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2022年03月16日-

[開催案内:3/30 18:30-] GIST&DIIセミナー「メタバースを活用した多様性包摂の可能性を探る -引きこもり対策の事例から-」

GiST-科学技術イノベーションプログラム(政策研究大学院大学)

DIIセミナーフライヤー_ページ_1.jpg DIIセミナーフライヤー.pdf

<登壇者発表スライド>

林裕子 山口大学特命教授発表スライド

三淵啓自 デジタルハリウッド大学大学院教授発表スライド

加藤隆弘 九州大学大学院医学研究院准教授発表スライド

概要

現在、日本では100万人以上が「ひきこもり」状態にあると言われています。地域若者サポートステーションをはじめ彼ら・彼女らが一歩踏み出すための取り組みが様々に行われていますが、原則として対面で行われる取り組みが多いことから、全員へ十分な支援が行き渡っている状態にはありません。
一方で、COVID-19の感染拡大をきっかけとしたリモートワークの普及や、多くの企業での副業解禁など、DXによって労働形態が変革しつつあります。現在注目を集めているメタバースを通じたアバターワークもその一つです。
今回のセミナーでは、メタバースを用いることで社会的孤立への支援の可能性を、メタバース上での相談やジョブトレーニングを通じたサポートが始まる福岡市の事例から議論します。ひきこもりに限らず、ひいては様々な多様性を包摂する「誰も取り残さない(NLB:No one Left Behind)」社会がいかに実現できるのか、参加者からのコメントもお待ちしております。

講演者情報

スピーカー:林裕子 山口大学特命教授
      加藤隆弘 九州大学大学院医学研究院准教授
      三淵啓自 デジタルハリウッド大学大学院教授

コメンテーター:ジェラルド・ハネ GRIPS客員研究員

モデレーター:飯塚倫子 GRIPS教授

日時

2022年3月30日(水) 18:30-20:00
参加費無料(事前登録制)

場所

Zoomにて開催

言語

日本語、英語(同時通訳あり)

主催

政策研究大学院大学科学技術イノベーション政策プログラム

参加申し込み、お問合せ

【申込】
https://us06web.zoom.us/webinar/register/WN_mdFe4_KSTveIoev5zBu2Nw

【お問い合わせ】
gist-ml@grips.ac.jp

開催レポート

2022年3月30日(水)「メタバースを活用し多様性包摂の可能性を探るー引きこもり対策の事例からー」をテーマに第4回DIIセミナーを開催した。

山口大学院技術経営研究科 教授(特命)林裕子氏をはじめ、現在同氏が推進するNLBプロジェクトの関係者らが登壇した(加藤隆弘 九州大学医学研究員精神病態医学 准教授・三淵啓自 デジタルハリウッド大学大学院 専任教授・砂場康兵 特定非営利活動法人JACFA 支援員、九州産業大学 大学生)。コメンテーターはジェラルド羽根氏(日立アジア シニア・エクゼクティブ)が務めた。
最初にひきこもりは日本だけではなく、グローバル規模の問題であり、ひきこもりを理解するための心理的・社会文化的・生物学的側面からのアプローチの必要性を加藤氏が説く。また、ひきこもりへの介入には段階的なアプローチが必要であること、


MHFA(オーストラリアで開発された、一般市民が受講可能な12時間の「メンタルヘルス・ファーストエイド(MHFA)」とよばれる心の応急対応法を学ぶプログラム)をベースにした家族の介入もあることが紹介されたうえで、現在アバターやロボットを活用した新しいアプローチが誕生していることに言及。続いて林氏がNLBプロジェクトを紹介した。


NLBプロジェクトとは、”No one Left Behind” を実現するための方法である。プロジェクトの体制は次の通り大きく4グループに分かれている。



Group 1 (プロジェクトマネジメント):山口大学、政策研究大学院大学、一橋大学

Group 2(精神医学的研究):九州大学

Group 3(物理的なサポート):特定非営利活動法人 JACFA(ジャクファ)

Group 4(技術的なサポート):デジタルハリウッド大学




プロジェクト名NLBは、SDGsのスローガン “No one Left Behind” を表し、多様性を包摂する社会を実現するため、新しい支援の形と新しい就労形態をサイバー空間に実装することを目指しているという。
メタバースを理解するうえで重要なのは

・アノニミティ(匿名性)

・アベイラビリティ(入手可能性)

・アジリティ(敏捷性)



である(林氏)。メタバースを通じて、これまでにひきこもりの人々が「ただそこに滞在し、リラックスして、コミュニケーションワークショップを行う」場を提供してきたが、物理的空間と比較しコスト節約になる。メタバース空間内にカウンセリングルームを設置し、「顔を見せる必要がなく、ニックネームを用いることができる」ようにする取り組みも紹介された。様々な利点もある一方で、林氏の行った調査によれば、ひきこもり支援の対象者のWifi所持者・PC保有率・モバイルやタブレット所持率がいずれも日本の平均よりも低い等、メタバースへのアクセスにおいて障壁がある等の課題も示された。



続いて三淵氏はメタバースの定義をリアル空間・意識空間・バーチャル空間の3つ枠組みを用いて説明した。



また、「実際にフィジカルには孤立していても、メタバースの中で心理的に開放され、新しい自分を意識空間の中で認識することで、考え方が変化するかもしれないという視点で今回NLBプロジェクトの実験に参加した」とプロジェクト参加の経緯を説明した。



さらにメタバースの利点として

(1)3Dのシミュレーションがあること

(2)アバターコミュニケーションが可能なこと

(3)UCC(User Created Contents)を生み出し

(4) Real Money Trade(RMT)が可能なこと



を挙げた。現在GDP 6億ドルの資産がメタバース上で生み出されており、毎日20万人のアクティブユーザーがいること、ユーザーに還元された報酬は年間8040万ドル以上であるというデータを紹介しながら「メタバース内に生産者・消費者が一緒にいるマーケットがすでに成熟しつつあるということ。ここに価値がある。今後この価値をどのように活用するかが課題である」と締めた。



最後に、ひきこもり支援の活動に従事する砂場氏がコメント。「ひきこもり状態にある方は人と連絡を取る必要がないので、パソコン・スマートフォンを持っていない人も少なくない。また、持っている方でもアプリケーションのインストール、操作方法を理解するまでにエネルギーを使い果たしてしまう人も少なくない。」等の課題を指摘した。その上で、「簡単スマホのようにあまり頭を使わないでいいアプリケーションがあれば。」と提案。「気持ちが外を向いたときにこのような場所があることは、外界と繋がるよいきっかけの一つになる」との展望を述べた。

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