージとかそういうところで分析が行われていますけれども、科学の知識を技術にどう生かすか、こういうのが見えてきているということです。
2006年。またさらにこれが下のビブリオのドメインとつながってくるということです。こちらはこちらで成長してきている。
おもしろいのは2010年で、先ほどのサイエンスとテクノロジーのところが上につながってくるんですね。上とつながって、上の例えば29とか27のクラスターは何かというと、university patenting activity、university inventions、university spilloversということで、科学と技術のつながりというところにまず注目がいって、その次に主体としての大学、大学での特許生産、大学の知識移転というのが注目を浴びたというのが見えてきているということがわかります。
あと注目したいのは、ここに25番、これ平均出版年を出しているんですが、ここ最近急激に成長してきたドメインがあります。これはh-indexというもので、当然調先生なんかは御専門ですが、こういうh-indexというインジケーターが急にふえてきたのもわかりますし、おもしろいのは、24、34、keyword based technology roadmappingとかそういうことですね。あと、university departmental web siteということで、情報通信系のそういうナレッジも結局こういった形で研究領域が出てきているということが言えるかと思います。
あと、私専門じゃないんですが、例えば2007、このあたりにtwo-sided markets; payment card pricingとか、ここら辺も新しい研究領域として出てきているということがわかってまいりました。
これはその中でキーワードの分布を見てみようというので、色が見えないんですが、サイエンス、テクノロジー、イノベーション、ファームと、こういう4つのキーワードを見ました。そうすると、この真ん中のドメイン、主にscientometricsに関係する***サイエンスというものがたくさん出てきて、テクノロジーとかイノベーションはばらばらと出てきている。一部サイエンスとテクノロジー、イノベーションという言葉が重なっているんですが、基本的にはばらばら出てきていて、少なくともタイトルを見る限りでは、これらの研究というのはそれほど重なりが大きくないのかなというのが見えてくるということです。
真ん中を特に見ますと、じゃあこのscientometricsのところは結構大きいドメインだけど何をやっているかというと、インジケーター、エバルリュエーション、パフォーマンス、プロダクティビティーということで、論文分析とかを評価にどう使うか、パフォーマンスをどうはかるかという研究がなされていることがわかると思います。
以降は雑誌ですね。それぞれの論文はどれかの雑誌に出ていますので、どの雑誌に出ているかというのをプロットしています。画面と紙に印刷したのが色が違うので申しわけないんですが、ごらんいただければ分布が違う。ここはScientometrics、ここはResearch Policy。見えていないんですが、このあたりにIndustrial Organizationがあるということもわかりますし、Technovationというのがある。
1つ興味深いのは、雑誌と雑誌が重なるところですね。先ほどのuniversity patentingというところは例えばResearch PolicyとScientometricsが重なるようなところですし、ここら辺、literature-based discoveryというのがTechnovation、Scientometrics、あとアメリカの科学技術のインジケーターの雑誌がひっかかるというところが見えてくるということでございます。
以上まとめますと、この20雑誌をざっと見ただけでも多くの研究領域が存在しているということです。ただ、タイトルだけの分析ですけれども、科学、技術、イノベーション、産業を対象とした研究それぞれの間の知識のやりとりというのはそんなに大きくないのかなということ。あと、科学計量学というのは、やはり評価のための指標づくりというのは永遠のテーマでずっとやっているんだなと。例えばh-indexみたいなものが出てくるんですが、じゃあ連綿とやられているインデックスが政策に使われているかというと、なかなか使われていないということがありますので、そういうのをどうインプリメントしていくのかというのが1つの課題かなと。
冒頭申しましたけれども、研究対象としての日本というものの魅力はどうなんだろうというのもあると思います。日本独自の研究テーマがあるのか。研究のリサーチトピックという意味では何かしらバウンダリーに新しい研究テーマが埋まっている可能性はないか。科学と技術の間のリンケージへの注目ということで、大学が生み出す特許や知識移転への注目がありますし、あと、データマイニング、ウエブなどの情報処理技術の活用という視点もあります。こういうものを統合するようなScience Questionというのが、もちろんScience Question自体は選択的なニーズからあるわけですけれども、ある種それを動力としてこういう分野融合というか知識の融合みたいなものを進めることができればいいかなと考えております。以上です。
有本 伊神さん、ありがとうございました。それでは、今3時25分ぐらいですので、4時半までわずか1時間しかありません。できるだけたくさんの先生方から一言だけでもいただきたいというふうに思っております。そういう意味では余り議論が深まらないと思いながらも、最初に私が。土屋局長はもう帰っちゃった? さっきのあれ物すごく印象深いのは、科学技術政策は思いつきと度胸でやっていると。これは実は6年前だったと思いますけれども、マーバーガーがこのScience of Science Policyを発案して、OECDに圧力をかけてヘルシンキで1日がかりのワークショップをやったんですよ。そのときの冒頭で彼が言った言葉と全く同じ。そのときには度胸とは言わなかった。思いつきと偉い先生方の押しで決まっていると。これじゃあ困ると。非常に2人が全く同じだなと。しかし、6年ほど日本はおくれるような気がいたします。
さて、それじゃあどなたからでも結構ですけれども、ちょっとこれ非常にブロードで、何から一体始めたらいいのかという。はい、どうぞ。
梶川 東京大学の梶川と申します。岡村さんがScience Questionの試案を出されましたが、非常に重要だと思いますけれども、この中を見ると、社会的経済的影響を理解するとか、社会との関係を理解するとか、システムのダイナミクスを理解するということで、理解するということを言っていて、この「科学技術イノベーション政策の科学」をサイエンスとして推進するのはそれでいいと思うんですけれども、政策のためのという考え方、そういった***の側面を強調すると、もっとScience Questionは広げられたほうがいいんじゃないかなと思います。
例えば社会の動向とか科学技術政策の動向を把握するとか、その把握した事実に基づいて対象とかシラップスの政策を設計するとか、それから、政策が実現されたときの影響評価とか、理解するというところから把握する、設計する、評価すると、そういったところをやっていかなきゃいけないんじゃないか。その把握する、設計する、評価するにおいてもまだ完全にクエスチョンに落とし込めているわけではなくて、どちらかというとこのプログラムのミッションといいますかそういうものに近いものだと思うんですけれども、もっと広げて、それを具体的にどういうクエスチョンにするかというのをアカデミアと政策当局と一緒に議論していく必要があるのではないかというふうに思います。コメントです。
有本 ありがとうございました。今のは回答は要らないと思いますので。とにかくだれがこれを使うんだと。政策、ニーズ、あるいは、土屋局長の、さっきは意図的に言ったんですけれども、だれの意思決定に使うのかというのが常にないと、論文だけで終わるということになりかねないということではないかと思いますので。それでは、どうぞ、どんどん。どうぞ、小林先生。
小林(直) 早稲田大学の小林ですけれども、ちょっとやはりScience Questionというと、どうしてもこの領域が広いので、私の今までのバックグラウンドから言うと、少しイノベーションに特化したお話をしたいんですけれども、もともと私は経済産業省系の独立行政法人に長くいましたので、イノベーションとその評価みたいなお話からいたしますと、やはり政策課題の前に社会的イシューあるいはグローバルイシューでしょうか、そこをどうやってスペシファイするかというか特定することが必要かなという気がいたします。
個人的に言いますと、やはりこの20年日本の経済がある意味低空飛行というか停滞をしているというのがあって、科学技術の責任だけではないんですが、なかなかやはりそれがイノベーションに結びついてこなかったという反省が多分政策当局も科学技術推進指導のほうもあると思います。それは今でも余り変わっていない。それを考えたときに、やはりサイエンスとテクノロジーとイノベーションをそれぞれ見ていって、それが本当にどうやってイノベーションになって社会にコントリビューションできるかというプロセスをやはりきちんと見ていく必要があるような気がいたします。
今の伊神さんのお話で、ポリシーをきちんと見ていくのは必要だと思うんですけれども、やはり個々の分野でどういう研究がどうイノベーションにつながっているんだろうというものをちょっと分野別にきちんとフォローしていくことも必要かなという気がいたします。
有本 非常に大事な御指摘です。ちょっと最初のうちはダーッといろいろな提案・アイデアを出していただいて、それから少しというふうに思いますけれども。どうぞ、植田さん。
植田 研究開発戦略センターの植田です。「科学技術イノベーションの科学」ではなくて「科学技術イノベーション政策の科学」ということで、方法論として事例研究というんですか、日本政府は明らかに科学技術イノベーション政策というのがたくさんあるわけですね。競争的資金の倍増とかポスドク1万人認定支援、いろいろな過去にとってきた科学技術イノベーション政策があって、それを事例研究で取り上げて、どういう意図でそういう政策が立案されたのか、実際効果はどうなのか、どういう副作用が出てきているのか、そういうのをビジネススクール的にたくさん積み上げるというのも1つの方法として重要ではないかなと。
有本 ありがとうございました。赤池さん。
赤池 一橋大学の赤池です。やはりこのScience Questionというのがちょっと言葉としていいようで悪いというか、むしろこの図を素直に読むと、サイエンスとポリシーをつなぐクエスチョンじゃないのかなという気がするんですけれども。だから、ここで言っているのはResearch Questionの上位概念としてのScience Questionを設定しているということですので、どうしてサイエンスという言葉をここで使おうとしているのかと。どうしてもやはり14ページの絵で言うと右側に引きずられたような印象を持つのではないか。
それと、もう1つは、このScience Questionというのを、仮に今この言葉を使うとすると、これを余り抽象的に議論していてもしようがなくて、どちらかというと、やはりこの発想自体が経営学とか工学的な色彩が強い発想だと思うんです。例えばここで言っているコアなクエスチョンというのは何なのか。そういうところをやはり少し具体的に考えていかないと議論が詰まっていかないのかなというふうに思います。
あと、もう1つは、やはり方法論に関するクエスチョンと、それから、やはり対象に関するクエスチョンというのもあると思うので、その辺の整理もある程度どうするのか。この辺は16ページのほうに書いてありますけれども、という印象を受けました。
有本 どうぞ。
黒田 先ほど植田さんから提案された課題と今の赤池さんの課題の提案というのは密接につながっていると思うんですけれども、あえて「科学技術イノベーション政策の科学」と言っているわけです。したがって、科学技術イノベーション政策というものそのものをいかに科学的にするか、科学的な作法にのっとって、その政策の立案プロセス、政策の実行プロセス、その政策の評価、含めて科学的にやるかというのがこの科学ということの意味なのだろうと思います。
植田さんの言われたことからいくと、過去のいろいろな科学技術政策がとられてきた、それの功罪をいろいろ評価してみるというのは、それがいかなる形で科学的に評価されるかというのが問題で、結果がよかったか悪かったかというだけではなくて、それが科学のエビデンスとしてどうやってどういうやり方で評価したら次の科学技術政策の科学のあり方に結びつくかということをつくり上げていくのがこの政策科学の意味だろうと思うんですけれども、そういう意味でScience Questionと言ったのは、少しこだわっているのは、サイエンスとしてその科学技術政策を実現するという科学がどうあり得るかという意味でScience Questionという言い方をしたんだろうと思います。いろいろな意見を聞かせていただいたらいいと思うんですけれども、そんなものがあり得るかどうかもまたよくわからないところもあるんですよね。
有本 桑原さん。
桑原 政策研の桑原ですけれども、私も植田さんの意見にやや近くて、ケースでやっていくしかないのかなと思うんですよね。それは、政策のための科学となると絶対真理とかいうものが必ずしもあるわけではなくて、社会全体あるいは日本を取り巻く世界の状況が重要な変数になって、あるときは日本がとったオプションが非常によいということにもなるし、周りのバウンダリーが変わってしまうと、結果日本のとった選択は余りよくなかったと、割と融通無碍に変わるんですよね。これは仕方がないんです。
卑近な例で言うと、例えばしばらく前にポスドク制度が公的に日本に導入されたときの最初の時期は、いかに人数をふやすか、いかに短期間で1万人に達するかと。人数がふえることは間違いなく是だったんです、そのころは。ほとんどの人は疑わなかった。ところが、それがだんだん成熟してくると、今度そのプロセスに入った若者たちがその後どうステージアップしていくのかと。そこがどうも余り十分設計できていなかったと。これは後知恵で、そういう将来設計までないままにポスドク制度なんかを目をつぶって始めたのが悪かったと後から批判するのは簡単です。ただし、そんなことを常に言っていると、新しいことは多分何もできませんよね。
例えば人材に関する制度設計なんていうのは、もう文科省も医者の育てる人数をどうするのかと。これも計画づくりということに昔試みたのは誤りだったと。そもそも無理だと。こういうことになっているわけです。医者の人数なんて、国民の数がわかって、病気の発症率がわかれば、極めてわかりやすそうですけれども、そんな世界でもそう簡単にはいかないと。いわんや研究人材とか若手研究者なんてもっと複雑怪奇でよくわからないわけですよ。そうすると、ただ何か新しいオプションを起こさなきゃいけないというときには始めなきゃいけないと。そうすると、こういう科学の役割はそういう状況変化を半歩でも早く認識して、その評価の枠組みを常に与えると。あるときはポスドクがふえることが是という枠組みかもしれないんですよね。ただ、それがしばらくたったら、今度それが定常化したときにそれをどう考えるべきなのか、そこでは何が起こるのかという新しい枠組み・視点が提供されて、それに関連する新しい問題提起とか政策オプションが政策決定者に提供されると。何かそういう動的に動かざるを得ないような気がするんですね。
そうすると、申し上げたかったのは、ケースから積み上げて、過去もいろいろなことが起こっているわけですよね。今のようなケースを積み上げると、例えば大学の秋入学を導入したときに、今何を考えるべきなのかと。まだ十分議論されていない論点があるとかいうことが提起できるかもしれない。それが当面果たさなければいけない役割ではないかと思いますね。
そういう意味で特に日本にとって重要なのは、やはり人口は間違いなく減っていると。科学技術業界については、大学院拡大などがあったので、若い層の人口減というのが大学院拡大で緩和されてきたので、ダイレクトに今まで効いていないんですよね。これからようやく、もう効き始めていますけれども、これから効いてくると。そうすると、全体がふえるという前提のときの政策と、もうとにかく全体は減るというときの政策は相当違うはずで、これはただ私たちまだわかっていないんですよね。インフレのときはデフレ待望論って結構あったんですけれども、本当にデフレになったらとんでもない、インフレのほうがはるかにましだったと初めてわかると。そういう部分があるので、やはりそこはダイナミックにいかざるを得ないのかなと。
あともう1つ、3点目に申し上げたいのが、有本さんがおっしゃったんですけれども、だれのための提案・提言をするのかと。これがわからないと、何をやっていいかが実は出てこないんですよね。これ常に鶏と卵になってしまって、データがないから度胸と勘でやっていると。勘と度胸でやっている政策だったら、データ渡してもしようがないとか、悪循環にすぐなるんですけれども、ただ、私の実感でも2001年に総合科学技術会議ができて、残念ながらちょっとここのところ機能が落ちてしまっていますけれども、すごく変わったんですね。それは総合科学技術会議での意思決定のやり方というのが定式化されて、十分じゃないかもしれないけれども、何か変わったと。そうすると、それが定式化されると初めてどういうタイミングで何をインプットすればいいのかと。それから、政策決定者側からも何が足りない、あれが足りないと、これが出てくるんですけれども、今それがちょっとトランジットの時期で、いないんですよね、次の新組織がまだできていないので。そこがちょっと見えにくいのがつらいところだなと思っています。
有本 貴重な御示唆、特にチャタムハウスルールでもオフレコかわかりませんけれども、常に外からの圧力で政策研というのは政策の正当化のための科学や活動というところで圧力がかかっていて、それが政策の変化ですよね、今の桑原さん。そっちのほうに向けてインプルーブするというふうに向ける科学にするというところ、非常にそこは常に大事なところじゃないかと。ちょっと申しわけないですけど(笑)。
桑原 今の正当化のためのプレッシャーというのは、10年前は強烈でした。下手なことすると殺されるんじゃないかと。そこまで今はなくなっています。物すごくなくなっています。
それから、こんなこと言うと申しわけないけれども、政策のほうがどんどん変わるので、今年こんなこと出してけしからんと言われても、半年ちょっと耐えていると、それを前提にする議論がバーッと巻き上がってきて、こうでなきゃいかんということでころっと変わりますから、今私は研究所内でも、一瞬たたかれても気にするな、しばらく待っていれば風向き変わると、こう言っているぐらいですから、そこは大分変わってはきていると思います。
有本 ありがとうございます。それじゃあ、いかがでしょうか。はい、どうぞ、調先生。
調 東工大の調です。いつもちょっと壊れたカセットのように同じことなんですけれども、いわゆるELSIといいますかそういう部分についてずっと抜けているなというのが気になっておりまして、それは科学技術政策におけるELSIというのも1つあって、それはまだ多分意識は向かっているんですけれども、このプログラムでこの全体の中でそれの倫理的、社会的、あるいは、法的というのを考えないといけなくて、ぜひそこを1つクエスチョンとして立てていただきたいと思います。それこそ来年のプログラムにそういうところが入ると、プロジェクトですが、採択されると、非常にいいんだろうなというふうに思っております。
あと、もう1つは、多分歴史も考えなきゃいけない。先ほど来出ています事例研究なんていう話もそうですけれども、政策的に科学化するということは何回も行われているわけで、そこでどういう問題があったかというのを分析してくださる方がいるといいなと思っています。すべて人任せで申しわけないんですけれども、そういうコメントです。
有本 平川先生。
平川 大阪大学の平川と申します。今の調先生のほうからELSIの話が出ましたので、大阪大学と京都大学の拠点のほうの特徴の1つがそのELSIということなので、それに絡めてちょっと私のほうから提案をさせていただきたいんですけれども、そのELSIのような問題というのは、科学技術についていろいろな側面からそういうELSIの問題というのがあるわけなんですが、これは基本的にはさまざまな当事者、実際に倫理的な問題、経済的な問題、法的な問題、さまざまな問題に直面している当事者がどう考えるか。しかもそれは一筋縄ではいかなくて、基本的には主観的な要素というのが多分に入ってくるわけですね。そうすると、その問題把握、何が実際に問題なのか、何が解決すべき問題なのかということを我々研究者が把握する、あるいは、政策立案者が把握する場合でも、その当事者の関与というのがいろいろなところで必要になってくるだろうと。そういう視点から大阪大学、京都大学の拠点としてはいわゆる最近パブリックエンゲージメントという形で、実際その当事者が関与する形で問題や課題、あるいは、政策やイノベーションに対する期待というものを、そういう主観的な要素というのをうまくまとめ上げていって、エビデンスに仕立てていくというプロセスを考えていまして、そういう点をぜひ盛り込んでいただきたいなと。
例えばこのスライドの中でも16番のスライドですけれども、例えば社会との対話というのが政策形成過程ということで、割と効果的な政策効果の説明とかいわゆる科学技術コミュニケーションの促進とか、あと、社会の声を政策形成にどのように反映するかということで、割と対話そのままになっている感があって、この政策のための科学の本筋からちょっと外れたような位置づけにあるようにちょっと見えるんですね。そうではなくて、むしろそういう対話という形、これは直接のものもあれば間接的なやり方さまざまあるわけですけれども、それをちゃんとエビデンスを仕立てていく方法論の1つとして位置づけると。本道の中に位置づけるということが重要なので、それはまさに我々の課題ではあるんですけれども、そういう位置づけをぜひしていただければというふうに思います。
あと、もう1つは、課題解決に当たっては、科学技術イノベーション政策の中でどうするかということがこの枠組の中でメーンになっているわけですけれども、同時に実際の社会の問題というのは科学技術だけで解決できるものでもないし、また、その科学技術のポテンシャルを生かすためにもさまざまな法的あるいはその他いろいろな制度的・社会的なアプローチというものとの合わせわざが非常に重要になってくるわけですね。そうすると、科学技術イノベーション政策としての戦略をさらにもうちょっと大きく俯瞰するような、ちょうどスライドで言うと23番でほかの政策分野との相互関係とか、あるいは、社会イノベーションとの相互関係はということがありますけれども、そうしたものをどう俯瞰しながら戦略をつくっていくか。そうしたものと我々の政策の研究自体をどう入れ込んでいくかというのをもう一回一歩我々自身がメタから見ていくような、そういうプロセスも必要なのかなというふうに思いました。以上です。
黒田 調さんと平川先生の御提案のあったELSIの問題、我々も非常に重要なことだと思っているんです。阪大・京大を1つの領域拠点に選ばせていただいた***もかなりそこにあると思うんですね。そういう意味では大いに期待しているんですが、合意形成とかその過程におけるELSIの問題を科学技術イノベーション政策の中にどうやって取り入れるか、もしくは、どういうエビデンスを加えれば合理性を持つのか、その辺を決めていくベーシックな研究が多分必要で、その部分についてはやはり何か科学的な手法で決めたい。
片方で、先ほど桑原さんがおっしゃったように、社会がどんどん変わる中で合意形成の仕方も変わるし、合意のあり方・倫理観もどんどん変わっていくということもあり得て、そうすると、その変化をしていくそのものをまた動態的にとらえる構造の把握が必要になってくると思うんですね。僕は経済なんですけれども、経済というのはしょっちゅうそういうことばかり起こっているわけですね。いかに動態的にそれをとらえていくかというところで構造というのを片方でとらえなければいけないということだろうという気がします。
そういう意味で政策科学の科学というのは一面だけではなくて、物すごく自然科学に近い科学技術をどうやって振興させていくか。それが科学技術の役割として社会のニーズをどれだけ満たすようになるか、その効果がどうかという、自然科学の研究分野のプロモーションという意味での政策もあるんですけれども、それを今度社会に生かしていこうとしたときに、社会のシステムをどう変えるかとか、社会の法律をどう変えるかとか、合意形成の仕方をどう変えるかということもかなり大きな要素と思っていて、それがつながらないと、その「・」のとれた科学技術イノベーションは完成しないのだろうと思っているんですが、それをどうやってやるかだと思うんですね。
有本 ありがとうございました。今のやりとりは非常に大事で、ちょっと私の最近の経験でも、先生方もぜひ情報があったら教えていただきたいんですけれども、たまたまワシントンでジュリア・レーンと、それから、ジュリア・レーンの前のプロハムダイレクターをやっていた***ハズバンド、今ワシントンで1年ほど帰ってアカデミーのほうで***サポートしていますけれども、それから、アリゾナステートの先生と話したときに、アメリカのNSFのファウンディングが当初の目的を外れてアナリティカルな方向に行っていると。この民主党がかなりの額をとってアナリティカル。それで、彼らとしてはまさしくぐるっと回すと、ポリシーデシジョンのほうにね。ここのところが非常にやばくなっているんじゃないかということを彼女たちが言っていて、この辺はかなり大事な視点かなというふうに思ったところであります。
ただし、今黒田先生が言った点、私も役人としてずっとやっていて、ELSIというのをポリシーレベルとかファウンディングレベルにどうやって入れていくか。大学レベルとか研究者個人というところなので、これをどうやるかというときには相当そこら辺の方法論とか何かをしっかりやっておかないとなかなか入らないということじゃないかと私も思います。川上先生。
川上 京都大学の川上です。私はもともと医者なんですけれども、今でも免許持っていますけれども、医学というのはおもしろくて、医学というものがあって、そのプラクティスとしての医療があります。そこを考えると、医学という学問が本当に医療というプラクティスに生きるかというところでエビデンスレベルというものを我々はつくっていました。エビデンスレベルは6段階になります。一番低いエビデンスが有識者の意見というものがあって、一番高いエビデンスというのが品質が高い複数の介入を伴う認証試験を行った結果として行われるソロシステマティックレビューをメタ解析すると。メタアナリシスと言いますが、ということなんですね。恐らく皆さんのいろいろな科学技術分野でされているのかとは思うんですけれども、我々の医学の特徴というのはみんな真剣なんです。だって死んじゃうから、病気になったら。なので、医学から医療につなげるところがまず真剣。これはEBMと言います、エビデンス・ベースト・メディスン。その次に今世界の趨勢を担っているのが、さらに次の段階がコンパラティブエフェクティブネス、比較効用といいまして、医学から医療、次は医療から社会福祉というステップが必要になっていて、これは何かというと、例えばAという医療行為とBという医療行為、どっちのほうが費用対効果があり、かつ、いいのかというときには、エビデンスだけではもう片がつかなくなっていて、社会福祉の中で費用対効果を見るためにさまざまな手法がつくられています。これEBMのほうもCERのほうも両方とも完全にエキガクなんですね。ビブリオロジーです。統計学を使ってさまざまな数理統計モデルを用いてマルコシミュレーションとかいろいろやるわけですけれども、そういったことを次で計算すると、今度は学問の力で計算した数字が出てきただけでは政策には使えないんです、医療政策、社会福祉政策には。なので、何をやっているかというと、各国でこの10年間どこも役所をつくりましたけれども、そこでどういうふうにステークホルダーですね、国民全員なんですけれども、あるいは支払者、あるいは医療現場とどういうふうに話すかということを、パブコメの仕方とかテクノロジーアプレーザルをどういうふうに実践するかという作法をいろいろな国がつくってきました。なので、少しそういうことも御参考になるんじゃないかと物理的に思っています。以上です。
有本 非常に大事な御指摘ありがとうございました。どうぞ、伊藤さん。
伊藤(宗) 政策研究所の伊藤です。Science Questionを考える場合にこの政策の科学の役割の範囲というものをある程度はっきりさせておいたほうがよろしいかと思うんです。このスライドですと11ページですかね。いわゆる吉川センター長が考えられたこの機能・範囲という有名な図があるわけでありますけれども、やはり政策のための科学のこの左下の青い部分と上のほうの政策形成の部分、これが構成者あたりのところでダブっております。私も行政に一部携わる者として、やはり行政官というものはある種のエビデンスあるいはある種の緩い意味でのいろいろな政策のメニューというか提言があれば、そこでみずから政策を企画立案いたします。よってそこのつなぎですね。そこをどこまでこの科学あるいは科学を担う研究者、これに求めるか。それに基づいてそこのScience Questionというものを決めていきませんと、余りに過大な要求というものが政策の科学あるいは研究者のほうに寄るということも考えられますし、あるいは、出てきたものをうまく行政官のほうが生かし切れないというような状況もありますので、このあたりをはっきりすべきだというふうに思います。
黒田 恐らくSciSIPの最大のScience Questionなんです、それが。限界がどこにあるかということをやはりはっきりさせないといけないだろうと思うんですね。
有本 小林先生、山下さん。
小林(直) 今のと関連して2つほど申し上げたいのは、先ほど有本さんがNSFの研究所のアナリティカルのことを言って、全部下が観察者で終わっちゃっているわけですね。それはやはり科学者自体***自体がやはり構成者になっていなきゃいけないというのが1点ですね。
それから、先ほど黒田先生がScience Questionというのはこの政策のための科学のクエスチョンは何かというお話だということはわかったんですが、それをサイエンスとしてつくり上げるためには、このすべてのところのエビデンスが必要だろうと思います。特に右の社会・自然に戻ったときのエビデンス、これを何回も回していかなきゃいけなくて、エビデンスというのはこの下だけではなくて、ということは、結局過去の事例も見ていくし、このプロセスのエビデンスから何を抽出するかということが必要なのだろうと。
有本 ありがとうございました。山下さん。
山下 文部科学省の山下でございます。この件はずっと私このポストについてから政策の立場で思い悩んで、何が解決策なのかなと。やはり自分自身のきっかけは、さっき局長もいらっしゃる間にお話しされていましたけれども、やはり我々にとっては結構事業仕分けというのは本当にある意味目の覚める思いで、これはお遊びというふうにとらえられる面もあるかもしれませんが、ただ、事業仕分けの資料、ホームページでもかなり詳細にいろいろなところで出ているので、ごらんいただければと思いますが、多分別に過去の先人の方々が悪かったとかそういう批評ではないですが、かなりエビデンスを使って議論をしようということを行政なりに工夫をしている過程はかなりあったと思っています。
例えば昨年の仕分けの中で1つ大きい話題が、これ本当にそうなのかどうかもわかっていませんが、多分そうなんでしょうけれども、やはり日本の論文生産性は明らかに落ちていますと。これはもう財務省から、きょう財務省の方がいらっしゃるかどうかは別として、キャンペーンが張られていて、要は公的研究資金の投入量に対しての論文生産性は明らかに落ちています。これはでも政策研の方と御相談しても、お知恵のある方と話をしても、やはりデータとして免れないかなと思っているんですが、例えば生産性が落ちている際に、そうすると、やはり基盤をもうちょっとてこ入れしないと競争的に振りすぎたんじゃないかと。第2期、第3期の科学技術基本計画は明らかに競争的資金を倍増にしますとか、間接経費同等にしますとか、かなり競争関係に振っていた面はあったので、そういうことが悪かったのかどうか。あるいは、他方、もうちょっと日本全体が厳しいという現状に立てば、得意なところ、もしくは、日本が戦うべきところに集中化してきちんと投資を考えるべきか。それは別に応用だからとかイノベーションにつながるからだけではなくて、基盤のところもやはりそういうプライオリティーを少し考えるべきではないか。野依先生、科学技術学術審議会の今会長をやっていただいていますけれども、最近野依先生も基礎研究ですらやはりマトリックスをきちんとつくって目的達成型にしていくんだとおっしゃっている流れも少しそういうところがあるかもしれませんし、多分メニューというか選択肢はいろいろあるのかなと。
ただ、私自身が実は事業仕分けの中で一番感じていたのは、わかりやすいデータがやはりどうしても先行してしまって、本当の真実が実は見えていないんじゃないかと。これも何人かの先生からいろいろ伺う中で聞くんですけれども、例えば論文の生産性1つとっても、本当に国際比較、単純にマクロでやることの意味があるのかと。もうちょっと根っこにあるものをちゃんと理解する必要があるんじゃないか。ただ、そこは見えにくかったり、とりづらかったり、わかりづらかったりするんですけれども、全体が俯瞰されていないのに、何となく全体マクロのトレンドが見えているからこうじゃないかみたいなわかりやすい議論だけが先行しているんじゃないかということを感じていて、直ちにそういうものがなかなか審議されないし難しいとは思うんですが、1つこれは別にこれは構造化の問題だけじゃないかもしれませんが、ぜひそのわかりにくいものについて直ちには手がつかなくても、こういう要素があるんだよとか、こういう視点で見る必要があるんだよというところはやはり我々も意識しなきゃいけないし、逆にそういうところを行政側からこういう研究をしてくださいというキャンペーン張るのはちょっと個人的にはどうかなとは思うんですが、そういう課題追求のあり方も少しこういう議論の中で深めることができたらと。我々も日々悩んでいますけれども、わかりやすさが先行してしまうという逆に世の中の流れもあるので、そこのケアも結構重要じゃないかなと。
実は最近省内の若手で勉強したりディスカッションするときがあるんですけれども、そういう議論は少し、逆にデータがたくさんそろってきているだけに感じている問題意識です。
有本 ありがとうございました。
2つほど。1つは、小林先生、黒田先生の議論で、そういうことをやったときに若い優秀な方々が持続的にこういう分野に入って来られるかどうか。ここは常に問題で、そこは多分人材・研究・教育あたりの難問題になると思うんだけれども、もっと腰を据えて基本的に我々がサポートするという。それで、ちゃんとそういう論文誌か何かやって、これ持論ですけれども。
それから、今の山下さんの話は、桑原さんとリンクして、政策・施策は常に時代とともにそのエフィカシーか何か変わっていくわけですよね。そこを配慮しながらやらないと応援団が少なくなるというところがこの科学の難しさじゃないかと思いますけれども。
次は中田先生、それから赤池さん。
中田 同志社の中田です。冒頭で有本さんがプロボカティブなのもいいということなので、あえてさせていただきますが、現在科学技術イノベーション政策ということですね。キーワードが3つ続いておりますけれども、これが非常にある意味危険な、きちんとこの定義抜きには変な方向に行くんじゃないかという危惧があります。科学技術という言葉は比較的ある意味定義しやすいと思います。イノベーションという言葉につきましても、シュンペーターが先に定義して以来さまざまな時代によって定義あるいはとらえ方がひどく変わっていると思います。ですから、極端に言うと、社会的課題を解決するそのある種の仕組みというかそのメソッドがイノベーションという意味。例えばですけれども、経済価値からはるかに広く定義するとしましても、その場合であっても社会的課題というものでは、先ほどの話にありましたように社会との対話を通してやり上げたものを課題と定義して、そこからそれに対するエフェクティブな政策をつくるための政策がイノベーション政策だとか、そんなふうな定義をするとか、何らかのきちんとしたイノベーション政策の定義をしないと、社会的課題を解くということであれば、すべての政策がイノベーション政策になってしまうわけです。ですから、どこまでを我々のテリトリーとしてまずきちんと定義するかを早い段階で決めておかないと混乱するおそれがあると思います。
その方法論として申し上げた1つは確かに社会との対話とかああいうこともありますし、そうであれば、先ほども議論ありましたとおり、じゃあ社会が変わって風向きが変わればどんどん変わっていくのかという非常に不安定なものでもありますから、そこにサイエンス性をどういうふうに担保するか。ですから、ある種の国民の世論等の吸い上げのメソッドとかいう議論と同時に、やはりもう少し違ったもう1つの視点でもって多面的にこの定義をしていく。これはぜひ早い段階からやっていく必要があるんじゃないでしょうか。
有本 非常に貴重な御意見。じゃあ赤池さん。
赤池 まずさっき川上先生が整理していただいたんですけれども、やはりScience Questionのところをちょっとお話ししますけれども、黒田先生の御指摘はわかったんですけれども、逆向きにサイエンスがサイエンス・ベースト・テクノロジーになってエンジニアリングになって、それで、ポリシーのイノベーションに変わっていくという、そんな逆向きの絵も一緒に描いていかないといけないのかなと。そのときにやはり制度化、さっきおっしゃったような制度化が非常に大きなかぎになってくるのかなというのが1つ。
それから、有本さんからお話があった、やはり変わる部分と変わらない部分というのをきちんと丁寧に分けるというのが必要じゃないかと思っていて、既に16ページで変わる部分・変わらない部分というのを少し定義されているように思えるんですけれども、例えば人材の需給を科学技術関係の需給等々とか、例えばモデル経済システムという部分は変わらなくて、それに入れる変数としては部分は変わってくるということで、どこをどういうふうに切り分けていくか。例えば科学技術イノベーション制度、各国のイノベーション体制にしても、上位構造として省庁横断的な統制的な***科学技術推進官庁とファンディングエージェンシーがあってという基本構造はどこの国も一緒で、それの区分けの仕方とか組み合わせ方がその政策の構造が変わる。だから、そういうコアな部分と変わっていく部分をどういうふうに切り分けるか。その切り分けていったときに非常にディシプリンというのが有力な力になってくるんじゃないかというのが、私非常にちょっと今まで議論して感じていることです。
有本 どうぞ。
黒田 今のお2人の関連で僕のあれですけれども、我々の考えたときの科学技術イノベーションというのは第4次科学技術基本計画の中に定義してあるのに対応していると思うんですけれども、新しい科学技術の進化が新しい社会の価値を生み出すということをもって科学技術イノベーションと呼ぼうという定義がされていると思うんですが、そういう意味でイノベーションの形というのはいろいろあるわけですけれども、科学技術の進化が新しい社会的価値を生み出すような、そういう変化をここでは対象にしようと。
そのときでもイノベーションが2通りあって、1つは、科学技術そのもののいろいろな分野のある種コラボレーションというか共鳴というか、そういうことによって生じてくるイノベーションもあります。それから、もう1つは、社会のシステムとか制度とか例えばリレグレーションとかというようなことが社会構造を変えてイノベートになってくる。そこは従来の科学技術の使い方が社会の構造として違うというイノベーションもあり得る。しかし、その両者ともある意味で根っこにあるのは科学技術のナレッジというものをベースにしたイノベーションというふうにここでは考えておいたほうが、余り広げるとイノベーションは物すごく大きくなってしまうのでという気が私自身はしております。
それから、赤池さんの変わる部分をどう特定化するか、もしくは、どうとらえれば変わる部分と変わらない部分がある意味で区分けできるかというのが一番どの科学もそれやっているんじゃないでしょうかね、多分。だから、経済学なんていいかげんだから、やってもやってもそれがつかまえられないから追いかけっこするわけですが、だけど、自然科学の場合はそこがかなりよくつかまえられるようになってくる領域が広がっているというのが目で見えるわけで、このScience of Science Policyの科学というのもまだ全然そこまでいっていないので、そこをどこまで詰められるかというのが進化だと思うんですね。
有本 今のやりとりは非常に大事で、今から何かいろいろ各大学が教育をやるときの基本のところですよね。コアなところとユニークなところをどう教育するかというところにもかかわる話だったんですけれども。それじゃあどなたでしょうか。馬場先生。
馬場 東京大学の先端研の馬場です。ちょっと僕の発言は皆さんと違うのかもしれないですけれども、インターディシプリナリーな研究の一番の特徴というのは、学問のために研究しない。逆に言うと、その研究内容というのは事後的に評価される可能性があって、極めて将来に向けての研究になっちゃうんです。そういったときに、僕のイメージとして、1986年にブルーベイフェローがあって、幸いにフリーマークある国は問われたんですけれども、よく笑いながら言っていたのは、我々の役割というのは土人の太鼓だと。いろいろな戦争に出ていくときにそれぞれの個人で一生懸命戦争やらなくちゃいけないけれども、やはり心がなえますよ。でも、そのときに後ろでドラミングしてそういう勇士を送り出す。我々というのは正しい意思決定をするようなさまざまなステークホルダーがいかに戦いの場に出ていけるかということを鼓舞する。その鼓舞するだけではまずいから、やはり正確な意思決定をできるような、まさにリレースデータとか、そのデータを分析すると同時に提供するのはもちろんで、決して我々は正確なセオリー、そういうセオリーをつくりましょうということを理想だと思っちゃいけないというのは内輪では話していました。
だから、なぜSPRUがある程度影響力を持てたのかというのは、研究のためのエニクサというものがある意味ドラムをたたくという行為だと思うし、そういうふうになると、我々はさまざまな意思決定を最終的にするステークホルダーに対するイネブラーだし、その人が1人だとできないことをよりよくさせてあげるような、そういう仲介者というか調整者というか、ある意味のコーディネーターというか、そういうふうに1個存在として引いたような感じでいたほうが、何かが起きてこういうプロジェクトが終わった後に事後評価するときに事後評価しやすいんじゃないかということは思っています。
ということはなぜかというと、これだけ変化が激しくて先がわからない世界を、特に科学技術なんて全くわからない世界ですから、それに対して何かこれだけのコミュニティーが責任を持ってインジェクションをしてこちらに向けますというのは非常に難しい話で、あくまでも主体というのは個々のステークホルダーであって、我々ができるのはイネブラーとしてそういう主体に対してどのように1つのステークホルダーだとできないことをより独立してやらせてあげることの手助けができるか。そういうふうに考えたほうが、多分余りすごいこと言っちゃ、時間巻き戻されて、あんた何を言ったということをやられたら困るので、今ぐらいの発言にとめられるといいと思います(笑)。
黒田 今の馬場先生の話に全く同感なんです。よく推進委員会で皆さんと議論をすると、この科学のディシプリンを極めるべきだという議論が必ず出てくるんですね。ただ、今僕はディシプリンを極める段階までとてもいっていない。だから、ジュリア・レーンと話したときに、最初インターディシプリナリーという言葉を彼女も使っていたんですが、最近は彼女マルチディスプリナリーだと。それでいいんじゃないかと。その中から何か共通したものが将来出てくるかもしれないし出てこないかもしれない。そういう意味でのシングルディシプリンの何か科学になっているようなものではないというふうに、僕もそう思っています、今。
ただ、Science of Science Policyという意味での科学というのは多分シングルディシプリンにはなり得ない性格のものなんじゃないか。それも1つの新しい科学だと。そういうことがだんだんすべての科学分野でも求められてきているような、そういうものになってきているんじゃないかなというのが僕の今抱いているイメージなんです。
有本 ありがとうございました。それじゃあ小林先生。
小林(信) 筑波大学の小林です。今の馬場さんのお話とか古いタイプのオールドファッションの科学技術政策をやっている人間にとっては非常によくわかりやすい話で、それはそれで同感できる部分は多分にあるんですが、ちょっと全然別の話をしたいんですが、これもまた出口のないようなどうしようもないような話になってしまうんですが、先ほど有本さんがアメリカで気づいた話をしたのと同じように、僕は最近ちょっと気がついたというかびっくりした話をしたいと思うんですけれども、G8で研究評価の会議を、伊地知さんはきょうは来ているんですか、来ていない。日本からは多分伊地知さんが出ていたと思うんですけれども、そこでやったのはブローダインパクトなんですね。ブローダドンパクトの話を今度OECDでもやろうという話をして議論しているんですけれども、そこでとてもショックだったのは、ブローダインパクト、ほとんどニアリーイコールSciSIPなんですね。それは言われてみてなるほどと思ったところもあって、要するにブローダインパクトというのは御存じの方は御存じだと思いますけれども、ちょうどまさに岡村さんの23枚目24枚目あたりのスライドに書いてある、特に24枚目くらい、科学技術政策の社会経済的影響を理解するとありますけれども、これを評価するに直すとブローダインパクトになっちゃうんですね。
これは今評価の世界で話題になっているわけで、実は評価というのは政策側のセクターの問題で、政策は別に政策形成だけではなくて、当然政策そのものもPDCAですから、評価というのは重要なファンディングがあれば評価もあるということで、裏表で必ずあるわけですね。評価も個人の評価、プロジェクトの評価だけじゃなくて、政策の評価もあれば、さらにはシステム全体の評価、あるいは、先ほどのケーススタディなんていう話もありますが、そういうものを含めて非常に多面的な評価を政策の中でもやっている。
それとこのSciSIP、何が違うのかという問題を突きつけられてしまって、返す答えがなかったというのが正直なところなんですけれども、このあたりもSciSIPのバウンダリーとか、あるいは、SciSIPの政策との関係を考えるときに考えざるを得ない。実際今まで評価の枠組みの中で行われていた研究がたくさんあるわけですね、ビブリオメトリクスもそうでしたけれども。こういうものをどうやって位置づけていくのかということなると、かなり入れ子構造になってしまって、出口がないというか、まとまりのない話になってしまうんですけれども、そういう見方もあるんだなという話題提供というか疑問というかクエッションです。
有本 非常に大事な御指摘ありがとうございます。あと15分ぐらいしかありませんので、まだ発言されていないような先生方もぜひお願いしたいと思います。それじゃあ永田先生。
永田 私はScience Questionは何なのかという、このセッションの中での疑問点に関しては1つだけ特に強く認識しておきたいと思ったのが、今いろいろな御議論があったんですけれども、それは黒田先生が先ほどいみじくもおっしゃったけれども、それがScience Questionの最大の問題点だろうとすると、原罪はどこにあるのかと思ったんです。それはつまり言うまでもなくすべて政策決定過程というのが客観的な科学的な根拠だけで行われるはずはないわけでありまして、必ず科学的に論究できない部分についての意思決定というのは、ある意味ではリーダーシップと呼ばれるような社会的***リズムで決定されている部分があるだろうと思うんですね。ですから、すべての意思決定過程が科学的にだけサイロンできるものだといったある種の思い込みというものに対してナイセイ的であるということがこのScience Questionをとるときには極めて重要な視点になるだろうというように思っています。
そういう意味で、私は先ほど来たびたび議論の出発点に提示いただいている図がありますが、それはスライドの11ページのところで、「科学技術イノベーション政策の科学」の機能・範囲という図ですけれども、この図があたかもビジョンのリニアがシングルループになっていることが気になります。もちろん観察者がおり、構成者がおり、それぞれが政策の科学に関与している。そういう役割分担等はこの図をもってすればわかりやすくはあるんですけれども、私はむしろ構成者が立案したさまざまな政策メニューの中から行動者がある種の政策を選択して政策的行為に移行していく過程での合理的な意思決定のあり方というものに対して、それをナイセイするようなもう1つのリフレクションループがあるべきだと思うんですね。ですから、こうしたシングルループではなくて、むしろ行動者から直接観察者なり構成者のところにフィードバックがかかるようなある種のダブルループの構造になっているということが極めて重要な視点を提供することになるというふうに思います。
私はそれを2階の科学と言っていますけれども、2階に上らなければ見えない構造というのもあるんじゃないかと。これは一見科学的だと思われるようなエビデンスを積み重ねても、エビデンスではなくてむしろフィンオブベースで決めなければならない理想もあるんだということを、どのように政策の科学という枠組みの中で言及できるかということが恐らく最大のこのScience Questionだというようなことです。
有本 非常に大事な御指摘。それでは森田先生。
森田 東京大学の森田ですが、私もその推進委員会に入っていまして、ただいままでの議論は大変興味深く、しかし、困惑しながら聞いていて、どういう形でこの「科学技術イノベーション政策の科学」を議論するかということは、黒田先生が一番***毎回こういう原議論が出てくるというようなところでございまして、ただ、私自身の専門は政治学、あるいは、もうちょっと細かく言うと行政学で、所属は法学部なんですけれども、その意味で言いますと、あの図で言うと上のほうのことばかりやっているんですけれども、法律学というのは科学とは言わないし、政治学もアメリカではポリティカルサイエンスと言いますけれども、イギリスでは断固としてポリティクスというふうに言っているんですけれども、そこのところの持つ意味といいますのはこれを考えるとき1つ重要かなと思って指摘させていただきますと、要するに先ほどからエビデンスに基づくきちんとした議論というものが科学だというお話がありますけれども、議論の仕方というのは何通りもあるというのが法律の世界でして、論理というものはあるエビデンスから1つの帰結に結びつくというわけでは必ずしもないなと。それはエビデンスそのものがどうそのエビデンスを使うかということ自体が価値判断を伴うわけですから、簡単に言いますと、法律の場合には原告と被告で同じ証拠について、証拠を採用するかどうかではないんですけれども、違う論理を組み立ていって、違う基準に従ってそれを議論していく。そして、合意なり何なりの結論を出すと。それも完全な合意という形じゃなしに、アンパイヤーの前でそれを言ってアンパイヤーに判断してもらうと。それによって世の中時間の軸を考えた中で物事を決めていくという世界なんです。
その意味で言うと、エビデンス・ベースト・何か、エビデンスもそうですし、ポリシーメーキングもそうなんですけれども、それほど簡単ではなくて、1つの明確なエビデンスが出れば1つの政策が出てくるというのはそもそもかなり楽観的な考え方かなという気がしていまして、余計なことですけれども、マルクス経済学の大先生のところでエビデンス・ベースト・ポリシーメーキングとかいろいろ話をしたきに、そんなの昔からマルクスも言っているという話でした。言われてみればそうなんですけれども、それがうまくいかないところからいろいろ議論が出てきたということで、私も実際幾つかの政策決定にかかわっている審議会とかに出ておりますけれども、現実の問題としては、やはりどういう論理を組み立てていって説得力を持つか。先ほど正当化というお話がございましたけれども、正当化をするといったら、何か自分の勝手な主張を合理化するために理屈を立てるのが正当化というふうな意味合いで使われることもありますけれども、必ずしもそうではなくて、相手をきちんと説得するのに論理をどう組み立てていくかというのも十分正当化であって、エビデンスそのものがそのためのデータとしてかなり使われるということがあると思います。したがって、何がエビデンスなのかということ自体が判断だと。そこを今少なくともRISTEXのほうでやっております公募のほうでは、ジョイント・ファクト・ファインディングで共通に認識できる、両者が否定できないような事実の確認は何かという、その方法を高めていくことによって少なくとも議論の範囲、言葉の範囲を狭めていくことによって少しでも政策が合理化できないかという議論をしておりますけれども、現実にはかなり難しいかなと思います。
1例を挙げますと、ちょっと私自身別なところで例の八ッ場ダムで問題になりました治水にもかかわっておりますけれども、御専門の方がいらっしゃったら、ちょっと違っていたら後で詳しく言っていただきたいんですけれども、要するに治水のための安全というのは、どれくらい山に雨が降って、どれくらい川のある時点の水量が危険になるかということなんですけれども、山にどれくらい雨が降るかということについては観測によってデータを集めます。今では非常に精密な方法で推定ができるそうですから、データがあればかなりの精度で推測ができるらしいですけれども、そのデータはやはり数百年とかそれくらいない限り精度は上がらないと。たかだか今集まっているデータが数十年としますと、誤差の範囲が非常に広くなってしまう。それから、さらに言いますと、計測方法によってかなりのぶれが出てくる。そうしますと、相当危険度の範囲が広くなるわけですね。
今やっております議論は、普通はその場合には一定の範囲の外れ値として外して、その中で物事を考えるんですけれども、外れ値をどの範囲で外すかということ自体は判断の問題ですから、恣意的ではないかという議論が出てくるわけです。現実に3.11が起こってから外れ値も考慮しろといったら、今後はそこらじゅうダムをつくって、堤防をめちゃくちゃ高くしない限りはそれが保てないという非現実的な答えになってくる。この問題をどう解決するか。
イノベーションとはちょっと違うかもしれませんけれども、同じような問題がイノベーションの世界にも出てくるわけでして、何を申し上げたいかというと、エビデンスをどうするかということもそうですが、1つは先ほど出てきていない言葉にしますと、論理というものをもうちょっときちんと考えましょうということと、やはり決める手続の話があります。それがあって初めてこの議論というのは完結するのかなという気がしますし、特に倫理の問題ですね。川上先生お帰りになりましたけれども、要するに財源が限られているときに、だれの命をどう助けるのかというのが今議論になっているわけですから、お医者さんはとにかく人の命を助けることが使命だとしたら、それ自体が今変更を強いられているような状況になってきて、そこで答えを出すというときには、やはりちょっと今までのように1つのエビデンスということで議論していたら答えが出るという考え方だけではなくて、もう少し別の要素を入れたらということだと思います。それは桑原さんが一番最初に言ったかなり重要なことですけれども、今の時点でベストの知恵を出すということは重要ですけれども、後からそれを批判するというのは、これよくないことです。ただし、やはり後から見ておかしい場合には、反省して改めていくというのも必要だと思います。済みません。
有本 おくれまして済みません。では、大山先生。
大山 私もいろいろ先生方の意見を聞いていて思ったんですけれども、これ政策のための科学という言葉なんですけれども、政策科学に関してはそれこそ政策科学という学問があるのかどうかという議論はもちろん1950年代からずっと出ていまして、いまだかつてまだ解決がついていない問題じゃないかと思うんですけれども、私どもも実は埼玉大学のときは政策科学研究科という言い方をしていたんです。それが今は政策研究大学院大学というふうになっていますけれども、1997年にそれが変わるときにいろいろ議論になりまして、結局先ほど馬場先生の言い方でするとちょっと引いてという表現がありましたけれども、ちょっと政策科学というのはまだ時期尚早でもないですけれども確信が持てない。とりあえず政策研究ということでやってはどうかということで政策研究大学院大学という名前になったというのもあります。
それから、先ほどから議論になっているインターディシプリナリーの話ですけれども、これもとにかく学問分野が違う人ばかり、私ども80人ぐらい***がありますけれども、ほとんど全員がアカデミックバックグラウンドが違うといってもいいくらいで、そうしますと、私どもの経験からすると、インターディシプリナリー、あるいは、マルチディシプリナリーでもそうですけれども、言うのは簡単ですけれども、それがいかに難しいことかというのは十分以上に知っているといいますか経験をしております。
ただ、そうはいうものの、やはり政策研究というのは1つの学問分野で解決できる問題ではないということもみんなが知っているんですね。ですから、そういう点ではやはり必ず何らかの協力関係というのが必要で、中には私の分野をやっていれば政策研究は解決できると考えている人もいないわけではないですけれども、それは恐らくマイノリティーのマイノリティーで、まず不可能だということ。つまり社会的なアクセプタビリティーといいますか、合意が得られる話ではないわけですね、やはり1つの学問分野だけで解決するという。私はそういう意味でやはり何らかのインターディシプリナリー、マルチディシプリナリーが必要であるということは絶対条件だと思います。
特に科学技術イノベーション政策というのがこれのテーマになっておりますけれども、これなんかは一応公共政策と比べればまだスペシフィックなサイエンティフィックなナチュラルサイエンスのバックグラウンドをやっている人がかなり解決できそうな気はしますけれども、やはりそれこそ政策の計画・実施・評価、そういったようなものを考えれば、やはり1つの学問分野ではできないと。
それで、こういう事業をやるに関していろいろな議論があると思うんですけれども、やはり何を優先的に考える必要があるかということを先生方のを聞いていて思ったんですけれども、これやはり国際的に日本から何とかしてこの科学技術イノベーションに関する、あるいは、政策とまではいかないにしても、発信をするというのを私はどうも最優先で考えていただくのが戦略的といいますか、必要じゃないか。アカデミックディシプリンとしてできるだけ早く確立したいというのはあるんですけれども、黒田先生がおっしゃるように、恐らくそんな簡単ではないわけでして、ないというのはみんながわかっていることで、みんなやはり自分の学問分野のことはわかりますけれども、全体科学技術イノベーション政策というのになった場合確信が持てないですね。そういう意味で、私はそう簡単にアカデミックディシプリンがエスタブリッシュできるとは思わない。
それで、どうすればいいかということだろうと思うんですけれども、国際的な日本からの発信ということを最優先に考えるのはいいですけれども、やはり1つは、先ほどどなたか先生がおっしゃったケーススタディというあれがやはり1つは必要だと思うんですね。それで、何らかの特定の政策、あるいは制度でもいいと思うんですけれども、そういうことに焦点を絞って、それでいろいろな人がそれに対するレビューをする、エバリュエイトする。そうした上で何らかのレポートをつくり評価をする。そんなのはとっくに本来からいえばやられていると思うんですけれども、確かに余りやられていないのかもしれない。そういうことをやはり国際的にもかなり発信をするというのが、それは必ずしも1つの学問分野で完結するあれじゃないと思うんですね。どうしても違う学問分野の人の協力が必要になるわけですから、そういう形で協力を募った上でアウトプットのレビューをする、エバリュエイトするというのが、それが幾つか加わるためにできれば、やはり学問体系なんていうのは1人の天才がつくっちゃうという分野ではないような気がするんですね。ですから、やはりそういうケーススタディの積み重ねといいますか、あるいは、アカデミックファファレイジの経験の中から出やすい。アカデミックディシプリンに何がコアとして必要なのかというのはやはりそういう中からが一番出やすいと言いますか、そういう中からやはりきて、日本のはこれである、こうしている、日本はこういう現在の結論からすると我々はこれをアカデミックディシプリンのコアとしてやっているというのを発信すれば、それによって、やはり今はこれだけグローバルされていますから、日本だけで、私先ほどオールジャパンでやりたいと申し上げたんですけれども、オールジャパンでも済まないんじゃないかと思うんですね。ですから、やはりこれはインターナショナルといいますかグローバルに意見を募る、あるいは、人の交流をするという中から、そうすれば黒田先生のおっしゃるアカデミックディシプリンといいますか、そういったものもある程度はできるんじゃないかというような気がします。そういうことで少なくとも国際的な発信というのを戦略的なプライオリティーの高いものとして考えるということが私は一番必要だし効果的なのではないかと。以上です。
有本 ありがとうございました。それじゃあ青木先生、手を挙げられていますので、青木先生、よろしくお願いします。
申しわけないですけれども、第1セッションは青木先生の御発言で終わりまして、それから、まだ言いたいことがいっぱいあると思いますので、第2セッションでもどんどん話し合っていただければといいと思います。それじゃあ青木先生。
青木 言おうと思ったことをほかの先生方が言ってくださったので、いいと思っていたんですけれども、インターディシプリン、マルチディシプリンというのは私も正しいと思っていて、さっきの川上先生ですか、医学部の先生がおっしゃったみたいに、人の健康というのが目的なのが医学だけかなと思ったら、福祉政策とかそういうのもやらなきゃいけないというのと全く同じで、科学技術というのを世の中に広めようと思ったら、ナチュラルサイエンティストがやっているだけじゃなくて、制度とか社会基盤を考えなきゃいけないという意味でインターディシプリン、マルチディシプリンというのが本当に正しいなと思います。
それから、もう1つ、全然別のことで私一般の人のパブリックポリシーの関心へのアンケートを見たんですけれども、残念なことに科学技術政策の関心が結構低かったんですね。そのとき、関心の高いポリシーと低いポリシーと比べてみると、自分が直接何か影響を受けるのと国からお金をもらう場合ともらわない場合とで全然違うんですよ。ですから、年金とか教育というのは物すごく関心が高いんですね。その点から言うと、第4期でも雇用創出とか出てくるんですけれども、イノベーションというところをもうちょっとちゃんととらえて、産業へどういう影響を及ぼすかとか、そういうのも、評価が先ほど出ましたけれども、その一部に入れていただけたらと思います。
有本 ありがとうございます。
小田 ちょっと一言。山形大学の小田でございます。5年ほど前に少し科学技術政策を担当していた経験から言いますけれども、ちょっときょう初めて参加させていただいて、物すごく話が発展しているなと、進化しているなと思いつつも、少し神学論争に近いような空中のような感じも受けましたけれども、その後個別の議論でそこのところは少しずつ払拭しただろう。事例を研究したり個別の医学の話とか政治学の話などを聞きながら、少し具体論があるので少しイメージがわいてきました。
ただ、ちょっと確認しておきたいんですけれども、我々サイエンスのためのサイエンスじゃなくて、政策のための科学技術というようなことが10年以上前から出てきています。その代表的な事例の成果として地球温暖化とかああいったようなものが出てきたと。といったことで、それは科学者集めて***しっかりとした科学的知見を***そういったようなことが1つ大きな成果としても言われていて、ただ、時宜によく対応できたかどうかといったような点も問題視されながらやっていましたね。
それに今回はイノベーションというようなことが新たに加わって、科学技術イノベーション政策。もう1つ科学というのは意味があるのかどうかというのは質問なんですけれども、というのは、私は科学というよりは数学と物理、因果関係、これが成り立たないと科学ではないと思っているんですよ。ところが、私一番科学という言葉ときょう出ているエビデンスに基づく、これが一番結びついた経験が実は10数年前に、先ほどの医学の話でエビデンス・ベースト・メディスンという言葉を私は初めて聞いて、そこでヒトゲノムの解読が始まって、設計図というようなことがあって、きょう聞くと6段階の過程があると。ただ、本当に医学が科学ということを言われるようになってきたのがそのエビデンス・ベースト・メディスンというようなことで、ところが、エビデンス・ベースト・メディスンといっても今すぐにでも物事が全部わかるようなことか。そうじゃなくて、環境による人間への影響が、何も遺伝子で全部決まっているわけじゃなくて、つまり因果関係が関与した環境が大きく変化しているというようなことで、きょうも環境が大きく。
有本 ちょっと短く。
小田 ということで、言いたいのは、科学という言葉というのは少しここの共通の言葉としてあるんですけれども、どうもそのイメージがわかない。もう少し物理とか数学とか因果関係をきちんとしないと。それは多分個別の分野ごとにきちんとしていかないといけないんじゃないかなと思っています。
もう1つ、2年前の仕分けの問題があるんですけれども、やはり論点は民主主義の中で民主主義との関係でこの政策の科学というのは何を提言しようとしているのかということで、科学者が科学を理解を深めるためのものなのか、あるいは、万民に持っていく、それが究極的には科学なのか、そこら辺のところを考えていかないと、本件だれにするのか。当面は為政者・行政者に対する提言だと思うんですけれども、だけど、民主主義のもとでは為政者というのは民主主義で選ばれているわけですから、そこのところをどう考えているのか。そこら辺のところを少し***と思いました。
有本 ありがとうございます。
ちょっと宣伝しておきますと、3月に研究開発戦略センターで政府に対する科学的助言のあり方という政策提言をします。これはしみじみ、御存じのように、3.11以降政府部内も政府の外側のサイエンティストもいろいろ助言をしたけれども、それの惨めさ。よくよく調べてみると、特にイギリスが典型なんですけれども、やはりルールがあるんですよ。今の行政府だろうと政治のデシジョンであろうと科学者の側はどうか。これを全然日本は知らなかった。さっき森田先生がおっしゃったように、民主主義における政策決定というのは科学のエビデンスだけで決まるわけではないとはっきり書いてある、イギリス側には。それがイノベーション省の2年前にはっきりルールとして出ていましたけれども、今おっしゃったことは非常に大事で、今からこれをやるときにそういうコード・オブ・コンタクトみたいなものをしっかりした上でやらないとおかしくなるということで、3月に出そうと思っています。
ちょっと時間とりましたけれども、これで終わりますけれども、どうしますか。10分ぐらい休憩。
長野 10分の休憩で、この時計で4時50分。
有本 4時50分。済みません、黒田先生、これはどこかでリトリートして泊まり込みでやらないと(笑)、また相談をさせてもらいます。どうもありがとうございました。第1セッションを終わります。
○○ 休憩の時間中に、もしよろしければ、後ろのほうにコーヒーも用意しておりますので。また、このお部屋の裏側にはお茶もございます。
(休憩)
○○ それでは、セッション2を開始させていただきたいと思います。セッション2は「科学技術イノベーション政策の科学」における知見の政策形成への活用を目指して:~必要な仕組み・課題の検討~ということになります。セッションチェアについては、JST-CRDSフェローの長野裕子が務めます。それでは、よろしくお願いします。
長野 それでは、セッション2のほうに移らせていただきたいと思います。セッション1のほうでは、「科学技術イノベーション政策の科学」そのものに関して俯瞰し構造化を考え、それを通じながらScience Question研究でどういった課題に取り組むべきなのかといったことについて御議論いただきました。この中でも既にもうセッション2にかかわるような話も幾つか出ておりますけれども、セッション2では実際にその政策の科学で得られる知見を政策形成の現場で活陽するということを目指したときに必要な仕組みは何なのか、それに向けた課題はどうなのかといったことについて集中的に議論できればと思います。こういったことをこの関係で議論するのは最近の取り組みの中では恐らくこの場が初めてなんじゃないかと思いますので、きょうはまずは忌憚ない御意見ということをいただければと思います。
きょうはまず最初に私のほうからイントロダクションを短くいたしまして、その後文部科学省の山下室長のから話題提供いただき、また、その後NISTEPの伊藤室長のほうから話題提供いただき、その後は皆さんで議論していただくということで進めさせていただきたいと思います。
まず私からのイントロダクションですけれども、資料もお配りしていますが、まず政策形成に活用するということは何をすることなのかという確認です。ここでずっと何回もきょうはこの絵が出ていますけれども、社会・自然というのを観察し、そのエビデンスを集約・蓄積・構造化して政策メニューの提言につなぎ行動者に伝えといった中のまさに政策を行動者に伝える部分、ここを考えるということが政策形成の活用についての議論ということになるかと思います。
具体的な文章でここで示していますけれども、政策の科学で得られた知見が、政策形成過程で提示されて、政策形成に関与する者が適切に参照するということ。そのためにまず提示される知見というのが理解されやすいように用意されて、その知見が政策形成において当然のようにちゃんと参照されるような仕組みというのが用意され、そういった仕組みが機能すると。そういったことが必要なのではないかということで、一応ここでは考えています。その際、当然のことではありますけれども、政策形成のプロセスというのは広く社会に開かれていて、政治行政のみならず一般の社会、産業界、そういった社会に開かれているということが前提だということでここでは処理しております。
ここで、これもセッション1のほうでもお示しした絵ですけれども、エビデンスの作成から政策形成の活用までの経路という目でもう一度この絵を見直してみたときには、図の下のほうには、例えば社会が直面する課題を抽出し、科学技術が解決すべき課題を抽出し、社会システムの改革が必要な課題を抽出するという、そういったエビデンスというものを見ていくということ。そういったものの中からサイエンスメニューを提示するというところにつなげていく。これが政策形成の中で活用されるということを想定したときに、同時にその戦略的な政策形成の過程をまず実現させるための方法論を開発すること。それから、それに伴う社会との対話の設計と場の構築ということも検討すると。こういったような活動が行われていく。この中で政策メニューの提示がされて、科学技術イノベーション政策のPDCが回っていきながら、社会の流れの中でピックアップと介入されていくと。そういったようなことで絵を見ています。
それでは、その知見を政策形成へ活用するためには何が必要なのかということで、まず1つ目としては、理解しやすい政策メニューを提示できることではないか。この政策メニューというのは、ここでちょっと独自の言葉を持ち込んでおりますので、少し解説をしておりますけれども、何らかの社会的な課題に対応していくために選択肢となる政策内容というものを示す。それに加えて、それら複数の選択肢が実際にどういった社会経済的効果を持ち得るかという評価をあわせて示す。そういった政策のオプションというのを実際の得られる効果まで含めてメニューとして提示するといったもの。こういったものを提示できるということが1つのありようなのではないかというふうに問題提起させていただきたいと思います。この際には提示する政策メニューとはどうあるべきなのかといったような議論があるかと思います。
それから、その際にここでこれは以前に私どもの吉川センター長が産総研の理事長でいらしたときのシンポジウムでのスライドなんですけれども、このときの例では、ある伝統的な科学者コミュニティーの科学者の方々がどんどん研究論文を書いていくと。その研究論文をポイっとほうり投げて、厚い壁の向こうにいる社会の人たち、それは俯瞰的視野を持たないような知識使用者というのが受け取って何とか活用できないかと考える。要するに研究論文による知識はポイっと投げられるんだけれども、決してきちんとシステマティックに活用されるということにはならないのではないかといったような、外側の方向に投げて終わりというようなことになっているのではないかといったような絵がございますけれども、まさに今回議論する場合でも、そうならないようにするにはどうするべきなのかといったことが1つの問題点なのではないかというように思います。
次ですけれども、次の論点としては、その2とありますけれども、政策形成の現場で知見が参照されて、それを踏まえて政策案が作成されて、意思決定がなされる仕組みを成り立たせること。その仕組みというのはここで2つに分けてございますけれども、1つ目が、政策形成過程の適切な場面できちんと知見が参照されるようなシステムを実現するということ。もう1つ目は、かかわる者、例えばエビデンスを生み出す科学コミュニティーですとか、政策形成に携わる政府、産業界、市民などそういった関与する者たちが信頼関係のもとで各自が担うべき適切な役割と責任を明確にすること。こういった2つの観点があるのではないかということで挙げさせていただいております。
まず1つ目のシステムの話ですけれども、問いとして出してありますけれども、この知見が参照されるのはどのようなシステムにおけるどのような場面があるべきかというのが1つの論点だろうと。例えば中央省庁で考えると、予算編成ですとか政策評価、研究評価、ファンディングの方針の作成といろいろな場面がございますけれども、そういったどの場面でどんなシステムの中で機能すべきなのかといったようなことを考えていく必要がある。ただ、その際そもそも政府における政策形成のシステムというのが健全に機能しているのか、そういったこと自身も検証する必要があるだろうということで答えています。
この政策形成のシステムですけれども、当然政策そのものにもレベルがあって、一番上に包括的・横断的政策にかかわるような政策決定ですとか、個別の施策の決定、資金配分などファンディングエージェンシーが行うようなもの、それから、一番下にありますけれども、研究開発の実施ということで、各研究機関、組織、ネットワークで行われる研究会発の実施マネジメント、そういった各レベルにおいてのそれぞれのシステムがあるだろうということで絵で示しております。
次に仕組みの中の関係者の間での役割と責任ということですけれども、この絵もよく私どもで使わせていただいておりますけれども、政策形成側、それから、政策のための科学に携わる者、それぞれが刺激をし合うことによって共進化するといったことをどうやって実現するかといったときに、そのノーマティブなあり方それからオブジェクティブなあり方の中でどうやってバランスをとってやっていけばいいのかといったようなことをここで提起しております。
先ほどセッション1のときにセンター長の有本のほうも少し言及しましたけれども、イギリスのBISのほうで出されたものをここで図式化しておりますけれども、その際ルールが簡単にここに例示されておりますけれども、科学的助言者にかかわるもので、科学的助言者というのは政府機関との関係で一定の学問の自由とか専門家としての立場というものを持ちながら独立性を維持する。一方で、政府側から見たときには、きちんと全体が透明性を持って公開性を持って政策決定側からはその助言を受けとめると。当然その政策決定の科学的助言と相反する場合には、きちんと公式に説明したり正確に提示するということで透明性を保っていくといったようなことがルール化されているというのを参考に挙げさせていただきたいと思います。
そういった関係性を考える上で、これは非常に現実的なケースで考えてみますと、例えば例として挙げていますけれども、政策の科学にかかわるような研究チームがあります。この研究チームがいろいろなステークホルダーと関係しながら研究していこうとしたときに、政策への活用というのを考えようとすれば、例えば研究当初から行政関係者・政治関係者に参加してもらうという考え方もあるかもしれません。ただ、一方で、そのときに研究活動の独立性を保とうとすると、その研究成果に対する介入というのは避けるべきである。そういったときにどういうふうにマネジメントすればいいのかというのは卑近な例なのではないかということで例として挙げさせていただきました。
研究チームのマネジメントにおいて、その得られる知見の政策形成への活用のために何を留意すべきなのかといったようなことというのも1つの問題提起ではないかということで挙げさせていただいております。
最後に、これは紙のほうには載せておりませんけれども、こういった「科学技術イノベーション政策の科学」で得られた成果・知見というのは、当然政治行政が活用しさえすればいいというものではないということを私どもは常にこれまで議論してきておりますので、そういった点を参考のために載せさせていただきました。やはり社会の共有資産として国民・ステークホルダーがきちんとそれに関与し、すべての者が活用できるようにしておくと。そういったことによって透明性を担保して、政策形成プロセスの進化そのものをさせるようにするといったことが必要なのだろうと。これは非常に裏面的ですけれども、じゃあこれを実現するためにはどうすればいいのかといったことも1つのポイントになるかと思います。
最後に、これは今まで挙げさせていただいた論点をまとめてございます。理解しやすい政策メニューを提示するといったときにどうすればいいのか。また、その政策形成の現場で実際使っていく、参照するといったときには、その仕組みの中にシステムですとか役割や責任ということをどうやって考えたらいいのか。そういったようなことを御議論いただければというふうに思います。
これでイントロダクションのほうは終わらせていただきます。
次に、続きまして話題提供といたしまして、文部科学省のほうから山下政策科学推進室長のほうから***いただきます。よろしくお願いします。
山下 それでは、御紹介に上がりましたので、パワーポイントではないんですが、お手元に1枚紙だけお配りさせていただいております。私なりに延べ15年強ぐらいかかわってまいりました。先輩もたくさんいらっしゃるんですが、自分自身が今の行政官の立場で感じているこの問題に対する、特に政策形成プロセスに関してどのように考えていけばいいのかと。結論はないんですけれども、幾つか御紹介させていただきたいと思います。
まず政策形成プロセス、先ほど長野さんのプレゼンテーションの中にもありましたけれども、まず従来というか今なされている政策形成プロセスに対して検証が必要かなという問題意識を非常に強く持ってございます。2つ、立法府・行政府とわかりやすく書いていますが、立法府のほうはちょっと私自分の立場ではないのであえて申し上げませんけれども、例えば審議会の調査審議ということでいろいろな有識者、これは科学者だけではないかもしれませんが、方々に御意見を伺って妥当性を考えていく、あるいは、パブコメをするというようなプロセスがありますけれども、どうしても自分自身がかかわっている中で見ると、どうしても政府ですから結論ありきだし、こういう方向にしたいというのがもう見え隠れしているじゃないかと実際言われますし、そういうのも少しやはりあるんじゃないかなという気がしております。
他方、ここは手前みそで別にすばらしいと言うつもりはないんですが、例えば予算というもので事業をやっていったり、制度をつくったり法律をつくったりとありますが、実際この予算とか政策評価に関しては、文部科学省の中では実は平成15年、16年、ここ7、8年くらい前になるんですが、予算と政策評価をひもづけるんだということを随分内部で議論しまして、かなり苦労して、今実は技術的なんですが、国会に提出される予算書の大事項というベースは今政策評価の事項と全く一致させてございます。したがって、文部科学省の政策評価書をよく読んでいただければ、そこに載っている政策と予算が全部一致をひもづけをされているというところまで一応来ておりまして、その一方、ここはもう政策評価という視点でいろいろな先生方のお知恵、これまでの経験も踏まえて指標開発ですとか、あるいは、今でもやはり悩んでおりますけれども、アウトプット、要は予算投入したからもちろん何らかアウトプットが出るんですが、そうではなくて、実際社会にどういう影響があるのだというアウトカムの視点でものを見ていくんだという指標開発というのも、やはりなかなか難しいんですが、進んでいるかなという気がしています。
ただ、他方、正直言いますと、結果としてはやはり現状の追認、どうしても政府ですので、政府というか組織ですので、自己否定ということにはなかなかつながりにくくて、結果としてやはり現状の追認ということで、エビデンスから例えばひもといていくとか社会的な課題を見出すというような、余りドラスティックな形で取り組まれているかと言われれば、やはりそこは反省が随分必要なのかなと思ってございますし、まさにこの不断の努力というのはある意味できる範囲では行政でもやっているつもり、あるいは、中での取り組みはありますけれども、結果としてやはり当事者としての都合が悪いアジェンダであるとか政策課題というのは、これは縦割りなのか既得権益なのかちょっとどういう視点なのかわかりませんけれども、なかなか取り上げづらい、取り上げられなくいという性質はそもそもあるのかなという気がしております。
そういう中でこの政策のための科学でエビデンスとか分析の基盤が充実・強化されるということについては非常に期待を持っていますし、先ほど私申し上げましたけれども、やはりわかりにくいところはもういいやとリグレクトするのではなくて、そこも含めてどう解釈できるのかというのを行政府もやはり非常に努力する必要があろうと。
ただ、この命題をいただいて何を話すかというときに、実はそもそも従来の政策形成プロセスを改善していく、あるいは、検証するだけでは足りないんじゃないかなということを自分自身が自分の行政経験の中で幾つか実は考えるきっかけがあったので、それをちょっときょうは御紹介したいと思います。論点Ⅱのところになります。
まず最初の①に書いていますけれども、社会のオープン化、グルーバル化に伴って利害が複雑に絡み合う事象に対してどう対応するのかと。エネルギー、環境と書いていますが、ちょっと自分自身の経験で言いますと、実は私は数年前にロシアの日本大使館に勤務しておりまして、そこで日露の原子力に関する協定交渉を担当しておりました。幸いなことに政府間では締結されて、つい先日福島の原発事故がありましたけれども、協定自体も国会で承認され発効されるという滑りになったんですが、そのときにやはり非常に感じたのは、役所の間の縦割りの構造もございますし、国際的な動向の政治力と申しますか、そこもやはり非常に大きいなというのを感じました。例えば日本だとやはり中東依存度が1エネルギーで9割近く占めているような状況で、明らかに原子力のみならずでしたけれども、天然ガスとか石油とかロシアとの関係を強化したいと。この裏には逆の政治の非常に難しい北方領土問題とかもありましたけれども、他方、ロシア側にも実はメリットがあって、ロシアはかなり中国との関係をやはり気にされていて、あの地域非常に中国の進出がめまぐるしいので、そういう外交的な努力として日本とのパイプをつないでおきたいと、そういう思いもあって、非常にサハリンは難しいんですが、互恵的な関係があったのかなと思っています。
他方、この問題を例えば環境で解いたときに、ロシアの政府のいろいろな人、統一見解最近はやはり環境問題は重要なので温暖化対策をすべきだということがあるんですが、やはりつき合っている人の中の半分とは言いませんけれどもかなりの人々の問題としては、やはりシベリアの地域は非常に永久凍土で開発が進みづらいと。早く温暖化したほうが開発が進むので、自分にとっては国益があるんだと。日本企業にも入ってほしいみたいなコメントは相当ございましたし、日本のやはり省エネに対する取り組み・技術についての協力関係を結びたいというお話は相当たくさんあって、やはりそういう意味でも日露の互恵的な関係もあったかなという気もしています。
そこの根っこには、原子力で私特にかかわったので思ったのは、やはりロシアと日本は非常に互恵関係があって、今この福島の状況になってしまって、脱原発という方向性も少し言われていますので厳しいですけれども、ちょうどその福島の事故の前は明らかにロシアというのはウランの濃縮に関してのプラントを大変たくさん持っていて、実はロシアとの関係を結ぶことで日本の核燃料は非常に安定的に供給あるいは確保できるんじゃないかという日本側の思惑と、ロシアはチェルノブイリ以降20数年間30年近く、アメリカもそうかもしれませんが、原発の開発をしていなかったので炉の開発については弱いと。他方、日本はプラントメーカー初め非常に技術力があって、そこに関しての魅力を感じていて、お互いの互恵があったと。その辺すべて、これ実は科学技術イノベーション政策のどちらかというとエネルギー・環境に寄っているので、そのものではないんですが、やはり外交的な視点でどうとらえるかというと、例えば日本国内においても外務省の立場、あるいは、新しい技術の開発とかに関してもちろん文部科学省、エネルギーをどう確保するかという大きなコンテキストで見た際にロシアとの関係を強化したいという例えば資源エネルギー庁とか経産省の立場。いろいろな利害関係が実は複雑に絡みあって、本当に大変難しい問題だったんですけれども、こういった問題を例えばエビデンスでどこまできちんと把握して解決に結びつける、あるいは、新しい協力関係なり政策に結びつけるのかと。自分自身に結論があるわけではないんですが、なおさら今回の福島の原発事故が起こってしまったことも踏まえると、非常にこういう問題は難しいなという実感を持っていて、従来の政策形成のプロセスの中だけで処理できない問題じゃないかなという気がしてございます。
2つ目です。これも皆さんも釈迦に説法なお話で、ステークホルダーの利害の対立が起きる。原子力もそうかもしれませんが、私自身が感じたのは、私10年ほど前に環境省という役所に出向しておりましたけれども、その際に担当として遺伝子組み換え食品の問題を少し扱ってございました。専ら一番御苦労されていたのは当時農水省の方で、消費者団体がやはり非常に遺伝子組み換え食品に対するそもそもの嫌悪感を持っている部分と、これはやはりすぐ導入できるかどうかは別として、きちんと技術も含めて支えていきたいという業界の利害関係が非常に対立化していて、平川先生とか御専門かもしれませんが、当時コンセスサス会議ですとか非常にそういういろいろな取り組みがあったんですが、私が行政の環境省の立場で見ていたときに、やはりここは科学的根拠100%安全だ、あるいは、環境に影響がないと言い切れるかどうかというと、過去の実証からはほぼ言い切れるだろうなと。ただ、未来永劫それが正しいものかどうかということに関しての保証はやはり当時も得られなかったし、今もそこまで煮詰まっていないのかなと。
他方、業界団体の方々が非常に御説明で苦労されていたのは、あくまでも害虫が食べないものをつくるのではなくて、農薬を低減化するだとか、あるいは、たんぱく質でもアミノ酸でもいいんですけれども、新しい付加価値をつけて、非常に栄養価の高いものをつくるんだとか、そういう説明をされていたんですが、実はもっと引いてみると、当時私が感じていたのは、逆に日本の医薬品の中ではもう大腸菌を使って薬をつくる技術なんていうのは当たり前で世界的にも普及していますし、多分大腸菌がつくった医薬品を飲んだことのない人は日本人の中にいないんじゃないかなと思うんですけれども、何で医薬品の問題に関しては余り議論されずに、食品の問題がここまでクローズアップするんだろうなと。逆にちょっとそこの、ここは科学じゃないかもしれませんが、非常に少し自分自身考えさせられる、これも結論がある問題ではありませんけれども、非常に難しい問題だなというふうに感じてございます。
3つ目はむしろ全然視点が違いますけれども、イノベーションをやはり恩恵としてこうむる者が、もう実は政治とか議会とか立法府が余りかむということではないけれども、自治体ですとかユーザーの方が主体となって開発もするし、場合によっては選択もするし、意思決定も進んでいくと。今社会がオープンになっていますから、そういう事例もたくさん出ているのかなと。アップルの事例とかもそうだと思いますし、ここで書かせていただいているエコタウンなんかはもう、地方の行政はもちろんあるんですが、むしろ住民がどういうライフスタイルなり生活を望むのかということで多分議論が進んでいくことがより強くなっていくのかなと思いますし、LINUXなんて本当にそういう形で実際に世の中に普及しているのかななんていうことを考えますと、これ政策形成そのものかはわかりませんが、意思決定・価値判断がむしろ違うところにおりているのかなという感じもしてございます。
したがって、何が言いたいかといいますと、実は政策形成プロセス自体を行政とか政治とかそういう局面でとらえるものがどうしても多いとは思いますが、むしろ多様性がそこ自体ましていて、そこをどういうふうに考えていくのか。あるいは、構造化も概念としての構造化に余りみんな賛否両論というと否定はないと思うんですけれども、そこがどのような形でつながっていくのかということには非常に関心がありますし、ここをやはり我々もよく考えていく必要があるのかなというふうに思ってございます。結論がなくて申しわけありませんが、以上です。
長野 山下室長、どうもありがとうございました。
それでは、引き続きもう1つの話題提供ということで、科学技術政策研究所の伊藤室長のほうからよろしくお願いします。
伊藤(裕) 科学技術政策研究所の伊藤と申します。本日は話題提供ということで、実態的な体験に基づいて政策の現場と研究現場の距離感についてちょっとお話ししたいと思います。それを話題提供として***
まずNISTEPにおける政策のための科学の推進事業の構成というのは、今こういうような形でやっておりまして、上のほうがデータ・情報基盤を整備するということ、下が政策課題対応型調査研究するということで、約20個ほどのテーマに基づいてやっております。上のほうは研究基盤を整備するということ、下のほうは実証分析・事例分析等を行うということで、恐らく次の段階になってきますと、どうやって政策現場に結びつけていくのかという話になってくると思うんですけれども、そこでは幾つか問題があるのではないかということで、NISTEPの調査研究というのは今までどういうふうに政策に利用されてきたのかというのを振り返ってみます。
そうしますと、総合科学技術会議専門調査会等の資料として使われてまいりました。さらに文科省の各種審議会の資料としても使われましたし、科学技術白書等の政府刊行物にも掲載されました。また、国会対応において非常に重要であるということ、政治家対応においての基礎資料として出してくれという話があって対応してきた。その他にもいろいろあるかもしれませんけれども、そういうことがございました。
これは政策研1998年発足以来500冊以上の報告書等を出しているということがあるんですけれども、じゃあということで、行政官から一体どういうふうに依頼があったのかというきっかけをそこに書きました。発見した、つまりインターネット検索でたまたま引っかかってきたら政策研の報告書だったということ。フォロー図が使いたいということ。さらに知人の紹介というふうなことで、政策研には確かこういう研究をしていた人がいるんじゃないかというのを聞きましたというので電話での依頼。さらには、政策研で成果発表会というのをよくやっておりますけれども、そこに出席して、そこでスライドを見て、この図は使えるかもしれないと思ったというような問い合わせ。さらには、白書や審議会等で一時的に使われて、それが2次資料的にそこで見たから、じゃあ自分が主催するほうの審議会・委員会のほうで使わせてもらいたい等の2次資料的な形の使い方というふうに、きっかけというのは行政官から大体こういう形になっています。
政策研といいますのは、文科省のビルの中の16階にあります。15階、17階、18階というのは科学技術に関連する各担当部署なわけですが、そこにサンドイッチされているんですけれども実は非常に遠いという、物理的に近いんですけれども、実は非常に遠いんですね。
ここに課題というふうに示しました。研究成果を政策側に伝える仕組みというのは実はないんですね。政策研という非常に物理的に近いところにいる組織でありながら、ない。ということは、政策のための科学というのは大学のほうでもどんどんやっていくんですけれども、そこがじゃあどうやって政策とのやりとりをする場がないということが非常に問題としてあります。つまりどのような仕組みがあれば研究者から政策側へ、特に行政官ですね、研究成果を伝えられるのかというのが一番重要なことだと思います。さらに、逆に政策側のニーズが研究者側に伝わる仕組みというのも実はないんですね。研究者と政策側の双方向性のコミュニケーションは果たして可能かというところが問題だと思います。つまり、行政の現場とアカデミア・研究者側というのは文化が違うんですね。言語も実は違う。さらに、意思疎通のための翻訳というのが間に入らないとなかなか相手が何を言っているんだかお互いに利用できない。ここにちょっと漫画みたいに描きましたが、研究者が報告書や論文にまとめましたのでごらんになってくださいねと言って渡すわけですね。そうすると、行政官のほうはどこを読めばいいのかわからない。さらに、読んだけれども、求めているのと違うというような、この間に非常に乖離が起こっていることがあります。
つまり、こういうお互いに伝わるような仕組みというのが非常に重要だなということがあります。さらには、この政策側のニーズが研究者側に伝わるのも自然に伝わるというのが理想じゃないかと思います。つまり、政策側がこういうことをしてくださいというのは押しつけになります。それはやはり研究者側としてはしたくないですし、研究自体が狭められる可能性があります。それを何とか自然に知れるような、お互いにわかり合えるような双方向性のコミュニケーションができる場というのをどこかにつくれないかというのがシステムとして1つ観点としてできたらと思います。
さらに、もう1つの観点。研究成果そのままを政策に活用できないということを私の今までの経験から言うと意外にそこを理解されている行政官は少ないように思いました。つまり、こちらのほうですけれども、政策A、政策B、さらにデータベースをガラガラポンすれば政策に活用できるのではないか。そういうふうに考えられる行政官が多々ありましたけれども、結局皆さん十分おわかりのとおり、研究成果を政策に活用するためには、さらなる研究、これは適用する・実装する等が必要であるわけですね。セッション1のほうで川上先生がおっしゃられたとおりに、医薬品開発等、これ基礎研究と医療というのは非常に乖離があります。実際医療につなげるためにはいろいろな研究をしていかなきゃいけないんですけれども、昨今では橋渡し研究という、Translational Researchというのが必要とされているという形に、間をつなぐべきものの研究というのをさらにしていかなきゃいけないところがあります。これはイノベーションにおいても同じです。イノベーションは研究開発と事業化の間にギャップというもの、「ダーウィンの海」とか、かつては「死の谷」とか言っていたものなんですけれども、そのギャップを超えるための研究というのをしなくちゃいけないし、イノベーションにおいてはまだ一体何がそのギャップを超えるものになるのかというのが研究段階にあるような形に全く同じことがここでも起こってきます。
政策A、政策B、データベースをガラガラポンで入れて、さらには実装のためのプロセス1、2、3ぐらいをやって、やっと政策に活用できるかもしれないという、そのぐらい難しいものであるということが容易に推測がつきます。つまり、医薬品開発にしてもそうですけれども、イノベーションにしてもそうですけれども、この政策のための科学においても相手がシステムという大きなものなんですね。社会システム***そういう研究というのはシーケンじゃないということ。メタでもあるし、さらには非常に多様なファクターが入ってくるということ。これをやはり意識した上で研究をやっていかなきゃいけない。政策は複雑なシステム上に乗っているとここに書きましたけれども、これはやはりお互いに理解した上で、じゃあどうしたらいいんだという、ここの間をつなぐような研究というのを別途今後成果を活用するためには研究していかなきゃいけないんじゃないかと思います。
ということで、話題提供として以上です。
長野 どうもありがとうございました。
それでは、これから50分弱、45分ぐらい時間がございますので、全体議論に入らせていただきたいと思います。私のほうからイントロダクションで論点になりそうなことをスタートし、また、文部科学省の山下室長と科学政策技術研究所の伊藤室長のほうから話題提供もいただいたところですけれども、まず最初にほかにもこんな論点があるんじゃないかですとか、こういったことをもう少し考えるべきじゃないかといったようなこと、質問でも結構ですけれども、何なり、まずいろいろな多様な意見を御発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。
桑原 政策研の桑原です。必ずしもほかの意見ということではないですけれども、科学技術政策研究所は第2期基本計画の3、4年目あたり、それから、第3期基本計画の同じく3、4年目あたりに総合科学技術会議からの依頼を受けて、その時点での基本計画の状況をいろいろな意味でチェックする、あるいは、次の計画に盛り込むべき内容をデータディペンデントで何か出すと、こういう仕事を請け負ったんですね。その経験から幾つか感じることがありますので、具体事例としてお話しするんですけれども、青木先生もいらっしゃいますけれども、総合科学技術会議の先生方各分野では御見識がおありであれなんですけれども、例えば次の基本計画をつくるときに一体何が必要かというのは、計画案文づくりぐらいのかなり直近のフェーズまで入ってくるといろいろなものはかなり見れてきています。何が問題か、何がわからないから困る、ここを白黒つけるためにはそのデータが必要だと。論点はかなりクリアになってきますが、それはただ基本計画づくりがもう佳境に入ったときです。ほとんど終わっているときです。そのときにこういうデータが必要だと言われても、我々の研究機関はそのとき何かというと閣議決定の2、3カ月前だったりするんですよね。すると、既にあるデータを見つけて整理して提出することはできます。だけど、これから何か調査をやって白黒つけよう、間に合いっこないんです。
じゃあ問題は、それにさかのぼる1年ぐらい前、この時点で私たちは調査を始めるんですけれども、その時点で政策側はこういうようなところにあるニーズのメニューをちゃんと我々に示してくれるかというと、それはそんな易しいことではないと。もちろんいろいろな御注文はいただくんですけれども、体系立って整理されたものが最初から来るなんていうことは全くありません。それはしようがないことだと思います。
結局何が起こるかというと、2回ともそうなんですけれども、科学技術政策研究所が過去の経験からこういうデータがとれます。我々の問題点はできることを提案するんですよね。当たり前です。できないことを提案すると自分の首絞めますから、できることを提案すると。これは研究者はしようがないんですよね。やれることを提案しちゃうと。あのコウジはこういうことを利害に使うことに使って、これはこういう政策論をやるのに必要なデータですよと。こういうある種のメニューを示すんですね。そうすると議論が始まるんです。その議論は第3期準備と第4期準備でちょっと進み方は違いましたけれども、どっちも半年ぐらいとられました。大体何をやるかを決めるのに半年ぐらい。その過程で毎月会議を開いて議論をしたケースもありますし、議員の先生たち順番に回って御意見伺いでやったと。形式はいろいろなケースがあったんですけれども、その過程でだんだん論点が出てきます。
もう1つは、サーベイが始まった後で、あのときは2、3カ月に1回定期説明会みたいなものをやって、まだプリマチュアなデータは完全には整備されていないとか、あるいは、クリーニングが完全に終わっていないと。そういうデータを多少でもお示しして議論すると、政策決定側のリクワイアメントが非常に明確になってくるんです。いや、本当は知りたかったのはそうじゃなかった、こっちなんだとか、初めてそこで出てくると。
だから、言いたいことは、この政策ニーズとは何ぞや。これを山下さんに来週までに出してくださいと言ったって、それはできることじゃないと私は思っているんですよね。それは何かをおできになると思うけれども、これはやはりプロセス処理へいくしかないと。だから、あるところでリジッドな枠組みがガチっと決まって、次3年間それでいくと。こういう仕事の仕方をすると、これは絶対うまくいかないというのが私の実感で、しょっちゅう行きつ戻りつをやりながらやらざるを得ない。そうすると、重要なのはその場をどう設定するかなんです。ディシジョンメーカーとここにいらっしゃるような研究者サイドの議論の場、これがない限り絶対うまくいかないですね。
さっき伊藤が言語も違うとか、こう言ったんですけれども、確かにそうなんですよね。ただ、全然絶望することはなくて、言語の違いなんていうのはお互いに関心があるとすぐに通じるようになります、実感としても。例えば10年前にビブリオメトリクスで論文のデータで引用数がどうのこうのと、行政官の99%は全く理解しませんでした。被引用数の数のことを議論しているのに、インパクトファクターはけしからんとか、全然違うことを言うと、何の話なんだと。これはかなり立派な行政官も立派なビブリオ以外の研究者もそうでした。ところが、もう数年前からトップ10%の論文の数がどうのこうのといったって、だれでも通用します。トップ10%論文って何なんていう質問はもう出ないです。それから、インパクトファクターはけしからんという議論も出ません。全く出ないではないけれども、だから、4、5年でがらっと変わるんですね。
だから、確かに言葉は通じないんですけれども、ただ、問題意識が共有されていればお互い学んでいく新しい言葉を数年でマスターできるようになると。こういうこともありますから、悲観することはないというのが私の感触です。
長野 実際の経験に基づいたお話、どうもありがとうございました。私もジェーショックでNISTEPでフォローアップ調査にかかわっていましたが、まさに所長がおっしゃったのは非常によくわかるところですけれども、ほかに何か。
植田 研究開発戦略センターの植田ですけれども、エビデンスをつくる仕事で主に科学的な仕事と、政策メニューを提示するというところはかなり質が違っていて、政策メニューをつくる場合はエビデンスだけじゃなくて、ちゃんとした政策メニューになるためにはエビデンス以外の要素もかなり入ってきて、担当する人がちょっとニュアンスが違うのかなという感じがするんですよね。だから、吉川さんの図でエビデンスをつくる人は一番下のどっちかというと観察型の部類に属していて、政策決定する人は上なんですけれども、その間をつなぐ有効な政策メニューをつくる作業というのはそれはそれで別の***がかなり中心になってやらないといけないんじゃないかなという感じがしていて、政策研の研究者に政策メニューをつくれというのはちょっと難しいんじゃないかという気がしているんですね。
研究開発戦略センターでは非常に限られた範囲ですけれども、国がどういう分野のインバイス等々すべきかという細かな政策メニューをつくっているんですけれども、これはもう研究者じゃないわけですよね。半分元研究者でその分野の知識があると。半分行政官ということで、自分たちは論文書いたりそういうことは一切していないので、むしろ政策研でつくっていただいたシミュレーションを見たり、度胸はないですけれども、経験と勘でこうじゃないかと(笑)いうことで、要は結論は、エビデンスをつくるほうにかなり努力を割くいわゆる科学的な人たちと、それから、それをもとに政策メニューを考える、これは狭い意味での研究者ではない集団と、その両方がないと行政は研究者から上がってきたことを行政が咀嚼しろというのは難しいんじゃないかなということで、提案できるとすると、政策メニューをつくるグループ、そこも一緒にSciSIPプラスそこも強化していかなきゃいけないんじゃないかというふうに思います。
長野 重要な御指摘ありがとうございました。青木先生の後に斎藤室長。
青木 桑原所長のおっしゃったことにちょっとコメントを言いたかったんですけれども、総合開発会議で的確な質問をできるようになるのに時間がかかったんじゃないかと思うんですね。それで、状況が変わったというのは、それは重要な要因は、所長とかほかのNISTEPとかJSTの方が来ていろいろ説明してくださったことがバックグラウンドにはあるので、伊藤室長がおっしゃったようにトランジショナルリサーチというんですか、そういうのも根気よくやっていかないとなかなか普及しないんじゃないかと思います。
長野 ありがとうございました。
斎藤(尚) 社会技術センターの斎藤です。第1セッションでミーテールの方ほとんど発言をされたので、どこかで発言しないとと思っておりましたが、社会技術センターは今進んでおります政策の科学のいろいろなメニューでいいますと公募事業を担当しているんですけれども、どちらかというと拠点の仕事ですとか政策研の取り組みを補完したり多様性を広げるところで存在感を示していこうという心構えでやっております。
ただ、社会技術センター自体はかなり以前からいわば、先ほど少し話題になりました政策実装とか社会実装がどうあるべきかというのを非常にローカルかつピースウィルな第1相のレベルで取り組んできたという歴史がございます。そのときにやはり政策の出口側を考えますと、社会技術センターのプロジェクトといいますと、やはり文部科学省だけでは非常に狭いというのが正直なところです。やはり教育なり科学技術研究振興ということを超えて、例えば環境領域であれば経済産業省であったり国土交通省だったり、あるいは、高齢社会の領域を今進めておりますが、これで言えば厚生労働省というところが重要な政策の具体化の役割を担うと、こういうことです。
いつも悩みますのは、そういう広い意味でのポリシーメーカーの人たちにどういうふうに我々のプロジェクトの成果なりエビデンスというものをアピールするかという点なんですが、恐らく科学技術政策のための科学でも毎回推進委員会の議論を聞いておりますと、かぎ括弧で「科学技術イノベーション政策のための」という限定がついているけれども、将来的には政策のための科学であるべきだという議論が常にございますので、やはり最終的な社会への実装という意味では文科省を超えた科学省庁・事業官庁含めた各省庁への政策実装ということをぜひ目指すべきではないかというふうに考えております。
では、どうするかという点ですが、ここがいつも当方の領域会議でも議論になるところですけれども、先ほど長野さんのスライドの中でも、政策メニューを提示する際に、選択肢となる政策内容に加えて、それらの選択肢それぞれについて経済的社会的効果をいかに発揮し得るかということをある程度示す必要がある。これが大変重要なポイントだと思います。
政策研究側が政策オプションを提示すべしというような議論、私も10数年前に科学政策研究所をつくるときにおりましたが、そのころからの議論です。その後のこの分野の取り組みで非常に大事だということが認識されていったのは、やはりこの社会経済的効果の部分だと思います。
桑原所長が10年前非常に行政側のプレッシャーがきつかったというのは、まだある意味で人口もふえ、GDPも伸びという見方の時期でしたので、その時期におけるエビデンスというのは恐らく一義的には経済的なインパクト、例えば研究開発投資をすると5年後10年後にこういう産業創造がなされて経済発展が期待できるという説明がきっとこれがメーンだったと思うんです。ただ、ここへ来て人口も減少に入る、しかも、高齢化社会に直面をし、日本の国際競争力も落ちていくという中でいかに社会的経済的効果をアピールするかというのは、やはり新たなフェーズに入ってきたと思っておりまして、その際に1つは、やはり社会的効果の軸を多様にして政策決定者に示すということが重要だと思うんです。例えばそれはありていに言えば、OECDで利用されているような幸福度指標的なもので、少し単なる経済的豊かさ以外の社会的な効果をアピールする。あるいは、環境分野でいきますと、やはり世代間の負担という問題も相当大きいと思っていまして、例えばこの先5年10年の国民のいわば向上といいますか、生活をいかに豊かにするかという軸で評価する。次の世代の雇用を最大化するかによって、多分その政策の体系は違ってくるだろうと思います。特に政治家の意思決定は最終的にはやはり5年ぐらい、次の選挙までの有力なインプレッションを意識して意思決定がされるので、やはりそれを超えた時間軸での意思決定のためのメニューを提示できるのはやはりこういった政策研究の側の果たすべき・果たし得る役割ではないかというふうに思っています。
もう1つ、各省を巻き込む仕組みとしてやはり考えたいことは、我々に個人の成果を出すときにも意識をしておりますが、やはり各省においてそれぞれ科学技術的なエビデンスに基づいて意思決定をするような方々、簡単に言うとチーフサイエンフィックオフィサー的な方。例えば農水省であれば農林水産技術管理の方々であるとか、あるいは、厚労省の技術統括審議官、そういうような方にきちんとエビデンス及びそのエビデンスの有効性がちゃんと見られるような説明を心がける。例えばプロジェクトなりプログラムの成果報告会にそういう方にも声をかけて、一緒に入って議論をするということ。プロジェクトが終わった後で報告するだけではなくて、プロジェクトの途上において***ということが必要かなと思っています。これから我々の公募プロジェクトのマネージをしていく際にも、できるだけそういう方にも声をかけてやっていく必要があると思います。
もう1つだけ言わせていただきますと、もう1つのアプローチは徹底的にローカルな視点から成果なり選択肢を見せていくということがあると思います。というのは、やはり都道府県レベルでの実装を考える場合でも、どうしても縦割りの構造が残ります。ここは国土交通省のテリトリー、ここは農水省のテリトリーということになりますが、市町村レベルになりますと、もう人の数も限られて縦割りの性格もなくなって、逆に重要なマターであれば首長さんみずからが問題意識を持って動くということになりますので、その首長さんのブレーンに当たるような方にこういったエビデンスに基づいた政策決定をすれば非常に効果的な政策展開ができるということをアピールする。それが全国に敷衍し得るようなものになれば、徹底的にローカルにやりながら、その敷衍化を目指すというのも1つのアプローチかなというふうに思いました。
ただ、一般化をする際にはやはり国際的な標準化というアプローチも一方で考える必要があって、そのためには国際的な標準化の議論にもつながるような成果の仕事をしていくというのも同時に考えないといけないんですが、なかなかこれは難しい課題だと思っております。我々の公募プロジェクトの運用をこれから考える上でもそういうことも意識しながら各省の最終的には政策展開につながるような出口を模索していきたいと思っております。
長野 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
黒田 ちょっと僕も頭がだんだん混乱してきたんですけれども、政策ニーズというのは一体どういうものなのか。それから、政策メニューという言葉も***一体どういうものなのか。政策ニーズというのは行政なり何なりの政策を担当する当局者が持っているニーズではなくて、やはりそのときの社会が持っている課題をどう解決するかということのはずなので、そうすると、行政がそれを発見するときには、そこでのエビデンスというのはやはり科学技術に関する政策ニーズであれば、科学者が現状の科学を一番よく知っているわけですから、今何が問題で、何を解決できて、何が解決できないかということまで含めてエビデンスを示すことによって初めて政策当局のニーズが固まってくるんじゃないかという気がしますね。
ただし、その政策ニーズというのはいろいろなグレードがありまして、もっと細かいレベルで政策メニューに対応したということになると、例えば貧乏をなくするとか、エネルギーを安定供給するとか、そういうレベルのいろいろな政策ニーズという意味での政策メニューもありますけれども、例えばエネルギーを供給するときに原子力でやるのか自然エネルギーでやるのかということについてもオルタナティブなメニューが幾つもあり得るわけですね。さらにそれを供給するときに、発電体制と送電体制を分離すればいいのか、しなきゃいいのかというところでもまた別のグレードの政策メニューがあり得る。その政策メニューをどの段階を問題にして行政が政策メニューなり政策ニーズというのを関与して考えるべきかというのを多分最初に据えておかないといけないんじゃないかと思います。
行政ができるというのは、科学者と違って行政は現在の政策の構造なり政策手段、そういうものがどういう手段があり得るかということに関しては行政しか知らないプロフェッショナリティーがあるわけですよね。その行政の持っているプロフェッショナリティーを使って今政策メニューをつくることはあり得て、その政策メニューの中身について評価軸をどうするかということについては科学者が評価軸を提示・提案するということは十分できるんじゃないか。そういう行政と科学者とのエビデンスのとらえ方ととらえるアドバイズについて仕分けがなされる形になるんじゃないでしょうかね。ややこしい話で申しわけないです。
長野 小林先生お願いします。
小林(直) 多分おっしゃることはそのとおりだと思うんですけれども、科学者側から言うと、先ほど森田先生が論理のお話をしましたけれども、エビデンスをもって演繹的に論理ですべての提案ができるのではなくて、もちろん機能的もありますが、基本的にはやはり仮説・形成・検証だと思うんですね。科学者側ができるのは仮説をつくって、それを提示することだと思うんです。それは先ほどのところで多分構成のところまで回るべきだと思うんですよ。行政側はその仮説を受けて、今度最後は政治決定をするわけですよ。そこはもうエビデンスだけではなくていろいろな要素が入ってきますね。先ほど岡村さんの11番の絵がありますけれども、例えば政策手段として財政なのか法なのか何なのかという、そこまで入ると思うんです。
1例で言いますと、例えば今日本はハイブリッド車とかEB車がかなり出てきていますね。EB車はもう市販されていますけれども***これは政策としては例えばエコカー減税とかそういうものが出てくる。例えば太陽光発電ですが、これは日本はかなり早くから政策に入れていったんですが、残念ながらビジネスのところで外国に負けたわけです。そこはやはり政策のちょっとミスがあったような気はするんですね。
科学者側はこういうことをすればこうなりますよという仮説と提案をしますが、やはり最終的にはそれを行政なり政治がどう判断して、今度それがまた戻ってきて科学者側はそれをまた判断して次の政策形成に出せるような仮説を出していくのかなという気がいたします。
長野 ありがとうございました。それでは、永田先生、赤池さん。
永田 ちょっと別の視点を提案してみたいと思うんですが、初め***セッティングをしていただいた部分に、このセッションの中では政策担当者と政策研究者という2項で考えるという枠組みを提示されたと思うんですけれども、それに関して言うと、私も一時長野さんと同じように科学技術政策研究所で総括として仕事をしていたことがあるんですけれども、その当時私は恐らく桑原所長が先ほど示唆されたように、やはり非常に政策担当側のプレッシャーが強い時期というものを多少は知っているつもりなんですけれども、私はその過程においても、例えば総合科学技術会議がクライアントだと思ったことは一度もありませんでした。こういうふうに申し上げるとややおためごかしに聞こえるかもしれませんけれども、私は政策研究者としては私のかつてのクライアントはタックスペイヤーしかいないと思っていましたから、ですから、今ここで提案したいと思っている新しい枠組みというのは、単に政策担当者と政策研究者という2項で政策のニーズに関連する一種の情報のフタイショウセイとか情報の移転コストを議論するのではなくて、もう1個重要なファクターとして主たるステークホルダーがあるところの社会の関係者というものを一般の公衆というものを考えて、その一般の公衆が最終的に***するところの政策効果に対してどのようなニーズが存在するのかとか、どのような影響を受けることになるのか。これは私が申し上げることではなくて、SPSの専門家の方々が当然提案すべき***だと思いますけれども、そういうこと***考えることは***
そう考えると、政策研究者というのはどうかしますと政策担当者よりもよりさまざまなステークホルダーに近接している場合があり得るわけです。いろいろな事項の調査を通じてですけれども。ですから、そういうところで取得された情報データというもの、あるいは、知識というものをどのように政策プロセスに反映していくのかという枠組みで考えるべきではないかということを提案したいと思います。
長野 非常に重要な御指摘ありがとうございました。じゃあ赤池さん。
赤池 まず黒田先生がさっきおっしゃったことというのは非常に深い問題があって、私もやはりそれ、特にセイサンカンの問題としては、やはり政策のユウイツそれからメニュー、そのフレームワークを考えるときに、現行の組織とか政策体系に非常に依存する議論になる。そのときにやはりアカデミックな議論というのは必ずしもそのフォーマットに合わないからという非常に大きな問題がかかわるのではないかというふうに思います。
ただ、私フォーマットというのは必ずしもネガティブに考えているわけではなくて、さっき山下さんが協定の話をしましたけれども、やはりアタッシェをやると、要するに科学技術政策上の要請と外交上の要請のはざまですごく悩むわけですよね。科学技術政策上の要請というのは少なくとも科学技術基本計画なる体系があって、だから、そこをベースに議論ができるというだけましかと。じゃあ外交基本計画なるもの、私は今あるのかどうか知りませんけれども、あって、その体系のもとに詳細な議論ができるかというと、これは本来的外交ってそういうものじゃないといったら、そうなのかもしれませんけれども、だから、そういう意味ではちょっと違う。基本計画ってみんな批判しますけれども、そういうところ、紙に書いてあるものから議論をし出して、その体系の問題点をあぶり出すとか、あるいは、それに対応する調査としてのNISTEPのフォローアップ調査ってありますね。ああいうところをベースにこれのどういうところが問題なのかレビューしてみるとか、少し具体的なものとして、そこから構造化を始めてみるというのも1つの方法ではないのかなと思います。
それから、もう1つは、これもちょうどまた山下さんが協定の話をしていただいたので、
協定の例で見ると、ふ分けのときに政策におけるふ分けの議論と景気によるふ分けの議論があって、しかも政策におけるふ分けの議論って外交政策の体系とゲンショク政策の体系というのは明らかに違っていて、それぞれに目的とするところをどう解釈して構造化していくかというものと、アカデミックなほうからすると国際関係論という理論だけじゃなくてデータとしてどういうものがあるかという、そういう形で手法、データ、政策体系というものを構造化する。一応これは薬師寺泰蔵先生と科学技術外交をどう構造化するかという議論をしたことがあるんですけれども、そういう協定1つとったにしてもいろいろなやり方があると思うんですよね。だから、そういう科学技術促進法における手続というものを積み重ねることによって「科学技術イノベーション政策の科学」の流儀、科学の流儀というのができ上がるんじゃないかなというのが2点目です。
それから、もう1つ、済みません、私は文科省に行って、CRDSに行って、今ここに来ていますけれども、やはり違和感を楽しむというんですか、かなりどこにいてもやはりその違和感に悩んでいるんですけれども、そういうことで、今むしろ問題なのは違うということによって、違うから話が通じないのではなくて、違うところにあえて踏み込んでかき回すというか、そういう力が必要なんじゃないかと。やはりそういうところの中で新たなものが生まれて、そのビクションの中からおもしろいものが出てくるんじゃないか。そういうところがやはりあるので、そこのところを、特にCRDSですよね、そのかき回す役というのを期待したいなというようなところです。
長野 頑張ります。じゃあ小嶋先生。
小嶋 山形大学の小嶋と申します。実は山形大学で今年1月に東北創生研というのができました。ちょっと私そこのほうにかかわって、4月から本格的になるんですけれども、実は先ほど斎藤さんの話で、政策というので必ずしも国だけでなくて地方自治体の話が出たので、それに絡んでそういうお話をしたいんですけれども、先週山形県の農林水産部の偉い人と話をしてきました。そのとき、当然何かビジョンがあるのかと思って、30年後の山形の農業のどういうビジョンを描いているんですかと聞いたら、ありませんと言われまして、30年後というと、今農業やっている人がみんな70歳以上ですから、そうすると皆さん100歳以上だから多分生きていないから、30年後の山形は農業なくなるんですねと言ったら何も答えられなかったんですけれども、それに関して言いたかったのは、要は難しい議論をここでやるのももちろんいいんですけれども、今後地方の時代とかという話もちょっとあり、これまで多分県とかというのは国の下請けをやっていていいやという話で、多分やってこなかったから、そういうマインドがなかったんだろうと思うんですけれども、今後そうも言っていられない時代になっていますので、非常に簡単な基本的なところ、その場で私が言いたかったのは何か政策をつくるというためにはまず目標を定めなきゃいけない。まず目標を定めるときには、行政は長期的な目標を1つやって、例えば林業だったら100年先やらなきゃいけないだろうし、普通の農業だって20年30年先をやりなさいと。30年というのは、役人になって25歳ぐらいで就職して終わるときが60歳定年まで行くとすると、30年後というのは自分がやっているときの成果を見られる、あるいは、自分がやったことに責任をとれる最長の年数なので、やはり30年というのは行政としてちゃんと目標を立ててやれと。後は10年とか5年の中期計画があって、最後は毎年の計画をやって、これは毎年毎年PDCをサイクル回しなさいという、極めてプリミティブな話なんですけれども、そういう政策というものの進め方の***みたいなことをちゃんと教えてやらなきゃいけないというところあるというのが1つ。
それから、もう1つは、先ほど桑原さんの話の中で、要はこれから日本は人口が減っていく社会になっていると。だから、右肩上がりの計算じゃだめなんだと。実は30年後彼が見たくなかったというのは、やはり右肩上がりのものじゃないものを描くこと自体に生理的嫌悪感があってできなかったんじゃないかなというのも1つあるんだと思うんですね。これはそうは言っていられない。たまたま山形県というのはそういう意味では高齢化社会が非常に日本の割と先を走っているいい例だと思うんですけれども、いずれ日本全体がそうなるわけであって、そういったときに右肩下がりの中でどう日本を維持していくのかというところのビジョンというものをまさにこういう場の人は最初にちゃんと示すということが非常に重要なんじゃないかなというふうに私は思っていまして、ちゃんと日本の人口が8,000万とか6,000万とか5,000万とかになったときには、こういうふうにしてきているんだよということをはっきり示すことをやってみるのはちょっとこの場では重要ではないかと思います。
有本 ぜひ社会技術センターのモニター領域にアプライズしてください。もうすぐ公募しますから(笑)。
伊藤(宗) 政策研の伊藤です。第1セッションと似たようなお話なんですけれども、行政で必要なのが、今のこの時点でいわゆる科学技術のこういった政策研究の方々に期待しているところは、やはりエビデンスそのものだと思うんです。当然ながらエビデンスをくみ上げて、そこから1つの政策のメニュー、これがある程度のきれいな形でできればそれに越したことはないんですが、まず必要なのはエビデンス。そういったようないろいろな材料をいただいて、それからいわゆる科学的ではない部分も含めて政策として仕上げるというのが基本的に今この瞬間行政でやっていることであります。当然将来的にこういったような研究が進み、さらに構成型の研究者が加わって、それで政策を仕上げるということまでこの科学技術政策の科学の中にスコープとして入ってくるということは将来的にはあろうかと思うんですけれども、すべての研究の出口にそこまで求めてしまうと、逆に行政側としては使いにくいというわけではないんですが、残念ながら必ずしも活用が十分でないというケースがふえてくるんじゃないかというように思いますので、やはりそこは余り政策の立案ということまですべてセットで考えるということは少し考え直したほうがいいんじゃないかというふうに思います。
有本 さっきの永田先生、今ちょっと冷やかし半分で言ったんですが、永田先生の御発言とも兼ね合って非常に私は大事だなと思うのは、このプラットフォームは何なんだということで、こういうインバイテッドオンリーですけれども、結構多様な人が集まる集団にしておくと。しかし、今度一番支えるところは、研究計画学会とか科学技術社会論学会とか結構いろいろな学会があるわけですよね。しかし、これだけじゃなくて、本来分子生物学会とか機械学会とかこういうところにも関心を持ってもらわないと、何かおかしくなるんじゃないかという気がしていて、例えば科学技術社会論学会と科学技術政策の研究のグループでも、今や世界では科学技術社会論学会というのは何となく批判的なところが多いもんだから、政策と遠くになったから、いよいよこれが2つに近づきつつあるという状況にあるんですけれども、こういう状況をちゃんとこういうものでもスキミレートするとか。
それで、今の話とちょっと話が違うかもわからないけれども、地域の方々も地域のそういうポリシーメーカーとリサーチャーがちゃんと組んで、そういうものを地域でもやっていくというようなサブグループのようなものをつくっていくというような多層的な、単なる中央省庁のポリシーメーカーと何とかかんとかという話じゃなくて、中央省庁もいっぱいあるわけですよね。青木さんのようなところもいるし、総理もいるし、山下さんが悩んでいること、土屋さんが悩んでいること、だれがその政策ニーズあるいはここの成果を使うんだというとき、もうちょっとちゃんと緻密に見た上でこういう抽象化するということを一遍やっておく必要があるのかなというふうにつくづく感じた次第です。
長野 平川先生、調先生。
平川 今有本さんがおっしゃったことにも関連して、永田さんの問題提起にも関連することなんですけれども、研究者とポリシーメーカー以外のアクターをどうやって巻き込むか。その点で2つ大事な方面があると思いまして、1つは、やはり産業界、特に起業家ですね。それはいわゆる経団連とかエスタブリッシュメントじゃなくて、本当に実際今市場でいろいろなトライアルをして、いろいろなリスクをとりながら活発にイノベーションをまさに担い手としてやっている人たちをどう巻き込むかという点で、例えばこういう、今回はクローズなわけですけれども、時々この政策の科学のアウトプットの仕方、公表の成果の出し方とか、あるいは、知恵を入れるためにはワークショップという形で、産業界の人たちに広く入ってもらえるような、特に若手、40代とかそのぐらいの結構生きのいい経営者とかアイデアを持っている人たちに入ってもらえるような場をうまく国レベルでも、あと、地方それぞれ、特に我々大阪とか九州とかそれぞれの地域で拠点をつくれると思うんですけれども、そういう場でつくれるような形というのがうまくできるといいなというのが1つあります。
あと、もう1つ、巻き込む上で大事なのは、同じ政策決定の中でもついつい我々どうしても行政の側に目が行っちゃうんですけれども、やはり国会の側、国会議員の皆さん、先生方にちゃんとかかわってもらうと。特に例えば第1部のほうでも有本さんがちょっとおっしゃった、例えば科学的な助言の規範をどう日本の中でつくっていくかというときでも、さっき有本さんが指摘された点で、政策のための科学がすべて、あるいはもっと広く科学的なエビデンスですべて政策が決まるわけではないと。それはあくまでも決定の判断材料の一部でしかない。つまり、最終的には決定の責任というのはポリティシャンにあるわけですね。その辺を下手するとついついいろいろと見ていると、これは科学技術政策に限らないんですけれども、科学のせいにしてしまうというか、責任転嫁で、本来そのポリシーメーカーが担わなきゃいけない責任、それは時には科学的なエビデンスとかそういうことに対して反するような決定すらする、あるいは、民意に反する決定をするということも非常に重要なわけですね、国家において。そのときにちゃんと説明責任を果たす。なぜそういう判断をしたのかというのをとりあえずちゃんと示すという責任を十分果たすというのはポリシーメーカーがまさにやらなきゃいけない。これは行政にはできないし、これは本当に政治家の責任ですので、そうしたことを明確化して、そういう意識を共有するためにも、政治家の皆さんにも何らかの形でこうしたフォーラムというかプラットフォームにかかわっていただけるといいなというふうに思いました。
調 1つ忘れないうちに宣伝してしまおうと思うので宣伝させてください。今週土曜日14時から17時までこの場所でワークショップをやります。エビデンスの使われ方に関するワークショップでして、スパコン関係と地球温暖化の関係の専門の科学者が来て、行政にどういうようなことを考えていたかというようなことを話していただく予定です。ぜひいらしていただければと思います。
それは本題ではなくて前置きですけれども、本題です。永田先生がおっしゃっていたことにある意味触発されたんですけれども、エビデンスなり科学という言葉自体がいろいろな使われ方をこの場においてもされているわけで、それはもう皆さんお気づきのとおりで、これを1つにしなければいけないなんていうことは全くないわけですけれども、ただ、どういうその使われ方なりを想定しているかというのを切り分けて議論をしないといけないなと。永田先生のおっしゃるエビデンスなり科学というのは非常に重要な1つの、もしかして一番重要かもしれませんけれども、そういうものであって、では、そのためには最終的な利用者がだれであるということを想定した場合にどういうエビデンスが必要でどういう手法があって議論をしなければいけないですし、一方で、山下さんからいただくようなニーズというものがあったら、それに対してどういうものを準備するというような、全然違う形になってきているんですけれども、今結構一緒くたに議論されていて、かつ、エビデンスの内容だけではなくて、それを実装するためには何が必要かということに関しても考えなければいけない仕組みがあって、そこを1つまさにこの研究会の目的の1つ、構造化だったと思いますけれども、そこで一度時間を割いていただくといいのではないかと思いました。
長野 貴重な御意見ありがとうございました。
黒田 今調先生がおっしゃったことはそのとおりだと思います。あのサイクルが回ったらエビデンスということがいっぱい出てくるんですけれども、その1つ1つのエビデンスが構造化をきちっとやらないと、多分違ったものが得られることになってしまうと思います。
先ほど平川先生のおっしゃった産業、そして、政治家との対話というか、そういうコミュニケーション、これは物すごく重要だと思います。恐らく政治家に対する対応は、科学者としてはアドバイズをするという、デシジョンは彼らがやるわけですけれども、彼らは今度国民というかそういうものを相手にしてデシジョンするはずですから、そこと政治家が本当にコミュニケートしているのかどうかということも社会の構造としては非常に重要で、そこはSciSIPの我々のところでは多分なかなか済まない部分の話もいっぱいあるのだろうと思います。
それから、山大の吉永先生ですか、おっしゃった点は、僕も山形に今住んでいるものですから、よくわかります。推進委員会の議論の中では、地域・地方の行政マンというか政策立案者の育成というのも大きな課題だという議論が出ていまして、やはりそこに中央から押しつけられて、それがそのまま使われるような地域のやはり中央依存という体質を変えていかないと、地域そのものは活性化しないんじゃないかと物すごく思っています。
長野 ありがとうございます。それでは、津田さん。
津田 RISTEXの津田でございます。先ほど文科省の山下室長のお話を伺っていて少し感じたところがありまして、2点記憶がありますが、1つは、やはり物事をマクロにとらえるということの重要性が1つ。それから、科学技術だけじゃない、その周りにいろいろなことがついているということ、その2点に興味がすごくありまして、意見を申し上げます。
どういうことかというと、やはりマクロにとらえるということは、政策方向がどういう方向に行くかという、いわば骨組みに当たるような事柄。それから、もう少しより具体的な、それから、さらにかなり細かい点のほうにというような、そんなふうにいろいろ情報というのは分かれているんじゃないかと。分けることができるかどうかは別として、少なくともかなり階層化しているんじゃないかという気はいたしました。
それで、申し上げたいのは、エビデンスとかデータとか、今は集団情報という言葉がありますけれども、そういったものを、例えば1種エビデンス、2種エビデンス、3種エビデンスみたいに少し区分ができたら区分をして、1種エビデンスというのは科学技術イノベーション政策の骨組み、あるいは、大きな方向性にかかわるものはどういう状況であってという、骨ですね。それから、2種エビデンスは肉に当たる。いろいろなものをマップ化する、実際的な力のあるところ。3種エビデンスというのは議会とか会議とか***そういったことがわかる。それがちゃんとわからないと実は政策も細かく動かない。だけど、大きな方向づけとは必ずしもかかわらない。そんなような整理ができると、少し使う場合にも、それから、それぞれの研究をやっていることの意義づけもわかりやすくなる可能性はあるんじゃないかと。
一方、そういうふうにすると、情報の種類に、例えば3種だとだめで2種か1種。つまり維持管理というか、5年前はこの情報は重要じゃなかったのに、現在はこれが非常に重要になる。5年後はじゃあどれぐらい重要になるだろう、エビデンスとしてですね。そういう時間軸が考えられた中に入ってくる可能性があるんじゃないかというようなことが感じたことでございます。
2点目は、科学技術というだけではないというところですけれども、先ほどピラミッドをお示しいただいて、科学技術イノベーション政策のレベルに応じたシステムとありますけれども、一番上が政策決定になっていて、一番下は研究開発の実施となっていますけれども、科学技術イノベーション政策というからにはやはり研究開発だけで政策決定がなされるわけではなくて、この周りについているのは社会システムであるとか文化であるとか経済とかいろいろなものがあるわけですから、そういう意味で科学技術の動向プラスアルファのところをどういうふうに考えるのか。特に科学技術イノベーション政策というからにはその部分がどうしても避けられないものとして入ってきますので、それをどう考えるかということも、やはり構造という観点からは念頭に置かなきゃいけないというふうに思いました。以上です。
長野 ありがとうございました。ちょっと時間がもう来てはおりますけれども、最後、中田先生、森田先生、小田先生。済みません、短めでお願いします。
中田 短く3点申し上げます。1点目は、現状でもたくさんのやはり非常に重要な政策研究がなされているにもかかわらず、それが十分に使われていないとういう現状がひとつあると思います。
それから、先ほどのいかに知ってもらうかというのが難しいかという話がありましたけれども、例えば科研なんかでも随分といろいろな政策がなされているわけですね。そういう研究成果というのはほとんどそこに埋もれてしまっているわけです。例えばそういう今のイシューに関連するような研究成果を拾い集めて、それを使いやすい形で、見やすい形にもう一遍整理し直して、公開するという。これだけでも随分違うと思います。
2点目は、エビデンスをどう使うかという話の中で、何かエビデンスとその使う方々が非常に離れているような話があるんですけれども、実は意外と近いところがあるんですね。例えば日本が持っている統計というものは指定統計と行政統計とあるんですけれども、行政統計というのは行政をやっている中で集まってくる。これは実はほとんどサイエンスの対象になっていないんです。今指定統計は統計法が変わりましたので、ある程度僕らが使えるんですけれども、行政統計って全くその範囲外なんです。貿易統計であったり入管統計であったり、さまざまな日々の行政がやっている中で集まってきています。これはいかにまさに行政の一番大事なデータをいかにサイエンスの態度にしているかということを通してエビデンスと行政というのを近づけるというのはちょっと可能性あると思いますね。これは検討課題だと思います。
最後に、ここでの議論はすばらしい議論があるんですけれども、他省庁へこの議論がいかに広がっていないかというのを非常に強く感じています。つい最近も経産省のある審議会でこの議論をさせていただいたんですけれども、全然反応していただけなくて、中間報告の最後に何とか***を入れていただいたんですけれども、それも座長にお願いして***入れていただきました。ですから、ぜひこの議論を他省庁にぜひ広げていただくことを考えていただきたい。以上です。
長野 ありがとうございました。
○○ 1つアクトコメントで、山下さんの論点1のコメントですが、論点1はこれぜひ進めていただきたい。論点2、これは多分永遠の課題じゃないですけれども、ここのまさに政策に関する議論が進んでいけばある程度***しますが、かなり難しい課題だと思っています。
それから、私がむしろ言いたいのは、今回エビデンス・ベーストの話が出てきて、恐らく今回かなりこれが重要視されているのは、1つはやはり大震災の地震の対応に対する科学への不信とか、原子力発電所の事故に対する不信、こういったものに対してきちんと政策が対応していたかといった視点から、エビデンスということが1つ大きな反省になってくるのかという、これが1つのきっかけ、大きな科学に対する信頼を取り戻すためのスタート、期待だと思うんですね。
これに対するもう1つのあれは、伊藤さんの論点の課題の1のところにかかわるんですけれども、やはり目的はいかに政策の質を上げてもらうと。政策の質を上げてもらうということを持ってきたと思うんですよ。政策の科学は進歩したけれども、これを実際に提案して質のいい政策としていただくと。これが最終目標。そうすると、非常にこの課題1が大事で、永田先生はタックスペイヤーを考えていると。私もそう思っていますし、10年ぐらい前でもタックスペイヤーのことだけ考えて、中の研究者のことだけ考えていれば、大体科学技術政策だと***ところが、最近地域***とか社会の***ここに政治家のかかわりだとかタックスペイヤーのことを考えなきゃいけないと。そういった点で、要するに課題1の行政者、あるいは政治家は書いていないですが、行政の上の***政治家。この人たちとの間のコミュニケーションが可能かと。大きななかなかうまくいっていないのは、1つは、お互いに流れている時間が違うでしょう。お互いに流れている時間が全然違うんですよ。研究者と話をすると、本当に5年10年先ぐらい先の話ぐらい考えた理想を想像している。多分行政官はすぐその場の話***それが1つの今回の総合科学技術会議の中で出てきている議論が総理大臣とアドバイザー、科学技術官みたいなそういう橋渡しをする人。政策研か何か桑原さんたちは内向きの人たちとの話し合いがいっぱいで、桑原さんなんかは***話していますけれども、もう少しそれを具体的な課題になったときに、コーディネーターじゃないですかね。そこをきちんとまとめるような人、そういった人が課題を整理してその時間差を埋める、そういったような人が必要なんじゃないかなと思っていまして、そういったことで1つの課題解決。ところが、そんなうまくまとめる人がいるのか、育っているのかといった***5年10年かけてやっていくべき話で、そこがない限りはインタープレッターという問題じゃなくて、むしろ政策を提言する行政官あるいは大臣とかそういった人とデータを持っている人たちとの間をつなぐ、そこが少ないんじゃないかなと思っていまして、その点はぜひ提言していただくと。これがあればかなり解決するような話だなと思っていますので、よろしくお願いします。
長野 じゃあ森田先生。それで、時間が来ましたので、最後にさせていただきたいと思います。
森田 時間がないので簡単に2点だけお話ししたいと思いますけれども、今私も公募のほうのリスペクツでプログラム総括でいろいろなところからいろいろなお話を聞くんですけれども、1つ実際に私自身は政策形成の中にかかわっていて聞きますのは、今まで科学者に対して随分研究資金を投入してきたけれども、社会的な問題の解決に対してそれがどれだけ役に立っているのかというのがかなりタックスペイヤーを代表している人たちの疑問です。それに対してどう答えていくかというのはかなり重要なところでして、原点は局長がおっしゃったようにそんなに難しい話ではなくて、今までの政治家の具体例を挙げますと、子供手当でも何でもそうなんですけれども、思いつきと度胸とおっしゃいましたけれども、度胸があればいいんで、思いつきとでっち上げで政策が随分つくられてきた。それに対してもうちょっときちんとした科学とまで言わないまでも根拠を持った形で選択肢が何なのかと。それを科学の知見を反映していかない限り、資金の配り方にしてもそうですし、研究のあり方にしてもそうですし、タックスペイヤーに対して説明がつかないということ以上にこの国がだめになってしまうんじゃないかと、そういう認識があるわけです。
それに対しまして、どちらかといいますと、私も大学におりますけれども、大学のほうはそれぞれの専門分野の人たちがいろいろなことを言うにしても、例えば医療関係の人は、このままの状態だと地域医療が崩壊する、農業は崩壊する、そして、地域も疲弊すると。そのためにはどうするかといったら、みんな予算をつけろと言うわけですけれども、つけたらどれくらいそれの問題が解決するかということについては説明が十分でないわけです。これをやはりきちんとしていくというのは、その分野の専門の方は提言しなければいけないところだと思います。
エビデンスは確かにそのために非常に重要なんですけれども、主張しようということについて全部客観的なエビデンスというのは存在しません。したがって、先ほど申し上げましたように、1つの価値前提に立ってどういうロジックでもってこの問題を解決するかということをきちんとシナリオを書くということがすごく重要だと思います。それを専門家の間でたたき合って議論するのはいいと思います。最終的に採択するかどうかはポリシーメーカー、政治家の責任だと思います。しかし、政治家がそれを採択した場合には、案をつくった人の責任というのは免れられないんです。どうも大学の先生もそうですけれども、みんな責任とるのをすごく嫌がるところがあるんですけれども、これはやはりそんなことをしていたら国民の科学技術に対する信頼というのはもっと低下してしまうんじゃないかというのは危惧しているところでして、RISTEXのほうではそういうのにこたえてくれるようなのを方法があることを期待しているというのが1点です。
2点目は、研究者の専門の見解でこうだというふうに提言はできるかもしれませんけれども、それを社会が受けとめるかどうかというときに、やはり社会のニーズに合っているか。そのニーズというのも国民の問題意識というものに対して合っているか。それがかなり重要なところでして、どうしても研究者というのはサプライサイドの発想に立ちますから、レバンドサイド、マーケットのニーズに対してどうやってこたえていくかという、何が一番解決を求められているのか、それに対するそちらの立ち位置に立ってものを見るということがすごく重要だと思うんですけれども、それが今までは欠けてきたのではないかと思います。
ただ、その場合に、先ほど先生ですか、おっしゃいましたけれども、世論調査をしますとやはり国民の多くの人は自分たちの利益のことしか案じていないわけでして、例えば長期的な、要するに公共財はどういうふうに供給すべきだとか、さらに言えば、日本の安全保障はいかにあるべきか。そのために防衛予算をどうつけるべきか、防衛政策はどうあるべきかということについては余り関心がないわけです。そういうことについて国民の目線を超えたところで国全体あるいは人類全体の利益を考える。これも科学者の責任だと思います。自分の専門に足場を置きながらもそういうことがきちんと理解して議論できるような人たちをこれから育てていかなければいけないと思いますし、逆にポリシーメーカーの人たちも思いつきとでっち上げじゃなくて、何が使えるか、実際に使えるような人たちをつくっていかなければいけない。そういうことを期待して、ぜひいろいろと応募していただきたいと思いますし、この構造化というのも私自身はそういう観点から、やはりこれまで以上に科学者の役割は大きくして責任を持っていかなければいけないんじゃないかなと思います。以上です。
長野 最後のコメントとして***
これで、済みません、最後まとめません。セッション2を終わらせていただきます。
それでは、最後に一応議論を整理するということで、私どもCRDSの小山田フェローのほうから。
小山田 CRDSの小山田でございます。時間もないですので、私のほうから簡単に議論のまとめといいますか、論点を書き出したものを御説明させていただきます。
セッション1のほうですが、「科学技術イノベーション政策の科学」の科学としての深化を目指してということで、さまざまな御意見をいただきました。大きく4つぐらいに分けられるかなというふうに考えています。
1つは、Science Questionについてということで、政策の科学とは何ぞやという話だったと思います。そのサイエンスの中身についてですけれども、工学的な要素、設計、把握、評価というようなものをどうとらえていくかという御意見がありました。あと、実際に変化する環境、政策ニーズを踏まえた課題形成をどうしていくか。そして、その中に変わるものと変わらないものがあるんじゃないかということの御指摘がありました。また、実際この分野の話は、単一のエビデンスでは決まらない。その意思決定、判断との関係というのも必要。また、こちらもう1つ、単一のディシプリンで決まるものではなくて、インターディシプリナリー、マルチディシプリナリーな取り組みが求められている。インター、マルチをどうとらえるかというのはまたここで議論がありました。また、その科学としての限界はどこかということで、これは先ほどの意思決定、その下のサポート***どこまで科学として提示して、どこから意思決定の境界線になるかというところがあると思います。
もう1つ、「科学技術イノベーション政策の科学」ということで、ここの対象をどうとらえるかという対象の範囲だとか境界設定の問題というのがありました。1つあったのは、科学技術の知見が生み出すイノベーションということと、科学技術が関係する、コアであるかもしれないけれども、科学技術だけではどうしようもなくて、社会変革が必要なイノベーションという、2通り分かれるのではないか。また、政策の科学を進める上で政策の科学そのものについてのELSI、もしくは、それを見直すようなナイセイの経路も公募プログラム等の中で設計する必要があるのではないかという意見もありました。
また、ほかの医療政策であるとか、政策科学がたどった過去の歴史であるとか、そういったものから学ぶ必要性。また、実際政策評価であるとかそういったような評価がより幅広くなってきまして、この政策の科学と重なってくる部分もあるというので、そういったものとの関係性をどう考えるかというのも今後の課題としてありました。
次は意思決定の問題ですけれども、***的意思決定の関係、また、政策の科学としての課題を設定して、だれの意思決定に貢献できるかということをまず考えなければいけない。あと、結果の取り扱いですけれども、わかりやすい分析のひとり歩きが先に進んでしまって、真に重要なことを伝えることができなくなってしまうという可能性もあるということ。また、政策の科学を行う研究者はどういう立場をとるかというのも***実践するプレーヤーもしくは実践者としての政策担当者もいますけれども、じゃあその政策の科学を行う研究者というのはどういう位置づけがあるのか。これは実際そういった人が先陣を切っていくところを後ろから支援するイネブラーという位置づけなんじゃないかとか、そういう位置づけがありました。
じゃあ政策のための科学を技術の中でどれに優先順位をつけていくべきかということで、比較的何人もの方から挙げられたのは、リレー分析、評価というのをしっかりやっていくことの必要性。特にこれまで日本が行なってきた科学技術政策、イノベーション政策というものをしっかり見直し分析して評価するということが必要なんじゃないか。
もう1つは、海外への発信にというものに重点を置くべきという話。そして、もう1つが、実際国民の視点から考えた場合には、国民の関心が高い科学技術の社会的経済的な影響、この分析というものをまず取り上げるべきではないかという御意見です。
続いてはセッション2ですけれども、済みません、こちらのほうは余りまとまっていないんですけれども、その中でまず政策と研究者側での議論の場をつくっていくということが大事だろうと。また、政策ニーズ、イコール、行政ニーズではない。その中で納税者、公衆を巻き込むこと。また、産業界、そして、意思決定に責任を持つ政治家をグループに取り込んでいくことも必要ではないか。また、国、地方、さまざまな階層でどういったニーズがあるかということを具体的に把握することが必要ではないかということなどが挙げられました。また、既存の研究成果をぜひ公開などもやっていくと。行政統計なども活用していくということが必要ではないかいうことがございました。
済みません、まとまり切れていないですけれども、後ほどまた***
長野 どうもありがとうございました。
それでは、最後に閉会のあいさつを文部科学省科学技術政策研究所の桑原所長より***
桑原 きょうは遅くまで活発な議論ありがとうございました。きょうの御議論を踏まえて、これから私主催者の3分の1なので、CRDSやJSTと相談しながら、来年度以降ですけれども、どういう形で、当然皆様にはぜひ引き続き御参加いただきたいと思いますけれども、さらにどういう方をお招きし、どういう格好で議論をするのか。それから、きょうの御議論でも少し具体ケースを幾つかトライしてみて、それでどういうものが見えてくるのか。それを少しやった上で、また、もう少し普遍的な議論に戻って。これは多分すぐ結果が出る話じゃありませんから、その間にSciSIPの研究がだんだん進んでいきますので、そういうルートの中でこういう仕事をしていくのがいいのではないかという印象を持った次第です。とにかく今後ともそういう形でどういう枠組みで我々は仕事をするのかという議論をいろいろな方々の意見を聞きながら、独善に陥らないように進めていくということが非常に重要だと肝に銘じておりますので、引き続き御参加のほど、どうぞよろしくお願いいたします。きょうはどうもありがとうございました。
長野 それでは、これで「科学技術イノベーション政策の科学」構造化研究会第1回会合を終わります。きょうはどうもありがとうございました。
(了)