真の問題解決とは何なのか?政策立案の要諦を体得する3日間に SciREXサマーキャンプ
技術はあるのに…事業が小粒なのは何故なのか
2日目は奥篤史氏 文部科学省大臣官房人事課人事企画官が講演しました。テーマは、「政策立案の在り方―量子技術イノベーション戦略の例を参考に」です。
国家戦略としての量子技術イノベーション戦略の策定や第4期科学技術基本計画の策定に携わってきた奥氏。政策を立案する際の基本的な考え方として、次の6点を挙げました。
このうち、最も重要なのは①の課題設定だと強調。何が課題なのかを見極め、①から④までのプロセスを積み上げていくこと、としながらも「文章をつくっただけでは、絵に描いた餅になってしまう」と注意。5点目に挙げた推進体制の整備は「実際に動かしていくため」の重要なマイルストーンといえる、と説明しました。
その後の質疑応答では、参加者から「民間の立場からすると、会社の研究者のうち9割が海外にいるような企業もある状況。分野ごとに世界各地に分散しているという実態もある」との質問も寄せられ、企業が国境を超えグローバル化していく現在、国策として「日本」の技術をサポートすることの意義も話題に上りました。
これに対して奧氏は、国が戦略をつくる意味は、企業を “本気にさせる” ための青写真を描き、技術を事業として育てるための環境・手段をつくることにあると回答。「もともと量子センサー・量子コンピュータのコア技術は、日本発のものが多かった。ただ、その技術を企業が評価して、ビジネスに持っていくというところまでのマインドがなかった。そこで、細々とした研究所の研究に留めずに、ビジネスにつなげていくための環境を整備すること、投資の予見可能性を高めるためのロードマップを示すことを意識するようにした」と振り返りました。また、企業が国境を超える中での、国の支援のあり方に関しては、「共通の価値観をもつ外国と協力しながら、いっしょに支援していくことも時に必要となる」と補足しました。
正しく問題が定義されれば、問題は殆ど解けたに等しい
社会問題の解決を目指したファンディング・プログラムの立ち上げ、マネジメント、評価を行ってきた政策研究大学院大学の安藤二香氏(SciREXセンター専門職)は、「政策を論理的に説明する」というテーマで講演をおこないました。
政策を考える際の手法の一つとしてロジックモデルを紹介。その観点から、「理想的な状態があり、いまの現状がある。その差が問題として捉えられ、問題に対して解決策が出される」とし、あるべき姿を整理しないまま「現状だけに目をとらわれてしまうと、対症療法的になってしまう」と注意を喚起。政策立案に取り組む参加者らに「その提案は、既存の取り組みや研究では解決できないのか?ボトルネックを捉えたものか?様々なアプローチ、オプションが考えられる中で、なぜそれが有効なのか?」と問いかけました。
3日目 コロナで顕在化した「課題」は「可能性」