第2回科学技術外交シンポジウム開催
4年間の科学技術顧問活動を振り返り、
今後の在り方を考える
日本の科学技術外交をより発展させるために
セッションIIは、「これからの科学技術外交への期待」と題したパネルディスカッションに移りました。
モデレーターのGRIPS名誉教授の白石隆氏は冒頭、第4期科学技術基本計画の策定中に東日本大震災が起こり、その際の英政府首席科学顧問の対応に強い印象を受けたことから、科学技術外交を基本計画にいれたと回想。岸顧問が、期待通りに科学技術外交面で成果を出した点に謝意を表明しました。
続いて小林喜光氏(三菱ケミカルホールディングス取締役会長)が、グローバル時代における「企業の価値」について紹介。企業経営と同様、国家も三次元的な新しい尺度が必要だとして、サイエンスをベースにした日本の外交について持論を述べました。続いて、五神真氏(東京大学総長)は、世界が資本集約型から知識集約型に変わる中で、日本がどうやって知識集約型社会に転換するかが肝要だとして、Society 5.0を提唱する方向性は先進的だが取り組むスピードが遅いと指摘すると同時に、科学技術外交に必要な大学教育の在り方についても再考が必要だと訴えました。
また、ポール・マデン駐日英国大使の代理として出席したスー・木下駐日英国大使館公使参事官は、日英間の共同研究は質が高いと評価した上で、科学外交の三類型に沿って両国間の科学技術外交に関する課題を提示。科学技術外交は今後、さらに重要になると強調しました。濵口道成氏(科学技術振興機構(JST)理事長)は、科学技術と開発協力(ODA)を融合させたSATREPSの成果を紹介し、「科学技術外交の戦略性を議論する場」と「科学技術顧問と在外公館、現場間の堅固な連携」、「科学技術外交を支える基盤インフラの財政強化」が、国際的な課題解決に必要だと訴えました。最後に、小川尚子氏(日本経済団体連合会産業技術本部統括主幹)は、産業界が科学技術外交に期待するのは世界中から優秀な人材を集めることと、企業が単独では取り組めない国際競争を左右するグローバルなルール形成だと強調しました。
パネリストの講演を終えモデレーターの白石氏は、「エマージング・テクノロジー(新興技術)」を取り巻くあらゆる場面でレジューム変化が起こっていると総括。岸顧問による「科学外交」と「科学技術外交」は分けるべきだとの指摘に首肯し、日本の立ち位置の決め方が重要だと述べました。
最後に岸氏が、「パネリストからの話題提供が非常に充実していた。ぜひこれらを実行に移したい。大事なことは戦略を作り実行することだと肝に銘じたい」と締めくくり、シンポジウムを終えました。
*後日、2020年1月16日に、外務大臣科学技術顧問の岸氏より第2回科学技術外交シンポジウムの議論の内容をまとめた報告書が外務副大臣若宮健嗣氏に手交されました。