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SciREX政策リエゾン インタビュー 共進化実現プログラムの仕掛け人に聞く
STI政策におけるSciREX事業のレガシーとは?

(大臣官房人事課 中澤恵太企画官)

共進化実現プログラム、そしてSciREX事業は何を残せるのか

──第Iフェーズの追跡調査の結果を見ても、「関係形成や継続的発展」が成果の一つとしてあげられていますね。中澤さん自身は、共進化実現プログラムの成果についてどのように考えますか?

中澤: 例えば、第Iフェーズ(2019年度~2020年度)で採択した「イノベーション・エコシステムの構成要件に関する調査・分析」プロジェクト(研究代表者:九州大学 永田晃也教授)の研究は、2022年3月に終了したセンター・オブ・イノベーション(COI)プログラムの評価に資するものです。こうした個々のプロジェクトの成果に注目して評価していくことは重要です。しかし、共進化実現プログラム、あるいはSciREX事業の成果の本質は、目に見えない部分にあるのではないかと私自身も考えています。省内で政策科学やEBPMに興味のある行政官が増えている状況であったり、研究者との協働を通して共有された視点や新たに生まれた関係性であったりです。こうした波及効果や関係性、ネットワークこそがSciREX事業の無形資産だと思います。

──共進化実現プログラムで生まれた関係性という意味では、今年9月に実施した座談会において、その関係性を活かした行政官と研究者とのより活発な人的交流への意見も挙がりました。STI政策分野における両者の今後の協働関係についてはいかがでしょうか?

中澤: 今は転職をしやすく、世の中のキャリアも多様化している時代です。省内でも「半分行政官、半分研究者」という働き方をされている方もいます。今後、「行政官」と「研究者」とでインタラクションをしていくことはもちろん、その立場を固定しすぎないことも大切ではないでしょうか。アメリカのようにリボルビングドア(官民で人材が流動的に行き来する仕組み)をもっと増やすことも考えられます。

──最後に、これからの時代のSTI政策をより良いものにしていくためにも、共進化実現プログラム、ひいてはSciREX事業で残すべきことについてお願いします。

中澤: 行政官と研究者はもちろん、政治家や民間企業の方を含めたステイクをホールドしている方々が、それぞれの知見を持ち寄りながらうまく物事を決めたり物事を動かしたりしていくことができると良いと思います。そのためには日頃からお互いに話せたり、他の誰かと容易につながったりできる環境が大切であって、SciREX事業が10年以上かけて築いてきたエコシステムを残すべきです。これまでに大勢の人がこの事業に関わってきました。全く別の場所で活躍している人もいますが、必ずどこかでつながっています。この大きく広がったエコシステムこそがSciREX事業のレガシーです。共進化実現プログラムもSciREX事業も残り約2年で終わりますね。うまく引き継いでいって欲しいなと願います。

──アドバイザリー委員会での議論においても、SciREX事業のネットワークの持つ価値や今後の在り方に関するご意見が多く上がっています。残り約2年となった共進化実現プログラム、そしてSciREX事業の展望を検討する上で重要な事項かと思います。本日は貴重なお話をありがとうございました。

「SciREX事業のことは愛おしくてたまらないのですが……」と、取材の最後に中澤さん。「実は、『大好きだけど、大嫌い』という感覚なんです」。共進化を絵に描いた餅にしないために、相当もがいたといいます。「実際に取り組む中で、人間関係も含んだ本当の難しさを理解することが大切だと思っています」。

参考資料

取材・撮影・執筆:梶井宏樹(SciREXセンター 専門職)

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