座談会 小林信一×小野山吾郎×安藤二香
共進化実現プログラム(第IIIフェーズ)
開始にあたって
プログラム運営・評価側は
SciREX事業最後の研究プログラムをどう捉えるか
共進化実現プログラムでは何が達成できたのか
安藤:共進化実現プログラム第I・第IIフェーズは、まさに「共進化」を意識したプログラムでした。昨年度には、第Ⅰフェーズの追跡調査としてプロジェクトに参画した研究者、行政官にアンケートを実施し、アウトカムやインパクトについて聞いていますが、ここまでで達成できたことは何でしょうか。
小野山:実際にプログラムを始めてみると、本当に手探りでした。当初は行政官と研究者のマッチングさえままなりませんでした。ようやくマッチングできても研究を進めてみたらすぐに物別れになってしまったり、うまくいっていたとしても担当の行政官の異動でうまくいかなくなったり……。苦い思いを味わいながら試行錯誤や工夫を重ねた結果、第IIフェーズからは本事業のアドバイザリー委員会で状況を報告し、意見をもらいながら一緒に次の手を考えるといったことが行われるようになりました。言い過ぎかもしれませんが、隔世の感がありましたね。また、研究面では学会発表や書籍の出版などで行政官と研究者の連名での発表も出始めました。共進化としての良い雰囲気や成果が出てきていると思います。
小林:第Iフェーズは本当に「研究者の片思い」みたいなところもありましたね(笑)。第IIフェーズの終わりまでには、行政官と研究者の間でコミュニケーションがやっとできるようになったのではないでしょうか。個人的にはもっと遠慮せずにお互いやり取りすれば良いのにな、と思っています。あとは、第IIフェーズになると、SciREX事業で育った若者※1が、少しずつ文部科学省の中に入り始めましたね。この点が、僕はすごくいいことだと思っています。これこそが共進化実現プログラムの大きな意義なのではないかという気さえしています。
安藤:課題についてはいかがでしょうか。
小野山:共進化実現プログラムはSciREX関係大学・機関への公募形式の約2年間のプログラムですので、大きな政策課題や研究、課室を横断するような事業には期間や規模の点で少々馴染みません。個別の政策課題に対する良い取り組みや研究成果はあるものの、STI政策全体から見るとやや見えづらいところがあります。また、ポリシーミックスやアジャイル型政策形成など、これからは現在進行形、リアルタイム性、また横断的な連動性が一層求められます。ゆくゆくは俯瞰的な将来の見通し等も得られるようなアプローチも含めて必要になるはずです。
小林:行政官と研究者の人的交流をもっと活発にできないでしょうか。研究者を他の組織に派遣するといった仕組みは昔からあるわけです。それを年単位ではなく数カ月単位で。4〜5ヶ月経つと世の中が変わってしまうかなり変化の速い時代ですので、もっと密な交流をした方が良いと思うのです。やりすぎると属人的になりうるという難しさもありますが、やってみないことにはわからないので、遠慮せずにやった方が良いと思いますね。ただし、信頼関係は重要です。突然できるかというとそんなことはありえません。共進化実現プログラムを通じて親しくなって、信頼関係が生まれた先にそういう取り組みがあっても良いのではないかという話です。
小野山:現在では、行政官が政策研究大学院大学のような場所で、教育プログラムを通して専門的な知見や手法を学びながら研究に取り組む事例も見られています。最近はどうしても人繰りが双方で難しいようですが……。EBPMがますます重視され、不確実性の高い将来をどう考えていくかという時代ですので、やはりそこの関係性の再構築といいますか、政策の検討体制の新しい在り方のようなところをもう一度考えるというタイミングでもあるかもしれませんね。
いよいよ始まった第IIIフェーズ 予測困難な時代にどう挑む?