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2022年01月12日-

第40回SciREX セミナー『S&T Policy 2025 enabling transitions through science, technology and innovation』

GiST-科学技術イノベーションプログラム(政策研究大学院大学), SciREX-科学技術イノベーション政策研究センター

第40回SciREXセミナーフライヤー

開催レポート:「OECD、新時代の科学技術政策の方向性を示すイニシアティブ"S&T Policy 2025"を開始―2023年にもOECD閣僚宣言を目指す」

SciREXセンターでは2021年12月23日にOECDのMichael Keenan シニア・ポリシー・アナリストをお招きし、ウェビナーを開催しました。
ウェビナーで紹介したイニシアティブの背景には、昨今のパンデミック、気候変動、AIの発展、科学技術にまつわるヘゲモニー争いの激化といった課題があります。これら諸課題と国連SDGs決議を受け、OECDの科学技術政策委員会はこれまでの科学技術イノベーション(STI)政策を抜本的に再検討する必要があると判断し、イニシアティブを立ち上げました。

ウェビナーで紹介したイニシアティブの要点はこちらです。
① STI政策の大目標として、経済重視に加えて、持続可能性(Sustainability)、強靭性(Resilience)を大きな柱にする。今後10年間はそれに向けての変革(Transition)の時代と捉える。
② ここ数年のOECDの科学技術政策関連の活動(SDGsにおける国連、EU、各国との連携、ミッション志向イノベーション政策、学際共創研究、パンデミックでの各国の対応状況・データの収集活動など)を集約する。
③ 実現の基盤として、戦略的先見性(Strategic Foresight)、証拠に基づく政策(指標とデータ)、予見的ガバナンス(Anticipatory Governance)を強化する。
④ これらの活動の蓄積と成果を踏まえて、新時代の科学技術イノベーション政策のあり方のガイドラインを検討する野心的なプロジェクトとして "S&T Policy 2025" イニシアティブを2021年から開始する。

また、 "S&T Policy 2025"の趣旨とプロセスはこのようなものです。
① 過去30年間、各国政府がSTI活動を支援する重要な理由は経済的競争力だった。この状況に加え、今後は世界規模での持続可能性、包括性、回復力、安全性にも目を向ける必要から、STIの優先順位や活動内容、多国間協力が影響を受ける状況が生まれている。
② パンデミックの経験と教訓を踏まえて、政策立案者がSTIシステムを方向転換するためのビジョンと実践的なガイダンスを策定する。他の政策分野におけるSTIの理解度を向上し、組織の壁を打破し省庁間の連携を促進する。
③ 政策立案者に実践的なガイダンスと分析支援を提供する背景文書、参考となるロードマップの作成、政策対話を行う。
④ 今後10年間のSTI政策の方向転換へ向けた行動計画を、2023~24年に開催する閣僚会議を通じ「OECD宣言」の形でまとめる。

この挑戦的なイニシアティブは次の課題も抱えています。
① エネルギー、モビリティ、食料、重工業などの大規模システムの社会技術的な移行:持続可能性を持ち、かつレジリエントな社会構築へ取り組む政府全体の戦略、イニシアティブの中で、STIとSTI政策をどのように位置づけるか。
② STIシステムの変革:持続可能性かつレジリエントな社会へ向けた課題に対し、当事者である企業や公的研究システムがSTI政策の中での優先事項と実践をどのように変革するのか。
③ STI政策とガバナンス体制の変革:STI政策の優先順位と実践を、特にその根拠、目的、手段、対象とするグループをどのように適応させるか。
④ 戦略的インテリジェンス提供と利用の変革:持続可能な社会への移行とレジリエンスに貢献するSTI政策を実現するために、知識基盤、枠組み、制度、学習ネットワーク、能力をどのように開発するか。

モデレータを務めた有本建男 GRIPS客員教授・SciREXセンター副センター長は本ウェビナーについて、「私はOECD科学技術委員会が、ここ数年進めている、「ミッション志向イノベーション政策」、「学際共創研究(Transdisciplinary Research)」, 「High-risk/High-reward 研究制度」、「危機時の科学技術動員」、「研究公正(Research Integrity)」など、STI政策の転換にとって重要となる、国際比較研究プロジェクトに共同議長や運営委員等として参加して来ました。これらのOECDの活動と "S&T Policy 2025" は、日本の新しい科学技術イノベーション基本法(2020)と科学技術イノベーション基本計画(2021-2025)と、密接に関連しています。日本はプロジェクト・レベルだけでなく、政策・プログラムのレベルで、OECDや各国と積極的な対話と連携を深める必要があると考えています。こうした、国際的なアジェンダ設定、価値・規範の創出、ルールメイキングに関わる活動領域の人材、組織が日本は極めて弱いと言わざるを得ません。これは、国際研究協力だけでなく、経済競争力、研究力の劣化に結び付いているのではないでしょうか。」とコメントし、日本の関わり方、立ち位置について警鐘を発します。

また、「現状の難しさとその影響に着目すべきです。たとえば、一部の専門家、行政官が臨時的に国際的議論・協議に参加しても、知識・経験・スキルの組織的な蓄積と継承につながっていません。また、国内の議論、経験・知的蓄積も海外に組織的に発信できていません。結果として、国内の議論・活動がグローバルな内容・水準と乖離し、今後の国際的な規範・ルール作りへの貢献が危ぶまれます。ひいては日本の国益を損なうことになるのではないでしょうか。」と述べ、今後の日本の活動活発化がいかに重要であるか強調しています。

本ウェビナーは合計で200名前後の参加を賜りました。当日のスライドも公開しておりますので、下記リンクよりぜひご覧ください。

動画: https://youtu.be/8nJgmQuPDQU

スライド: SciREX S&T Policy 2025 seminar 23 Dec 2021.pdf

概要

今回のセミナーでは、OECDが新しく提唱する科学技術イノベーション(STI)政策のコンセプト S&T Policy 2025を題材に、担当者である Michael Keenan OECDシニアポリシーアナリストをお招きし、その狙いや今後の展望をご紹介します。また、コメンテータとして小寺秀俊 OECD科学技術イノベーション委員会副議長と有賀理内閣府参事官からは日本の立場からどのように対応していくべきか、メリットや課題について、スピーカーを交え議論します。

S&T Policy 2025では、パンデミック、地球温暖化、技術の覇権争いといった様々な問題へ対処するには、分野や政府省庁間、国家間のつながりを現在の「点と点」の繋がりから改善する必要があるとしています。そのために各国のSTI政策のコミュニティがどのように行動すべきか、好事例や具体的な提言、ロードマップの提供を目的としたイニシアティブがS&T2025です。

OECDは春にこのセミナーでご紹介したSTI Outlook 2021 でもより持続可能性が高く、レジリエントでより多くの人々を包摂するためにはSTI政策自体の改革が必要であると主張しています。この改革に向け具体的にどのようなアクションが必要か、検討するのがこのイニシアティブの役割と言えるでしょう。これらの議論を集約したうえで、閣僚級会議を開き、OECDの宣言としてまとめる計画です。
一方で、STI政策を通じた経済競争力の促進や安全保障とのバランスも重要です。

すぐそこまできている2025年をターゲットとし、日本の立ち位置も踏まえたうえで議論します。

講演者情報

スピーカー;
Dr. Michael Keenan
(Senior Policy Analyst, Organization for Economic Cooperation and Development (OECD) )

コメンテーター;
小寺 秀俊
(OECD科学技術イノベーション委員会副議長、理化学研究所 理事)

有賀 理
(内閣府科学技術・イノベーション推進事務局参事官(国際担当))

日時

12月 23日 (木) 18:30 – 19:45

場所

Zoomウェビナーにて行います

言語

英語、日本語 同時通訳あり

主催

SciREXセンター、文部科学省

参加申し込み、お問合せ

下記のリンクからお申し込みください。

https://us06web.zoom.us/webinar/register/WN_2ng1loaxS3qjIFli0rsC6w

お問い合わせ先: scirex-center@grips.ac.jp

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