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第2回SciREXオープンフォーラム 政策形成と政策コミュニティ

「政策のための科学」による“共進化”を見つめて

一方で、研究者の側にも課題があったと指摘します。「こういった観点から日本の政策研究関連の論文を見ると、過去の政策を検証する『バックミラーを見る』研究が多い。あるいは、別の言い方をすると、当事者意識の希薄な研究が多い。これでは政治・行政の問いにストレートに答えることはできません。実際に行政に入って参与観察し、自己反省も含めて、今度やるのであれば、こういうことを考えるといった研究を蓄積していくこと、それを政策コミュニティで共有しておくことが必要でしょう。GRIPSとSciREXセンターの存在意義はそこにあります。」

政策形成と政策コミュニティ

「研究者と行政官が同じ問いをする必要はありません。しかし、お互い、どういう問いをしているのか、どうしてそういう問いを立てるのか、そこのところを共有しているといないでは大きな差が生まれます。それほどケースがあるわけではありませんが、お互い、それぞれのキャリアにプラスになるような形で協働できれば、研究者、行政官としてもっと成長し、もっと大きな問いを立てることもできるようになる。研究者には参与観察は常に重要ですし、行政官も研究者とのやりとりで、行政官以外の人たちのものの見方、問い、説明の仕方、評価の仕方など、いろいろなヒントを得られると思います。」

政策コミュニティとして取り組むべき政策課題の例として、エマージング・テクノロジーのガバナンスが挙げられるといいます。「アメリカと中国の間で、新興技術を巡る非常に厳しい競争が始まっています。新興技術は、いま現れつつある技術で、最終的に誰が何のためにこれらの技術を使うか、エンド・ユーザーもエンド・ユースもまだ見えません。しかし、これが21世紀の産業と安全保障の鍵だということはわかっている。だから、多くの国と企業が極めて大きな資源をこの分野に投入しています。」
加えて日本には少なくとも2つ大きな課題がある、と指摘。
「第一に、日本はもう経済大国ではない。投入できる資源は限られている。では、日本は、いかにしてエマージング・テクノロジー、そのベースにある基礎科学に投資していくのか。ある産業においてどんな要素技術が必要とされているか。サプライチェーンの中で、何がボトルネックになっているのか。そこを押さえるにはどういう研究開発に投資すればいいのか。どう守ればよいのか。我々はそこから考えなければならない。」
「第二は研究開発と安全保障の関係です。日本ではDual useというと軍事技術と同一視される傾向があります。しかし、技術はほとんどすべてDual useです。安全保障分野と重なるからといって、ある分野の研究開発を全て放棄してしまうということはあり得ません。日本としても、この分野の研究開発をどう進め、どう守るか、施策を進める必要があります。その一環として国際共同研究の推進も重要です。そのためにはセキュリティ・クリアランスの仕組みも検討すべきだと思います。」

日本の技術、あるいはそのベースとなるようなサイエンスの基盤を維持するために、どうやって(研究を)守り、育てるべきか、参加者に問いかけ講演を締めくくりました。

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