科学技術外交シンポジウム開催報告 新たな局面を迎えた日本の科学技術外交

 本年5月、関係府省庁、関係機関、民間企業との共催によって、関係大臣を迎え日本で初めての科学技術外交シンポジウムが開かれた。本稿では、シンポジウム開催の背景、外交における日本の科学技術の重要性、今後の科学技術外交の課題について解説したい。

1.科学技術外交シンポジウムの開催

岸田外務大臣  G7伊勢志摩サミットを2日後に控えた本年5月24日、「科学技術外交シンポジウム―科学技術を通じた日本外交の新たな方向」が政策研究大学院大学で開催されました。総合科学技術会議(当時)で日本の科学技術外交に関する最初の指針「科学技術外交の強化に向けて」が決定されてから8年。当日は300名近い来場があり、科学技術外交が日本にも着実に浸透してきたことを実感しました。
 シンポジウムには、岸田文雄外務大臣と島尻安伊子科学技術政策担当大臣も登壇されました。私が科学技術外交に携わって約9年経ちますが、このような場で両大臣が揃われたのは、これが初ではないでしょうか。これには、昨年9月に任命された日本初の外務大臣科学技術顧問(以下、顧問)が果たした役割も大きかったはずです。

2.「外交のための科学」の幕開け

 ここで、シンポジウムの開催経緯をご紹介します。
 本シンポジウムは、2015年5月にとりまとめられた「科学技術外交のあり方に関する有識者懇談会報告書」の15提言のうち、提言1と提言13(科学技術外交を日本外交の新機軸とする外交姿勢の確立と、その対外発信)の一環として開催されました。同懇談会は、金子将史氏の「本格化する日本の科学技術外交」(PHP Policy Review Vol.10, No.72, 2016)に詳細がありますが、現SciREXセンター長の白石隆政策研究大学院大学長が、平成25年度に実施された「政策のための科学」の推進に向けた調査研究等を踏まえ、岸田大臣に設置を進言したことがきっかけでもあります。
 一般に科学技術外交には、①科学のための外交(科学技術分野の国際協力促進に外交を活用)、②外交のための科学(国家間関係の向上に科学技術協力を活用)、そして②に含まれることもありますが③外交における科学(外交政策目標に科学的知見を提供)の3側面あるとされます。同懇談会は、それまでの①中心の議論から、外務省主導の②、③を重視した議論となった点で、画期的でした。そして、科学的知見と技術の活用なしには解決し得ない外交課題が多い現状に鑑み、提言9「外務大臣科学技術顧問を試行的に設置する」が示され、岸輝雄東京大学名誉教授が顧問に就任。外交・科学技術双方へ働きかけをされ、本シンポジウムが実現したのです。

3.日本外交の新機軸として

島尻科学技術政策担当大臣  その内容は、科学技術外交を日本外交の新機軸として打ち出すにふさわしいものとなりました。冒頭、島尻大臣からは、「第5期科学技術基本計画」にも科学技術外交の積極的推進が掲げられ、G7茨城・つくば科学技術大臣会合では、地球規模課題の解決に向けた国際協力枠組の強化が議論されたことが述べられました。続いて、岸顧問より、これまでの活動として、外交課題の解決に科学技術を活用するための専門家会議「科学技術外交推進会議」を設置したこと、海外のカウンターパートとのネットワークを構築してきたこと、様々な勉強会の開催を通じて得た知見を外交機会に活用し日本が科学技術の観点を踏まえた議論でイニシアチブをとるべく、政府関係者へ提言を発出してきたこと等が紹介されました。そして、岸田大臣からは、「科学技術は、日本の平和、そして繁栄を支える礎であり、日本の科学技術は外交に活用できる大きな可能性がある」と、科学技術外交を一層推進していく旨表明がありました。続く村山斉東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構長の講演は、「日本が人類共通の課題を追究していく科学力を提供することで、ある意味有利な外交を展開できるのではないか。また、その追究を通じ世界を1つにし、ひいては世界平和に貢献することができる」との見解で、岸田大臣の言葉を後押ししました。

4.科学技術外交の更なる推進に向けて

岸顧問  外交における科学技術へのニーズと、それに応えうる日本の科学技術力が再確認された、今回のシンポジウム。科学技術外交という新機軸の確立に向け、今後、何をすべきでしょうか。まずは、「外交」と「科学技術」のかけ橋となる顧問の定着でしょう。そのためには、米国国務省初の科学技術顧問、ノーマン・ニューライター氏が「長官に囁くことで政策は立てられない」という言葉で、省内各所との頻繁なやりとり、意思疎通の必要性を強調しているように、顧問が外務省内の多様なニーズを知る仕組みを構築し、広く認知されることが肝要です。科学技術側も、顧問が外交ニーズに呼応する技術や取組を示せるよう、関係省庁や研究機関・大学、民間機関等が一丸となって支援する必要があります。さらには、科学技術外交を担う人材の育成、科学技術外交戦略を描くシンクタンク機能の強化も求められるでしょう。
 今日、国際社会の安全を揺るがす脅威が増す一方、科学技術外交への関心が世界で高まっています。日本は科学技術の力で世界をリードし、平和へ貢献できるのか。科学技術外交に対する日本の本気度が問われ始めています。

※役職は、シンポジウム開催時のものです。

濱地 智子さん
はまとも 政策研究大学院大学SciREX センター専門職
PROFILE
上智大学比較文化学部(現国際教養学部)比較文化学科卒業後、日本アイ・ビー・エム株式会社、内閣府政策統括官(科学技術政策・イノベーション担当)付参事官(国際政策担当)付参事官補佐等を経て2014年より現職。
内閣府在職中より科学技術外交の推進に携わる。
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