1. HOME
  2. SciREXクオータリーTOP
  3. 11号トップ
  4. 第6期科学技術基本計画へ向け、政策研究者ら議論

研究・イノベーション学会
2019年次学術大会シンポジウム
第6期科学技術基本計画へ向け、
政策研究者ら議論

2.次期基本計画へ向けた政策研究コミュニティからの論点

続いて行われたパネルディスカッションでは、モデレーターの赤池伸一 科学技術・学術政策研究所上席フェローが主な論点を整理。世界や日本における科学技術イノベーションの役割、日本にとってのボトルネック、デジタライゼーションの影響を踏まえた新しい領域の形成といった視点が示されます。また、 林隆之 政策研究大学院大学教授がディスカッションの素材として、学会誌特集号から論文を紹介しました。

林隆之 政策研究大学院大学教授

1つ目の論文では、科学技術イノベーション政策のフレームが変化していることを指摘。加えてこれまでの基本計画では資金制度や法人制度の制度疲労に手を打てなかったことに触れ、横断的な課題群を列挙しています。10年後に更に低下しているだろう日本の研究力を見据え、生産性の向上が急務だとしています。

2つ目の論文では、イノベーション政策形成システムについて構造的な問題を取り上げています。国全体の基本的な方向性を定めるような文書が分散的に存在しており、中長期より翌年度の予算に結び付くような具体的な政策への関心のほうが強い結果、各種の計画が各省庁のウィッシュリストになっていると指摘。加えてトップダウン型の機能強化による会議の増殖や政策立案と実施機関の分離によるフィードバック機能の弱体化などが議論されています。

続いて、基礎研究・学術研究のエコシステムの構築に向けた3つ目の論文。論点は、海外との環境の違いを認識しないままの制度の直輸入、基盤的経費と競争的資金の組み合わせの機能不全、大学の改善意欲を削ぐ評価システム、研究成果指標が過剰にシンプル、そしてキャリア全体に目配りした研究人材への支援不足です。

4つ目の論文が示すのは、第6期基本計画の一つの論点となる、新研究領域の形成と推進方策。新研究領域の形成を予見し、社会的受容性を高めることも含めたガバナンス設計をしていくことは可能か問題提起を行います。異分野融合型と社会ビジョン型を区別し課題を整理し、今後の政策に何が求められるか議論しています。

デジタライゼーションとイノベーション政策を取り上げた5つ目の論文は、経営資源としてデータやルールメーキングの重要性を指摘。一足飛びな発展を支える政府の戦略的な投資が弱いことが述べられます。そして、人間とAIの能力を互いに引き出す調和的なシステムの模索と、イノベーション政策づくり自体のデジタライゼーションは必要であることが示されました。

最後となる6つ目の論文は、産業を取り巻くイノベーション・エコシステムの現状と課題がテーマ。産学連携の制度的な枠組みは、既にある程度整備されていて実行の時期であるということが提言されました。Society5.0やSDGs、地方創生を進展させるイノベーションの促進が必要であり、そのために多様なステークホルダーを巻き込んだ政策形成を進めるべきだとしています。

次ページ 
3.イノベーションの共創
ページの先頭へ