CSTIPSインタビュー
イノベーションの現場を巡り地域と繋がる
事業を横断し多様な学びを学生へ
―この間で学生のニーズは変化してきていますか?
小林: 潜在的には色々とあると思いますが、近年だとやはりデータサイエンスへの関心は高まっています。データ分析に関連する科目を重点的に配置してほしいという要望も科目別のアンケートでは出てきているので、適宜反映させています。私が担当している環境・エネルギー政策Ⅱは地域の環境問題などをフィールドワークする科目で、継続して関心が高いですね。実際に福岡の環境エネルギー問題を扱うので身近だということもあるでしょう。
やはりその時々でホットなトピックには関心がある方が多いです。例えば研究公正に関する問題が起こると、関係する研究をしている方をゲスト講師で招くこともあります。STiPSの小林傳司先生に講義をお願いしたころもありました。
永田: あえてオムニバス形式の講義にすることで、学生のニーズにも応え、かつ実質的な拠点間連携を進めてきました。
―SciREXのコアコンテンツにも積極的に関わっていただいてますね。
永田: 各拠点の授業科目で使用できる標準的な教育コンテンツを開発することは非常に重要な課題だと思っています。かつてMOTやサービスサイエンスが注目され、人材育成の助成事業が行われた際、採択された大学では、それぞれ所属する教員が担える範囲でカリキュラムが開発されました。しかし、こうした新しい領域では、本来必要とされる専門家を一つの大学で揃えられる筈もないため、多くのローカルなカリキュラムは成立したものの、結局コアとなるディシプリンを確立できなかったと思います。私はSciREXにはそうなってほしくなかったので、全国標準的なコアコンテンツを共有した上で、それぞれの大学の強みを生かしたカリキュラムを開発すべきだということをCSTIPSの基本構想の中でも提唱していました。それがコアコンテンツの共同開発という形で実現しているのだと思っています。
―今後CSTIPSではどのような活動に重点を置いていきますか?
永田: SciREX事業もあと4年を切りました。科学技術イノベーション政策に関する知識は、大学経営にも関わるものなので、各大学はそのプログラムを外部資金のみに依存せず、一定の基盤的経費を割り当てるようにしていくべきだと思っています。少なくとも研究大学を標榜する大学ならば、それが必要でしょう。他の国立大学法人では、「科学技術イノベーション政策室」という部署が総長の意思決定を支援する組織として設置されている例もあると聞きます。それができるかできないかは、大学の存在理由に大きく関わる問題だと思っています。
もう一つは自治体とのネットワークのさらなる強化です。2019年には福岡県庁と共同研究契約を締結したり、福岡県庁の職員の方へEBPMについて講義する場を作ったりと、ネットワークをより実質的なものにするための取り組みを実施してきました。
―ありがとうございました
略歴
永田 晃也教授
九州大学 科学技術イノベーション政策教育研究センター センター長
早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了。科学技術庁科学技術政策研究所主任研究官、北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科助教授を経て 九州大学大学院経済学研究院准教授 。2010年、同教授。2008年〜2009年度、文部科学省科学技術政策研究所総括主任研究官。 2011年〜2012年度、および2019年〜2020年度経済学府産業マネジメント専攻・専攻長。 2012年度より九州大学科学技術イノベーション政策教育研究センター・センター長。
小林 俊哉准教授
九州大学 科学技術イノベーション政策教育研究センター
東北大学大学院工学研究科博士課程終了。広告会社、財団法人未来工学研究所研究員、東京大学先端科学技術研究センター特任助教授、北陸先端科学技術大学院大学准教授、富山大学特命教授を経て、平成24年4月より九州大学・科学技術イノベーション政策教育研究センター准教授。
新しいステージに向けて