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破壊的・インクルーシブイノベーション SDGs達成のためのヒント

SDGs達成のためのヒント

政策研究大学院大学SciREXセンターでは、文部科学省の具体的な政策ニーズをもとに設定された研究課題について、研究者と行政官が一緒になって研究を進める「共進化実現プロジェクト」を実施しています。これらのプロジェクトと並行して、今後、共進化実現プロジェクトとなりうるテーマについて予備的研究として「共進化準備ステージ」プロジェクトが実施されています。

今回は、「共進化準備ステージ」プロジェクトの中でも、SDGs達成のための科学技術イノベーション政策について、途上国等の事例を収集し定性的に分析されている飯塚倫子氏(政策研究大学院大学教授)のプロジェクトについて紹介します。

プロジェクト名は、「SDGs達成に資する『破壊的・インクルーシブイノベーション』の在り方に関する研究」です。アフリカのケニアで爆発的に普及したモバイル送金サービス「M-PESA」。M-PESAは、携帯電話のショートメッセージ(SMS)を使って送金、預金、引き出し、支払いなどができるもので、これまで銀行口座を持てなかった貧困層が、金融サービスを利用することができるようになりました。このように、M-PESAの事例は、金融サービスにアクセスできない層を取り込んだという点で「インクルーシブ(包摂的)」であり、また、既存の市場にとって代わるという点でで「ディスプティブ(破壊的)」でもあります。

プロジェクト代表者の飯塚倫子氏(政策研究大学院大学教授)は、クリステンセンの言う「破壊的イノベーション」と社会的インパクトを重視する「インクルーシブイノベーション」には共通する特徴があることに着目しています。

破壊的・インクルーシブイノベーションの概念図

破壊的・インクルーシブイノベーションの概念図

その上で、破壊的でインクルーシブなイノベーションを生み出す事業体は、彼ら自身が作り上げてくる「ネットワーク」が、①社会課題、②技術、③ビジネスモデル、④資金、⑤市場を適切に組み合わせ、必要とされている現場に技術やサービスを届けることに効果的に働いているのではないかという仮説のもと、インタビューによる定性的な調査を実施してきました。

また、上記のような「ネットワーク」をうまく活用して、SDGsなどの社会課題に資する新しい取り組みに挑戦さている方をスピーカーとし、「破壊的・インクルーシブ・イノベーションセミナー(DIIセミナー)」が開催されてきました。DIIセミナーは、SDGs達成に向けて取り組む研究者、行政官、起業家、企業、NGOなど多様なステークホルダーがそれぞれのアイディアやポテンシャルについて意見交換できる空間を目指して始まったものです。2019年度は4回開催され、活発な議論が行われました 。

*DIIセミナー第5回は、コロナウィルスの感染拡大の影響を考慮して、実施を延期することといたしました。5回目の開催が確定しましたら、ご案内いたします。

以下では、これまでに行われましたDIIセミナー(全4回)の概要について紹介します。

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1 アフリカのデジタル農業の動向(2019年8月開催)
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