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SciREX インタビュー インターンシップを通して学んだ
政策研究の意義
橋渡し研究の調査プロジェクトから見えたもの

インターンシップを通して学んだ政策研究の意義 ~橋渡し研究の調査プロジェクトから見えたもの~
インターンシップを通して学んだ政策研究の意義 ~橋渡し研究の調査プロジェクトから見えたもの~

慶應義塾大学文学部3年
中山 穂香さん
(なかやま ほのか)

―なぜ、インターンシップ先としてSciREXセンターを選ばれたのですか?

中山: 進路として、研究者がより快適に研究できる仕組みづくり考える・支援する公務員の仕事に関心がありました。また、卒業論文の執筆に向けて、研究方法やジャーナルの扱い方を知りたい、大学で学んだ研究方法を、実務を通じて身につけたいとも思っていました。
SciREXセンターは、政策立案にとても近い研究機関で、研究方法も体得できそうだと感じて応募しました。
私は、ベンチャー企業へのインターンシップも経験しましたので、社会課題解決に対して行政側と企業側の両方からアプローチし、それぞれにやりがいを感じることができました。

―大学生が通常インターンシップする時期より早く、そして、長い期間取り組まれましたね。

中山: はい。半年から1年かけて、じっくり取り組んで成果が出せるインターンシップを希望して、大学2年生の2月から3年生の9月まで参加しました。省庁で募集するものは夏休み中の1カ月と短く、長期間インターンシップできる機関をインターネットで探してSciREXセンターを見つけました。

―SciREXセンターでのインターンシップでは、なにに取り組みましたか?

中山: 文部科学省の橋渡し研究戦略的推進プログラム(以下、橋渡し研究)の成果を、人材・研究費・特許取得など評価の流れに沿ってまとめる、政策研究大学院大学・隅蔵康一教授の調査プロジェクト「医療分野の特性に合った基礎研究・応用研究・実用のイノベーションエコシステム構築に資する調査研究」に関わりました。この調査は、5年毎に行われる橋渡し研究の定期的な見直しに活かすものです。私は「橋渡し研究って何?」というレベルから携わり始めましたが、関心や知見を広げたいという気持ちと、先生やスタッフの皆さんによる温かい見守りから、積極的に進めることができました。

具体的には、橋渡し研究に至る歴史的な経緯をまとめ、調査に必要な機器開発に関わる論文、英文のものも含めて10本ほどをリストアップし、読み込みました。また、橋渡し研究の支援拠点に関する資料もまとめました。一番印象に残った取り組みは、橋渡し研究の成果として、北海道大学の白土博樹教授が株式会社日立製作所との産学連携によって開発した陽子線治療システム「PROBEAT-RT」に注目し、保険医療化完了までの経緯や課題を、研究者から直接ヒアリングしたことです。

―「PROBEAT-RT」は、正常部位への影響を軽減する、陽子線を用いた新しいがん治療システムですね。

中山: はい。基礎研究開始から保険適用するまでに30年かけられています。白土先生は、その時々で苦心されながらも、治療技術を待つ患者さんのために適した研究資金や連携先を得ようと取り組んできたことが成果につながっています。橋渡し研究が平成31年3月までに支援した1,200件あまりの研究成果のうち、保険医療化できたのは18件しかありません。新しい治療薬・治療技術などを求める人々に、もっと早く、より良いものを届ける難しさを知りました。

―どのような学びがありましたか?

中山: この調査を通じて、実用化に向けた研究開発には、人材・研究費・特許取得が複雑に関わり合っている現実を知ることができました。特に研究資金が足りていない。でも、そのことは社会に、そして、まさに新しい医療を必要としている人達に知らされていないのです。多くの方へ研究の取り組みや有用性を伝え、知っている人の母数が増えれば、支援すべきと声に出し行動に移す人も増えるのではないでしょうか。その動きが政策に届けば、研究予算が増やされて研究者に届くようになるかもしれません。「そのために自分が何かをしたい」という気持ちが高まりました。そう思えたのは、開発を成し遂げようとする意志を研究開発者から直接聞けたこと、さらに、隅蔵先生や政策側の方々を通じて垣間見た政策研究の意義に刺激を受けたからです。働くことは社会への貢献なのだと実感する、貴重な経験になりました。

調査そのものだけでなく、最終成果発表からも学ぶものがありました。自分の成果を発表するだけでなく、他調査プロジェクトのインターンによる発表を見ることができるので、どのようにプレゼンをまとめるか、伝えるかの勉強になります。私は自身の発表1・2週間前に、ほかの方が報告で、自分の将来やこれからの活動に結び付けてまとめられていたのを見て、どんな調査をしてきたかをまとめるだけでない成果発表へと視野を広げることができました。

―今後、インターンシップを希望する方に向けて、伝えたいことはありますか?

中山: SciREXセンターでの業務はレベルが高く、卒論を仕上げるために必要な力を身に付けることができます。また、思っていたようにうまくいかず、もっとこうすればよかったという反省は、卒論だけでなく今後の取り組みにも活かせると思います。
進路に迷っている人、将来やりたいことが定まっていない人に、お勧めしたいです。

―ありがとうございました。

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