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「イノベーション・エコシステムの構成要件に
関する調査・分析」プロジェクト
行政と大学の共同研究で見えてきた
「意識の共有」と「コミュニケーションのプロセス」

「変革型リーダー」と
イノベーション・エコシステム

初年度の事例調査を経てイノベーション・エコシステムの構成要件がいくつか見えてきましたが、ひとつのキーワードは「変革型リーダー」です。「変革型リーダー」は、自ら使命感をもって高いレベルの目標を掲げ、メンバーを奮い立たせることができるようなタイプのリーダーです。こうしたリーダーの存在が、その地域でエコシステムと呼びうるような仕組みを作り出していくうえで重要な役割を担っています。では、変革型リーダーが不在の地域ではエコシステムの構築は不可能なのでしょうか。

永田: 私は、そういうリーダーが存在するというのは必要条件ですが、十分条件ではないと思っています。興味深いことに、私たちが調査対象にした地域の中心人物は地元出身の方ばかりではなく、他の地域から移住してこられたり、仕事としてその事業に関わったりというケースが少なからず含まれていました。つまり、いま地域にリーダーシップを取り得るような重要な人材がいないことを悲観する必要はなく、そういう人材を迎え入れるような仕組みづくりが重要な構成要件となるわけです。

変革型リーダーを含めた「地域資源」に加え、そうした人的資源に対して適切に責任と権限を配置できる「制度」と、地域のアクターと連携しながらダイナミックに活動を展開していけるような「プロセス」という、3つの階層で構成要件を捉えることができるのではないかと、初年度の結果から考えられています。

それら3つの階層に分けて構成要件を構造的に把握して、そこに具体的なインデックスを入れていくことでガイドラインなり評価指標に落とし込んでいくことが2年目の課題となると考えています。

今後の課題。
イノベーションは創出し続けられるか。

いよいよCOIの事例を調査することになりますが、行政側は期待を込めて次のような要望を加えます。

藤井: その事業自体が継続的、または発展的に継続するための要素は結構見えてきました。私達が目指しているのはイノベーションが創出され続けるエコシステムであり、どのようにすれば事業の中から次につながるイノベーションが創出され続けられるというシステム的な要素をプラスアルファで見出すことができればと考えています。

COIの各拠点においては、改めて事業終了後も持続可能なイノベーション・エコシステムの仕組みについて検討・再構築をお願いしているところです。そのため、こちらの調査ではCOIかどうかは切り離して、何がイノベーション・エコシステム構築の要件になり得るのかをしっかりと定義をしていただきたいと考えています。SciREXでの調査結果とCOI事業内での分析結果を融合することができれば、良い指標が出来上がるのではないかと考えています。

永田: やはり2年目も対象事例のフィールド調査を行うことを想定しています。先にも述べました2019年度の調査から見えてきたイノベーション・エコシステムの構成要件を精緻化し参照基準にしながらCOIでの実態がどうなのか、ということを見ていくことになるでしょう。そのプロセスの中でおそらくひとつのポイントとなるのが、実際にプロジェクトを実施している方々の観点をいかに取り入れていくか。COIに携わる人たちがどのような尺度、観点で拠点構築事業の成果を見てほしいのか、という当事者から見た場合の政策評価のあり方についても知見を収集したいと考えています。

藤井: 国の事業である以上、社会課題の解決が重要であると考えています。COIには「人が変わる、社会が変わる、新しい未来を作る」をサブテーマに掲げていますが、人のモチベーションが変わったり行動変容が起こったり、社会自体も大きく変わるということを私達は期待しています。それが現れやすいのが地域課題に対する取り組みであると考えており、その課題解決に向かって様々な取り組みを展開している拠点を調査対象にしていきたいと考えています。

永田: ユニークなイノベーションというものが自立的に、また持続的にできあがっていくような仕組みを政策的にどうサポートしていけるかということですから、いろいろなパターンを想定した形で議論を進めていく必要がありますよね。地域としての空間的な広がりも事業によって異なるので、いろいろな事業領域に非連続な形でイノベーションが創出されるような仕組みを、たとえば大学や公的研究機関の関わり方の違いなどから、さまざまなタイプに分けてわかりやすく定義していきたいです。

左から中里氏、藤井氏、永田氏、諸賀氏、小林氏

左から中里氏、藤井氏、永田氏、諸賀氏、小林氏

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