SciREX 拠点間連携プロジェクト 1 自治体の持つ学校健診情報の可視化とその利用に向けての基盤構築

 2016年度よりSciREX事業では、9つの重点課題を設け、9つの研究プロジェクトを実施しています。本号では、重点課題の1つである「少子高齢化と科学技術イノベーション政策」に関する研究プロジェクトをご紹介します。

医療データを活用できる基盤構築に向けて

 このプロジェクトでは、現実世界(リアルワールド)に存在する健康情報を活用した予防医療の推進や健康増進を目指しています。これからの病気の治療、予防には、人が生まれてから死を迎えるまでの年代記である健康ライフコースデータの構築が欠かせません。ITを活用することで、自治体の持つ学校健診情報の可視化し、可視化されたデータを適正に利用できる基盤を作り上げていくことは、今後の健康・医療政策に資するものと考えています。

なぜ学校健診情報なのか

 日本では、診療報酬請求(レセプト)情報の解析は端緒についたものの、学校健診情報や母子保健情報といった健診情報の活用に関しては手付かずでした。学校健診情報や母子保健情報は、各自治体できちんと記録がとられているにも関わらず、紙で保管されるなど電子化されていませんでした。まずは学校健診情報を皮切りに、社会に存在する健康情報を電子化し、収集・活用することのできる基盤をつくることが、持続可能な健康・医療政策の実現への第一歩だと考えました。超高齢社会を迎え、健康・医療政策における財政的懸念が高まっている今だからこそ、経年的な健康情報の蓄積と活用、取り組みの精緻化に向けて、いち早く取り組みを開始することが大切だと考えます。

プロジェクトを進める上での課題

 それぞれの健診情報を所轄する省庁が異なり、更には、各自治体の条例も情報の取り扱いに影響することにより活用が難しい状況が生じているというのが現状です。また、情報を収集する段階では、一般市民の方に健康情報の利活用に対する理解を深めてもらうことが大切です。自治体の首長や、教育委員会、健康福祉部局の方、さらには生徒や保護者の方との相互理解なしには、進められないプロジェクトです。

研究のアプローチ

 まずは、自治体との連携を進めています。また、健康情報を蓄積するデータベースの構築にあたっては、自治体や個人に情報を還元するための一次利用、研究者が活用し予防医療や健康増進に繋げるための二次利用を想定し、独自のシステム開発を行っています。一般市民との相互理解の観点では、関連する倫理的、法的、社会的問題(ELSI)の抽出を目的にアンケート調査を行い、理解や認識、取り組みにおいて配慮すべきことを明らかにしています。

これまでの成果

 現在、33都道府県76自治体と調整し、2017年1月時点で50自治体と取組みを開始しております。既に、自治体や個人に対して、学校健診情報レポートの還元も開始しました。ユーザーからは、地域レベル、個人レベルの健康の把握や健康意識の向上に繋がるとの好評を得ています。今後も多くの自治体の方々に興味を持っていただき、活動を深化させるとともに、持続可能な健康・医療政策の実現に向けて尽力していきたいと思っています。

プロジェクトのコンタクト先:kawakami.koji.4e@kyoto-u.ac.jp

(文責:井出和希、川上浩司)

プロジェクトメンバー

川上浩司
かわかみこう 京都大学大学院医学研究科教授
森田 朗
もりあきら 政策研究大学院大学客員教授、
SciREXセンターPM、津田塾大学教授
柴山創太郎
しばやまそうろう 東京大学工学系研究科
技術経営戦略学専攻特任准教授
平川秀幸
ひらかわひでゆき 大阪大学COデザインセンター教授
吉田都美
よしさと 京都大学大学院医学研究科助教
井出和希
かず 京都大学大学院医学研究科助教、
京都大学学際融合
教育研究推進センター助教
ページの先頭へ