第2回科学技術外交シンポジウム開催
4年間の科学技術顧問活動を振り返り、
今後の在り方を考える
日本の科学技術を外交に活かすため、日本初の外務大臣科学技術顧問1が2015年に設置されてから約4年が経ち、2019年12月11日(水)に政策研究大学院大学(GRIPS)と外務省が「第2回科学技術外交シンポジウム」を開催しました。同シンポジウムでは、行政、産業界、アカデミアからパネリストが集い、外務大臣科学技術顧問制度の今日までの歩みを振り返るとともに、我が国の科学技術顧問の今後の在り方について議論しました2。
外交場面で高まる科学技術の重要性
開会セッションでは、外務省外務大臣政務官の尾身朝子氏とGRIPS学長の田中明彦氏、文部科学省文部科学審議官の山脇良雄氏、内閣府政策統括官の松尾泰樹氏から、それぞれ挨拶がありました。
尾身氏は、世界の様々な課題における科学技術の重要性を指摘。日本初の外務大臣科学技術顧問である岸輝雄外務大臣科学技術顧問による活動が2019年に開催されたG20やTICAD7(アフリカ開発会議)など重要な外交場面でも反映され、国内外の科学技術関係者の連携がより深まっている点について、岸顧問の実績を評価しました。続いて、田中氏は、今後もGRIPSが科学技術イノベーション政策を研究教育活動の大きな柱の1つとし、科学技術と科学技術外交の推進に寄与していきたいと述べました。そして山脇氏は、地球規模課題や日本の研究力低下の解決には科学技術協力が重要であり、文科省も関係省庁と連携して戦略的な科学技術外交に貢献すべきだと強調し、最後に松尾氏が、内閣府が積極的に科学技術協力に取り組むためにも本シンポジウムでの議論を施策に活かしていきたいと結びました。
続いて、外務大臣科学技術顧問の岸輝雄氏より、これまでの顧問活動の振り返りと今後の課題について、基調講演がありました。
求められる科学技術顧問制度、拡大する機能
岸顧問はまず、「外交」と「科学技術」の関係を整理しました。これまで「安全保障」と「通商」が二本柱だった外交は現在、新たに「地球規模課題への対応」が重要度を増していると指摘。これら三要素と科学技術は切り離せない時代となり、様々な外交場面を橋渡しする社会科学と自然科学を融合したものが「科学技術外交」だとしました。
次に科学技術外交の歴史を振り返りました。政府に対して科学的な助言を与える役職は、英国で1964年に政府首席科学顧問が、米国で1976年に大統領科学顧問が置かれます。外務省における科学顧問は、米国が2000年に、英国が2009年に設置しました。このような中、日本では、第4期科学技術基本計画3(2011年-2015年)で「科学技術外交」が盛り込まれたことを機に、「科学技術外交のあり方に関する有識者懇談会」の提言を受けて、外務省が外務大臣科学技術顧問を設置しました。2015年の岸顧問就任後、科学技術外交推進会議を立ち上げ、社会科学と自然科学分野の有識者を集めた科学技術外交アドバイザリー・ネットワークを構築したのち、2019年に狩野光伸岡山大学教授が次席科学技術顧問となり、2人体制で科学技術外交を推進しています。
各国の外務大臣科学技術顧問制度を見比べると、米国は「学術・行政連携型」、英国は「行政型」、ニュージーランドは「自立型」、日本は「合議型」と言えます。各国で制度が大きく異なるため、相互理解が非常に重要です。岸顧問が就任直後に立ち上げた国際的な外務大臣科学技術顧問ネットワーク(FMSTAN)が、科学技術外交における情報や意見交換の場となり、現在20カ国を超えるメンバーが活用しています。
科学技術外交の三類型と顧問活動