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真の問題解決とは何なのか?政策立案の要諦を体得する3日間に SciREXサマーキャンプ

SciREXサマーキャンプ真の問題解決とは何なのか?政策立案の要諦を体得する3日間に

2012年にはじまり、今年で10回目を迎えるSciREXサマーキャンプ。昨年に引き続きオンライン形式で開催され、9月3日(金)から5日(日)までの3日間、科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」を推進するSciREX事業の拠点(政策研究大学院大学・東京大学・一橋大学・大阪大学・京都大学・九州大学)からは学生や教職員が、また文部科学省を中心とする行政官、SciREX事業関係機関の方々等、あわせて105名が1つの画面に集いました。

コロナで壊れた 「常識」 ここから何を生み出すか

今年のテーマは「Afterコロナ時代のイノベーションシステム」です。コロナによって、社会・研究・教育はどのように変化し、これからどのような仕組みをつくっていくべきなのか。下記の9つのお題をもとに、6つの大学に所属する、様々な国籍、バックグラウンドをもつ学生たちが、一つのチームとなって話し合います。

コロナで壊れた 「常識」 ここから何を生み出すか

最終日の最終報告会では、チームごとに政策を提案します。提案に対して、参加者が投票し、一番多くの票を獲得したチームが “スチューデントアワード” に輝きます。また、4名の審査員が選ぶ “最優秀賞” “優秀賞” も用意されています。

写真はSciREXサマーキャンプ2021の審査員の方々

写真はSciREXサマーキャンプ2021の審査員の方々

違いを超える カギは「信頼関係」に

1日目のオリエンテーションでは、隅蔵康一 政策研究大学院大学教授が開会挨拶をしました。「これからの3日間、様々な人と交流し、“知を創出する” 機会にしていただければ」と、この場に集まった意義を確認します。

次にマイクは、文部科学省政策科学推進室の中田栄介室長へ。なぜこのサマーキャンプが行われるのか、キャンプのもととなっているSciREX事業を概説します。社会的課題に対して、昔のようにたくさん資源を投入できる時代ではなくなったため、本当に効果のある手段で、客観的根拠をもって、合理的なプロセスを経て政策を形成することが求められるようになった、と中田氏。行政官が「一部の人の声を聞く」のではなく研究者と適切に協働していく必要があり、このときカギになるものとして“信頼関係”を挙げました。

続いてSciREX事業の各拠点大学からの挨拶へ。拠点の西端、九州大学の科学技術イノベーション政策教育研究センター(CSTIPS)の永田晃也センター長は、移動の制限される困難な状況で「あえて学ぶ皆さんの間でこそ、非常に緊密なネットワーキングができていく」とし、参加者のこれからの活躍に期待を寄せました。

ひとりひとりに目を向ける Society5.0提唱の舞台裏

1日目のオリエンテーションが終わり、次は全体講演へ。その幕開けを飾るのは、文部科学省高等教育局専門教育課の中澤恵太企画官です。これまでどのような議論や考え方にもとづいて日本がSociety 5.0 を提唱し、科学技術・イノベーション基本計画を立ててきたのか?計画策定までの道筋をたどります。

まず、いままでイノベーションに関する政策をつくるとき「一番注目されてきたのは、経済成長でした」と中澤氏。しかし、人の寿命が伸び、これまでよりも長い時間を “余分に” 手にした一方で、これまでよりも多くの情報を行き来させることも可能になりました。また、SDGsの考え方も浸透してきました。これに伴い、わたし達の生き方は変化・多様化する中、単なる経済成長だけでなく、一人ひとりの多様な幸せ、すなわちwell-beingにも目を向ける必要がでてきた、といいます。

データを蓄積・活用できている企業が、いままさに破竹の勢いで成長していることを、企業の時価総額ランキングの変遷を根拠に示し「データが価値を創造する」時代の到来を宣言。第6期科学技術・イノベーション基本計画に「安心」「安全」という文言が明記された背景にはデジタルトランスフォーメーションにともない “監視社会” “格差社会” までもが発展してしまいかねないという不安があったことにも言及しました。

続いて、「脳科学で心の不安に打ち克つ:スタートアップの経験」をテーマに川人光男 ATR脳情報通信総合研究所所長が講演しました。

日本の精神疾患患者の数は年々増えていて、傷病別にみた総患者数もトップレベル。治療方法も、画一的で主観的。問題の多い分野だからこそ、可能性も大きい。これから客観的な診断のもと、ひとりひとりに合った治療法が選択できるように変えることで「治療期間の減少・総医療費の削減ができ、社会負担を減らすことにつながる」としました。

講演のあとは、川人氏の経営するスタートアップ企業(株式会社XNef)の、経営人材採用に関連して、「今後経営人材になるために、いまの学生に求めることはどのようなことがありますか」という質問も。これには青島矢一 一橋大学イノベーション研究センター教授)が「大きな会社に入るとその一部分しか知ることができないけれど、学生のときベンチャー企業を経験しておくと会社や事業の全体を見ることができる」とコメントしました。

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2日目 技術はあるのに…事業が小粒なのは何故なのか
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