SciREX columu 第5期科学技術基本計画とSciREXに期待されるもの

やまかずひと 政策研究大学院大学SciREXセンター専門職、政策デザイン領域プログラムマネージャー補佐
PROFILE
専門は、科学技術政策。科学技術政策に関する若手ネットワーク「サイエンス・トークス」の委員も務める。

この度閣議決定された第5期科学技術基本計画は、2016年度から5年間の日本の科学技術イノベーション政策を方向づけるものである。第1期から通算20年間にわたって様々な取組がなされてきたが、今回の計画はこれまでと一線を画すものとなっている。ここでは同計画の概要を紹介するとともに、SciREXに期待される役割について述べる。

将来の変化を見据えての経済・社会的課題の解決と科学技術イノベーション基盤の強化

 今回の基本計画(右図参照)では、課題解決と科学技術イノベーションの基盤の強化をより強く指向するものとなった。特に、情報通信技術の発展による「超スマート社会」の実現やオープンイノベーションの推進など、従来と異なる社会や経済のあり方を見据えた取組が求められている。その一方、我が国の研究力や人材、大学や研究機関の現状に対する危機意識が明確に提示され、これらに対する改革をより一層推進するとある。

主要指標と達成目標の設定

 また、同計画においてこれまでと大きく異なる点は、主要指標と達成目標を設定し、進捗を把握していくという点である。この指標・目標値による政策のマネジメントについては、SciREXセンターにおいても検討会を開催し提言を出しているが、各関係府省の連携、関係者間の政策実装までのストーリーの共有、実務と連動した負荷の少ない情報共有・モニタリング体制の構築、データの相互接続や情報インフラの整備など多くの課題があり、実効性の確保とマネジメント体制の確立に向けて、SciREXコミュニティが貢献できる部分も大きいと想定される。

政策当局との連携・相互理解を通じた実践的政策研究の推進

 この他にも同計画では、大学や国立研究開発法人などの科学技術イノベーションの推進機能の強化、多様なステークホルダー間の共創の推進など、これまでSciREXが取り組んで来た課題と関係する課題群が提示されており、蓄積された知見やデータを活用しつつSciREXコミュニティが課題解決や政策立案に貢献することが期待される。また政策側の問題意識から新たな研究課題が提示されることも想定される。このためSciREXセンターとしてもこのような連携・相互理解を促進する機能を今後果たしていくことが重要であると考えている。

第5期科学技術基本計画の構成と主な内容

第1章 基本的考え方
社会・経済の構造が大きく変化する「大変革時代」という認識
第2章 未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取組
「超スマート社会」の実現(Society 5.0)
第3章 経済・社会的課題への対応
13の重要政策課題の提示と研究開発から社会実装までの取組の推進
第4章 科学技術イノベーションの基盤的な力の強化
人材力、知の基盤強化と資金改革
第5章 イノベーション創出に向けた人材、知、資金の好循環システムの構築
オープンイノベーションの推進、中小・ベンチャー企業支援、知財・標準化の戦略的活用、等
第6章 科学技術イノベーションと社会との関係深化
多様なステークホルダーとの対話と協働による共創
第7章 科学技術イノベーションの推進機能の強化
大学・国立研究開発法人の改革と機能強化、司令塔機能強化