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2016年07月07日

東京大学教養学部 社会連携プロジェクト「教育学部生のためのキャリア教室2」『ノーベル賞を倍増せよ!』参加報告

SciREX-科学技術イノベーション政策研究センター, 文部科学省

2016年6月20日および24 日、東京大学の学部1,2年生を対象とした講義「教育学部生のためのキャリア教室2」にて、文部科学省によるワークショップ『ノーベル賞を倍増せよ!』が開催されました。
本ワークショップには文部科学省、文化庁の政策立案者に加え、政策研究大学院大学 SciREXセンターからも原泰史専門職およびインターン生の中島が参加しました。

本報告では、当日のワークショップの様子をご紹介します。
(著: SciREX センターインターン中島沙由香)

はじめに

このワークショップでは、学生に対し以下の様な課題が与えられました。







上記のテーマについて、学生たちは5,6人ごとに4つのチームに分かれ、「ノーベル賞倍増」に向けた政策の立案に取り組みました。

期間は1週間です。月曜日の授業で出された課題についてチームごとに議論を深め、金曜日の講義での発表に挑みます。


20日月曜日の様子

ワークショップ1日目の月曜日は、まずJST 研究開発戦略センター中川氏から政策立案プロセスやエビデンスベースの重要性などの説明を受け、その後グループワークに取り組みました。







グループワークの様子

行政官からアドバイスを得ながら、政策を考えます。



途中、原 SciREX センター専門職からは「『ノーベル賞を倍増せよ!』とは言うけれど」と題し、ノーベル賞に係る分析や関連するデータソースの紹介がありました。






その後も各チームは政策の立案に向けて話し合い、中間発表を行いました。





中間発表の様子

進度にばらつきはありますが、基本方針はできたようです

24日金曜日の様子

約一週間の準備期間を経て、ついに成果発表の日です。

講義1時間前に集まり、プレゼンの最終確認をしているチームもありました。

 

10分の発表時間で、各チームそれぞれ特色の違った政策を紹介しました。





最終発表の様子

一週間の成果を存分に発表します。




各チームの発表内容
  • チーム1
「有望な研究の実用化、製品化の支援」、「日本主導の国際プロジェクトの推進」、「産学間で共有できる研究者データベースの充実」という3つの政策を立てました。若手研究者が安心して研究できる環境の確保、有望研究の支援をしたうえで、芽が出なかった研究者には企業で活躍できる道まで提案していました。バックアップ体制まで意識してあるところがとても特徴的でした。
  •  チーム2
科学ブームを生み出すことで、次の世代を刺激して科学技術の好循環を作ることを目的にしたこのチームは、これまでのノーベル賞受賞者のほとんどが海外留学を言経験していることに注目して、「民間企業からの支援で成り立つ留学奨学金制度」を提案しました。この制度を利用した研究者は帰国後、支援企業の中の1社に就職することができるため、将来を気にせず、留学先での研究に集中することができるということでした。
  •  チーム3
2057年までの40年間でノーベル賞受賞者30人出す、という強気の目標を掲げたこのチームは「研究に特化した大学院の強化」を提案しました。既存の大学院に国内外から優秀な研究者を招致し、研究環境も向上させることで、基礎研究・人材育成に特化させるということでした。他のチームに比べ、理系学生が多かったためか、科学者目線でボトムアップの政策を考えている姿が特徴的でした。
  •  チーム4
研究環境を向上させることを目的に、このチームは「ポストの安定化」と「研究の効率化」を提案しました。研究に適した環境を構築することが、研究の充実につながり、結果としてノーベル賞につながるとしていました。具体案としては、民間企業に一定数ポスドクを受け入れてもらうクウォーター制の導入や、研究室環境を向上させるために権威ある研究者を集めて運営改善チームを結成するなど多岐にわたりました。
講評



講評

学生はJST/CRDS中川氏からの講評を真剣に聞いていました



学生からの発表が終わると、中川氏や原専門職から講評がありました。発表姿勢や話し方の技法などの基本的な指摘から、いかに上司の意向を政策に反映できるかが重要だという具体的なアドバイスまで出ました。




学生の感想

「様々なアイデアは出るが、これだ、と思える1つに決めることが難しかった」、「期間が短く、十分にエビデンスを調べることができなかった」、「自分たちがちっぽけに思えた」などの感想が出ました。また「本当にユーザー目線で政策が作られているのか」という役人と国民間のギャップへの指摘や、「エビデンス重視していては、革新的な政策なんてできないのではないか」という指摘も出ました。

 

 


まとめ「学生だからこその枠にとらわれない発想が素晴らしかった」



この言葉は講評時に中川氏が今回のワークショップの総評として言った言葉です。学生が行政官の仕事を理解しより身近に感じられるように開かれたワークショップではありましたが、学生たちの発想力から逆に行政官側や私たちも大きな気付きがありました。

他の大学でもぜひこのような機会を設けて頂きたいな、と思いました。



(注)掲載の写真はすべて、授業記録及び報告を目的とした写真撮影及び利用について事前に受講学生から承諾を得た上で、授業時間外に撮影したものです。

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