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破壊的・インクルーシブイノベーション SDGs達成のためのヒント

1 アフリカのデジタル農業の動向(2019年8月開催)

第1回目のDIIセミナーでは、TIDAD7のために来日していたアフリカ開発銀行のプリンシパル・アグリビジネス・オフィサーKemi Afun-Ogidanさんと農業金融・農村開発局長の戸田敦子さんをお招きし、農林水産省から安原学大臣官房国際部海外投資・協力グループ上席国際交渉官にディスカッサントとして登壇いただきました。

アフリカでは、固定電話を超えて携帯電話が急速に普及し、それに伴いデジタライゼーションが進んでいます。実際にどの程度デジタル化が進み、またどの分野でテクノロジーが必要とされているのか、日本の技術が進出できる可能性があるのか、といった点についてお話しいただきました。

Kemi Afun-Ogidan(アフリカ開発銀行)氏

Kemi Afun-Ogidan(アフリカ開発銀行)氏

Ogidanさんからは、アフリカでは急速にデジタライゼーションが進んでおり、2025年には約3憶人の人がインターネットに繋がると予測されていると説明がありました。その中でもテクノロジーの活用が最も期待されているのが農業分野で、小規模農家が多いアフリカにおいて、生産性の向上と収入の安定につながることが期待されているとのこと。農業で抱える課題をICT等の技術で解決する「ICT for アグリ(ICT4Ag)」が大きな潮流で、多くのスタートアップがアグリテック分野から出てきているとのことでした。

具体的にアフリカの農業分野で期待されているテクノロジーについて、Ogidanさんは以下などを挙げられました。農業業界のバリューチェーンすべてに及ぶサービスが必要とされていることが分かります。

  • ① リモートセンシングによる土壌の肥沃度マッピング
  • ② 気象条件のモニタリングと保険商品開発
  • ③ 携帯電話とICTによる農耕法に関するアドバイスサービス
  • ④ 衛星やドローンによる土壌、生産物、水資源のモニタリング
  • ⑤ ブロックチェーンによる商品のトレーサビリティとマッピング
  • ⑥ デジタルマーケットプレイスの設置
戸田敦子(アフリカ開発銀行)氏

戸田敦子(アフリカ開発銀行)氏

また、戸田さんは、日本企業の持つテクノロジーへの期待について述べながらも、アフリカと日本とでは商習慣、文化的習慣が大きく異なることから、時間をかけたコミュニケーションが重要となると指摘しました。アフリカ大陸とひとくくりにするのではなく、個々の国々へ対応したテクノロジーとビジネスモデルを考えることが必要だとしました。そして今後、アフリカでデジタル農業を促進してくためには、規制やデータ保護を扱う公的機関とサービス提供者の民間との協力が不可欠であり、アフリカ開発銀行は、その「ハブ」としての機能を果たしていくと強調されました。

また、農林水産省の安原さんからは、TICAD7で発表した「アフリカの農業イノベーションプラットフォーム構想」について紹介がありました。アフリカ農業のデジタル化のプラットフォームを日本の官民が連携して、次回のTIACDまでに推し進めていくと、述べられました。

アフリカの人口、特に若年層の人口、都市化の進展など、市場としてのアフリカの魅力は大きく、インターネットの普及を見れば可能性の大きさを十分に感じることのできるセミナーとなりました。当日はアフリカや社会課題解決に関心のある企業、研究者、行政官のほか、ベンチャーキャピタルやNPOの方など幅広い方々にお集まりいただきました。

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2 社会課題解決を導くモダン・ツール(2019年9月開催)
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