第2期SciREX事業スタート

 2016年4月、SciREX事業に関する「基本方針」などが改定され、新たな方針に基づき事業は、第2フェーズに入りました。
第2期では、第5期科学技術基本計画に基づき、科学技術イノベーション政策において解決すべき重要な課題を「重点課題」と設定し、それらの課題解決に向けて、各拠点大学やSciREXセンター、科学技術・学術政策研究所(NISTEP)、社会技術研究開発センター(RISTEX)、研究開発戦略センター(CRDS)が連携しながら研究をおこなっていきます。

 また、研究の早い段階から研究者と政策担当者がコミュニケーションをとりながらプロジェクトメイキングを行うことで、実際の政策課題の解決に向けて新しくかつ効果的にアウトプットを出していくことが期待されています。
以下は、重点課題とそれを踏まえて2016年度に立ち上がった研究プロジェクトです。

2016年度重点課題に基づくプロジェクト概要

科学技術イノベーション政策の実効性の確保と基盤強化のための重点課題

① 経済社会的効果測定指標の開発

PL:黒田昌裕(政策研究大学院大学客員教授、慶應義塾大学名誉教授)

 科学技術イノベーション政策の社会的・経済的影響を定量的に評価するために、シミュレーション・モデルの開発を行う。政策効果を測定できるシナリオや経済モデルを作成し、科学技術白書、 科学技術基本計画などでの活用を目指す。2015年度より、公的研究費の資金配分データ、特許、学術論文などのデータベースを接続し、イノベーション・プロセスを一気通貫で分析できるデータプラットフォームの構築に取り組んでいる。

② 政策のモニタリングと改善のための指標開発

PL:有本建男(政策研究大学院大学教授)

 中長期的な政策マネジメントシステムの改善に資する科学技術イノベーション政策の評価指標・手法を開発する。関連政策とその目標について体系的にとらえ直し、エビデンスに基づいた指標のありかた、それらの基盤となるデータ収集・連結・分析体制の整備について検討する。特に、これまで十分取り組まれてこなかった科学技術イノベーションと社会との関係について適切に把握する国際比較可能な指標の開発に取り組む。

③ イノベーションシステムを推進する公的研究機関の制度的課題の特定と改善

PL:有本建男(政策研究大学院大学教授)

 科学技術イノベーションを推進する主体の一つである大学や公的研究機関のマネジメントの改善に資する「マネジメントスコアボード」の構築に向けた調査研究を行う。諸外国の大学の戦略計画の事例集積、国内大学の経営データの分析等を行い、大学・公的研究機関の経営を支援することを目指す。

④ 国家的課題に対応した戦略的政策シナリオ及びその作成手法の開発

PL:角南篤(政策研究大学院大学副学長・教授)

 国内外の政策動向を踏まえつつ、国家的課題として潜在的政策ニーズが存在し、府省の壁を越えた連携・取組が求められるような 問題について、我が国として取り組むべき具体的課題を明らかにし、政策シナリオやオプションとしてとりまとめる。

⑤ 政策形成のフレーミング、ステークホルダー分析、プロセスの構築を通じた政策形成プロセスの改善手法の開発

PL:森田朗(政策研究大学院大学客員教授、国立社会保障・人口問題研究所所長)

 科学技術イノベーション政策の意思決定過程に存在する障害を特定し、それを乗り越えるための方策を検討する。特に、医療ICTの利活用に関わる政策の事例分析や、様々なステークホルダーとの「対話」の検討を行い、エビデンスに基づく政策プロセスの構築を試みる。

政策の柱(個別政策課題)としての重点課題

① 新しい科学技術の社会的課題検討のための政策立案支援システムの構築

PL:平川秀幸(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授)

 超スマート社会などの新しい科学技術が社会に展開するときには、研究開発の早い段階から検討されるべき社会的課題が存在してい る。これらの課題の特定と課題対応の方法論を整理し、政策立案を支援するシステムの開発を行う。

代表拠点:大阪大学
参画拠点:政策研究大学院大学(GRIPS)、東京大学、京都大学、九州大学

② 自治体の持つ学校健診情報の可視化とその利用に向けての基盤構築

PL:川上浩司(京都大学大学院医学研究科教授)

 学校健診情報など自治体がもつ行政健康資料を、研究へ活用できるようにデータベースのかたちで可視化する。解析研究をすることで、付加価値を見出し、学術や産業での利活用の可能性を探る。

代表拠点:京都大学
参画拠点:GRIPS、東京大学、大阪大学

③ 地域イノベーションに資する事例研究と政策支援システムの開発

PL:永田晃也(九州大学科学技術イノベーション政策教育研究センター・センター長)

 地域における科学技術イノベーション政策の立案・実行に資するため、地域イノベーションの事例情報を体系的に収集・分析する。また、それらの事例情報を、九州大学が開発した地域科学技術政策支援システム(RESIDENS)に蓄積し、地方自治体関係者等を対象とした研修プログラムの中で活用する。

代表拠点:九州大学、一橋大学
参画拠点:GRIPS

④ イノベーション創出に向けた産学官連携:知識マネジメントと制度設計

PL:城山英明(東京大学公共政策大学院教授)

 イノベーション創出に向けて、大学が産業、公的機関等と共に新たな知識を創出し、社会において効果的に活用するためには、どのような組織や制度が必要となるのか。産学官連携におけるリスクマネージメントとオープンサイエンスの観点から考察し、現状の課題と将 来の可能性を検討する。

代表拠点:東京大学
参画拠点:GRIPS、大阪大学、京都大学、九州大学

※PL:プロジェクトリーダー

関係機関の役割

社会技術研究開発センター(RISTEX)

社会技術研究開発センター(RISTEX)  公募型研究開発プログラムを実施し、政策形成の実践に将来的につながりうる研究成果を創出する。また、プロジェクトの公募・推進を通じて、SciREXに関わる新たな研究人材の発掘とネットワークの拡大を目指す。併せて、重点課題に基づく各プロジェクトとも連携していく。

科学技術・学術政策研究所(NISTEP)

科学技術・学術政策研究所(NISTEP)  SciREX事業の基盤となるデータ・情報の整備と提供を行う。特に、重点課題に基づくプロジェクトやRISTEX公募型プログラムのプロジェクトへの情報提供を行い、これまでの成果やデータの活用を促進する。加えて、他機関のデータソースとのつなぎや、データ・情報等に関する助言も行なっていく。

研究開発戦略センター(CRDS)

研究開発戦略センター(CRDS)  SciREX事業に関係した様々な活動の俯瞰活動を行う。また、SciREXに関する海外調査を含めた内外の情報収集・提供を行うことで、今後の重点課題の設定や各プロジェクト内容の検討へ寄与していく。

SciREXポータルサイト開設のお知らせ

イベントカレンダー  2016年6月にSciREX事業ポータルサイトがリニューアルします。SciREX事業に関する成果・報告書はこちらからご覧いただけるようになります。また、各種イベント(セミナーやシンポジウム)は、イベントカレンダーで随時更新していきます。過去のSciREX Quarterly の PDF はこちらからご覧いただけます。