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  4. 共進化実現プログラム(第IIフェーズ)「行政官と研究者が共に政策課題の解決に挑戦した2年間の成果報告会(前編)」

共進化実現プログラム(第IIフェーズ) 行政官と研究者が共に政策課題の解決に
挑戦した2年間の成果報告会(前編)

初日は7プロジェクトが取り組みや成果を示す

【ディスカッション】研究者と行政官の共働によってもたらされることは?①

セッションAの発表が終わり、登壇者全員でのディスカッションに移ります。座長の伊地知氏からは、「行政官と研究者の共働による研究プログラムの良かった点と改善点を振り返る」というテーマが提示されました。

口火を切ったのはQuentin氏。「第Iフェーズから実践に基づく改善が見られた」と第IIフェーズを評した上で、「単に政府の意思決定に刺激や情報を与えることに留まらず、研究者と行政官がより具体的に相互作用することで、時には政府内部のプロセスに解決策の一部を提供する必要があるのではないか」と述べました。続いて林氏は、進捗・成果発表の場を担当課室が用意してくれたことに言及。そうした場でプロジェクトの取り組みを知ってもらうことは、成果が直ちに政策などには反映されずとも、今後のための重要な一歩であるとしました。永田氏は行政官の人事異動に伴うプロジェクトマネジメントの課題に触れた上で、「プロジェクトに関わった行政官たちのその後のキャリアや仕事に、中長期的にどのような影響があったのかを調べることも重要ではないか」と新たな視点を提示。祐野氏は行政官の異動によるチームビルディングの難しさに共感した上で、社会の渦中にあるテーマを扱う際に行政官が伴走してくれることの心強さについても言及しました。

研究者側のコメントを受け、アドバイザリー委員会委員の田辺氏は「政策プログラムの評価を研究者と行政官が共に行うことのできるプロセスを検討することが重要であろう」と指摘。プログラム事務局である政策科学推進室の小野山氏は「プログラム評価をプログラム全体としてどのように位置づけるかを整理し、次の第IIIフェーズを進めたい」と答え、セッションAは終了しました。

【B-1:隅藏PJ】強靭で持続可能な産学連携活動を叶える要因や仕組みとは

【B-1:隅藏PJ】強靭で持続可能な産学連携活動を叶える要因や仕組みとは

隅藏氏

隅藏氏

初日の後半となるセッションBは、「レジリエントな産学連携とイノベーション・システムのためのエビデンスの収集と分析」プロジェクト(隅藏PJ)からのスタートです。隅藏康一氏(政策研究大学院大学 教授)は、産学連携をレジリエント(環境激変下でも強靭で持続的)な形で進めていくエビデンスを収集・分析すべく、6つのサブテーマに分けて多角的な観点から研究を進めたことを説明。

「産学連携活動は、産学連携以外の学術活動を促進するか、妨げとなるか?」というリサーチクエスチョンを前提としたサブテーマの研究では、大学を観測単位に、産学連携で執筆した論文数を産学連携活動の指標として分析。その結果、産学連携が活発に行われることで他の学術論文数も増加する傾向が見られ、産学連携は学術活動全体を促進させる効果を持ちうるというエビデンスが得られました。続いて紹介されたのは、「外性的ショックに対する産学連携活動のレジリエンスを強化するために重要な要素は何か?」という問いのサブテーマです。研究活動への新型コロナウイルスの影響に関して大学にインタビュー調査を実施したところ、産学連携のレジリエンス強化の要因として研究支援組織の安定性や地域社会とのつながりが重要であることが浮かび上がったといいます。

他の4つのサブテーマ「URAの導入による研究環境の変化と学術創出の関係」「日本の大学発スタートアップ」「日本における大学特許の価値向上」「アーリーステージの基礎研究への民間資金の投入」についても同様に手法や成果が報告されました。

隅藏PJで実施した分析結果をレジリエンスの観点で整理した「産学連携イノベーション・システム」の図。ST:サブテーマ〈図版提供:隅藏康一氏〉

隅藏PJで実施した分析結果をレジリエンスの観点で整理した「産学連携イノベーション・システム」の図。ST:サブテーマ〈図版提供:隅藏康一氏〉

片野氏

片野氏

隅藏氏は最後に、プロジェクトの進行にあたり、プロジェクト全体での定期的なミーティングや、メッセージングアプリを用いたこまめな打ち合わせを実施するなどして、研究者と行政官の共進化によるプロジェクトの進行を心掛けたといいます。こうした密な連携による相乗効果があったことを強調し、報告をまとめました。

座長の田辺氏が隅藏プロジェクトのミーティングでの行政官の役割を尋ねたところ、産業連携・地域振興課の片野尚子氏が応答。自身が取り組んでいる産学連携の調査事業の内容の発表を行ったことなど、PJ内の研究者と行政官の交流の様子の一部を紹介しました。

【B-2:池内PJ】STI政策が経済や社会に及ぼす影響をどう測るか

池内氏

池内氏

続いては、「科学技術・イノベーション政策の経済社会効果分析の政策形成プロセスへの実装」(池内PJ)です。池内健太氏(政策研究大学院大学SciREXセンター 特任フェロー)は、STI政策の経済社会効果を測定・予測する方法論の構築等を目標とし、「先行研究等のレビュー」「データベースとシミュレータの連携にかかるシステム開発および経済効果測定」「経済社会効果測定実施ケースの作成およびプロトコル開発」の3つの手法で取り組んだことを説明しました。

池内PJではまず、先行研究のレビューなどを通して、科学技術の発展が産業や経済に及ぼすメカニズムを考慮したモデル構築や、科学技術の特徴を十分に考慮した分析手法は未だに確立していないという課題を明らかにしました。その上で、科学技術振興機構研究開発戦略センター(JST-CRDS)による「戦略プロポーザル」を基にモデルを作成。特定の研究開発から技術革新を経て、産業別の生産性や年代別の労働力人口に至る経済効果を推定できるようにしました。さらに、論文・特許データを用いた分析により連関図の補強や社会実装が見込まれる領域の特定、プレスリリースデータを用いた分析により進行技術の産業における活用状況の把握を行いました。上記3つの成果を集約して完成したものが「技術ロードマップ」(下図)です。これを基に、経済効果のシミュレーションも試行しているといいます。

例:量子コンピュータの技術ロードマップ〈図版提供:池内健太氏〉

例:量子コンピュータの技術ロードマップ〈図版提供:池内健太氏〉

市場調査レポートやプレスリリースからは現時点で顕在化している産業ニーズは把握可能であるものの、将来の潜在的な産業応用については捉えられないといった課題がいくつか挙げられ、池内氏からの報告は終わりました。

赤池氏

赤池氏

池内PJの行政側の立場からは、科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の赤池伸一氏がコメント。「研究者と一緒にモデルを作ることで、非常に複雑なシステムの単純化のプロセスが行政官にも可視化された。このプロセスの部分を一緒に取り組めたことが非常に良かった」と、研究者と行政官の共働によるプロジェクト進行を評価しました。ただし、プロジェクトの取り組みや成果が政策やファンディングへの実装にまでは及ばなかったことを今後の課題として指摘します。

発表を受けてアドバイザリー委員会からは、有信睦弘氏(広島県立叡啓大学 学長)が今後の経済の構造変化に対応できるモデルかという点を、小林信一氏(広島大学副学長・大学院人間社会科学研究科長)が海外の開発状況が反映されたモデルかという点をそれぞれ質問。池内氏は、どちらの点も今後の課題であるとしつつ、特許論文の分析においては国際的なデータを用いていることから海外と比較した際の日本の強みを見ることなどは現時点でもできるだろうと答え、池内PJの発表を締めくくりました。

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【B-3:平川PJ】未来社会をかたち作る研究開発戦略の
策定マニュアルを開発
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