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真の問題解決とは何なのか?政策立案の要諦を体得する3日間に SciREXサマーキャンプ

コロナで顕在化した「課題」は「可能性」

いよいよ3日目。最終発表会を迎えます。最終発表会では、9つのグループがプレゼンテーションを行い、下記の4つの観点から審査が行われます。

  1. ①課題発見:課題設定の適切さ、着眼点のユニークさ
  2. ②提言立案プロセス:エビデンスの扱い方、客観性、議論のプロセス
  3. ③政策提案内容:具体性、優れた政策デザイン、実行可能性、新規性
  4. ④表現力:理解のしやすさ、質疑に対する対応の的確さ

9つのグループのプレゼンテーションが終わると、得票の集計・審査へ。集計の結果、今年のスチューデントアワードは、グループ9に決定しました。なお、このチームは、サマーキャンプの後、グループワークでのアウトプットを経済産業省へ提出しました。(下記の写真はパブリックコメントに提出した瞬間の画面です)

グループ9のファシリテーターを務めたMatthew Brummer政策研究大学院大学講師(右下)と飯塚倫子政策研究大学院大学教授(右上)

グループ9のファシリテーターを務めた
Matthew Brummer政策研究大学院大学講師(右下)と
飯塚倫子政策研究大学院大学教授(右上)

グループ9のテーマは「現代の国富論 -パンデミック、第4次産業革命下の経済成長の伴となるAIガバナンス」です。わたしたちが人間らしさを保ったまま、AIが人間に適した形で実装されるためにはどうすればよいのでしょうか。グループ9はこの問いに対して、AI ガバナンスをおこなう主体(unit)のあり方・合法性の担保・AIがインパクトをもたらす範囲の策定・公正な競争が行われるための情報共有・ルールづくりを海外と比較しながら、日本の現状を俯瞰した上で、日本がとるべき方策を論じました。

続いて、優秀賞の発表です。優秀賞は本来2つのグループに授与する予定でしたが、どのグループのプレゼンテーションも高い評価を得て、審査が難航したため、予定を変更して3つのグループに増やすことに。審査員が悩みに悩んだ結果、グループ1・グループ2・グループ7に決定しました。

優秀賞を受賞したグループ1の発表スライド

優秀賞を受賞したグループ1の発表スライド

グループ1のテーマは「ポストコロナを見据えたライフスタイルイノベーションによる持続可能な脱炭素社会の実現」。現在のフードロス問題のボトルネックとして 「消費者と事業者がもつ、商品としての食に対する意識」を挙げ、“足るを知る社会”への転換を通じた脱炭素社会の実現を掲げ、

  1. ①食品廃棄への追加課税
  2. ②食品の最適生産・提供事業者への優遇制度
  3. ③フードロス削減テクノロジーの利活用・開発支援をコア施策として提案しました。
優秀賞を受賞したグループ2の発表スライド

優秀賞を受賞したグループ2の発表スライド

グループ2のテーマは「アフターコロナ時代の研究者による政策への関与のあり方」です 科学者、政策担当者の双方で、政策形成プロセスにおけるアクター間の見解の相違(言葉の使い方の違い、政策に対するスタンスの違いなどを理解・調整し、両者の橋渡しをできるだけの知見・能力をもつ人材・組織が不足している、という問題意識を提示。学術と行政の橋渡しができる人材・組織=中間人材・中間組織と定義した上で、これらの強化を訴えました。

優秀賞を受賞したグループ7の発表スライド

優秀賞を受賞したグループ7の発表スライド

グループ7のテーマは、「ポストコロナの学校教育」です。教員の多忙化、学校へのニーズの多様化など、教育現場における課題は山積しています。これに関して、外部人材の活用や教科学習のICT化などアウトソースを通じた改善策を提示し、教員がひとりひとりの生徒へ向き合う時間を増やし、ひとりひとりの高校生が生き生きと過ごせる社会を描きました。

最後に、最優秀賞の発表です。最優秀賞はグループ 4。テーマは「ミッション志向型イノベーション政策立案のためのロードマッピング」です。

最優秀賞を受賞したグループ4の発表スライド

最優秀賞を受賞したグループ4の発表スライド

ミッションの定義づけをしたうえで、グループで挙げた「コロナパンデミックにより浮き彫りになった大都市のレジリエンスに関する課題」を提示。10年後に場所・時間に依存しない働き方を実現することに向けて、次の提案をしました。

空間:東京圏から地方への移住者を10年間で200万人にする
移動:非生産的な移動時間ゼロ社会&電車遅延ゼロ社会へ
ツール:ツールの発展による、範囲と内容両面での働き方への貢献

この他、グループ3は日本国内でコロナの感染が拡大した時期、認知症の人々の死亡件数が(コロナ以外の要因で)増加したことなどに着目。みちびき(準天頂衛星システム:準天頂軌道の衛星が主体となって構成されている日本の衛星測位システム)を通じて、認知症の前臨床段階の人を、行動パターンなどをもとに察知するなど、スペースアプリケーション活用の可能性を示しました。

左はグループ3、右はグループ5の発表スライド

左はグループ3、右はグループ5の発表スライド

グループ5のテーマは「COVID-19の経験に基づく今後の感染症対策」。現在疫学調査を担う自治体や保健所の負担状況を提示した上で、1水際対策不足に対しては、入国者の管理強化、2効率的な疫学調査不足に対して、接触確認アプリの機能強化することなどを提案しました。

グループ 6のテーマは「データで解析する科学技術イノベーション」。政策をつくるフローの一番はじめの出発点「正しい情報収集とはなにか?」に重点をおきました。テーマは学生から募集し、各自の学生が様々な分野についてのデータを分析しました。このうち「国の宇宙探査計画と研究生産性」をテーマにした発表では、個別の探査計画を予算あたりの論文数・被引用数を評価・分析し、この結果を施策の提案につなげました。

左はグループ6、右はグループ8の発表スライド

左はグループ6、右はグループ8の発表スライド

グループ8は「いつでも、どこでも、だれでも日本食」をキャッチコピーに、人的交流を前提としていたこれまでの日本のブランド戦略、インバウンド戦略の見直しを図りました。対面でのおもてなしができなくなったが「モノ・情報は移動できる」と、日本食の標準化などを通じた日本食文化の発信、日本のイメージ向上を提案しました。

結果発表の後は審査員ひとりひとりがコメント。最後に隅蔵康一政策研究大学院大学教授、青島矢一一橋大学教授が閉会の挨拶を行い、SciREXサマーキャンプは幕を閉じました。

閉会の挨拶を行う隅蔵政策研究大学院大学教授(画面左)、青島一橋大学教授(画面右)

閉会の挨拶を行う隅蔵政策研究大学院大学教授(画面左)、青島一橋大学教授(画面右)

ご参加・ご協力いただいたみなさん、みなさんのおかげで今年も無事に開催することができました。ありがとうございました。キャンプは3日間でしたが、ここでの気づきやつながりが、未来の皆さまにとって有意義なものとなれば幸いです。

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