科学技術イノベーション政策プログラム(Gist)
開講から9年目。
人材育成の総合拠点としての
次なる展開
科学技術イノベーション政策の実務家に必要な専門性とは
実務で科学技術イノベーション政策に携わっていても、ほとんどの方は当該分野を学問として学んだことはありません。一方で冒頭述べたとおり、欧米での議論を転機に日本でも、科学的なエビデンスに基づく科学技術政策が求められるようになってきています。そうしたなかで、政策の企画・立案、実行、評価、修正というサイクルを高度な専門知識をもって実施するスキルが、実務家にも必要とされています。
科学技術政策の対象となる「科学技術とは何か」、「イノベーションとは何か」、そして「どうすればそれらが有効に動くのか」、といったことが分からないと、政策の企画立案はできません。また、政策を立案し実行した後には、その政策によってどのような効果が出ているのかを評価する必要があります。ただ、科学技術イノベーションの場合はセレンディピティのように意図していなかった知識が生まれたり、生まれた知識、研究成果が企業等の他の機関に活用されたり、成果がでないという失敗であってもノウハウが蓄積されるなど、評価といっても単純な指標では測れません。科学技術イノベーション政策の企画や評価が、他の政策と比較してどう違うのか、ということをしっかりと理解することが実務家に求められていると思います。
さらに自分の職場での課題を国際的な社会情勢に照らして俯瞰することも、学び直しの重要な要素となります。本学は途上国からの留学生が多い環境のなか、今後経済発展していくうえでどのように研究力を上げて産業と結び付けていくかであるとか、SDGsのような社会課題に対していかに科学技術イノベーションを使っていくかであるとか、日本の行政や企業とは違った観点で研究している方からが多いので、多様な問題意識や価値観を学ぶことができます。
実際の論文作成にあたっても、自分のもっている業務から出てくる具体的な課題ではなく、少し視野を広げたテーマ設定をサポートしています。現場に近い課題設定だと、現場の構造化されていない状況に引っ張られて客観的なデータで分析することが難しいことがあるからです。学術的な知見や手法で裏打ちされた分析ができるよう指導しています。また、理科系のバックグラウンドを持たれた方に対しては、社会的な課題をいかに研究課題としていくかについて不慣れな方もいらっしゃいますので、そのあたりもきちんとサポートしています。
修士論文テーマ
年度 | テーマ |
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2019 | イノベーションの社会的インパクトに関する考察:物流へのロボット導入を事例として |
2018 | 日本における研究者のモビリティーと国際共同研究の関係 -The Mobility of Researchers and International Collaborations in Japan- |
2017 | 医療研究推進政策の課題と対応策 |
博士論文テーマ
年度 | テーマ |
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2019 | Optimizing International Science & Technology Collaboration through Scientometric Studies |
2018 | Promoting Scientodiversity through Research Grants |
2017 | The Societal Impact of Open Access to Research |
2016 | 原発利用のための制度の変化に関する考察 : 福島原発事故の影響に着目して |
政策と研究の「緊張感ある協働」と、
人的ネットワークの拡大を目指して