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破壊的・インクルーシブイノベーション SDGs達成のためのヒント

4 ラストマイルで必要とされるテクノロジーとは:実証実験による検証とインパクトの計測(2019年11月開催)

2019度最後のDIIセミナーは、途上国にテクノロジーを届ける活動を行うコペルニク代表中村俊裕さん、JICAでSATREPS(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム)を担当されている栗栖昌紀さんをお招きしました。コペルニクは2009年に設立後、インドネシアを中心に①技術普及(Technology Distribution)、②アドバイザリーサービス(Last Mile Consulting)、③実証実験(Experimentation)を行ってきた団体です。実際にSDGsの課題を解決しうる技術を、いかに現場に届けていくのか、そのヒントをお話しいただきました。

中村俊裕(コペルニク)氏

中村俊裕(コペルニク)氏

中村さんによると、団体設立当初は、世の中にある多くの良い技術を途上国の課題解決につながる技術普及を行ってきたとのこと。ソーラーライトや浄水器など現地の人が購入でき、継続的に使用できるような販売の仕組みを整えられてきました。それが、近年、ランダム化比較試験(RCT)が開発分野において注目されることで、コペルニクの活動内容も変化してきたといいます。

ランダム化比較試験(RCT)は、ソリューションを提供した場合としていない場合とで比較し効果を測定するものです。ランダム化比較試験(RCT)の大きな難点は、莫大な予算がかかることと、検証のための時間がかかることでした。これでは、実際の現場では回していくことができない、と考えた中村さんは、小さいサンプル数で、速く短い期間で検証するリーンな実証実験(Lean Experimentation)を始められました。「これはRCTでいうエビデンスではありません。われわれは『シグナル(兆し)』と呼んでいます」と中村さんは言います。  

大規模な実証実験ではなく小さく実施したとしても、製品の効果の「兆し」が見られれば企業や国際機関にとっては、進出の判断材料にすることができるとのこと。実証実験の結果を踏まえて製品の改善につながったり、リスクの低減につながると述べられました。これまでに、泥炭火災による煙のための簡易空気清浄機の導入実験、唐辛子入りのネズミ駆除薬、ソーラードライヤーによるカカオ豆の天日干しなどの実証実験をされてきたとのことです。

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションの様子

一方で、「こういった実証実験にはまだまだ資金がつきにくいのが現状」と中村さんは言います。今後はこれまでの実験で確立してきたアプローチを一般化し、「これはいける」、「難しそうだ」、「追加調査が必要」といったことが可視化できればと、抱負を述べられました。JICAの栗栖昌紀さんからは、SATREPでも社会実装を求めていく傾向にあり、市場調査や実証実験が重要になるので連携できたら、とのコメントがありました。

シリーズ化したDIIセミナーは、いずれの回においても60名以上の参加がありました。参加者からは、「具体的な事例を聞けてよかった」、「もう少し詳しく聞きたかった」といった声が挙がり、SDGsという大きな目標を前に具体的どのような策を講じるべきか、行政も企業も大学も迷いながら進んでいることが伺えます。いずれの講演においても、SDGsのような社会課題を解決に導くには、強いローカルとのネットワーク、これまでとは異なるアクターとの柔軟な連携が求められていくことが、説得力を持って示されていました。今後、各スピーカーの個々のストーリーから得られるヒントを整理し、SDGs資する科学技術イノベーションの要素を抽出し提示されることが期待されます。

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