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我が国の宇宙活動の長期持続可能性を確保するための
宇宙状況把握(SSA)に係る政策研究

プロジェクト概要

我が国の宇宙活動の長期持続可能性を確保する観点から、宇宙交通管理(STM)を構成する主要な要素のうち、宇宙状況把握(SSA)について、我が国の能力と国際協調の可能性を評価の上、国際的なデータ共有や解析サービスなどの在り方を検証し、SSAに関する我が国の自立性の確保と国際枠組み形成の両立に向けた政策アプローチを特定する。

実施体制

研究実施者

氏名 所属・役職
鈴木 一人(研究代表者) 東京大学 教授
菊地 耕一 東京大学 未来ビジョン研究センター 客員研究員
栗山 育子 東京大学 未来ビジョン研究センター 客員研究員
梅田 耕太 地経学研究所 研究員
鍵和田 瑤子 地経学研究所 客員研究員

行政担当部署

部署
文部科学省研究開発局宇宙開発利用課

政策課題

宇宙交通管理(STM)の実現のためには、宇宙デブリの低減とともに、衝突回避のために人工衛星や宇宙デブリの軌道を特定する宇宙状況把握(SSA)の能力が不可欠となるが、我が国のSSA能力は限定的であり、技術の自立性とともに、データの共有や相互提供など国際協調を追求する必要がある。このため、適切なSTM政策の実現のためには、関係府省の連携と民間事業者を含む国際枠組みの構築が不可欠となっている。

具体的な研究計画

本プロジェクトは、以下の5つのステップを1サイクルとし、各年度、行政官が参加する「宇宙交通管理に関する関係府省等タスクフォース」などの政策検討の枠組みを活用して、政策アプローチの仮説の設定と検証を行い、最終年度に⑤のまとめを実施する。

  • ①日本のSSA能力の開発計画と国際協調政策の整理
  • ②SSA関係の政策及び技術開発に関する日本の国内意思決定プロセスの評価
  • ③商業SSAを含む他国のSSAの能力及び政策の比較研究
  • ④現在提唱されている国際レジーム及び想定されるシナリオの整理
  • ⑤日本にとって望ましい国際レジームやシナリオ及びその実現のためのアプローチの検討

研究の手法として、概念的な観点は、国際レジーム理論、意思決定理論、行政分析、組織研究等を活用する。データの収集については、文献調査、日本及び国際的なステークホルダーへのインタビュー、国際ワークショップ及び会議への参加、国内及び国際的なステークホルダーが参加するワークショップの開催を活用する。また、大学等の研究者や民間事業者からなる有識者会議を設置し、本プロジェクト・チームとの協働により、外部有識者が意見交換のみならず研究に参加できるスキームを構築する。

研究進捗の概要

  • ・日本政府全体としての政策文書をレビューした結果、SSA政策に関しては、防衛省と民間事業者による情報共有サイクルの確立がうたわれているものの、それ以上の中長期的な政策目標が必ずしもまだ明確に打ち出されておらず、政府全体としての中長期的な方針を定めることが課題の1つであることが改めて明らかとなった。

  • ・中長期的なSSA政策の方向性として、SSA能力の「自律性」と「監視対象の広さ」を軸として、本研究では4つの概念モデルを作成した。現在それらのモデルの具体化を図っているところ。

  • ・国際的なSSAデータの共有に関しては、ステークホルダーへのヒアリングを行った結果、利用可能なデータが増えること自体は望ましいとの意見が大勢を占めた。一方で、そのための技術的課題、ライセンスの問題、安全保障上の制限など、それぞれの当事者によって懸念点が異なること、それらの懸念事項にいかにバランスよく対応していくかが課題であることが改めて明らかになった。

  • ・国際パートナーとの対話の結果、主要国政府も国際的なSSAの協力枠組みの絵姿は明確にはイメージできていない一方で、日本をはじめとする同志国との国際協力の必要性は強く認識しており、SSAシステム間での能力比較などの検討を進めていることが明らかになった。日本としても方針やアイデアを持って、対話の枠組みに入っていくことが望ましいと考えられる。

  • ・商業SSAサービスの提供については、そこにビジネスチャンスを見出している日本企業もあり、政府のSSA政策を考えるにあたっては、日本の宇宙産業の育成・振興の観点をどう組み込むかが課題の1つであることが改めて明らかになった。

主な成果発表実績

学会発表

  • Kota Umeda, Kazuto Suzuki, Koichi Kikuchi, and Ikuko Kuriyama, "Japan's National Security Strategy and the Evolution of SSA/SDA Capabilities," 4th IAA Conference on Space Situational Awareness, Daytona Beach, USA, May 8-10th, 2024.
  • Kota Umeda, Ikuko Kuriyama, Kazuto Suzuki, Koichi Kikuchi, Yui Nakama, and Suzuko Uchida, "Japan's SSA/SDA Policy and International Cooperation in the New National Security Environment," 75th International Astronautical Congress (IAC), Miran, Italy, October 14-18th, 2024.
  • 梅田耕太、鈴木一人、菊地耕一、栗山育子「日本のSSA政策の課題と展望」、第68回宇宙科学技術連合講演会、アクエリ姫路、2024117日発表。

審議会等での報告

  • 経産省主催「第3回宇宙交通管理等に係る産業政策に関する調査検討会」にてSSA政策の研究成果を発表(報告者:鈴木、菊地、2025217日)

共進化に向けた取組とその効果

  • ・文科省宇開課の行政官と研究者の定期的な打ち合わせを実施しており、政策上の問題意識や研究の方向性について随時意見交換・調整を行っている。

  • ・研究者側の視点としては、行政官からSSAに関する政府内での議論のポイントや具体的な関心事項を共有いただくことで、政策動向を踏まえた研究活動を進めることが可能となっている。また、行政官からの質問やコメントを通じて、文科省の関心が単なる研究開発にとどまらず、政府の研究開発と商業宇宙サービスの役割分担や、海外政府機関の動向に至るまで幅広く及んでいることを認識した。こうした情報共有は、研究活動における視野を広げ、研究成果の実務的な意義を高める上で非常に有益となっている。

  • ・行政官の視点としては、研究者側から諸外国におけるSSA政策や技術開発、国際協力等の最新動向について情報を入手できるため、日本政府としての政策及び戦略検討を行う際の重要な参考材料となっている。

  • ・今後、本プロジェクトにおける最終的な政策提言の質を高めるため、研究者と行政官の対話をさらに強化していく予定。

研究成果・資料

※現在準備中です。