SPIAS:SciREX 政策形成インテリジェント支援システム(SciREX Policymaking Intelligent Assistance System)
政策研究大学院大学 科学技術イノベーション政策研究センター (SciREX センター) では現在、SPIAS 「SciREX 政策形成インテリジェント支援システム(SciREX Policymaking Intelligent Assistance System)」を開発しています。
エビデンスに基づいて政策が科学技術イノベーションに及ぼす効果とその社会的・経済的影響を評価するため、2段階のシステムを構築しています。
① | イノベーションデータプラットフォーム(SPIAS-β)を用いて、過去の競争的資金の配分が論文・特許の出版を通じて産業の生産性に貢献した影響を分析し、科学技術分野への公的研究開発投資が及ぼす政策効果モデルを作成する。 |
② | 今後取り組む政策について、①で構築した政策効果モデルから各産業・技術への影響を算出し、多部門経済一般均衡的相互作用モデル(SPIAS-e)に投入することで、政策を実施することによる長期的なGDP・産業別生産高・TFP・雇用への影響を求める。 |
このシステム開発によって行政官がデータに基づいて政策効果を議論する基盤を整備し、経済学およびイノベーション研究との共進化を実現すること、データを生み出すメカニズムをお互いに理解した上で政策議論を重ねる環境を整備することを志しています。
イノベーションデータプラットフォーム(SPIAS-β)
開発目的
科学技術政策による成果を個々の技術ごとに指標化・可視化することで政策評価のPDCAサイクル実現に寄与すること。
機能概要
・ | 研究課題(競争的資金)・研究者・研究機関・論文・特許・プレスリリースデータを接続することで、研究開発投資からイノベーションの創出までのプロセスを一貫して分析できる。 |
・ | Webブラウザベースの可視化ツールセットを整備したことで、ユーザーは研究課題・研究者・研究機関ごとのデータについて、検索エンジンを使うかのように必要な情報を抽出して分析することができる。 |
開発の経緯
2015年 データプラットフォーム調査
2016年 JST/CRDS技術俯瞰と競争的資金の接合
2016年 Webアプリケーション開発
2017年 論文・特許データベースと接合
2018年 知識移転経路の可視化
2019年 研究者検索機能の強化
データ整備
科学技術分野:JST/CRDS技術俯瞰報告書
競争的資金:日本の研究.com, 科研費
論文: JST J-global, Web of Science
特許: JST J-global, PATSTAT
研究成果の活用
〇 | 文部科学省87名にユーザーライセンスを発行。WebサイトからSPIAS-βを用いてデータ検索・研究者調査に日常的に利用 |
〇 | 文部科学省・政策研究大学院大学共催 行政官研修にてSPIAS-βを用いたデータ分析演習を実施(2017年度〜) |
〇 | SciREXセンター サマーキャンプにてデータ分析演習グループにてデータを用いた政策提案演習を実施(2017年度〜) |
〇 | GIST教育プログラム 大学ベンチマーキングセミナーにて、大学URA向けのSPIAS-βデータ分析演習を実施(2018年度〜) |
〇 | RA協議会にてSPIASの活動プロモーションを実施。大学URAとの関係性を構築し、データ分析に関するニーズ調査を実施(2018年度〜) |
〇 | 民間企業とSPIASを用いた共同研究を実施。企業の研究開発や産学連携についてネットワーク構造の観点から分析(2017年度〜) |
データプラットフォームの活用
競争的研究資金が持つ特徴(研究テーマ・分配先・期間等)データと論文・特許・プレスリリースデータを接続することで、研究力に関する様々な分析を行うことができます。これらのデータベースを接合し、Webブラウザから検索できるシステムを開発しています。
多部門経済一般均衡的相互作用モデル(SPIAS-e)
開発目的
科学技術政策政策が知識ストックの形成を経て経済効果に波及するモデルを構築し、経済的影響を定量的に分析する こと。
機能概要
・ | 93に分割した各産業が相互に影響し合う経済モデル(多部門経済一般均衡的相互依存モデル)を構築した。 |
・ | 政策パターンの違いに応じて、研究開発投資額を分野毎に、短期・長期で区分して入力して計算することができる。 |
・ | 研究開発投資による技術開発が産業に及ぼす影響を精緻に分析し、経済効果( GDP・産業別生産高・TFP・雇用者数・財サービス価格等)を2050年まで算出することできる。 |
開発の経緯
2014年 ICT分野政策オプション調査
2014年 経済モデルシミュレーター開発
2014年 経済モデル比較検討
2015年 産業連関表データ整備
2016年 シミュレーション結果の可視化
2017年 シミュレーターアップデート(毎年)
データ整備
41産業・93部門に分割
産業内を部門に細分化
主生産活動/企業内情報処理活動/企業内研究開発活動
研究開発を科学分野で細分化
ライフ/情報通信/物質・材料/環境・エネルギー /その他
研究成果の活用
〇 | 2014年08月 有本、黒田両名、内閣府・総合科学技術会議議長原山議員と懇談。経済モデルによる政策オプションの作成などの意義と限界を説明 |
〇 | 2015年06月 CNRS-EHESS Paris-JST/RISTEX Joint Workshop "The Role of Society in innovation and creativity"にて報告。 |
〇 | 2015年09月 総合科学技術イノベーション政策会議大臣有識者会議報告:黒田 "科学技術イノベーション政策の科学:ICT分野政策オプションの調査研究"。 |
〇 | 2015年06月 科学技術白書「第1章科学技術の進歩と社会経済の変化、第3節経済成長への科学技術の貢献 |
〇 | 2017年04月 自民党科学技術イノベーション戦略調査会報告:第5期科学技術基本計画実行小委員会 黒田報告 |
〇 | 2017年12月 自民党科学技術イノベーション戦略調査会報告:黒田、 "21世紀の"新しい資本主義"のかたちを求めて―如何にして科学技術知識を経済価値創造に活かすか?" |