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CSTIPSインタビュー イノベーションの現場を巡り地域と繋がる
事業を横断し多様な学びを学生へ

SciREX領域開発拠点として、地域の科学技術イノベーションや東アジアのイノベーション・システムに強みを持つ九州大学 科学技術イノベーション政策教育研究センター(以下、CSTIPS)。開講以来順調に受講者数が増え、延べ500名を超える方が受講。そのうち53名がコースワークを修了し行政やシンクタンク、研究機関、報道機関など様々な分野で活躍しています。今回のインタビューではこれまでの活動を振り返り、これまでの成果や新たに見えてきた課題についてご紹介します。

RESIDENS

CSTIPSセンター長
永田 晃也

九州大学准教授
小林 俊哉

―CSTIPSの特徴は何でしょうか?

永田: まずは受講生の多様性です。開講当初から科目等履修制度を利用して社会人の履修生、民間企業や福岡県、福岡市といった行政の方に受講していただこうと考え、履修者を募集するための広報に力を入れてきました。
その結果、地域のコンサルティング業務に従事している方や何らかの形で公共事業に関わっている方も多く受講しています。年齢にもかなり広がりがあり、大学院生の受講生にも刺激になっていると思います。

小林: 修了した方の勤務先を見ても、飲料メーカーや電機メーカーなど民間企業の方は非常に多いです。また、地元ですと福岡県庁、福岡市役所の方、中央省庁では、文部科学省に入省した修了生もいます。受講された後に大学の専任教員になった方も3名いますね。
あとはシンクタンク、コンサルティングファームの方が、自治体関連の案件を受けるにあたって受講されている方も多い印象です。地理的にも山口市、大分市、佐賀県鳥栖市、熊本市、宮崎市、広島県府中市といった九州各県や中国地方などの福岡県外から通ってる方もいます。

永田: 科目等履修生の中には、所属企業の国内留学制度を活用し、企業側の負担で履修されているケースもあるようです。2020年度からは自治体の課題解決に重点を置いた「地域政策デザイン論」という科目を他の学内組織からCSTIPSへ移管しました。この科目は、九州大学が産学連携事業の一環として開始したもので、多くの社会人の方に「地域政策デザインスクール」という講座名で受講してもらっています。既に10年以上続いているプログラムで、これまでの受講生は350名を超えています。修了生には自治体の首長や地方議員もいます。基礎自治体と連携し政策提言を行うという内容なので、CSTIPSの柱の一つである「地域のイノベーション」に直結する内容です。また、RESIDENS というシステムを開発し、地域の科学技術イノベーション政策に関する事例情報を相互に共有できるようにしています。このシステムを開発し社会実装する過程で築いた自治体とのネットワークも我々の強みです。

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―もう一つの柱の「東アジアとの連携」ではどのような取り組みをしていますか?

永田: 5-6年ほど前から私は華中科技大学の曹勇教授と共同研究を進めています。また、2016年にはAsia-Pacific Innovation Conference という大規模な会議を主催しました。
特に華中科技大は九州大学自体が協定を締結していますし、曹教授にはCSTIPSで毎年開催しているSTI政策シンポジウムでの講演や、サマーキャンプへの参加など、様々な形で拠点の事業に参加頂いています。

―コース修了後に継続して学びたいという方も出てきていますか?

永田: はい、相当数います。元々学位を取れるプログラムへ発展させることを想定してSTI政策専修コースには科目等履修制度を導入しました。専修コースで取った単位を、学位プログラムの修了に必要な単位として組み込めるようにしたいと考えたからです。
ただ大学院の新しい専攻を設置することが諸々の事情で難しくなったので、代わりに経済学府の履修証明プログラムとして発展させることにしました。また、履修証明プログラムの修了生の中から後期課程への進学志願者を選抜し、進学指導と進学後の研究指導を一貫して行う「STI政策人材開発トラック」を設置することにしました。
当初の構想通りにいかなかった部分もありますが、CSTIPSの提供する授業科目を履修して科学技術イノベーション政策に対する関心を深めた人が、自分自身の問題意識をさらに発展させて学位論文にまで結び付けていくという道筋を学内に定着させていきたいと思っています。

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