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第2回SciREXオープンフォーラム 政策形成と政策コミュニティ

政策形成と政策コミュニティ

2009年から2年間、内閣府総合科学技術会議(CSTP)の常勤議員を務め、第4期科学技術基本計画の策定や最先端研究開発プログラム(FIRST)の立ち上げに携わってきた白石隆SciREXセンター長。第2回SciREXオープンフォーラムでは「政策形成と政策コミュニティ」と題して講演し、「政策のための科学」での研究者-行政官間のネットワークの重要性や、エマージング・テクノロジーの育成に横たわる安全保障上の課題など、STI政策への期待と今後の課題について語りました。

政策形成の参与観察から

SciREXセンター発足当時からセンター長を務める白石氏。「政策のための科学」の取り組みが必要だと考えた理由には、これまで研究者として行政と仕事をしてきた経験がありました。

まずCSTP時代の経験。特に印象的だった出来事として、FIRSTの選考を振り返ります。
「選考委員として関与しましたが、立ち上げに際し、政務にはCSTPに任せてよいのかという懸念があったと聞きました。FIRSTを科研費やJSTの研究助成などとは違うものにしたいという意図があったのだと思います。選考委員の圧倒的多数が研究者で、プロジェクトを公募し、これを様々な分野の専門家が評価し採否を決める。そういうやり方で良いのか。別の選考の仕方、別の資金の出し方があるのではないか。そういう懸念です。これに応えつつ、なぜ、このプロジェクトとこのプロジェクトを採択したのか、社会的にもっと説得力のあるストーリーがいるだろうと思いました。」

もう一つは政策のパッケージ化です。このために、各府省の方々と政策目標を共有する施策を一緒に議論、交通整理し、パッケージにまとめて、推進しました。そのための個別事業ヒアリングのプロセスは、政策がどう作られるかを学ぶ上で、非常に勉強になったといいます。

山脇良雄文部科学審議官

「個別施策を担当している課長、室長にとっては、そういう施策一つひとつは極めて重要です。だから、皆さん、それぞれの個別施策は重要だと言う。あたりまえのことです。しかし、こちらからすると重要なのはわかっている。その中で、この施策とこの施策とこの施策、そのプライオリティを付けるには、何を見ればよいのか。何を根拠に判断すればよいのでしょうか。日本の政策意思決定は、実質的に個別施策の担当者レベルで行われている極めて分散的なシステムだということを痛感しました。」と当時を振り返ります。
「では、トップダウンにすれば、戦略的意思決定システムができるだろうか。政務はそう考えるかもしれないが、トップダウンのシステムは戦略的な間違いを犯すリスクも大きくなる。それよりは、分散的なシステムを前提として、政治、行政、大学、企業、NGO、シンクタンクなど、いろいろなバックグラウンドを持った人たちからなる『政策コミュニティ』を作り、問題を共有するところから出発するしかない」と指摘します。

さらにもう一つは、科学技術基本計画の策定です。「日本の基本計画の特徴は冗長なこと。基本計画というよりは総合計画で、いろんな人の言うことを取り入れてどんどん膨らみます。切るより、入れる方がずっと楽だからです。その結果、いろんなことが書かれているが、何が本当にやりたいのか、よくわからない。ドラフト策定の際、いくつかの国の科学計画を参照しました。イギリスのものは特によくできていた。何をやりたいか、簡潔にして要領を得た形で明示されていた。では、どうして日本ではこういうことになっているのか。予算の付け方の問題だろうと思いますが、ここのところはシステムとしてどうすればよいか、とっくに考える時期に来ていると思います。」

白石センター長は、分散的な意思決定システム、人の出入りの少ない行政システム、判断根拠の不在を、日本の科学技術政策における大きな特徴だと指摘します。
「政策の優先順位を決めることは非常に難しい。一つの政策目標には様々の要素が関連しています。その中から一つの指標だけを取り出し、それを根拠に何らかの判断をするのがよいとは思いません。まず大きなストーリーがあり、その中で個別施策がどういう位置を占めているかわかると判断しやすい。その意味で、EBPMより一段上のレベルで、ストーリーを作っておく必要がある。本来、戦略とはそういうストーリーのことです。」
また、政策評価もより長期的な視点で実施していく必要があるといいます。「政策目的達成のために打たれた個別施策、それが例えば3年のプログラムだったとして、それが終わってすぐ、これが効果です、と言えるようなものはそれほどありません。科学技術政策の場合、10年、20年かかるかもしれない。それでも、20年後に政策効果を調べてみて、このチームにはこういう助成が行われ、こういう研究成果が出て、こういう政策効果がありました、ということが示されれば、それでよいのではないでしょうか。ただ、それが『口実』になっては困る。国民に納得していただく努力は常に必要で、それがCSTPのようなところの仕事なのだと思います。」

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「政策のための科学」による“共進化”を見つめて
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