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SciREX オープンフォーラム2022 シリーズ第1回 第6期科学技術・イノベーション基本計画を
支える宇宙技術

SciREX オープンフォーラム2022 シリーズ第1回 第6期科学技術・イノベーション基本計画を支える宇宙技術

シリーズ第1回は、東京大学公共政策大学院のSTIG(Science, Technology, and Innovation Governance)が中心となり、「第6期科学技術・イノベーション基本計画を支える宇宙技術」と題したウェビナーを開催しました。
国の進める「第6期科学技術・イノベーション基本計画」の達成には、いかにオープン・イノベーション(企業や機関などが内部に持つ技術資産を提供し、外部の技術と融合させて新しい産業構造を作ること)を進めてゆくかがカギとなります。そこで、今回は新たな技術や産業の創出、新興国の大学との連携などで大きな成果を生んでいる宇宙技術を例に、オープン・イノベーションが実際にどう機能し、なぜ成果につながったのを検証し議論しました 。

SciREX オープンフォーラム2022 シリーズ第1回 第6期科学技術・イノベーション基本計画を支える宇宙技術

東大公共政策大学院特任講師
ヴェルスピレン・カンタン氏

東京大学国際オープンイノベーション機構(IOI)機構長、同大学理事・副学長・教授
大久保達也氏

導入として、モデレータのヴェルスピレン・カンタン氏(東大公共政策大学院特任講師)から、「第6期科学技術・イノベーション基本計画」でも重要分野の一つとして挙げられている日本の宇宙産業はここ10〜20年で大きく変貌し、衛星からのデータの商業活用を目指す「宇宙ベンチャー」が数多く生まれていること、こうしたプレイヤーは事業を進めるために自らが資金的なリスクを負う、という点で主に官公庁の需要や資金に依存してきた旧来型の「宇宙企業」とは大きく異なることが紹介されました。

基調講演として、大久保達也氏(東京大学国際オープンイノベーション機構(IOI)機構長、同大学理事・副学長・教授)が、東京大学におけるオープン・イノベーションの進め方を紹介したのち、3人のパネリスト――超小型宇宙衛星開発のパイオニアである中須賀真一氏(内閣府宇宙政策委員会委員、東京大学大学院・工学系研究科教授)、内閣府と経済産業省で宇宙産業の戦略立案を主導した高田修三氏(東京理科大学上席特任教授)、そして中須賀研究室からのスピンオフで最近約20億円の資金調達を成功させたアークエッジ・スペースのCEO福代孝良氏――によるパネルディスカッションが行われました。最後にSTIG代表の城山英明氏(東京大学公共政策大学院・法学政治学研究科教授)がウェビナーを総括しました。

ネットワーク化されたエコシステムの形成がカギ

大久保教授は、イノベーションとは技術進歩を指すのではなく「開発の段階からどのような経済価値につながるのかを考慮して新たな産業構造を形成すること」だといいます。現在では開発当初からバリューチェーンやサプライチェーンを想定して複数の企業が相互に連携し、パートナーシップを形成することが重要になっており、今日のイノベーションはこのような「ネットワーク化されたエコシステム」を想定して進める時代になっていると指摘しました。

東京大学の持つ知識や技術を企業と協力することで新産業につなげようとしているIOIでも、イノベーションを「全体のシステムとして捉えている」のが特徴だといいます。例えば、産業技術の創出と同時に、知財権の戦略や契約に関する法務、競争戦略の設計などの専門家が組織的に取り組んでいます。

中須賀真一氏(内閣府宇宙政策委員会委員、東京大学大学院・工学系研究科教授)

中須賀真一氏(内閣府宇宙政策委員会委員、東京大学大学院・工学系研究科教授)

中須賀教授は、研究室からすでに日本の「新宇宙産業」を代表するベンチャー企業3社 ――アクセルスペース、シンスペクティブ、アークエッジ・スペース ―― が生まれていることを紹介した上、技術が産業形成につながった要因を、1)学生が頑張ったこと、2)研究室自らが衛星を開発し、アカデミアの強みを活かして失敗を恐れず、果敢に新技術にチャレンジしたこと、3)そしてJAXAや国立天文台などの政府機関や他の宇宙企業、スタートアップ、技術力のある小さな部品メーカーなどと協力関係を築きエコシステムを作り上げたこと、と分析しました。特に、多くの関係者とネットワークを築いたことで「幅広い分野から密度の濃い情報が自動的に集まってきた」といいます。

超小型衛星「ほどよし」 
Toshiki Tanaka, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons

超小型衛星「ほどよし」
Toshiki Tanaka, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

また、中須賀教授が中心になって進めた低コスト・短納期の超小型衛星開発プロジェクト「ほどよし」の最大の成果は、技術力のある中小部品メーカーによるサプライチェーンのネットワークが生まれたこと、と指摘しました。「既存の宇宙関連企業の部品はコスト高だったので使わなかった」といいます。現在では、多くのベンチャー企業がこうしたサプライチェーンから部品を調達することで、低コスト・高品質部品の国内調達が可能になっています。

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