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SciREXサマーキャンプ2024政策提案プロセスを体験。
参加者たちが議論を深め合った3日間

中間交流会で新たな刺激やヒントを得ることができた2日目

ここまでの成果を凝縮した中間交流会

昼休憩を挟んで、午後からはいよいよ中間交流会の時間です。各グループがここまでの作業の成果を他グループのメンバーや教職員、省庁の政策担当者、民間シンクタンク職員の方に向けて発表し、質疑応答や意見交換を行います。持ち時間は5分間。ポイントを記入した付箋や資料を貼り付けた紙ポスターを掲示し、メンバーを変えて同じ発表を2回行いました。

午前のグループワーク後、各グループで昼⾷

午前中のグループワークでメンターのアドバイスを受けて、停滞気味の議論が一気に加速した『エネルギー政策の国際比較と次世代エネルギー』のグループは、昼休憩の間もメンバーで会話を続け、中間発表に臨みました。そして2050年のエネルギーと産業、地域の課題を見据え、エネルギーの地産地消を行うべくマイクログリッドの導入を提案。自然災害が多発する中、大規模発電所の電力供給に頼らず地域の農林業からバイオマス資源を得て製造業、エネルギー産業へと循環させる一体的な仕組みづくりについて提言しました。

また多くの見学者を集めていたのが、今回のサマーキャンプのテーマでもあるアントレプレナーシップ教育についての政策提言を行った『アントレプレナーシップとSTEAM教育』の日本語グループです。STEAM/アントレプレナーシップ教育に関わる人材を増やすことによって、全国の高校で持続的な教育体制を構築することを目的に政策を立案。外部人材の活用やインセンティブについて、さらには授業構成についても提案しました。

発表を受けた質疑応答では「高校生を対象にするのであれば私立、公立の区分をした方がよいのではないか。私立校ではすでに起業家の話を聞く授業が設けられているところもある」、「各都道府県の教育委員会も、ステークホルダーとして連携すべきではないか」といった意見が続々と寄せられました。メンバーからは「自分たちにはなかった視点なので勉強になりました。最終発表に向けてぜひ取り入れていきたいです」との感想があがりました。

中間発表に⽿を傾ける参加者たち

中間交流会を終えた参加者たちに話を聞くと「5分間の発表という短い時間ではありましたが、人前で話すことで思考が整理され、さらに課題が見えてきました」、「質疑応答で厳しいご意見をいただくこともありましたが、それは同時にヒントにもなりました。皆さんからのすべての意見や質問がありがたかったです」などの感想を述べていました。そして中間交流会終了後も、時間の許す限り各グループの掲示を熱心に見て回る姿が目立ちました。

シンクタンクや省庁担当者との「相談会」

中間交流会の後は、1時間余りのグループワークを経て「相談会」が開催されました。これは文部科学省、科学技術振興機構、民間のシンクタンク等、科学技術イノベーション政策の立案に関係する組織がブースを設け、それぞれの業務内容の紹介や学生との懇談を行うというものです。
学生にとってはこれまでのグループワークや中間交流会の過程で生まれた疑問や、政策提言へのアドバイスを受けられる他、自分のキャリアや進路を考える際の参考にもなる貴重な機会です。皆、メモをとりながら熱心に話を聞いていました。

文部科学省のブースでは「たとえ高等教育に興味があって入省しても、義務教育の担当に配属されることはあるか?」といった具体的な質問があがりました。これに対して文部科学省の担当者からは「自分の現在の興味や関心も大切だが、幅広く取り組むことで得られる気づきが多く、長い目でキャリアを考える上で大切な経験となる」という実感のこもった回答がありました。

各組織がブースを設け、学⽣と懇談する相談会

また、あるブースでは中間交流会で使用した発表資料を手に政策の取りまとめについて相談するメンバーの姿も。最終発表での政策立案に向け幅広く知見を得たいメンバーと、明日の科学技術政策を担う参加者に応えようとするブース担当者が熱い意見を交わしていました。

相談会で民間シンクタンクのブースを回った学生の一人は「将来、政策立案に関わりたいという希望があり進路は省庁をイメージしていましたが、今回シンクタンクの業務内容を知り、民間で研究や政策立案の支援を行う仕事も大変やりがいがあると感じました。視野が広がったので参加してよかったです」と感想を話してくれました。

最終発表へ向け追い込む最後のグループワーク

朝9時から始まったグループワーク、中間交流会での発表、そして相談会と続いた長い1日の締めくくりは最後のグループワークです。教室に戻って午後4時40分から午後6時まで、3日目の最終発表に向け政策提言のまとめ作業を行います。中間発表で使用したポスターに質疑応答の内容を書き加えて方向性をより明確にしようとするグループや、プレゼンの仕方、話の流れについて表現面の見直しを図るグループなど、時間いっぱいそれぞれの課題と向き合います。

『生成AIとクリエイターの共存』をテーマに中間発表を行ったグループは、質疑応答で寄せられた「馬車から自動車へ、手作業から機械化へ。歴史を見ても技術革新は人類の生活を豊かにしてきた。それなのに、なぜAIは規制されるべきなのか。なぜ、否定的な議論をされることが多いのか」、「過去の芸術作品をオマージュして新たな作品を生み出すのと、模倣するのとの違いは何か?」といった問題定義を踏まえ、技術発展に政策がどこまで介入すべきかを検討している様子。議論を見守った行政官アドバイザーからは「ステークホルダー間のバランスをとることがまさに政策。ただ今回の政策提言が一般論とならないよう、自分たちの考えをもっと打ち出すべきでは?」という意見が出されていました。

『⽣成AIとクリエイターの共存』の中間発表

高齢者と障がい者の労働市場の創設について中間交流会で発表を行った『障がい者・高齢者の社会的包摂』のグループは、質疑応答での反応を得て、高齢者をメインに政策提言をまとめ直すことを決定。高齢者雇用のニーズの掘り起こしや、ミスマッチを防ぐための施策、民間との棲み分けなどの課題についてさらに議論を進めていました。

さて、終了時間が近づくにつれ、集中してパソコンに向かい最終発表の資料作りを行うグループが増える中、ギリギリまで議論を続けていたのが『イノベーションエコシステム(社会実装・産学連携)を推進する人材育成1』のグループです。中間交流会で得た知見をもとに、なおテーマの枝葉が広がっているよう。提案する人材育成プログラムの細かな制度設計やステークホルダーである企業のメリット、政策提言に盛り込みたい具体的な数字についてなど、ここにきて多くの意見が出される中、最後まで粘り強く調整を続けていました。

グループワークが終了。充実した表情で最終日へ

午後6時、初日から数えて計約10時間におよぶグループワークが終了しました。最終発表会の準備を終えたグループから帰路についていきます。

最終発表資料を作成しながらメンバーで会話を続け、最後の最後まで手直しに余念がないグループの姿もありました。出来あがった資料を前に発表の流れを何度も確認していました。

粘り強く議論を続けていたグループ

その一方で教室を後にするメンバーに話を聞くと、「事前学習会と対面での2日間の議論で、いろいろな意見を聞くことができ充実した時間でした。明日はとりまとめた政策提言を発表して、審査員の先生方からフィードバックをいただけるということで、緊張していますがとても楽しみです」と晴れやかな表情で語ってくれました。

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