第10回EU-日本科学政策フォーラム
変化し続ける世界における
科学技術イノベーション政策
ダイジェスト
本フォーラムでは欧州と日本の代表者がホライズン・ヨーロッパや第6期科学技術基本計画の進捗状況について説明しました。その後科学技術政策指導者、科学研究者をはじめ、会議アジェンダ機関、産業界から登壇者らが取り組みについて発表し、ディスカッションでは明白なアクションアイテムや具体的なマイルストーンの策定を目指し議論がなされました。
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全体の司会進行を務めたゲディミナス・ラマナウスカス駐日EU代表部一等書記官(左)、有本建男 GRIPS客員教授(右)
第6期科学技術基本計画
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上山隆大 総合科学技術・イノベーション会議有識者議員
科学技術基本計画は1996年以来、5年ごとの科学技術イノベーション政策を具体化するものとして政府が策定しています。総合科学技術・イノベーション会議 (CSTI)の上山隆大議員は、第6期科学技術基本計画が日本の将来にとって重要な意味合いを持つものだとして説明しました。
「第6期科学技術基本計画は、遠い将来を見据えて策定される政策です。科学技術に限らず、まず2050年に目指す社会像に関して合意を得た上で内容を考案しています。」(上山氏)
加えて、第5期科学技術基本計画までは文系分野の知見が含まれておらず、これからの科学技術基本計画には不可欠であることを示しました。
「イノベーションを再定義するには文系分野に対する古い認識などを一新する必要があります。イノベーションは価値の創出のみならず、新しいアウトプットの形を模索するものであるべきで、第6期科学技術基本計画には文系分野の役割も含ませる予定です。」(上山氏)
第6期科学技術基本計画の中で、特に注目を集めているのはムーンショット研究開発制度についても言及しました。当制度は複雑な社会問題に対し、大胆な発想に基づいて破壊的イノベーションの創出を推進することを目的としています。
「目的意識が明確な研究や社会還元性の高い研究に加え、特に次世代の研究者陣にとってはよりたくさんの基礎研究や、これまでにない形の研究を行うことが重要になります。そのため予算を交渉し、ムーンショット研究開発制度には10億円が充てられることとなりました。」(上山氏)
今後は、2019年12月に開催予定のムーンショット国際シンポジウムの結果を踏まえ、25項目のムーンショットゴールが決定されます。
続いて山脇良雄文部科学審議官が日本の研究の現状について、2005年以来日本の研究力が伸びていないと説明し、文部科学省が2019年4月に発表した政策について言及しました。
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⼭脇良雄⽂部科学審議官
「今回の政策は、研究力が伸び悩む状況を打開するために考案され、必然的に大学改革と密接する内容になっています。研究職を若い世代にとってより魅力的にすること、長期的な研究を行いやすいように予算制度を再検討すること、研究環境や設備を改善することの3つの課題をメインフォーカスとしています。」(山脇氏)
ホライズン・ヨーロッパ