本ワークショップの概要
本国際ワークショップでは、まず、「問題志向型ガバナンス」や「バウンダリースパニング」といった概念を手掛かりに、現代の科学技術イノベーション政策において必要とされる「つなぐ」人材の性格、類型、能力、育成プロセスを整理します。
その後、現場の行政官から、「つなぐ」人材の具体的なあり方や必要な能力、その育成過程に関する具体的事例を紹介していただきます。
その上で、このような「つなぐ」人材を組織的に生み出していくために必要な人事政策、制度的仕組み、「つなぐ」人材が利用する戦略的インテリジェンスのプラットフォームについて提言を行います。
最後に、このような科学技術政策における新たなガバナンスやマネジメントの手法が、パブリックマネジメントのイノベーション(※)にどのような意味を持つのか、そして、パブリックマネジメントのイノベーションを科学技術政策にどのように活用できるのかという点について、国際的観点から海外の専門家によるコメントを得ることとします。
※パブリックマネジメントのイノベーション:民間部門の経営手法を取り入れて公共部門の効率化を図ろうとする改革手法
背景
現代の科学技術政策においては、個別技術の研究開発だけではなく、イノベーションが強調されていることもあり、様々な分野における社会変革との緊密な連携が求められています。日本でも、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)、ムーンショット型研究開発制度といったミッション志向型イノベーション政策(MOIP)のプログラムでは、横割り型の科学技術政策と各分野別の縦割り政策の「つなぎ」が求められています。
また、科学技術政策と安全保障政策、競争政策、地域政策といった横割り政策間の「つなぎ」も重要になりつつあるとともに、宇宙とサイバーセキュリティといった複数の個別科学技術領域の「つなぎ」も新たなフロンティアとして認識されるようになってきました。
さらに、より基本的な課題として、政府部門と新たな科学技術の担い手となっている民間部門の「つなぎ」のあり方が、縦割り政策と横割り政策の関係、横割り政策間の関係、個別科学技術領域間の関係を再編成しつつあります。
以上のように、社会課題の解決を目的として、横割り政策と縦割り政策の「つなぎ」、横割り政策間の「つなぎ」、個別科学技術領域間の「つなぎ」、新興技術をめぐる政府部門と民間部門の「つなぎ」を確保していくためには、公式の制度的な仕組みだけでは十分ではなく、それらの仕組みの運営を担う「つなぐ」人材の確保とその能力育成が重要になります。
具体的には、科学技術政策とセクター別の政策(エネルギー政策、医療政策等)を「つなぐ」人材、科学技術の安全保障上の含意と民生利用をつなげて戦略を構想することのできる人材、民間企業や研究機関等において、新興科学技術の倫理的法的社会的課題(ELSI)や規制のデザインを個別の科学技術に即して把握し、技術開発にフィードバックすることのできる人材が必要になります。
プログラム ※敬称略。内容に変更が生じる可能性があります。
総括報告:
科学技術イノベーション政策における「つなぐ」人材の性格・類型・能力・育成プロセス
城山英明(東京財団政策研究所、東京大学)
事例1:
科学技術政策とセクター別政策・安全保障のつなぎ
永澤剛(内閣府)
事例2:
宇宙産業政策への関わりを事例とした「つなぐ人材」についての考察
伊奈康二(宇宙航空研究開発機構)
提案:
組織的インフラの重要性(人事政策、透明な手続)、戦略的インテリジェンスプラットフォーム
鈴木一人(東京財団政策研究所、東京大学)、松尾真紀子(東京財団政策研究所、東京大学)
コメント1:
科学技術イノベーション政策と次世代公共管理
Dr Piret Tõnurist (OECD Mission Action Lab)
コメント2:
科学技術イノベーション政策と次世代ガバナンス
Alberto Alemanno (HEC Paris)
パネル討議:
上記の登壇者に加え、以下のパネリストが登壇します。
岸本充生(東京財団政策研究所、大阪大学)
黒河昭雄(東京財団政策研究所、神奈川県立保健福祉大学)
中澤柊子(東京財団政策研究所、東京大学) |