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SciREX事業の成果 外務大臣科学技術顧問と
SciREX事業とのかかわり

科学技術外交で役割を増す外務大臣科学技術顧問

科学技術外交への関心が高まる中、外務大臣科学技術顧問の果たす役割は大きい。
2015年9月に岸田文雄外務大臣は、外務省参与(外務大臣科学技術顧問)として、岸輝雄東京大学名誉教授を任命した。2020年4月には後任として松本洋一郎東京理科大学学長が外務大臣科学技術顧問に就任した。顧問を補佐する外務大臣次席科学技術顧問として、2019年4月には狩野光伸岡山大学教授が就任した。2020年4月にその後任として、小谷元子東北大学理事・副学長が新たに外務大臣次席科学技術顧問に就任している。※1

※本記事での肩書は当時のものです。

この外務大臣科学技術顧問の誕生とその活動の支援にSciREX事業とSciREX関係者が大きな役割を果たしてきたことを、以下に紹介する。

SciREXでの科学技術外交の戦略的推進に向けた研究会の開催

平成25年(2013年)に政策研究大学院大学(GRIPS)はSciREX事業の一環として、文部科学省委託事業「科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」の推進に向けた試行的実践」調査を受託した。※2 この調査の枠組みの中で角南篤GRIPS教授を中心として科学技術外交の戦略的推進に向けた研究会を開催している。研究会には文部科学省の国際担当の戦略官、科学技術振興機構(JST)、日本学術振興会(JSPS)、理化学研究所や非営利団体、民間企業の関係者も参加し、全5回開催され報告書を取りまとめた。
報告書では、今後の戦略的な科学技術外交の推進に向け以下の提言、外務省における科学技術担当組織の強化や科学技術顧問の設置を含む科学技術外交の強化のための課題などが挙げられている。

  • 提言1:国際共同研究につながる初動立ち上げ事業及びイノベーション創出を支援する事業の強化
  • 提言2:官民による情報交換の場の設置と民間セクターの参画を奨励する事業の強化
  • 提言3:国際共同研究の現状や他国との競争を踏まえたプログラム設計
  • 提言4:プログラム(事業)の運営及び評価あり方
  • 提言5:研究成果のフォローアップと外交へ活用及び者評価
  • 提言6:国際共同研究案件構築のため者データベスと活用
  • 提言7:国費留学生制度を活用した相手国の人材育成

政策への反映

その後、これらの提言や体制整備にかかる研究を進めるとともに、政策への具体的な反映を目指した活動が進められた。2014年4月には、角南教授が文部科学省科学技術・学術審議会の国際戦略委員会において、上記の提言や外務大臣科学技術顧問の設置等の体制強化の課題を含む報告書の内容を報告している。※3

2014年5月には、白石隆政策研究大学院大学長(兼・SciREXセンター長)が、2013年度に実施された「政策のための科学」の推進に向けた調査研究等を踏まえ、科学技術外交について「外交のための科学技術(Science for Diplomacy)」の観点から検討することを目的とした「科学技術外交のあり方に関する有識者懇談会」の設置等を岸田文雄外務大臣に提言する。岸田大臣が科学技術政策担当大臣の経験者であり、外務大臣政務官に国際経験の豊富な木原誠二氏がいたことで提言が受け入れられやすい素地となっていたと思われる。これを受け、外務省に「科学技術外交のあり方に関する有識者懇談会」が設置され、第1回会合が2014年7月に開催される。※4

「科学技術外交のあり方に関する有識者懇談会」の座長・委員

座長

白石 隆 政策研究大学院大学長

委員

岩永 勝
独立行政法人国際農林水産業研究センター(JIRCAS) 理事長

金子 将史
政策シンクタンクPHP総研国際戦略研究センター長 兼 主席研究員

角南 篤
政策研究大学院大学教授・学長補佐

長谷川 眞理子
総合研究大学院大学理事・副学長

細谷 雄一
慶應義塾大学法学部教授

山下 光彦
日産自動車株式会社取締役・上級技術顧問(社長付)

白石学長は懇談会座長を務め、角南教授は当懇談会の報告書の原案作成にあたるドラフティンググループのメンバーとして指名され、SciREXでの研究会の議論等を踏まえ、有識者懇談会にて科学技術外交に関する知見をインプットする。最終的に2015年5月、有識者懇談会の報告書が白石座長より岸田外務大臣に対して提出される。※5 この場には懇談会から岩永委員、金子委員、角南委員,長谷川委員及び細谷委員が同席している。この席で、白石座長は、国際社会では日本の科学技術への期待が非常に大きく、科学技術は外交の手段として非常に有用であり、提言に盛り込んだ「科学技術顧問」についてぜひ活用いただきたい旨の発言を行っている。 ※6

「科学技術外交のあり方に関する有識者懇談会」の報告書の提出
(資料)外務省ホームページより

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科学技術外交のあり方に関する有識者懇談会」の提言のポイント(報告書抜粋)
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