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  4. 2025年度 第5回SciREXオープンフォーラム

2025年度 第5回SciREXオープンフォーラム「科学技術イノベーション政策における
『政策のための科学』」推進事業
(SciREX事業)の挑戦と成果

4.グローバルとローカルの視座から見たSTI人材育成の課題

 引き続きの討論の中で小林氏は、科学技術社会論学会や研究・イノベーション学会の大会などSciREX事業外で、「ここ5年ぐらい、『私はSciREXのオープンフォーラムに参加した』『何年度のサマーキャンプに参加した』と声をかけられることが多い」ことを紹介しました。加えて、学部は九州大学出身で、修士では京都大学STiPSで受講した方が、さらに九州大学CSTIPSのプログラムにも参加し、「今年はサマーキャンプの実行委員まで引き受けてくれた」と具体例も挙げながら、この12年間で育成された人材の厚み、修了生のネットワーク、拠点を超えた教育と交流の広がりを実感していると述べました。
 この教育の場の広がりについて、川上氏は、エクスポージャー、多様な刺激や経験に接触することの大切さを強調しました。「学部・研究科の先生としか交流がない状況から、いかに脱却して、チャンスを得るかだ」と述べ、「エクスポージャーの機会が学生の人生を変えるかもしれない」と指摘しながら、その機会を総合大学で維持することの難しさも滲ませました。

 また、川上氏は、ローカル・コミュニティの重要性も挙げ、「総合大学でできることと、地域でできることが、それぞれにある」と述べつつも、「SciREXプログラムで社会貢献を目指すのは大事だが、半導体にしてもAIにしても、結局日本はグローバル経済で負け続けている。そういった国際戦略が取れていないことに対する問題意識を政策レベルで持つべきだ」と指摘しました。
 これに続けて、修了生の杉谷氏は、「STI政策を考える人材育成(によって得た知識やスキル)は、地方(大学や行政)でも活かされる。各々の場で知識をフィードバックできる、共有できる場(やエクスポージャーの機会、人的ネットワーク)をもっと作り出すことが、さらなる人材育成に資するのではないか」と述べました。また、大学所属の有無によって論文、知識へのアクセスが制限されることへの問題意識も挙げ、これらのハードルを乗り越えるきっかけにSciREXプログラムがなり得るのではないかと提案しました。

 伊地知氏は、さらにSTI政策を研究・教育する、“深める”人材を、日本としてどう育成していくかを問いました。
 林氏は、「やはり国際的なネットワークに(日本からも)若い人を送っていくことが重要だ。海外の学会に行くと、博士イベント、博士フォーラムみたいなのがある。そこでは若い人同士が国際的な連携を作って、おそらくその関係が数十年維持される」と説明しました。ただし、日本の人材が国際的な議論の場に出ていかないのは、国内に人材がいない訳ではなく、STIについて学術的に議論できる教育を受けてこなかったせいではないか、議論の質を上げる取組までは、GiSTで十分にできなかったと考えていると述べました。

 青島氏は、「拠点を超えたコミュニティ作りやSTIのブランドの浸透」も必要だと認識していると述べました。「私たちは、例えば経営学の領域でイノベーション・エコシステムやスタートアップの育成などについてたくさん研究している。でも、それはSTIとかSciREXというラベルではあまり認識されてない」と現状を分析しました。「そのためにも教科書を作ってきた。必ずしもディシプリン化が要される訳ではないけれども、1つの研究領域としてのラベルを皆で共有していくようなことを、もっと全面に出していけたらよかった」と、振り返りました。

 討論の最後に、モデレーター2名からコメントがありました。
 まず加納氏は、「STIが広がる一方で、SciREXプログラム以外でもSTIに関われる要素が出てくる。その時に、このプログラムを選ぶ理由が今後問われていく」と述べました。民間企業でのインターンシップでもさまざまな経験を得られる中で、わざわざ時間を割いて受講することのメリットは何なのか、プログラムの価値をどう訴求していくのかが、足元の課題としてあるとしました。

 そして伊地知氏は、「STIそれ自体が、いろいろなところとつながりがあるもの。特に最近ではイノベーションが、社会のさまざまな課題を解決するために必要であると言われている。それを担う人こそが、つなぐ、学際性を発揮する、あるいは、連携する、そういうキーワードが出てくるところと関わっていく分野であるからこそ、教育プログラムとしてのSciREX事業に価値があるのではないか」と述べました。また、このセッションを通じて見えてきた、特に国際的にSTI政策分野の若手研究者をどうつなげていくかの課題を今後解決し、この分野の人材育成を発展させることを展望して、まとめとしました。

※当日の発表資料はこちらをご覧ください。

以 上

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パネル討論「政策現場と研究をつなぐ」
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